H. R. A. Award 2013

昨年思いついたように突然はじめたこの賞。今年1年にレビューして毎月のベスト盤を選ぶHaydn Disk of the Monthの中から選りすぐりのアルバムを選びます。まさに1年の総決算に相応しいアルバム。本来は何か贈るべきなんでしょうが、そこは勝手表彰ゆえ、ハイドンばかり聴いている、ごくごくニッチなマニアにとって掛け替えのないアルバムであるという名誉が与えられます。

やはり某誌にならって部門別表彰です。

【交響曲部門】
やはり、このアルバムを選ばざるを得ないでしょう。

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Haydn Disk of the Month - September 2013
2013/09/15 : ハイドン–交響曲 : ヴェーグ/カメラータ・アカデミカのブダペストライヴ

シャーンドル・ヴェーグが手兵カメラータ・アカデミカを引き連れブダペストに帰郷公演を行った1995年のライヴ。極度の興奮のなか、演奏者と観客が一体となった千載一遇の瞬間を収めたライヴ。素晴しい録音によって、ヴェーグ渾身の太鼓連打が鮮明に録られ、家の中がまさにコンサート会場になったよう。ヴェーグのハイドンの録音でもダントツの素晴らしさ、というより太鼓連打のベスト盤といえる素晴らしさです。アルバムも丁寧なつくりで、アルバム全体からヴェーグへのリスペクトが立ちのぼっています。今年聴いたハイドンの交響曲で最も心を打たれた一枚。家宝です。

【管弦楽・協奏曲部門】

いや〜、迷いました。今年聴いた中では、ポール・フリーマンのピアノ協奏曲、ダヴィド・ゲリンガスのチェロ協奏曲、そして今月選んだエアリング・ブロンダル・ベンクトソンのチェロ協奏曲と、マイナーながら素晴しい協奏曲のアルバムが目白押しでしたが、、、

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Haydn Disk of the Month - January 2013
2013/01/20 : ハイドン–協奏曲 : 超名演盤発見! マルク・デストリュベ/パシフィック・バロック管弦楽団のヴァイオリン協奏曲集

やはり、とどめはこれでしょう。昨年カルミニョーラのヴァイオリン協奏曲を選んだので、またヴァイオリン協奏曲と思われるでしょうが、良いものは良いのです。デストリュべのこの演奏で聴くハイドンのヴァイオリン協奏曲は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲以上の素晴しい美しい響き。カナダで自身が率いるオケとの録音ですが、本場ヨーロッパの演奏よりもハイドンの時代を感じさせ、素晴しい覇気と素晴しい色彩感に目もくらむほど。色彩感に溢れたハイドンのヴァイオリン協奏曲を是非聴いてみてください。

【室内楽部門】

こちらも迷いました。ハイドン・トータルのクァルテット・アルモニコにワリド・アクルも良かったんですが、、、

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Haydn Disk of the Month - January 2013
2013/01/27 : ハイドン–ピアノソナタ : デレク・アドラムのクラヴィコードによるソナタ集

このアルバムの素晴しさは多くの人に聴いていただく価値があります。ハイドンの時代はクラヴィコードからフォルテピアノまで鍵盤楽器がめまぐるしく進化していた時代。現代のピアノで聴くハイドンのクラヴィーアソナタもいいものですが、蚊の鳴くような小さな音ながら、クラヴィコードで奏でられるハイドンの素晴しさにはじめて出会ったアルバム。デレク・アドラムは楽器製作者でもあり、楽器の響きを知り尽くした人にしか演奏できない、極めてデリケートな演奏。このアルバムを聴いた時には、また一つハイドンの新たな魅力を発見したと感激しきり。クラヴィコードに対する先入観を取り去って、虚心坦懐に聴くと新たな世界が見えてきます。私の楽器に対する考えを大きく転換させた一枚です。



今年はこの3枚を表彰することといたします。たった今紅白歌合戦が終わり、ゆく年来る年の除夜の鐘がゴ〜ンと鳴りました。今年もあと数分。皆さま良いお正月を!

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Haydn Disk of the Month - Decmber 2013

毎年ですが、気づいてみれば大晦日。慌ただしい毎日を一日一日過ごしているうちに一年も終わります。今年は日の並びがよく、丸一週間お休みですので、9連休。年末は大掃除などをしながら、所有盤リストのメンテナンスもすこし進んで、ピアノトリオなども、主要な団体はメンバーを追記しました。久しぶりに取り出すアルバムをいろいろ聴いて楽しんでいます。やはり時間に余裕があるのはいいですね。

さて、12月に聴いたアルバムからベスト盤を選ぶ当ブログ恒例の企画、今月も素晴しいアルバムが目白押しでした。なんとなくこの表彰の意義をおさらいしておくべきかと思い、創設時の記事のリンクを置いておきましょう。

2010/09/30 : Haydn Disk of the Month : 創設! Haydn Disk of the Month

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2013/12/21 : ハイドン–協奏曲 : エアリング・ブロンダル・ベンクトソンのチェロ協奏曲集

おそらく日本で知っている方は少ないのではないかと思いますが、エアリング・ブロンダル・ベンクトソンといチェリストの渾身の名演。いろいろなチェリストのハイドンのコンチェルトを聴いていますが、ベンクトソンのチェロは静かな魂の叫びのような素晴しさ。これ以上味わい深いチェロはそう聴けるものではありません。イリア・ストゥペル指揮のポーランドのアルトゥール・ルービンシュタイン・フィルハーモニー管弦楽団も小細工なしの堂々とした正統派の演奏。ポーランドもののハイドンの素晴らしさが良く出ています。演奏スタイルはオーソドックスなものですが、流行を超えた説得力があります。今月最も心を打たれた演奏です。今年の6月ベンクトソンは亡くなられたとのこと。ご冥福をお祈りします。

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2013/12/30 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ダリア・グロウホヴァのハイドンのピアノソナタ集新盤

そして、昨日取りあげたばかりのグロウホヴァのピアノソナタ集。グロウホヴァのハイドンは今月2枚取りあげたことになりますが、おすすめはこちらの2枚目。短調の印象的な曲を集めて、グロウホヴァらしく、リズムよりもメロディーの重なりをしなやかに描く名演奏。ハイドンのソナタの演奏の新境地と言っていいでしょう。カッチリとかガッチリという印象はなく、テンポをかなり動かして溢れんばかりに詩情を表現。この若さでこの音楽性は見事と言う他ありません。このアルバムのラーナーノーツでは早くも3枚目のアルバムに言及しているところを見ると、ハイドンは彼女のお気に入りなんでしょう。将来が楽しみなピアニストです。



この他、今月高評価だったアルバムをリストアップしておきましょう。ピアノトリオの3組は何れも素晴しい演奏。中でもグリフォン三重奏団は、最後まで表彰の候補として迷いました。ヴァン・スヴィーテン三重奏団は、取りあげたアルバムのメンバーでの演奏の出来が素晴しいのを再発見。そしてハイドン・トリオ・アイゼンシュタットのピアノトリオ全集はすでに決定盤として評価されているでしょうから選外としました。意外に良かったのがパユのスケルツァンド集。パユの素晴しいキレ味をこちらも再認識。流石に人気者だけあるとあらためて納得した次第。最後のファイの軍隊はもう当ブログで表彰する必要はないでしょう。ファイならではの弾ける軍隊と、意外に99番が素晴しい出来でした。

2013/12/29 : ハイドン–室内楽曲 : ヴァン・スヴィーテン三重奏団のピアノ三重奏曲集
2013/12/28 : ハイドン–室内楽曲 : ハイドン・トリオ・アイゼンシュタットの三重奏曲集
2013/12/24 : ハイドン–室内楽曲 : グリフォン三重奏団のピアノトリオ集
2013/12/23 : ハイドン–オペラ : 【新着】リサ・ラーションのアリア集
2013/12/13 : ハイドン–協奏曲 : シェレンベルガー/パユのスケルツァンド集
2013/12/01 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの99番,軍隊

今月も素晴しい演奏との出会いに感謝。そしてニッチな当ブログを愛読いただく皆様にも感謝。来年も皆様にとって良い一年でありますように!



2013年12月のデータ(2013年12月31日)
登録曲数:1,321曲(前月比+8曲)登録演奏数:7,551(前月比+132演奏)

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【新着】ダリア・グロウホヴァのハイドンのピアノソナタ集新盤(ハイドン)

先日取りあげたアルバムがとても良かったダリア・グロウホヴァですが、ハイドンのソナタ集の2枚目が届きましたので早速レビュー。

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ダリア・グロウホヴァ(Daria Gloukhova)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:44、XVI:47、XVI:20、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2012年7月、1枚目と同じモスクワ議会議事堂のラジオ放送収録第1スタジオでのセッション録音。レーベルは米CENTAUR。

2013/12/02 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ダリア・グロウホヴァのピアノソナタ集

前に取りあげたアルバムもなんだかインパクトのあるジャケットでしたが、こちらも負けず劣らず。前のアルバムが中途半端にツッパっていたのが、今度はだいぶアーティスティックになってきました。グロウホヴァの情報は前記事の方をご覧ください。

グロウホヴァのピアノは、ハイドンなのにまるでショパンを弾くような詩的なもの。さらりと弾き流すようなスタイルから詩情が溢れる演奏。前アルバムが2011年12月の録音だったので、1年経たずに次のアルバムを録音したことになります。

ジャケットには"ESSENTIAL HAYDN"と何やら気になるタイトルがつけられています。「ハイドンの真髄」とでも訳せばいいのでしょうか。ライナーノーツに書かれたグロウホヴァの解説によれば、このアルバムでは第1集とは全く異なるハイドンの世界を描くことを意図しており、短調で書かれたメロディーこそがハイドンの真髄であるというようなことが書かれています。このアルバムには2曲の短調作品の他、へ長調の2曲も中間楽章に印象的な短調の曲が置かれていて、その表現の深さがポイントのようです。若い奏者ながらこうしたアルバムのコンセプトはよく考えられていますね。

果たして、意図通り短調のソナタの深遠な世界が描かれるでしょうか。

Hob.XVI:44 / Piano Sonata No.32 [g] (c.1771)
シュトルム・ウント・ドラング期に作曲された2楽章とも短調の曲。この時期のハイドン独特の憂いに満ちた曲想の名曲。グロウホヴァのしなやかなタッチが活きる曲でしょう。冒頭から力をぬいた独特の柔らかいタッチで、テンポ大胆に揺らしながらいきなり濃い詩情を聴かせます。所々でクッキリしたアクセントを効かせながらも基本的にしっとりと濡れたような表情で音楽を創っていきます。
続く2楽章も切々とメランコリックなメロディーを刻んでいきます。あえて曲想の変わる部分の区切りをぼやかし、曲の構造ではなく、しなやかな変化を聴かせるあたりがグロウホヴァ流。ほのかに明るさを感じさせる部分へのじわりとした変化が深いですね。

Hob.XVI:47 / Piano Sonata No.57 [F] (c.1765)
こちらはシュトルム・ウント・ドラング期直前の作。この曲にはホ短調版(XVI:47bis)もあり、最近の研究ではホ短調版がオリジナルとされているようです。1楽章は非常に穏やかに音階が繰り返されながら曲が進みます。
やはりこの曲は2楽章の短調の美しいフレーズが聴き所と、そう言われてきくと、まさにその通り。シュトルム・ウント・ドラング期の深い深い世界を予感させる、素朴ながら陰りのあるフレーズが重なり、えも言われぬ詩情が浮かび上がります。表現の幅を広げるべく、左手のタッチがめずらしく強靭に変化しますが、すぐに鎮まり興奮の余韻を楽しみます。
フィナーレは対比を鮮明につけるように明るく快活。グロウホヴァも弾むのを楽しむように無邪気に鍵盤上を跳ねているよう。2楽章のきらめくような美しさを引き立てる素晴しい構成が鮮明に描かれました。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
ふたたびシュトルム・ウント・ドラング期の、ご存知名曲。私が偏愛する曲であります。この曲はもともと2楽章が聴き所なんですが、言われてみれば1楽章は短調の入りでした。この曲はグロウホヴァの特徴が良く出て、かなりテンポを動かして、自在な演奏。テンポを急に上げたり、下げたりしながら曲の面白さを引き出そうという意図でしょう。淡々と描く名演奏に慣れているからか、最初は違和感を感じましたが、聴き進むうちにグロウホヴァの意図がなじんで、これも悪くないという印象になりました。
続く2楽章は1楽章、穏やかな心境でテンポを揺らしながら、美しいフレーズを奏でていきます。グロウホヴァの手にかかるとフレーズが生き物のように感じられ、しなやかに踊ります。ほどほどの力で音符に潜む曲想を浮かび上がらせながら、独特の詩情を残していきます。
フィナーレは短調から入ります。短調の曲の2楽章にほんのり明るさを感じさせる曲を挟んでいるわけですね。かなり速めのテンポをとりますが、程よくテンポを落とす場面を挟んで、構成感をキチンと保っているのは流石。最後は静かに沈みます。

Hob.XVI:23 / Piano Sonata No.38 [F] (1773)
シュトルム・ウント・ドラング期直後の明解な構成が特徴の曲。1楽章はカッチリ明解な曲調に変わり、暗い時代から時代が変わったような新鮮さを感じさせます。グロウホヴァはここでも緩急自在のスタンスで、曲を自分のペースにしっかり据えます。
短調のアダージョは、これまでの陰りは消え、華やかさを感じさせる短調に変わります。一音一音が磨かれ、まさに宝石のよう。グロウホヴァ流にテンポが変化し、可憐とも言えるような表情が色濃くなってきます。かなりの流麗な展開に、これまで聴いた他の演奏を聴くと、固く聴こえそう。ここでも表情の微妙な変化の移り変わりのきめ細かい綾の美しさが冴え渡ります。明るく明解な1楽章の入りから一転、美しさを極めたアダージョが曲を引き締めます。
この曲でもフィナーレは速めで、千変万化するタッチとテンポの複雑な変化を楽しめと言っているよう。力感のコントロールが秀逸で、特に力を抜く表現がアーティスティックなところ。

ダリア・グロウホヴァのハイドンのソナタ集の2枚目は、短調の美しい曲を集めて、まさにグロウホヴァのしなやかに変化するタッチの面白さと、詩情の濃さを見せつけられた感じ。アルバムの企画意図も冴え、演奏もこれまでのハイドンのソナタの演奏とはひと味違うもの。この若さでこの音楽性は流石です。円熟すればハスキルのような神がかった存在になるかもしれませんね。聴き始めは違和感もちょっとありましたが、聴き進むうちに、グロウホヴァのしなやかなハイドンも気に入りました。評価は全曲[+++++]とします。

ピアノソナタ好きな皆さん、一聴あれ。

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ヴァン・スヴィーテン三重奏団のピアノ三重奏曲集(ハイドン)

ピアノトリオがつづきます。実は訳あって(笑)ピアノトリオのアルバムをいろいろとっかえひっかえ聴き比べて整理しなおしています。

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HMV ONLINEicon / amazon

ヴァン・スヴィーテン三重奏団(Van Swieten Trio)の演奏による、ハイドンのピアノ三重奏曲全集。10枚のCDに41曲が収められています。今日取り上げる曲の収録は2004年12月7日、8日、オランダ、ロッテルダム近郊のスキーダム(Schiedam)のウエストフェスト教会(Westvest Church)でのセッション録音。レーベルはなぜかハイドンのマイナー曲の録音に執念を燃やす、廉価盤の雄、蘭BRILLIANT CLASSICS。

実はこのアルバム、かなり前から手元にあってたまに聴いていたのですが、所有盤リストへ登録するのを失念しておりました。最近グリフォン三重奏団のピアノトリオを聴いてから、手元のアルバムなどいろいろ聴き直していて、ようやくこのアルバムが未登録だと気づいた次第。

演奏者はヴァン・スヴィーテン三重奏団という古楽器のトリオですが、この全集だけでもフォルテピアノ以外の奏者は何人か変わっています。今回この全集もいろいろ聴き直してみましたが、今日取り上げるCD3がとりわけ出来がいいですね。ということでCD3をピックアップした次第。CD3(CD9も)の演奏者は下記の通り。

フォルテピアノ:バート・ファン・オールト(Bart van Oort)
ヴァイオリン:フランク・ポルマン(Franc Polman)
チェロ:ヨブ・テル・ハール(Job ter Haar)

バート・ファン・オールトは1959年オランダ、ユトレヒト生まれのフォルテピアノ奏者。王立ハーグ音楽院で最初はピアノ、スタンリー・ホグランドにフォルテピアノを学びました。1986年、ベルギーのブリュージュで開催されたモーツアルトフォルテピアノコンクールで観客特別賞を受賞。その後渡米し、コーネル大学でマルコム・ビルソンに師事し、93年、古楽器演奏の音楽芸術博士号を取得したとのこと。その後、国際的に活躍するようになり、最近ではハーグ音楽院、アムステルダム音楽院で古楽器演奏などを教えています。

ヴァイオリンのフランク・ポルマンはアムステルダムのスェーリンク音楽院で学び、ヨーロッパの古楽器オケのコンサートマスターなどで活躍している人。かつてコンバッティメント・コンソート・アムステルダムなどを率いていたそう。

チェロのヨブ・テル・ハールも王立ハーグ音楽院でアンナー・ビルスマらに学び古楽器オケで活躍している人。

この全集の演奏はどれもそこそこ良いのですが、CD3は冒頭から素晴しいキレ。メンバー的には他の巻の方が格上なんでしょうが、っこのメンバーによる演奏が一際光っています。

Hob.XV:12 / Piano Trio (Nr.25/op.57-2) [e] (1788)
えぐるように斬り込んでくるヴァイオリン。冒頭から3人ともハイテンション。古楽器それぞれから迸る生気。リズムが弾み火を噴くような掛け合いと静寂が交互にやってきます。ヴァイオリンのフランク・ポルマンの鋭い切れ込みに、オールトが応じています。録音は教会の残響を活かしながらも鮮明さは十分。
アンダンテに入ると、古楽器特有の繊細な音色を活かしたゆったりと雅な展開。いい具合に力が抜けて、音楽が色濃く浮かび上がってきます。特にオールトのフォルテピアノの抑えた表情が曲の美しさを際立たせています。
フィナーレはタッチの軽さを存分に活かした入りから、徐々に力が満ちて、素晴しい迫力。フォルテピアノがびりつく寸前まで鳴らしきり、アンサンブルは再び火を吹きます。終盤印象的なデフォルメが決まって素晴しい盛り上がり。

Hob.XV:36 / Piano Trio (Nr.12) [E flat] (before 1760)
初期の典雅なトリオ。あっさりとした構成の曲をさっぱりと仕上げていきます。小刻みなメロディーがこだまするような不思議な曲想の曲。ここでもヴァイオリンの存在感ある小気味好い演奏が光ります。
2楽章はめずらしくポロネーズ。メロディー構成はシンプルながら、メロディーラインの面白さは流石ハイドン。そしてフィナーレも後年の精緻を極めた曲とは異なり、かなりシンプルな構成。中間部でチェロが印象的なメロディーを奏で、それにヴァイオリンとフォルテピアノが伴奏するような部分がありますが、非常にセンスの良い演奏。このシンプルな曲を古楽器の美しい音色と、さらっとしたスタイルでまとめ上げる手腕はなかなか。

Hob.XV:38 / Piano Trio (Nr.13) [B flat] (before 1760)
もう一曲初期の曲。前曲同様、このシンプルな曲のシィンプルさを際立たせるような軽いタッチの演奏。ヴァイオリンの美音、チェロの刻む正確なリズム、そしてフォルテピアノの羽毛のような軽さのタッチが醸し出す絶妙の雰囲気が聴き所でしょう。

Hob.XV:11 / Piano Trio (Nr.24/op.57-1) [E flat] (1788)
再び円熟した筆致の曲に。1788年とハイドンがロンドンに旅立つ2年前の頃の作曲。初期の曲と比べると曲は比較にならないくらい豊穣になり、各楽器が自在にメロディーを奏でながら複雑に絡み合い素晴しい構成感を感じさせるもの。この曲は2楽章構成。普段あまり聴かない曲ですが、聴き進むうちに美しいメロディの連続に引き込まれていきます。ヴァン・スヴィーテン三重奏団の演奏は優雅にして繊細。この曲では弾むような推進力が素晴しい。2楽章もに入ってもフォルテピアノのキレと、絶妙なタッチは健在。この余裕ある表情が音楽を活き活きとさせているのでしょう。

ヴァン・スヴィーテン三重奏団によるハイドンのピアノ三重奏曲全集からの1枚。メンバー構成によって音楽の造りがかわるのは当たり前でしょうが、このメンバーによるハイドンのピアノトリオは至福レベルの名演奏。古楽器演奏のピアノトリオではこれぞという1枚でしょう。メンバーが変わるとその部分が変わるのではなく、音楽のノリや造りまで変わってしまうのですね。興取りあげた4曲はもちろん全曲[+++++]とします。

さてさて、明日は晦日。そろそろ今月の1枚、そして今年の1枚を考えませんと、、、

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ハイドン・トリオ・アイゼンシュタットの三重奏曲集

先日取りあげたグリフォン三重奏団の演奏を聴いてから、ピアノ三重奏曲をいろいろ聴き比べています。今日は名盤を。

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ハイドン・トリオ・アイゼンシュタット(Haydn Trio Eisenstadt)の演奏によるハイドンのピアノ三重奏曲全集。8枚組のCDにハイドンのピアノ三重奏曲が39曲収録されています。収録は1998年から2002年にかけて、オーストリア、アイゼンシュタットのエステルハージ宮殿、ハイドンザールでのセッション録音。レーベルはウィーンのPHOENIX Edition。

ハイドン・トリオ・アイゼンシュタットは、ハイドンファンの皆さんならご存知の、Brilliantからリリースされている全18枚にも及ぶスコットランド歌曲全集の伴奏を担当しているトリオ。ライナーノーツによると、設立は1992年。メンバーはウィーン音楽大学の室内楽コースの出身者で、1995年からは、このアルバムの録音会場であり、もちろんハイドンが過ごしたエステルハージ宮殿ハイドンザールでの「ハイドン・フェスティバル・アイゼンシュタット」でハイドンの39曲に及ぶピアノ三重奏曲の全曲を演奏するコンサートを開催しました。2003年から2008年にかけて前出のスコットランド歌曲集を録音し、まさにハイドンの室内楽の演奏をリードする存在となりました。記録によると日本にも来ているようですね。

ピアノ:ハラルド・コシーク(Harald Kosik)
ヴァイオリン:ヴェレナ・シュトルツ(Verena Stourzh)
チェロ:ハンネス・グラッドウォール(Hannes Gradwohl)

ウェブサイトを見ると、既にハイドン・トリオ・アイゼンシュタットのサイトはなく、ヴァイオリンが入れ替わったメンバーによる「ハイドン・ピアノ・トリオ」という新たなトリオが結成されていました。この辺の事情はあまりよくわかりません。

このアルバムはハイドンのピアノ三重奏曲全集の決定盤でしょう。ながらくボザール・トリオの演奏でハイドンのピアノトリオを楽しんできましたが、このアルバムを聴いて、ハイドンザールでの記念碑的録音と言うだけではなく、オーソドックスでかつ生気に富んだ演奏から、ハイドンが晩年に手塩にかけたピアノトリオの素晴しい音楽が溢れ出してきます。

今日は、CD1から何曲か取りあげます。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
キレ味の良い曲想から多くのトリオが録音している名曲。ハイドン・ザールの豊かな残響に、ピアノ、ヴァイオリン、チェロがクッキリ浮かび上がる録音。残響は多めななのに音像はリアルで十分鮮明。ボザールのPHILIPSの名録音よりもPHILIPSらしい非常に自然な録音です。演奏はハイドンの曲に仕込まれた自然な感興を紡ぎ出していくような穏やかななのに生気に満ちたスリリングなもの。音量を上げて聴くと、まさに自宅がハイドン・ザールになったと錯覚するようなリアルな響きに聴き惚れます。これはピアノのハラルド・コシークのキレの良いタッチから生まれる磨き抜かれたピアノ美音によるもの。上質な生演奏を眼前で聴いているよう。曲想の変化と各楽器のフレーズのやり取りが手に取るようにわかり、まさに室内楽を聴く悦びにどっぷりと浸かります。火を吹くようなキレ味ではありませんが、ほどよいキレとメロディの掛け合いは十分スリリング。クレーメルとアルゲリッチに鎮痛剤をのませて、穏やかにしたよう(笑)
アンダンテは穏やかさが増しますが、途中からピアノのアクセントがかなりハッキリと決まりはじめ、かなりの迫力。漂うような美音と、攻め込む迫力が交互に訪れます。そしてフィナーレはこのトリオのキレを存分に聴かせます。ピアノの快速音階はビロードのような滑らかさ。ライヴのような緊張感も漂う演奏に、こちらも手に汗握ります。力みすぎない十分な迫力が心地よい盛り上がり。フィニッシュには爽快感も。

Hob.XV:19 / Piano Trio (Nr.33/op.70-2) [g] (before 1794)
先日、グリフォン三重奏団でもとりあげた短調の名曲。全曲とは異なり、キレではなく、しなやかなフレージングを求められる曲。やはりピアノのコシークの見事な演奏がベースとなり、ヴァイオリンとチェロが穏やかに重なっていきます。演奏は非常に一貫していて、むらはありません。上質な音楽が滔々と流れていきます。ヴァイオリンとチェロの息がピタリとあって、曲が進むにつれて、テンポが上がり、穏やかな曲が徐々に熱を帯て迫力を増してくるあたりのしなやかな変化が素晴しい。
アダージョは、ピアノの高音域の可憐なメロディーをベースにヴァイオリンとチェロが絡まります。ピアノの響きの美しさを最大限に活かした演奏。まさにピアノトリオならではの美しさ。そしてフィナーレもピアノの美音がハイドン・ザールに響き渡るようすが手に取るようにわかる素晴しい演奏。この余韻の美しさがこのアルバムの聴き所でもあります。ハイドン自身がこの余韻を楽しんだと思うと感慨一入です。

この全集、どの曲もむらなく素晴しい演奏ゆえ、何枚目から聴いても楽しめます。ハイドンとエステルハージという名を冠した団体だけに、ハイドンの曲の真髄を良く知っての演奏。ハイドンのピアノトリオはかなり技巧を要する曲ということで、コンサート等で聴くと、かなり力が入った演奏が多いですが、このアルバムでは、美しく良く響くホールで、適度な力感をコントロールして、ハイドンの書いた美しいメロディーと、機知に富んだ構成をキッチリ描き分け、ハイドンのピアノトリオ自体を存分に楽しめる名演奏です。もちろんこの2曲は[+++++]とします。

このアルバム自体はもともとCAPRICCIOからリリースされていたようですが、現在はPHOENIX Editionに代わり、しかも現役盤ではないようです。見かけたら即ゲット要です!

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クーベリック/バイエルン放送響の時計1970年10月ライヴ(ハイドン)

久々のライヴもの。

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ラファエル・クーベリック(Raphael Kubelik)指揮のバイエルン放送交響楽団(Bavarian Radio Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」、バルトークの管弦楽のための協奏曲の2曲を収めたアルバム。このアルバムに演奏年の表記はありませんが、クーベリックのディスコグラフィのサイトによると収録は1970年10月1日、2日のライヴとのこと。レーベルは米FIRST CLASSICS。

Rafael Kubelík - Discographie - Discography

クーベリックのハイドンはこれまでにも4度取りあげています。

2012/07/24 : ハイドン–交響曲 : クーベリック/バイエルン放送響の99番1982年9月7日ライヴ
2012/01/27 : ハイドン–声楽曲 : クーベリック/バイエルン放送響の「戦時のミサ」
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/05/24 : ハイドン–オラトリオ : クーベリックの天地創造

クーベリックの紹介は99番の記事をご覧ください。

クーベリックは、多くの録音を残す事になったバイエルン放送響の首席指揮者として、1961年から79年までその任にありましたので、今日取り上げる1970年の頃は、まさにオケを完全に掌握していた頃でしょう。以前取りあげた、同じ組み合わせの後年の99番のライブが素晴しかっただけに、ちょっと期待が高まります。クーベリックの穏やかながらバランスのよいコントロールで聴く時計は、どうでしょうか。

Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
年代なりの粗さはあるものの、比較的鮮明な録音。音の実体感、骨格がしっかり出ているので聴きやすい録音です。予想通り、クーベリックらしいオーソドックスな序奏。穏やかな表情ながらじわじわと盛り上がっていきます。まさに王道を行くような安定感。中盤からの畳み掛けるような曲想のところでも、まったく慌てず、徐々に徐々に手綱を締めて、じわりと盛り上がります。アポロン的均衡が見事に保たれた、均整のとれた1楽章。
時計のリズムを刻むアンダンテは、まさにゆったりと時を刻むオーソドックスな時計。最近の演奏の多くがかなり速いテンポでキレよく進めると比べると時代を感じますが、このオーソドックスさを好む人も多いでしょう。やはりクライマックスに向け、じわりと盛り上げて行くクーベリックの穏やかな手腕が聴き所でしょう。
楽章の変わり目のテンポは超自然。最近の奇を衒った演奏を聴いているからこそ、この自然さが貴重です。メヌエットはわずかにレガートを効かせ、実に安定した演奏。教科書通りの誠実さ。まさに時計と言う曲の堅実さの真髄をつくような演奏。途中のフルートのソロの部分はフルートが浮かび上がるような不思議な浮遊感をうまく表現しています。ハイドンが書いたメロディーのオリジナルなイメージはこうだったのではないかとも思わせる説得力。
フィナーレに入っても気負う事なく、実に自然な演奏。手綱を強く引く事はなく、かわらず穏やか。迫力で聴かせると言う演奏ではなく、典雅な進行の面白さを聴けと言われているよう。確かにハイドンの書いた曲の艶やかな魅力がこの曲にはあり、明確にそこに表現のポイントを置いているよう。もちろんクライマックスでかなりの盛り上がりは聴かせますが、まったく破綻する事はなく、優雅な余韻を残します。ライヴとのことですが、拍手はカットされているようですね。

このあとのバルトークは上記のディスコグラフィが掲載されたサイトによると1968年頃のライヴのようですが、バルトークとなるとクーベリックもかなり力が入り、オケも髪を振り乱したようなかなりの迫力。前曲のバランスのとれたハイドンは、やはりハイドンに対するクーベリックの穏やかなイメージが解釈の根底にあるのでしょうね。

以前取りあげた後年の99番の覇気にくらべると、やはり穏やかさが目立ち、もう一超え踏み込んでほしいとも思わせる演奏でしたが、これはこれで名演だと思います。こうしたハイドンを振るひとはもうあまりいなくなっていますね。ハイドンの時計と言う曲の原風景のようなクーベリックのコントロールでした。評価は[++++]としておきましょう。

気づいてみれば、もうすぐ来年。今年もバタバタしているうちに暮れていきますね。

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デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)

なんだかここ数年は、日本でのトレンドに乗って年末は第九を聴きに行くのが習わしとなっております。昨夜は初台の東京オペラシティに母親、嫁さんと3人で出かけました。

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ここ数年、第九はカンブルラン/読響、ホグウッド/N響、スクロヴァチェフスキ/N響となかなか聴き応えのあるコンサートに出かけています。今年読響の第九の指揮は、なんと、デニス・ラッセル・デイヴィス! 突然彗星のごとくハイドンの交響曲全集をリリースしたので、ハイドンマニアの方は一目置く指揮者かもしれません。ただし、わたしはこの全集はあまりお薦めしていないことからもわかるとおり、今ひとつ没入できない指揮者という印象でした。食わず嫌いは良くないということと、母親を連れて行くのにちょうど良い席が空いていたということで、急遽聴きに行くことにしました。

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第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ - 読売日本交響楽団

オペラシティはクリスマスのイルミネーションで華やか。なんとなく世の中クリスマス気分ということで、開場前からいい気分。18:00の開場と同時にホワイエに入り、まずは腹ごしらえ。東京オペラシティのサンドウィッチは美味しいので、赤ワインとともに楽しみます。この開演前のちょっとざわついた雰囲気もコンサートの楽しみの一つ。

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母上君も赤ワインをいただきご機嫌です(笑)
→ 母親の友人諸氏の皆様 うちの母も元気です!

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今日は東京オペラシティではじめて2階席です。右側ステージ横でステージが俯瞰できるなかなか良い席。2階席は2列しかないので見通しも十分です。東京オペラシティは1階平土間の勾配が緩いので、なかなかステージが見えませんが、サントリーホール同様、2階席からは逆に見晴らしも良く、なかなか良い席であるのがわかりました。何よりいいのが2階にもビュッフェがあり、こちらのほうがゆっくりできること。これは今回新発見。

プログラムは上のリンク先を参照いただきたいのですが、第九の前に読響メンバーによる室内楽が演奏されました。ヴィオラ四重奏とチェロ四重奏。とくにヴィオラ四重奏は普段脇役のヴィオラの趣深い音色が味わえる素晴しい演奏でした。これはなかなか良い試みですね。

短い休憩を挟んで第九に入ります。

東京オペラシティは普段良く行くサントリーホールよりも体積がだいぶ小さいのでオケが良く響き渡り、迫力もアップ。

デニス・ラッセル・デイヴィスはジャケット写真などの印象では、強面ですが、意外に背が低く、動きもかなり細かいためなんとなく想像したのと異なる印象でした。

1楽章はちょっと力が入り過ぎて、かなり表情が固い印象。リズムをクッキリ描いて行くスタイルはハイドンの交響曲の録音からも想像できましたが、リズムやメロディーを受け継ぐ部分のつながりがぎこちない感じ。ちょっと単調なところがあり、かなり力で押し通すような1楽章。ただしティンパニや低音弦をかなり鳴らして迫力は尋常ではありません。ちょっとこの先どうなるのだろうと不安な印象もありました。
印象が一変したのがつづくスケルツォ。いままでのぎこちなさがウソのように、スケルツォはタイトに引き締まりまくった素晴しい演奏。デイヴィスの力の入ったコントロールがこんどは良い方向に作用して、未曾有の迫力。楽章間でこれほど印象の変わる第九ははじめてです。
アダージョは速めにくるだろうと想像していましたが、これまた予想とかなり異なり、歌う歌う。現代風のタイトなアダージョではなく、美しいメロディーを弦楽器が雄弁に表現。ここにきてデイヴィスの指揮もかなり柔らかくなり、各パートに的確に指示を出しながら音楽を紡いでゆきます。
圧巻は終楽章。これはかなり確信犯的演出です。入りは速目でタイトながら、歓喜の歌のフレーズがはじまった途端、白亜の大神殿が出現するように象徴的に巨大な構造物を表現するようにがっちりと構造を描いて行きます。この終楽章の象徴的にデフォルメした構造の表現こそ、現代音楽まで得意とするデイヴィスの描く第九の真髄だったと気づきます。今日のソロはオール日本人キャストでしたが、とくにバリトンの与那城敬さんは素晴しい声量で、ソロの入りの一瞬でホールの観客を釘付けにする素晴しく朗々とした歌唱でした。そしてコーラスは新国立劇場合唱団。ホールが狭いせいか、コーラスは怒濤の迫力。声が一つにそろって素晴しい精度。母親も仕切りにコーラスをほめていました。デイヴィスの指揮は終楽章に入ると自在さを増し、基本的に速めのテンポながら、時折現代音楽のような峻厳さを感じさせるほどテンポを落とす場面もあり、聴衆を引き込んでいきます。最後は爆風のような迫力でオケが爆発。開場もまさに割れんばかりの拍手で熱演に応えていました。今日もティンパニの岡田さんは見事。母親も「太鼓ぴったりだった」感心しきり。生のオーケストラの大迫力にはじめてふれて、痺れていました。

私もデイヴィスをちょっと見直しました。聴衆の鳴り止まない拍手に深く深く礼をする誠実な姿が印象的でした。第九の演奏としてはかなりユニークなものでしょうが、デイヴィスの狙いは良くわかりました。やはり現代音楽を理解する視点からみたベートーヴェンのあり方をよく考えての設計でしょう。なかなか楽しめました。なにより母親がいたく感激していたのが嬉しかったですね。

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ゆったりとコンサートを楽しんで、お客さんが引けたホワイエのクリスマスツリーをパチリ。良いコンサートでした。

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tag : 東京オペラシティ ベートーヴェン 第九 読売日響

グリフォン三重奏団のピアノトリオ集(ハイドン)

いやいや、素晴しいアルバムが続きます。

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グリフォン三重奏団(The Gryphon Trio)の演奏で、ハイドンのピアノ三重奏曲集(Hob.XV:27、XV:19、XV:25、XV:18)。収録は1996年6月、カナダ、モントリオール近郊の聖オーギュスタン・ミラベル教会(Église Saint-Augustin - Mirabel)でのセッション録音。レーベルはモントリオールのANALEKTA fleurs de lys。

このアルバムも湖国JHさんから、さりげなく送り込まれたもの。このところ借していただいているアルバムが尋常ではないものが多く、最初に音を出すときの緊張感ったらありません。ご多分に漏れず、このアルバムもCDプレイヤーにかけたとたん、瑞々しい響きに圧倒されました。

グリフォン三重奏団は1993年の設立。それまで一緒に演奏していたヴァイオリンのアナリー・パティパタナクーンとチェロのローマン・ボリスにピアニストのジェイミー・パーカーが加わり、トリオとなりました。トリオの名前となった「グリフォン」とは頭が鷲で体がライオンという架空の生き物。今年創立20周年のアニヴァーサリーということです。

ピアノ:ジェイミー・パーカー(Jamie Perker)
ヴァイオリン:アナリー・パティパタナクーン(Annalee Patipatanakoon)
チェロ:ローマン・ボリス(Roman Borys)

Gryphon Trio

オフィシャルサイトを見ると、現在もクラシック以外や現代音楽まで幅広く活躍しているようです。サイトのメンバーの写真を見ると、ジャケットの写真が若々しく見えます。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
いやいや冒頭から素晴しい透明感とバランスの良い美しい音色に耳を奪われます。ピアノのリズムのキレは抜群。アンサンブルの精度も文句なし。聴き慣れたこの名曲が見事に響きます。こうゆう普通の質の高い演奏は好きです。録音も超自然で適度な残響に適度なリアリティ。特にピアノの美しい余韻が秀逸。93年録音ですが、現在でも優秀録音と言える素晴しいもの。音量を上げて聴くと、まさに眼前にトリオが出現します。
つづくアンダンテに入ってもピアノの素晴しいプレゼンスは変わらず。ゆったりと刻まれる音楽に痺れます。ヴァイオリンもチェロも雄弁ではありませんが、アンサンブルの精度は高く微塵も乱れを感じさせる事はありません。まさに理想的な演奏とはこの事でしょう。
フィナーレの畳み掛けるような迫力も十分。やはりピアノが素晴しいキレ。ヴァイオリンとチェロもそれに応じて素晴しい盛り上がり。レベル高いです、このトリオ。ハイドンの名曲のまさに決定版的演奏。

Hob.XV:19 / Piano Trio (Nr.33/op.70-2) [g] (before 1794)
短調の名曲。前曲につづき完璧な入り。ピアノも弦も触ると切れそうなほどの鋭敏な感覚をもちながら、実に自然な音楽の流れ。キレよく自然であるという理想的な演奏。この曲でも素晴しい録音によって、眼前でトリオが弾いているような素晴しいリアリティ。良く聴くと、崩しているところもあり、しっかりとアクセントを刻み、時折静寂を印象づけ、3人のアンサンブルの面白さを極限まで引き出している事がわかります。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
これまた名曲、ジプシー・ロンド。すでにこのトリオの素晴しい演奏にノックアウト気味。クリスマスイブでちょっとモルトをたしなんでいるので、至極いい気分。爽やかな響きの1楽章ですが、すこしテンポをゆっくり気味にとり、しっとりとした味わいを感じさせます。ポコ・アダージョはゆったり奏でられるピアノの宝石箱のような音楽に酔います。ピアノにのって奏でられるヴァイオリンは派手さはないものの、誠実さに打たれるような演奏。そしてフィナーレのジプシー・ロンド意外と落ち着いたスタンスで、ジプシー風の音楽を楽しんでいるよう。趣向を凝らしたアゴーギクでスリリングさ満点。

Hob.XV:18 / Piano Trio (Nr.32/op.70-1) [A] (before 1794)
最後は穏やかな表情が印象的な曲をもってきました。選曲、曲順のセンスとも抜群。最後はピアノの落ち着いた曲運び、それにあわせるヴァイオリンとチェロの絶妙の呼吸が聴き所。時折訪れる静寂が沁みます。孤高の表情で弾き進め、こちらもそれにあわせて深くリラックス。消え入るような響きが印象的。
アンダンテはまさに孤高の境地。宝石のようなピアノの音階が訥々と語られるように進み、ヴァイオリンとチェロが寄り添うように哀しげな旋律を重ねていきます。表現がここまで深まろうとは。ゆったりと室内楽を聴く楽しみに溢れた曲。
フィナーレはさっと光が差したような変化。軽やかなメロディーに変わり、アンサンブルにピアノが加わることで響きの透明感が増しています。これだけの軽やかさをもたらすとはハイドンのマジックなのでしょうか。弦楽四重奏曲とは全く異なる室内楽の魅力を思い知らされます。この軽さ、尋常ではありません。見事。

まったくはじめて聴くトリオでしたが、その演奏のあまりの素晴しさに圧倒されっぱなしです。これは名盤ですね。正統的で、音楽を聴く楽しみ、室内楽を聴く楽しみが詰まった素晴しいアルバム。偶然クリスマス・イヴに聴く事となりましたが、この幸福感はそう得られるものではありません。多くの方に聴いていただきたい絶品のアルバムです。残念ながら現役盤ではなさそうですが、amazonではmp3が登録されていますので、音楽を楽しむ事はできそうです。もちろん評価は[+++++]。参りました。

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tag : ピアノ三重奏曲

【新着】リサ・ラーションのアリア集(ハイドン)

久しぶりの声楽曲。

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リサ・ラーション(Lisa Larsson)のソプラノ、ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド(Jan Willem de Vriend)指揮のコンバッティメント・コンソート・アムステルダム(Combattimento Consort Amsterdam)の演奏で、「レディー・ファースト」と名付けられたハイドンのオペラ・アリア集SACD。収録は2012年1月10日から11日、2012年8月24日から27日、アムステルダムのシンゲル教会(Singelkerk)でのセッション録音。レーベルは蘭CHALLENGE CLASSICS。

このアルバム、リリースされたばかりですが、amazonしか取扱いがありません。

リサ・ラーションははじめて聴く人。コープマンのバッハのカンタータ集などで歌っている人との事。1967年スウェーデンに生まれたソプラノ歌手。最初はフルーティストだったようですが、バーゼルで学び、1993年からチューリッヒ歌劇場のメンバーとなり、フランツ・ウエルザー=メスト、ニコラウス・アーノンクール、クリスト・フォン・ドホナーニなどと共演。スカラ座では1995年にムーティの魔笛でパパゲーナを歌うなど、以降ヨーロッパの歌劇場で活躍しています。

指揮者のヤン・ヴィレム・デ・フリエンドは1962年、オランダのライデン生まれの指揮者、ヴァイオリニスト。アムステルダム音楽院、ハーグ王立音楽院などで学び、1982年にこのアルバムのオケであるコンバッティメント・コンソート・アムステルダムを設立、17世紀から18世紀の音楽を中心に演奏し、多くの録音も残しています。アルバムへの記載はありませんが、古楽器オケのようですね。

Hob.XXIVa:10 / Scena di Berenice "Berenice, che fai" ベレニーチェのシェーナ「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」 [D-f] (1795)
この曲はハイドンが第2回のロンドン旅行で交響曲99番から104番を作曲していたころに作曲されたもの。当時のイタリアの名ソプラノ、ブリギッタ・ジョルジ・バンティのために書かれた曲。恋人の死を嘆き、霊があの世に旅立つ際、連れて行ってほしいと乞う場面を歌った劇的な内容。
最新の鮮明な録音。すこし狭い響きの少ない教会で、残響を活かして収録されている感じ。オケは古楽器らしい鋭い響き。かなりアクセントがハッキリ刻まれれた、劇的な曲調を踏まえた演奏。特に抑えた部分の繊細なコントロールが素晴しいですね。古楽器オケの演奏としてはかなり表情の濃いものですが、くどい感じはありません。ラーションのソプラノは可憐さを主体に、声量はそこそこながら、非常に艶やかで、語りと歌の表情の変化のコントロールが巧み。クライマックスに向けた盛り上げ方も見事。線は細いものの、その良さを感じさせる好きなタイプのソプラノ。かなりの実力派とみました。

Hob.XXVIII:12 / "Armida" 「アルミーダ」 (1783)
アルミーダの序曲。ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート各1、ホルン、バスーン、オーボエ各2と小編成による演奏。クリアな響きで、かなりリズムを強調した演奏。中間部の沈みこみも深く、劇的な演奏。古楽器ではフスの演奏が印象に残っていますが、響きの純度は近いものの、かなり劇性を強調しています。これはこれで悪くありません。

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」 (1791)
つづいては、ハイドン最後のオペラ、そしてエステルハージ家のため以外に書かれた唯一のオペラ「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」の2幕からの3曲。レチタティーヴォにつづいてしっとりと歌われるエウリディーチェのしっとり語るような魅力ある歌唱が聴き所。

Hob.XXVIb:2 / Cantata "Arianna a Naxos" 「ナクソスのアリアンナ」 [E flat] (c.1789)
当ブログでもかなりの演奏を取りあげている演奏。数えてみるとこれで13演奏目。通常ピアノ伴奏で歌われる事が多いですが、オケによる伴奏版。これまでではバルトリ/アーノンクール盤、オジェー/ホグウッド盤のみがオケによる伴奏を採用しています。語るように柔らかく寄り添うオケ。ラーションは感情を表に出すのではなく、淡々と美しい声で歌い上げていきます。途中からオケのキレが良くなり、緊迫感が増しますが、ラーションはしなやかな歌で諌める感じ。オケの表現の幅の広さと歌の美しさが聴き所でしょう。

Hob.XXVIII:9 / "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
つづいて歌劇「無人島」から序曲とアリア。序曲は、先程のアルミーダ同様、小編成オケのキレの良さ全開。このキレ、以前取りあげたヌリア・リアルの伴奏を担当したミッヒ・ガイックの振るオルフェオ・バロック管弦楽団に近いものがありますね。畳み掛けるように攻め込み、金管は炸裂、ハイドンの序曲のスペクタクルな音楽を聴き応え十分に演奏します。
アリアは第1部のシルビアのアリア「甘い錯乱のなかで」という曲。タイトル通り、実に甘い雰囲気の優雅な音楽。これまでの曲の中では一番ラーションの声質に合っています。美しいソプラノにうっとり。

Hob.XXVIII:5 / "L'infedeltà delusa" 「裏切られた誠実」 (1773)
サンドリーナのアリア、"E la pompa un grand'imbroglio"とありますが、神々しく祝祭的な序奏からはじまるカンタータの様な曲。自動翻訳にかけると「ポンプはまったくの詐欺」とのこと(笑)ラーションのいろいろなタイプの歌が楽しめると言う意味ではなかなか良い選曲。

Hob.XXIVb:3 / Aria di Nannina "Quando la rosa" for for Pasquale Anfossi's "La metilde ritrobata", Act 1 Scene 7 「薔薇に刺がなくなったら」アンフォッシの歌劇「メティルデの再会」への挿入曲 [G] (1779)
この曲、ライナーノーツのホーボーケン番号はXXXIVb:3ですが、曲名などからこれは誤りで、XXIVb:3でしょう。ハイドンが別の作曲家のオペラのために書いた挿入アリア。コケティッシュなラーションの魅力が際立ちます。(ハート)

Hob.XXVIII:5 / "L'infedeltà delusa" 「裏切られた誠実」 (1773)
最後は再び「裏切られた誠実」からヴェスピーナのアリア"Trinche vaine allegramente"。自動翻訳にかけても良くわかりません。最後は陽気に騒ぐ場面。まさにオペラの一場面のような臨場感です。

リサ・ラーションの歌うハイドンのオペラアリア集。ラーションは良く磨かれた非常に美しい声の持ち主。迫力はほどほどですが、艶やかな声質と高音の美しさはなかなか。好きなタイプの声です。ハイドンのオペラの名場面を、古楽器の表現力豊かなオケにあわせて華麗に歌い上げます。最新録音のSACDということで録音も万全。これまでヌリア・リアルの素晴しい歌曲集をおすすめしてきましたが、このアルバムも負けず劣らずです。このアルバムの魅力はヤン・ヴィレム・デ・フリエンド指揮のコンバッティメント・コンソート・アムステルダムの伴奏にもあり、まさに曲、歌、伴奏の三拍子そろった名盤でした。評価は全曲[+++++]とします。歌曲好きの皆さん、これは買いです!

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tag : ナクソスのアリアンナ 古楽器 オペラ SACD

エアリング・ブロンダル・ベンクトソンのチェロ協奏曲集(ハイドン)

年末になり、連日連夜の忘年会。ちょっと間が空いてしまいました。今日は珍しいデンマークもの(本当はポーランドものでしょう)。

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エアリング・ブロンダル・ベンクトソン(Erling Blöndal Bengtsson)のチェロ、イリア・ストゥペル(Ilya Stupel)指揮のアルトゥール・ルービンシュタイン・フィルハーモニー管弦楽団(Artur Rubinstein Philharmonic Orchestra)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲2番、1番、ボッケリーニのチェロ協奏曲の3曲を収めたアルバム。収録は1993年4月、ポーランド中部のウッチ(Łódź)のフィルハーモニー・ホールでのセッション録音。レーベルはデンマークのdanacord。

このアルバム、またしても湖国JHさんから貸していただいたもの。そこそこのコレクションである当ブログのハイドンコレクションにリストアップされていない名演奏が次々と送り込まれてきます(汗)

早速奏者の情報を調べてみます。

チェロのエアリング・ブロンダル・ベンクトソンは1932年、デンマークのコペンハーゲン生まれのチェリスト。なんと4歳の時に最初のコンサートを開いたとのこと。16歳からフィラデルフィア州のカーティス音楽院でグレゴール・ピアティゴルスキーにチェロを学びました。その後その助手となり、1950年からは彼自身のチェロの講座を開きました。1953年からはコペンハーゲンの王立デンマーク音楽アカデミーに移り、1980年からはケルン音楽大学の教授となりました。1990年からはアメリカに戻り、ミシガン大学音楽演劇舞踊学校で2006年の引退まで教えたとここと。今年2013年の6月に亡くなられたようです。今日取り上げるデンマークのdanacordから多くのアルバムがリリースされ、また2006年にはデビュー70周年を記念した「チェロと私」というDVDがリリースされているそうです。

指揮者のイリア・ストゥペルは1948年、リトアニアの首都ヴィリニュス生まれの指揮者。代々音楽家の家で、3歳からピアノを学びヴィリニュス音楽院に入学、神童と呼ばれたそう。1957年からはポーランドに移り、ポーランド国立放送交響楽団のボーダン・ヴォディチコ(Bohdan Wodiczko)のアシスタントとして働き、指揮者としての腕を磨きました。1968年からはスウェーデンに移り、以降スウェーデンに住んでいるとのこと。リトアニア、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、イタリアなど様々な国で経験を積みスウェーデンのマルメ(Malmö)の歌劇場の指揮者となりました。その間、スカンジナヴィア諸国などで活躍し、1990年からはこのアルバムのオケであるポーランドのウッチを本拠地とするアルトゥール・ルービンシュタイン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督となりました。このオケはストコフスキーやパウル・クレツキ、ハチャトゥリアンなども振っている名門オケとのこと。

これまで聴いたポーランドもののハイドンは、どれも自然で雄大な表情が印象的な良い演奏が多かっただけに、このアルバムも期待が持てそうです。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
珍しく2番が最初に収められていますが、理由がわかりました。いきなりまさに自然で雄大な2番の序奏が鳴り響きます。オケの序奏だけでもかなりの聴き応え。ベンクトソンのチェロは良い意味で枯れた音色で、しなやかにオケにあわせていくもの。グイグイ引っ張る演奏ではなく、控えめにオケに寄り添います。この演奏当時ベンクトソンは61歳ということになりますが、いい感じに枯れて、実に味わい深いチェロを聴かせています。1楽章も後半になってくるとチェロが徐々に主導権を握るようになりますが、ストゥペルのコントロールするオケは相変わらず雄弁。揺るぎない構築感と分厚い響きで盤石の支え。ベンクトソンも安心してオケに乗ります。1楽章のカデンツァは師匠のピアティゴルスキーのもの。かなり長いものですが、チェロは老練な弓さばきで実に趣き深い表情を醸し出します。1楽章の終わりはまさに雄大そのもの。オケの分厚い響きの魅力が溢れます。
アダージョに入るとベンクトソンの真髄が見えてきました。やはり安定感抜群のオケにのって、ゆったりと気負いなく円熟の技を聴かせます。奏者の心理状況が揺らがないのか、しなやかな弓さばきは一貫していて、じっくりとフレーズを重ねていきます。通常かなり情感を乗せてくるところですが、一貫して枯れた表情を保っているところが経験を物語るよう。チェロの高音は良く延びて、深く燻したような独特の音色。フレージングの呼吸も深くえも言われぬ味わいの深さ。
フィナーレに入ると、オケは秋の夕焼けのような哀愁を帯びたこの曲独特の雰囲気をよく捉えて、分厚い音色はそのままに、すこしスッキリとした響きに変わります。ベンクトソンのチェロも弓さばきが少々軽くなって、曲の陰りある華やかさを上手く表現していきます。最後はがっちりと締まります。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
変わって晴朗な1番。やはりストゥペルのコントロールするオケが見事。2番もそうだったんですが、録音のバランスはチェロが前に定位、音量バランスは控えめ。オケに包まれる感じです。1番に入って気づいたのはベンクトソンのチェロのフレージングにかなりメリハリがあること。オケの音量に負けないようにか、かなりくっきりとした表情をつけて、ハイドンの美しいメロディーを描いていきます。この曲では低音の深い響きの美しさも聴かれるようになります。メロディーラインの華やかな軽さ、チェロののびのびとした美音、キレの良いテンポと、明らかに前曲と聴かせどころを変えてきています。この曲のカデンツァはベンクトソン自身のもの。チェロの高音の美しさを活かした詩情あふれるカデンツァですね。
2番で深い渕のようなものを聴かせたのですが、この1番のアダージョは逆にまさに天上の美しさ。力の抜けた素晴しいチェロの弓さばきで、ハイドン独特の美しいメロディーラインを描いていきます。オケも力を抜いて絶妙なサポート。まさに、オケとチェロが天上で掛け合っているよう。別世界の美しさ。
フィナーレは意外とどっしりした入り。オケは相変わらず分厚い響きで万全のサポート。ベンクトソンは我が道を行く感じで、しなやかにチェロを操り、オケの秩序にそって、ゆったりとリズムを合わせていきます。楷書体のしっかりとしたフィナーレに行書のチェロが変化を付けている感じ。ここまでくるとチェロも雄弁さを増し、味わい深さだけではない懐の深さを感じさせます。いやいや素晴しい演奏でした。

私はチェロのベンクトソンも指揮のストゥベルもはじめ聴く人でしたが、予想を大きく超える、素晴しい演奏でした。特にオケはポーランドのオケの伝統である、自然で雄大さを感じさせる素晴しい演奏でした。今の世の中でこれほど雄大にハイドンを演奏できるオケはないのではないでしょうか。ただ自然で雄大なだけではなく、極めてデリケートなフレージングによって、音楽は生気を帯び、えも言われぬ味わいを帯びています。ベンクトソンのチェロはテクニックや気負いを感じさせる瞬間は皆無。安心して音楽に身を任せられるものでした。評価は両曲ともに[+++++]とします。

日本では知る人はわずかだと思いますが、このチェロ協奏曲集は見事のひとこと。知る人ぞ知る名演奏だと思います。幸い入手は容易そうですので、是非聴いてみてください。

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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