実家の庭のエビネ蘭が咲きました

今日は私の誕生日でした。このところの毎日実家に行っていますので、今日も実家で母親と食事をしてきました。4月8日に父が亡くなったばかりですのでお祝いという雰囲気でもなく、普段通りに食事と、少しお酒を飲んでのんびり。

庭を見ると、父親が育てていたエビネ欄がようやく花をひらきました。

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黄色の花が美しい「黄エビネ」

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こちらは普通のエビネ蘭。

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庭の片隅に昨日買ってきたヒメシャラを植えました。枝振りが涼しげで綺麗な白い花が咲く木です。庭いじりが好きだった父のために何か植えようとさがしていたところ、いいものが見つかりました。まだ2mほどの樹高ですが、すこしづつ伸びてほしいものです。

梅が終わり、葬儀の時に満開だった木瓜(ぼけ)の花も散って、来週あたりは鉄線(クレマチス)が綺麗に咲く事でしょう。つぼみが大きく膨らんでいます。

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テーマ : 日記
ジャンル : 日記

アドルフ・ハーセス/アバド/シカゴ響のトランペット協奏曲

今日もラックの整理をしていて取り出した古いアルバム。

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アドルフ・ハーセス(Adolph Herseth)のトランペットにクラウディオ・アバド(Claudio Abbado)指揮のシカゴ交響楽団の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲。他にモーツァルトのホルン協奏曲3番、ファゴット協奏曲、オーボエ協奏曲(KV314)の4曲を収めたアルバム。収録はPマークが1985年というだけで記載がありません。レーベルは久しぶりのDeutsche Grammophone。

このアルバムは、アバドとシカゴ響の首席奏者らによるモーツァルトとハイドンの管楽協奏曲集という位置づけでしょう。手に取った理由は冒頭に置かれたモーツァルトのホルン協奏曲3番のソロが別のアルバムのハイドンのホルン協奏曲で名ホルンを聴かせたデール・クレヴェンジャー(Dale Clevenger)だと気づいたから。調べてみるとファゴットのウィラード・エリオット(Willard Elliot)、オーボエのレイ・スティル(Ray Still)ともにシカゴ響の当時の主席奏者。クラシック音楽全盛期の勢いを感じる企画ですね。

クラウディオ・アバドはハイドンをあまり振ってはいませんが、交響曲集が4枚でており、ご存知のとおりオケはヨーロッパ室内管で、小規模オケの俊敏な反応を生かした切れ味の良い演奏。特に96番奇跡はカミソリのような素晴らしい反応が味わえるもの。当ブログでも初期にとりあげています。

2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」

このシリーズは1986年から95年の間に、ウィーンのコンツェルトハウス、フェラーラのテアトロコムナーレ、ベルリン、イエス・キリスト教会などでのライヴ中心の収録。今回取りあげるトランペット協奏曲は収録年はわかりませんがPマークが85年という事で、85年以前の録音ということになります。

アバドの経歴を調べると、1968年から1986年までミラノ・スカラ座の音楽監督・芸術監督を、1979年から1988年までロンドン交響楽団の音楽監督を務めている間、1982年から1985年までシカゴ交響楽団の首席客演指揮者となっています。シカゴ交響楽団とは一時かなりのアルバムをリリースしていましたので、この録音はこの頃のものでしょう。このあと1986年からはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任するためシカゴを離れた言う事だと思います。

アバドのディスコグラフィを確認すると、このトランペット協奏曲がハイドンのはじめての録音になるようです。

トランペットのアドルフ・ハーセスはwikipediaの情報によると、1921年アメリカのミネソタ州西部のレイク・パークという街の生まれ。もともと大学で数学を学び、第二次世界大戦では海軍で太平洋戦線に配属。戦後1946年からニューイングランド音楽院でトランペットを学び、地元ボストン交響楽団のトランペット首席奏者等に師事し腕を磨きました。その後、アルトゥール・ロジンスキの薦めでシカゴ交響楽団の首席トランペット奏者に就任し、2001年に退くまで53年間にわたってその職を務め、シカゴ響の黄金の金管セクションを支えた人です。ショルティ時代のシカゴ響の圧倒的な音響ははアドルフ・ハーセスの輝かしいトランペットの音色によるところも大きいでしょう。
現在はシカゴ交響楽団名誉首席トランペット奏者ということです。2000年のシーズンを最後にハーセスが引退した以後、シカゴ響首席トランペット奏者(現在はクリストファー・マーティン)に「The Adolph Herseth Principal Trumpet Chair」の名称が付けられる事となっているそうで、シカゴ響にとってハーセスの存在がいかに大きなものだったかがわかります。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
いきなり大オーケストラの分厚い響き。やはりヨーロッパのオケと違い、根底に絢爛豪華なアメリカンサウンドの香りを感じます。アバドのコントロールは晴朗さをきっちり表しながらもオーソドックスさを保ったもの。シカゴ響の派手な音色を抑えているのでしょうが、すこし金の縁取りがついているような華美な感じもあります。ちょっと気になるのはリズムの重さ。アバドとしては珍しいことですが重量級オケゆえのことでしょう。ハーセスのトランペットは演奏は落ち着いていますが、音色の安定感と高音域の伸び、輝かしい音質は流石なもの。アバドはときおりアクセントをしっかりつけて豪腕オケの存在感を感じさせます。ハーセスに全幅の信頼を置いてゆったりオケの反応を楽しむようです。ハーセスは、古典的なこの曲を、折目正しさの中で輝かしさをきっちりだして演奏しています。音階のひとつひとつが抜群の存在感。オケの音響から完全にクッキリ浮かび上がっています。カデンツァは音階の上昇と高音の圧倒的な伸びをゆったりと表現したもの。オケも落ち着いて寄り添います。
2楽章のアンダンテはハーセスのトランペットの美しい音色と巧みなフレーズコントロールが絶妙。こうしたゆったりしたメロディーをしっかり聴かせるにはしっかりしたテクニックが必要でしょう。アバドは得意の弱音を表情豊かにコントロールすることでソロを支えます。不思議に叙情的に聴こえず純音楽的な表情。
そしてフィナーレは再び重厚なシカゴ響の響きが復活。リズミカルにそよ風のように刻むヴァイオリンの序奏から入り、重厚なオケが畳み掛けます。トランペットの突き抜けるような輝かしい響きがホールに響き渡ります。特に素晴らしいのが短いカデンツァ。高音の安定感は揺るぎないものがありますね。流石にシカゴ響の歴史に名を残す名トランぺッターの演奏。終結部はトランペットとオケのエネルギーが満ちあふれます。最後の響きがホールに消え入るところが絶妙。

このところ懐かしいアルバムを取り出して聴くのが定番になっていますが、このアルバムも30年近く前の演奏。アバドはこの頃はシカゴ響やロンドン響を振って飛ぶ鳥を落とす勢いのころ。このアルバムではシカゴ響の名手とモーツァルトとハイドンの協奏曲を楽しむように録音しています。モーツァルトの3曲はどちらかと言うとハイドンよりも相性がいいように感じます。このハイドンのトランペット協奏曲は名手ハーセスとの協奏曲のショーピースのような演奏と言えばいいでしょうか。指揮もオケもソロも名手ぞろいですのでテクニックと演奏の質は完璧。ただハイドンの曲の演奏という視点で見ると、ハイドンの音楽のほの暗い情感、ハイドンらしい晴朗感といったものとは何か違う演奏という印象がつきまといいます。トランペット協奏曲の評価は[++++]としておきます。

今日は月末日ですが、今月はいろいろあってレビューが少なかったのて恒例のHaydn Disk of the Monthはお休みとさせていただきます。今月分も含めて来月表彰したいと思います。

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テーマ : クラシック
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tag : トランペット協奏曲

【番外】狛江でトムヤムクン

このところ毎日のように実家に来ています。父の葬儀後、母親と食事をなるべくともにするようにしていますが、母の体調も徐々に良くなり、昨日は実家の近くで外食をすることに。

両親ともに健康状態もあって病院通いの帰りにファミレス寄る程度で、最近外食の機会はあまり多くありませんでしたが、母親が外でもいいということで、思い切って近くのタイ料理に行ってみる事にしました。

食べログ:トムヤムクン

狛江の駅から5分ほどのところにある小さなタイ料理のお店。以前から気になっていた店で、食べログの評価もそこそこいい評価なので選びました。今日の記事のタイトルはトムヤムクンをいただいたのではなく「トムヤムクン」というお店の名前なんですね。

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時間が早かったので、まだお客さんはおらずゆったりすることができました。お店はカウンターとテーブルあわせて20名くらいの小さなお店。(これは帰りがけに撮った写真)

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最初はやはりビールですね。母親も少し飲みますので、良く冷えたグラスにシンハービールを注ぎ、ぐいっと行きます。

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壁に貼ってあったオススメメニューを注文。タイ風腸詰と卵焼き。

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それからほうれん草の炒めもの。パクチーの香りと調味料でしっかりタイ風の味に。ちょっとピリッとくる辛さ。味付けはどれも本格的で美味しいですね。

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そして本命トムヤムクン。母曰くはじめて戴くとのこと。酸味と辛味の絶妙なバランス。レモングラスにパクチー、袋茸の柔らかい味が絡みあって絶妙。流石に店名がトムヤムクンだけあります。今までタイ料理はいろいろ食べましたがこのトムヤムクンは美味い。

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それから鶏のバジル炒め。これもタイ料理のご飯ものの定番。メニューに「人気No.1」との書き込みがありましたが、それも頷ける旨さ。卵を割ってよく混ぜていただきます。

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こちらはタイ風焼きそば。写真撮る前に食べちゃいました。フォーのような麺に味がしっかりついて旨味たっぷり。レモンを絞って爽やかさを加えていただきます。

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ビールがきれたのでグラスの白ワインです。タイ料理店だけあってしっかりしたタイプの白。料理とのバランスをよく踏まえたセレクト。

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もちろんお腹いっぱいですが、母親と嫁さんのに確認すると、デザートは不可欠とのご裁定。こちらもタイ料理のデザートの定番、タロイモのプリンとタピオカミルク。特にタロイモのプリンが美味しかったですね。

スタッフは料理する女性とホール担当の女性、あとから手伝いにやってきた男性と3人のタイの人でやってますが、お客さんをうまくさばいて料理もクイックにでてました。味は十分というより、都内の名店と比べても引けをとらず、値段もリーズナブルときていますので、いいお店です。もちろん評価は[+++++]とします。

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モーゲンス・ヴェルディケ/ウィーン国立歌劇場管弦楽団の99番、「軍隊」

ヤニグロのハイドンが素晴らしかったのでVANGUARD CLASSICSのアルバムをもう1枚。このアルバムもかなり久しぶりに取り出しました。

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モーゲンス・ヴェルディケ(Mogens Wöldike)指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲99番、100番「軍隊」、101番「時計」、102番、103番「太鼓連打」、104番「ロンドン」の6曲を収めたアルバム。収録は1956年6月、ウィーン楽友協会小ホール(ブラームス・ザール)でのセッション録音。

今日はこのなかからCDの1枚めの99番、100番「軍隊」を取りあげましょう。

モーゲンス・ヴェルディケは1897年デンマーク、コペンハーゲン生まれの指揮者。1988年に同じくコペンハーゲンで亡くなっています。コペンハーゲンの大学でカール・ニールセンらに音楽を学び、1920年代から60年代までデンマークでオルガン奏者、指揮者、合唱指揮者、音楽学者として活躍していたそうです。1931年にコペンハーゲン中心部にあるクリスチャンスボー城のオルガニストとなり、また1959年から72年までコペンハーゲン協会のオルガニストでもありました。合唱指揮の方ではコペンハーゲン声楽学校の少年合唱団の指揮者、デンマーク国立放送の合唱指揮者などを務めました。そしてスウェーデン放送の指揮者を務めた後、ヨーロッパの主要なオーケストラを客演、地元スカンジナビアやヨーロッパ、アメリカで名声を確立したということです。

ジャケットに写る凛々しい指揮姿はまさに名指揮者そのもの。この時代にウィーン国立歌劇場管弦楽団でハイドンの交響曲を録音をするという事自体がヴェルディケの名声を物語っていますね。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
ジャケットの指揮姿から想像されるそのものの音響。凛々しく引き締まった響き。ゆったりしたテンポながらそこそこのキビキビ感もあり、中庸の美学を感じられる演奏。弦楽器にレガートがかかっているので滑らかな響きが心地良い演奏。録音は1956年ということを考えると素晴らしいものがあります。ジャズで良く聴かれる左右の分離が良い録音。オケが中央に定位はするのですが、左右が綺麗に分離して聴こえます。音場は広く響きも豊か。一瞬テープのつなぎ目らしきものがわかるところがありますが気になるほどではありません。一貫したテンポで安定感の高い演奏。演奏自体は少々古風な印象もつきまといますが、それを上回る覇気とエネルギー感。
2楽章のアダージョは99番の聴き所。テンポは一貫してゆったり気味。表情の変化は最小限ですが、ただ演奏するだけでも慈しみ深い曲ゆえ、ゆったり一貫して演奏するだけでも香り立つような情感が浮かび上がります。ゆったりと盛り上がる中間部。なだらかな山脈を遠望するような趣。木管楽器の陰影に富んだ響きがオケの音色に深みを与えます。そして後半更なる高みに。弦楽器がゆったりと織りなす綾がじわりと心に響きます。このアダージョは絶品。至福の一時。
メヌエットは一貫したテンポで軽さを見せながら入りますが、しだいに揺るぎない岩のような強靭さを感じさせるすばらしいもの。99番はこうした穏やかながら筋の通った解釈が生きる曲ですね。
フィナーレもむしろ遅目のテンポでじっくり攻め入ります。最初はかなり抑え気味。徐々にスロットルを開けていきオーケストラに力が漲っていく推移をじっくり楽しむ事ができます。くすんだ迫力あるウィーン国立歌劇場管弦楽団の音色によって立体的に曲の構造が浮かび上がり、老練なのによく見ると筋肉が浮かび上がる壮年のスポーツ選手の鍛え抜かれた体のような味わい深い立体感。無理する事なく曲の構造を詳らかにして終了。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
99番の素晴らしい演奏につづいて軍隊。前曲の調子そのままで軍隊を弾かれたら痺れるだろうとの期待をもちながら序奏を聴きます。堂々とした大伽藍の神殿のような序奏。つづいてパルテノン神殿の完璧なプロポーションのごとき立体感とこれ以上ない晴朗さで主題に移ります。まさに軍隊の理想像を描くような圧倒的な説得力。ゆったりしているのに息を飲むようなスペクタクルな展開。全盛期のカラヤンでもここまでの余裕ある覇気は表現できないのではと思わせる完璧さ。テンポは動かさず音楽の芯は微動だにしない揺るぎなさで展開部に。ムジークフェラインの小ホールに響き渡るオケの響き。動と静の完璧なバランス。抑えた金管の号砲。1楽章の最後になんとテンポをあげててキリリと引き締めます。見事。
軍隊のハイライトの2楽章。テンポは一貫しながらも弦楽器主体のオケが色彩感豊かにフレーズを進めます。徐々にエネルギーが満ち、小爆発がはじまります。打楽器陣が非常にテンポ良く穏やかにオケに彩りを加えていきます。なんと豊かな音楽。弦のピチカートがホールに響き、打楽器陣も力が入ります。ハイドンの創意が音になってホールに散乱。荒れ狂うティンパニと打楽器。余韻をフルートが鎮め、トライアングルが名残惜しそうに響きます。エネルギーではなく知性と創意でホールを吹き飛ばすような素晴らしい爆発。すばらしい2楽章。
メヌエットは2楽章の知性の破壊力を日常に引き戻してくれるようなオーソドックスさに引き戻してくれます。ヴェルディケのバトンはハイドンの曲の期待通りの響きで、曲の真髄を把握しきったように、一聴して自然ではありますが、良く聴くと非常に巧みなコントロール。眼光鋭い写真のヴェルディケの意図がCDを通して蘇っています。徐々にノリがよくなってメヌエットを結びます。
フィナーレはところどころテンポを早く打ち、活き活きとした感じを巧みに表現しています。自然な範囲でかなり意図的にアクセント付けにいっています。フィナーレにしては全般に抑え気味の表現ながら、要所要所をクッキリと演出して曲の面白さを思い知らさせるような演奏。最後は打楽器陣が軽く腕前をデモンストレーションするような余裕ある結び。ヤニグロとは逆にテンポを上げる結びが粋ですね。

聴き終わって深呼吸をしなくてはならないような充実ぶり。ヴェルディケのハイドンがここまで素晴らしかったと言う記憶がありませんでしたが、これは圧倒的な演奏。99番のアダージョは宇宙的な深み、そして軍隊の2楽章の素晴らしさも腰にくるようなずしりとインパクトのあるもの。ハイドンの交響曲の最高の演奏として多くの人に勧めたい素晴らしい演奏です。1956年の録音とは思えない素晴らしい録音も絶品。評価はもちろん両曲ともに[+++++]とします。

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tag : 交響曲99番 軍隊 ヒストリカル ハイドン入門者向け

アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「受難」

前記事でとりあげたヤニグロのシュトルム・ウント・ドラング期の交響曲集。勢いでもう1曲取りあげておきましょう。

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繰り返しになりますが、アルバムを紹介。

アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro)指揮のラジオ・ザグレブ交響楽団(Symphony Orchestra of Radio Zagreb)の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、46番、47番、48番「マリア・テレジア」、49番「受難」の6曲を収めたアルバム。収録は1963年8月19日、20日、当時はユーゴスラビア、現在はクロアチアのザグレブ(録音場所は不明)でのセッション録音。レーベルはVANGUARD CLASSICS。

今日はこの中から最後の1曲、49番「受難」です。前記事で取りあげた「悲しみ」以降、「告別」から「マリア・テレジア」までの曲はすこしゆったり感が不足した勢い重視の演奏でしたが、聴き進むと、最後の「受難」が別格の深み。

Hob.I:49 / Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
柔らかい木質系の響きの滔々と流れる大河のような1楽章のアダージョ。なんと構えの大きな音楽なんでしょうか。録音は「悲しみ」同様最高。たっぷりと間をとってこれ以上濃い情感を表現することが難しいほどの濃さ。それなのにくどい感じはいっさいなく、むしろさっぱりした印象さえ感じさせるのが流石なところ。弦楽器中心のオケは完璧なアンサンブル。ヤニグロの棒にピタリと張り付くような演奏。1楽章だけでも鳥肌がたつような集中力。この劇的なアダージョがハイドンが楽長に就任したばかりのエステルハーザ離宮に響き渡ったのでしょうか。
2楽章はきっちりギアチェンジして快速にはいり、深い音色はそのままにキビキビとした展開。受難と言う曲の素晴らしさを思い知らされる素晴らしい展開。アダージョから入りこの展開となる独創性、この深いメロディの連続、そしてハッとさせられるような構成。リズムの拍子を先に打つような心地よいテンポ感。すでに曲に酔いしれます。
そして慈愛に満ちたメヌエット。もはや音楽を完全に掌握しているヤニグロのコントロールは、自然にメロディーが湧き出てくるような音楽。これ以上の自然さはないくらい。シンプルなメロディーなはずですが、音楽は信じ難いほど豊かなもの。
フィナーレはオケの線がいい意味で少しばらけるような響きに聴こえますが、軽いタッチで推進力ある展開。リズムは一貫してキレよく進み、木管楽器の色彩感がアクセントをつけます。全体の構成がしっかり変化を付けている分、各楽章はそれぞれしっかり演奏するだけで、曲全体の構成感はクッキリ浮かび上がります。

チェリスト、アントニオ・ヤニグロが第二の故郷とみなしたクロアチアのザグレブのオケを振ったハイドンの交響曲集の最後を飾る交響曲49番「受難」。この曲の理想的な演奏として心に刺さる、情感深い名演奏です。各楽章の最後にテンポをかなりしっかり落とすところに時代を感じますが、この曲の楽譜の奥に潜む魂のようなものまで表現した素晴らしい演奏であると言えるでしょう。ハイドンの交響曲の名演奏として燦然と輝く価値をもった演奏です。評価はもちろん[+++++]としました。

このアルバムのレーベルであるVANGUARD CLASSICSはいいアルバムが多いですね。

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tag : 受難 ヒストリカル ハイドン入門者向け

アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「悲しみ」

今日は定番のアルバム。ずいぶん久しぶりに取り出しました。

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アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro)指揮のラジオ・ザグレブ交響楽団(Symphony Orchestra of Radio Zagreb)の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、46番、47番、48番「マリア・テレジア」、49番「受難」の6曲を収めたアルバム。収録は1963年8月19日、20日、当時はユーゴスラビア、現在はクロアチアのザグレブ(録音場所は不明)でのセッション録音。レーベルはVANGUARD CLASSICS。

ラックからしばらく聴いていないアルバムを偶然取り出したもの。おそらく手に入れたのは15年以上前の事だと思いますが、10年以上取り出していませんでした。出だしの悲しみをちょっとかけてみたところ、遥か昔の記憶とは異なり、非常に鮮明かつ情感的な音響でビックリするほど素晴らしい演奏。いまさらビックリしても遅いのですが、、、(苦笑)

今日は6曲のなかから時間の関係で「悲しみ」1曲を取りあげます。

Wikipediaの情報によれば、アントニオ・ヤニグロは1918年、イタリア、ミラノの生まれのチェリストで指揮者。1989年に亡くなっています。幼少の頃からチェロを学び、母の努力で11歳でパブロ・カザルスのレッスンを受けたのをきっかけにして、パリのエコール・ノルマルでカザルスの教えを受けることになりました。パリではポール・デュカス、ストラヴィンスキー、コルトー、ティボーなどの一流の演奏家と親交をもつように。ディヌ・リパッティとは親友であり、1937年のエコール・ノルマル卒業後リパッティやパウル・バドゥラ=スコダらとともにソロ活動を始め、演奏家として有名になったようです。第二次世界大戦中は当時ユーゴスラヴィアのザグレブ音楽アカデミーのチェロと室内楽の教授としてザグレブで活動。ヤニグロはユーゴスラヴィアのチェロ界の近代化につとめるとともに、ザグレブ放送交響楽団を指揮、また1953年にザグレブ室内合奏団(I Solisti di Zagreb)を設立し、自ら指揮者となりました。ザグレブ室内合奏団は世界的な室内合奏団としての地位を確立して、数々の演奏会と録音を残しています。ヤニグロは晩年を思い出の地ザグレブで過ごしました。ヤニグロの没後、その功績を讃えて「アントニオ・ヤニグロ・国際チェロコンクール」が開催されています。

Hob.I:44 / Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
1963年の録音としては十分に鮮明な響き。残響も多めで柔らかい木質系の響きにもかかわらず鮮明な、見事な録音。20bit DIGITAL ULTRA ANALOGのレッテルは伊達ではありません。シュトルム・ウント・ドラング期独特の濃い情感が溢れんばかり。オケもハーモニーがピタリと決まる腕利き揃いに聴こえます。生気もダイナミクスも十分。最新のデジタル録音よりも音楽が伝わってきます。1楽章の終わりにテンポを極端に落とすところが時代を感じます。
2楽章のメヌエットは濃い陰影がついたまさにシュトルム・ウント・ドラングを感じさせる表現。何という完成度。心を絞るような陰影。少ない音符から描き出される濃い情感。ホルンや木管も完璧なバランス。指揮者の指示に完全に一体化したオーケストラ。淡々と曲を進めているのに深まる一方の情感。この楽章は絶品ですね。
そして、奏者の全神経が集中したアダージョ。弱音器付きの弦楽器が奏でる訥々としたメロディー。じわりと盛り上がる感興。単純な旋律なのにこの深みはなんでしょう。演奏によっては平板にも聴こえますが、この演奏では淡々と進めることで深みを見せる至芸。ヤニグロの確信犯的コントロール。弦楽器のアンサンブルの精度は素晴らしいものがあります。
フィナーレはゴリッとした低音弦群のアンサンブルが絶妙。節度あるエネルギー感。前楽章との対比は鮮明につけて規則的なリズムの上での推進力の表現。くすんだ音色のオーケストラから発散される濃い音楽。この楽章も最後はテンポを極端に落として終わります。

古い演奏ですが、録音は素晴らしく、そしてヤニグロのコントロールするくすんだ音色のラジオ・ザグレブ交響楽団は素晴らしい精度の演奏。まさにシュトルム・ウント・ドラング期のハイドンの交響曲の理想的な演奏といえるでしょう。悲しみは名曲ゆえ素晴らしい演奏は多いですが、この完成度はこれ以上の演奏を必要としないほどの説得力を感じさせます。不思議に典雅なジャケットもなかなかオツ。評価は[+++++]に変更です。

このあとに続く告別の1楽章も素晴らしいエネルギー感。残りの曲も時間が取れる時に紹介する必要がありそうですね。

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モスクワ室内管のチェロ、ヴァイオリン、ピアノとヴァイオリンのための協奏曲集

しばらくの湖無沙汰でした。葬儀や手続きなども一段落して、ようやく落ち着いてきました。今週は日常に戻るために少し記事を書こうと思っていましたが、ほとんど実家泊まりでブログを書く時間がとれず、結局週末になってしまいました。

今日は未聴盤ボックスの一番上にあった気になるアルバム。

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モスクワ室内管弦楽団(The Moscow Chamber Orchestra)によるハイドンの協奏曲3曲を収めたアルバム。レフ・マルキス(Lev Markiz)指揮、ナターリャ・グートマン(Nataria Gutman)のチェロによるチェロ協奏曲1番、ルドルブ・バルシャイ(Rudolf Barshai)指揮、ウラディーミル・スピヴァコフ(Vladimir Spivakov)のヴァイオリンでヴァイオリン協奏曲(VIIa:1)、そしてヴァレンチン・ジューク(Valentin Zhuk)指揮、ナターリャ・ゼルツァロワ(Nataria Zertsalova)のピアノとイーゴリ・オイストラフ(Igor Oistrakh)のヴァイオリンでピアノとヴァイオリンのための協奏曲(XVIII:6)。収録は曲順に1974年6月23日、1972年6月15日、1984年5月20日、何れもラジオモスクワのコンサートホールでの録音。拍手はないので放送用録音でしょうか。

モスクワ室内管弦楽団は以前、コンスタンチン・オルベリアンの指揮で告別交響曲の素晴らしい演奏が記憶に残っています。以前の記事はこちら。

2011/09/05 : ハイドン–交響曲 : コンスタンチン・オルベリアン/モスクワ室内管の告別

このアルバムは先月ディスクユニオンで手に入れたもの。指揮者は異なるものの、あの濃密な響きか聴けるかということで手に入れました。

モスクワ室内管弦楽団はライナー・ノーツによると1956年にルドルフ・バルシャイによって設立された室内管弦楽団。当時の国内のコンクール入賞者などをメンバーにして設立されたもので、発足当初から名手ぞろいのオケ。当時のソビエト国内はもとより国際的に活躍し有名になったとのこと。バロック期から現代音楽まで幅広いレパートリーを誇り、ショスタコーヴィチの交響曲14番「死者の歌」はモスクワ室内管が初演した曲。またレオニード・コーガン、ダヴィッド・オイストラフ、リヒテル、メニューイン、カサド、ギレリスなどロシアの一流のソリストとも共演しています。歴代の音楽監督はルドルフ・バルシャイ以後、1977年から1981年までイーゴリ・ベズロドヌイ、1986年から1991年までヴィクトル・トレチャコフ、1991年から2009年までコンスタンティン・オルベリアン(ロシア語版)、2010年からアレクセイ・ウトキンと続いています。

オケは共通ながら指揮者もソロも別ということで、曲のレビューごとに奏者を紹介しましょう。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
指揮のレフ・マルキスはモスクワ室内管の初代コンサートマスター。チェロのナターリャ・グートマンは1942年生まれのソ連出身のチェリストである。夫はヴァイオリニストのオレグ・カガン。

反応の良いオケは期待通り。速めのテンポでキビキビとした入りの序奏。チェロのグートマンはテンポ感良く非常にオーソドックスな演奏。チェロの表情は中低音のふくよか響きを中心としたもの。オーソドックスなチェロとオケの掛け合いを堪能できる安心して聴ける演奏。腕の確かな奏者とオケが余裕たっぷりに弾流すような演奏。録音は1970年代としては水準でしょうか。適度に柔らかく定位感もそこそこあり、響きのブレンドが美しい録音。もう少し鮮明であれば言う事はありません。グートマンのチェロは自然体で楽器を良く鳴らした癖のないもの。1楽章のカデンツァもテクニックは十分ながら破綻なく無理のない演奏。高い音楽性を感じる演奏。
見事なのは2楽章のアダージョ。かなりテンポを落として、訥々とした孤高の表現。オケがゆったりと伴奏を奏で、チェロは表情を抑え気味にしながらも長く糸を引くような非常に印象的な演奏。決して流麗で表情豊かな演奏ではありませんが、独特の表情付けが心に染み入るフレージング。時折聴かせる低音の深い慟哭のようなアクセントが印象的。次第に音量と表現の幅を大きくしていき、大きな起伏をつけます。徐々にチェロがむせび泣くような激しい表現を見せるようになり、ハイドンの規律ある音楽の湧く一杯の感情表現。この楽章の深い表現は見事。
フィナーレはテンポは中庸ながら、鮮度の高いオーケストラの魅力を冒頭から遺憾なく発揮。流石モスクワ室内管というべき絢爛豪華な響き。見事な切り替えでチェロも軽さを取り戻し、オケの流れに上手く乗っていきます。前楽章と対比を鮮明につけるためにリズム感を強調した演奏。チェロの上下する音階を上手くこなして、要所で美音を聴かせます。テクニシャン揃いのモスクワ室内管に一歩もひけをとらないチェロ。協奏曲のソロとオケの掛け合いが安定したテンポの流れに乗ってスリリングに展開する様は協奏曲を聴く醍醐味。1曲目からなかなか素晴らしい出来でした。

Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
つづいてルドルブ・バルシャイの指揮、ウラディーミル・スピヴァコフのヴァイオリンでのヴァイオリン協奏曲。バルシャイは日本でも有名な人でしょう。1924年ロシアの黒海に近いラビンスカヤ生まれの指揮者。ラビンスカヤを地図で見ると次回冬期オリンピックが開催されるソチのすぐ近くですね。バルシャイは先に触れたようにモスクワ室内管の生みの親であり、1976年にイスラエルに亡命以降は西側でも活躍し、日本にも1966年以来たびたび来日しN饗も振っているとのこと。ショスタコーヴィチなどを得意としているほかハイドンの交響曲の録音もあります。ウラディーミル・スピヴァコフは1944年生まれのロシアのヴァイオリニスト、指揮者。当ブログでも以前モスクワ・ヴィルトトゥージ室内管弦楽団を指揮したナカリャコフとのトランペット協奏曲を取りあげています。

指揮者がバルシャイに変わり分厚い響きから入ります。ちょっと荒々しさも加わり同じオケ、近い時期の演奏にもかかわらず、響きが変わります。堂々とした序奏。スピヴァコフのヴァイオリンは張りつめた強音を主体とした浸透力のある響き。旋律をクッキリと線で描いていく感じです。前曲のチェロ協奏曲よりは濃いめの表現。ヴァイオリンも練り、溜めが多くまた表情も鮮明につけてくるのでロマン派風というよりロシア風なテイスト。ハイドンの協奏曲としてはかなりロマンチックな演奏と言えるでしょう。録音はちょっと饐えたような音色で時代を感じますが鮮明さはそこそこあります。1楽章はクッキリした造形を良く表現した演奏。
このオケの伝統なのか、2楽章のアダージョは前曲同様、ゆったりしたテンポ、訥々とした伴奏に、張り詰めたヴァイオリンの美音によるメロディーが鳴り響く独特の音楽。スピヴァコフのヴァイオリンの表情の濃さが影を潜め、非常に浸透力のあるメロディーラインをきっちり描いていきます。2楽章は前曲に続き素晴らしいテンション。
フィナーレも見事に切り替え、曲の骨格をしっかりと描くようなリズムを強調した演奏。むしろ遅目のテンポで、オケの伴奏はざっくりとリズムを刻み、その上でソロが秩序を保ちながらの自在さを表現していきます。すこし時代がかった演奏にも聴こえます。

Hob.XVIII:6 / Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
だいぶ時代が下って1984年の演奏。ヴァレンチン・ジューク指揮、ナターリャ・ゼルツァロワのピアノとイーゴリ・オイストラフのヴァイオリン。指揮者のヴァレンチン・ジュークはモスクワ生まれで父はボリショイ劇場管弦楽団、のちの国立交響楽団のコンサートマスター、ボリショイ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンとして知られた人。自身もモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターをつとめ、スヴェトラーノフ、コンドラシン、ロジェストヴェンスキー等と共演しています。イーゴリ・オイストラフは名ヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフの息子。そしてピアノのナターリャ・ゼルツァロワはその奥さんという事です。

この録音は80年代の録音ということで鮮明さがだいぶ上がり、最近の録音と遜色ない音響。くっきり定位するソロと後ろに広がるオーケストラが鮮明に録られてています。入りはそよ風のような軽やかなオケ。音階を軽々と表現して、曲を虚心坦懐に音に変えていく感じ。ジュークの指揮は鮮度高くクッキリと旋律を描いていくことを狙っているようですね。非常にオーソドックスに鮮明な音響を作っています。ピアノとヴァイオリンは流石夫婦だけあって絶妙の相性。特にピアノ鮮明な響きが印象的。ヴァイオリンは父親譲りかと思いきや、音色に面影はあるもののピアノに主導権を譲りながら控えめにリズムを刻む感じ。ピアノも晴朗さと透明感を主体とした非常に美しい音色でこの協奏曲をもり立てます。
そしてここでも2楽章のラルゴが絶品。この曲のメロディーラインの美しさを万全に表現した名演。ゆったりと控えめなピチカートの伴奏につづき、ヴァイオリンとピアノによるきらめくような名旋律。中間部を挟んで再度メロディーラインが繰り返されるフレーズでは美しさが極まり、淡々と演奏される数少ない音符が宝石のごとく輝きを放つ至福の時間。このアルバムの2楽章はどれも絶品。
3楽章は普通のテンポで鮮度高い演奏。ヴァイオリンもピアノもリズムに上手く乗って、キレのよい演奏。このアルバムではじめてのオーソドックスなテンポのフィナーレです。

名手ぞろいのモスクワ室内管によるハイドンの協奏曲を集めたアルバム。指揮者もソロも異なるのになぜか2楽章がそれぞれ訥々と語るような素晴らしい出来のアルバム。2楽章だけで言えば全曲ともに最高の出来。特に最後のピアノとヴァイオリンのための協奏曲のラルゴは絶品ですね。モスクワ室内管もチェロ協奏曲とヴァイオリン協奏曲の70年代はかなり濃密な響きを聴かせましたが、ピアノとヴァイオリンのための協奏曲は80年代でかなり引き締まったクリアな響きに変貌。メンバーもだいぶ入れ替わったのではないかと想像されます。評価はチェロ協奏曲とピアノとヴァイオリンのための協奏曲が[++++]、ヴァイオリン協奏曲は[+++]とします。両端の曲ともにいいのですが、やはりオルベリアンの告別と比べると差があるのも事実。ということで[++++]にとどめました。



ここ2週間ほど自宅を開けがちたったのか、ベランダのエアコンの室外機の下の隙間に鳩がきていましたが、よく見ると卵が! まわりの枯れ葉等も鳩がもってきたもののようです。しばらく自宅に誰もいなかったからでしょうか。

IMG_2929.jpg

ただ、人の気配を感じて昨日あたりから鳩は来なくなりました。冷えてしまうと生まれないのでしょうね。この卵どうしたらいいでしょうか。

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tag : チェロ協奏曲 ヴァイオリン協奏曲 ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6

カンブルラン/読響の牧神の午後、ペトルーシュカ

父の葬儀以来、しばらく実家の手伝い等で音楽生活から遠ざかっていましたが、今日は以前からとってあったチケットがあったのでサントリーホールに出かけてみました。

読売日本交響楽団:第514回定期演奏会

プログラムは『ドビュッシー生誕150年』という企画で下記のとおり。

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:バレエ音楽「おもちゃ箱」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」 (1947年版)

今日のお目当ては何といっても「ペトルーシュカ」。ペトルーシュカは実は父がよく聴いていた思い出深い曲。ブーレーズの旧盤、コリン・ディヴィス/コンセルトヘボウ、アバド/ロンドン響などLPでよく聴いていました。私も生でペトルーシュカを聴くのははじめてのこと。チケットを取った時にはまさか父が亡くなるとは思ってもいませんでしたので、今日のペトルーシュカはよい思い出になりました。

カンブルランの振る読響はいろいろ聴いていますが、「春の祭典」、「火の鳥」も最近聴いていますので、ストラヴィンスキーの3大バレエはこれで全曲制覇となります。以前のコンサートレポートはこちら。

2010/11/22 : コンサートレポート : カンブルラン/読売日響の朝、昼、晩(+火の鳥)
2010/07/14 : コンサートレポート : カンブルランのデュティユー
2010/05/01 : コンサートレポート : カンブルランのハルサイ爆演

カンブルランの現代物は色彩感とダイナミクスとフランスのエスプリに、読響の熱演が相俟って、かなりレベルの高い演奏です。デュティユーも良かったですね。普段ハイドンばかりレビューしてますが、現代ものも嫌いではありません。

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今日は会社を休んで父の葬儀後の手続きや、世話になった病院への挨拶、実家の片付け等をすませて、夕刻いざサントリーホールへ。東京は最近にしては少し肌寒い気候でしたが、少しづつ日が長くなり、18時を回っても薄暗くなってきた程度。サントリーホールの前でしばしのんびりします。

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少しづつネオンがめだつようになりはじめたアークヒルズ。

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開場直後には中に入り、いつものように開演までのざわめきを楽しみます。今日はワインの赤、白。

IMG_2910.jpg

席は好きな2階のライトスタンドに当たる場所。指揮者やオケの奏者がよく見え、また1階正面よりも音が良く聞こえるような気がします。今日は満員ではなく、8割の入りでしょうか。

1曲目の牧神の午後は、流石フランス人指揮者のフランスもの。ゆったりとしたテンポで、色気を感じさせながら緻密な静けさを感じる素晴らしい演奏。コンサートで迫力ではなくゆったりとした緻密さで聴かせるのはなかなかのもの。とりわけフルートのソロの豊かな響きが印象に残りました。

2曲目はドビュッシーのバレエ音楽「おもちゃ箱」という曲。解説によるとピアノ曲として1912年に完成したものの、第一次世界大戦の勃発によりドビュッシーによるオーケストレーションは最初のみで終わり、没後に友人が完成させた曲とのこと。おもちゃ箱の中で起こった人形の話。はじめて聴く曲でしたが、こちらも静寂のなかで音とフレーズが千変万化する、ドビュッシー独特の美学を感じる曲。意外と長い曲でした。この曲も1曲目同様静寂の表現が秀逸。オーケストラの安定感は素晴らしく、ソロも各楽器の音色の美しさを十分表現できており、聴き応えがありました。

休憩を挟んでお目当てのペトルーシュカ。ペトルーシュカはドビュッシーが生前こよなく愛した曲とのことです。休憩中にピアノが中央に移り、ステージを埋め尽くすように席が詰まります。

カンブルランのストラヴィンスキーは以前聴いた春の祭典、火の鳥が非常に良かったので、ペトルーシュカも悪かろうはずはありません。慣れ親しんだブーレーズの前衛的な無表情さとは異なり、オーケストラの色彩感を意識した多彩な響き。生だからこそ聴こえる圧倒的なダイナミクスと響きの情報量。ストラヴィンスキーの革新性を前衛という側面よりも、多彩なオーケストレーションの傑作として表現したというところでしょう。突き抜ける金管の響き、楔を打つように引き締まったティンパニなど打楽器陣、響きの美しさで抜群の存在感だった木管楽器と、オーケストラは完璧な仕上がり。フランスのオケのような色彩感が表現できていました。響きとリズムの革新性も十分表現できていて、途中はっとするようなテンポの変化があったり、カンブルランも万全のコントロールでした。静かに終わる最後は、響きの余韻を楽しんだ後万来の拍手。カンブルランもオケも出来に満足していたようでした。

久しぶりにコンサートを聴いて何となく気がはれました。父の好きな曲だっただけに、できれば生で聴かせてあげたかったですね。熱演の余韻と父の思い出を楽しめるいいコンサートでした。



帰りは軽く食事をする時の定番。アークヒルズ内のカレー屋さんへ。

食べログ:フィッシュ

食べ慣れるとちょっと癖になる独特のおいしさ。

IMG_2911.jpg

今日はビンのモルツから。スープはセルフサービスのトムヤムクン。

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マヨネーズサラダ。結構なヴォリューム。

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今日はオススメのポークカレー。スパイシーなルーに豚肉の甘みがでて、なかなかの味。これはいいアイデア。

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そして、こちらは新メニューのハヤシライス。こちらもこの店らしいすこしスパイシーな感じもありますが、穏やかな味で悪くありません。

コンサートのあと、さくっと食事ができる良いお店です。

私はしばらく実家泊まりだったので今日は久しぶりに自宅に戻って休みます。今週はすこしレビューをアップしたいと思いますのでよろしくお願いします。

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tag : サントリーホール ドビュッシー ストラヴィンスキー

ブレンデルのアダージョXVII:9

父が亡くなって、葬儀の手配やら手続きやらで忙しい毎日を送ってきました。母も体調を崩していたため、そちらも心配。しばらく音楽を聴く心境にもならず、ブログを更新しようという気力もちょっとなくなっていました。今週水曜にようやく葬儀も終わり、まだまだいろいろ手続きはあるものの、すこしづつ日常生活にもどりつつあります。仕事にも出てみて、忙しくしているほうが気がまぎれるように感じます。そろそろブログも少しづつ書いてみようかという心境になりました。

今日は以前に一度取りあげたアルバムですが、ピアノの澄み切った美しい響きが聴いてみたくなり取りあげました。

Brendel32.jpg
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アルフレート・ブレンデル(Alfred Brendel)のピアノでハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:34、XVI:32、XVI:42)と、ファンタジア(XVII:4)、アダージョ(XVII:9)の5曲を収めたアルバム。収録は1984年3月4日から10日にかけてロンドンのヘンリーウッド・ホールでのセッション録音。レーベルはもちろん蘭PHILIPS。

以前取りあげた記事はこちら。

2010/09/01 : ハイドン–ピアノソナタ : 絶品、ブレンデルのピアノソナタ

今日はこの中から、アダージョのみ取りあげます。以前の記事では「自身の葬儀で流してほしいくらいの音楽の結晶のような作品」とコメントしましたが、私はなぜかこの曲のブレンデルの演奏に非常に心惹かれます。ホールに響き渡るグランドピアノの美しい響きが鮮明に録られた録音も絶品。

Hob.XVII:9 / Adagio [F] (before 1792)
5分少々の短い曲ですが、大男のブレンデルが一音一音慈しむように弾く素朴なメロディーがキラ星のごとく輝きます。まさに音楽の結晶。音数は少ないのですが、まさに一音一音が絶妙にコントロールされ、静寂の中に音が置かれていく感じ。グランドピアノの最も美しい響きがヘンリーウッド・ホールに満ちていきます。聴いていくうちに心が天に昇っていくような錯覚に襲われます。ハイドンの音楽の中でも最も純度が高い音楽。空高く昇って成層圏に達した星空寸前の濃紺の空の色のような感じ。ブレンデルがピアノの響きの美しさの極限に挑んだ入魂の演奏でしょう。

今となってはハイドンが何を表現したくてこの曲を書いたかはわかりませんが、私はこの澄み切った心境を表すような小品を時折取り出して聴いています。技巧とも表現意欲とも異なる大きな存在感を感じる素晴らしい曲だと思います。やはり自分が亡くなった時にはこの曲をかけてほしいという想いを新たにしました。



親はかけがえのないものと今更ながら思い知らされています。この10年くらいは定期的に自宅にいってずいぶん接点はもってきたほうだと思いましたが、まだまだ本人から聞きたいこともありました。もうすこしのんびりさせてあげたかったです。時間をかけて気持ちを整理していきたいと思います。

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tag : アダージョXVII:9

父、逝く

今週の木曜に肺炎で入院した父が、今朝3時過ぎに、旅立ってしまいました。84歳でした。
プラモデルや模型、音楽、オーディオ、建築など楽しい事をたくさん教えてくれた父でした。
高齢の体に持病のパーキンソン病も少しづつ進んで少々不自由ではありましたが、つい先日まで庭いじりをできるほど体調が良かったのでショックも大きいです。風邪をこじらせ本当にあっという間の事でした。

葬儀の手配等で早くもてんてこ舞い。しばらくブログの更新はお休みさせていただきます事をお許しください。

(追記)父が楽しみにしていた庭の木瓜(ぼけ)の花が満開になりました。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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