Haydn Disk of the Month - January 2014

ついこの前、お正月休みでしたが、気づいてみたらもう1月も終わり。年をとると年月の流れるのが速いといいますが、まさに毎月速度が上がって、クレッシェンドしているよう。本当に速くなっています。いい歳なんですが、仕事もかなり忙しく、毎晩帰りが遅く、最近は一晩で1記事書けず、何晩かかかって1記事仕上げていますので、必然的にレビューする数も減ってきています。そのかわり、気に入った演奏に絞って取りあげるようにしていますので、良い演奏を記事にする率は上がっていると言うところでしょう。いささかマンネリ気味の本企画ですが、マンネリこそ我が意(笑)。好きな番組がタモリクラブに吉田類の酒場放浪記とマンネリ番組ゆえ、脇目も振らず地道につづけることに致しましょう。



今月、最も素晴しかった演奏はこれ!

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2014/01/12 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】カール・フォルスターの天地創造(ハイドン)

やはり、天地創造はいいですね。古い人はご存知かもしれませんが、私はこのCDの復刻ではじめて知った人。合唱指揮の人ですが、オケのコントロールは見事。そして何より素晴しいのがグリュンマー、トラクセル、フリックの歌手陣。名盤ひしめく天地創造の中でもこの陣容は見事。とりわけグリュンマーのふくよかな余韻の美声には痺れました。天地創造をいろいろ聴いている人にこそ、この名盤の素晴しさを知っていただきたいですね。

そして、もう一枚。

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2014/01/02 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 驚愕の名演 シャロン四重奏団の冗談、五度(ハイドン)

これぞ燻し銀。ハイドンの弦楽四重奏曲の演奏の原点のような演奏。手に汗握るわけでも、カミソリのようなキレ味でもなく、淡々とした演奏ですが、聴いているうちに音楽の美しさが心にしみてきます。こう言う演奏こそ、当ブログでスポットライトを当てるのが相応しいアルバムです。ハイドン好きな方にこそ、この演奏の素晴しさを伝えたい演奏です。このアルバム、例に寄って湖国JHさんに貸していただいたものですが、あまりの素晴しさに発注。我がコレクションに加わりました。

今月も素晴しい演奏に出会いました。まさに今日取りあげたコンドラシンの見事なキレ、ハイティンクの十八番の86盤、ワルターの奇跡など素晴しいライヴに、エガーによって新たな時代を迎えたAAM、祈りに直結するような静謐さがつたわるスカールホルト四重奏団の十字架、そしてリリー・クラウス、ゴールドベルク、ピニの素晴しいトリオと、走馬灯のように名演奏が駆け抜けていきました。

2014/01/31 : ハイドン–交響曲 : キリル・コンドラシン/北ドイツ放送響の「軍隊」ライヴ(ハイドン)
2014/01/28 : ハイドン–交響曲 : 【新着】リチャード・エガー/AAMの「受難」(ハイドン)
2014/01/20 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)
2014/01/19 : ハイドン–室内楽曲 : リリー・クラウス/シモン・ゴールドベルク/アンソニー・ピニのピアノトリオ(ハイドン)
2014/01/18 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ワルター/ニューヨークフィル1954年「奇跡」聴きくらべ(ハイドン)
2014/01/11 : ハイドン–室内楽曲 : ヴォデニチャロフ、フェルナンデス、ツィパーリングのピアノ三重奏曲集(ハイドン)
2014/01/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : スカールホルト四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉(ハイドン)
2014/01/05 : ハイドン–ピアノソナタ : ドミトリー・バシキーロフのピアノソナタXVI:49(ハイドン)

今月も素晴しい演奏に感謝です。



2014年1月のデータ(2014年1月31日)
登録曲数:1,321曲(前月比±0曲)登録演奏数:7,595(前月比+44演奏)

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キリル・コンドラシン/北ドイツ放送響の「軍隊」ライヴ(ハイドン)

しばらく仕事が忙しく更新が滞っておりました。今日はCD-R。

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キリル・コンドラシン(Kyrill Kondrashin)指揮の北ドイツ放送交響楽団(North German Radio Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、ヒンデミットの「気高い幻想」組曲、マーラーの交響曲1番「巨人」の3曲を収めた2枚組のCD-R。ハイドンの収録は1981年1月26日のライヴ。収録会場の表記はありません。レーベルはCD-Rでは良く取りあげるEn Larmes。

コンドラシンがハイドンを振っているとは知りませんでした。コンドラシンといえばロシア音楽を得意としており、聴いたことがあるのはシェエラザードくらい。ハイドンはともかく、モーツァルトやベートーヴェンまでふくめて、独墺系の音楽を振るイメージがありませんでしたので、このCD-Rをディスクユニオン店頭で発見したときには意外なという印象と、それでもコンドラシンの軍隊ならば、キリリと引き締まったタイトな響きが聴かれるだろうという期待もありました。

キリル・コンドラシンは1914年にロシアのモスクワ生まれの指揮者。家族はオーケストラの団員一家で、モスクワ音楽院で学び、1931年にはモスクワの青年劇場にて指揮をはじめ、1938年から42年までレニングラード歌劇場で研鑽を積み、1943年から56年までボリショイ劇場の常任指揮者として活躍しました。1958年に開催された第1回チャイコフスキーコンクールにて1等を獲ったヴァン・クライバーンの伴奏を担当し、コンクール後クライバーンとともにアメリカを演奏旅行し、冷戦後はじめてアメリカを訪問した指揮者となったそう。コンクールで演奏したラフマニノフの3番とチャイコフスキーのコンチェルトを演奏、録音。ミリオンセラーとなり世界的に知られるようになりました。1960年からはモスクワ・フィルの音楽監督となり、1975年まで務める間にショスタコーヴィチの交響曲4番、13番を初演しました。1978年にアムステルダムコンセルトヘボウに客演中、オランダに亡命し、コンセルトヘボウの常任客演指揮者に就任したそう。今日取り上げる演奏はまさに、その直後の1981年の録音です。ちなみにコンドラシンが亡くなったのはこの演奏の2ヶ月後の1981年3月、おそらくこのアルバムに収録されているマーラーの交響曲1番の演奏後、ホテルに戻ったあと心臓発作にて亡くなっています。ということで、このアルバムはコンドラシンの最晩年の貴重な録音ということになります。ハイドンも気になりますが、最後の録音たるマーラーも気になりますね。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
録音は悪くありません。81年相応といったところでしょうか。鮮明さはほどほどですが、低音から沸き上がる迫力はかなりのもの。オケが鳴り響く余韻も悪くありません。冒頭から落ち着いた表情ながら適度に粗さをともなったダイナミックかつ推進力ある演奏に引き込まれます。図太い響きを惜しげもなく披露。アクセルを吹かすと心地よくエンジンが吹き上がる様子が快感。さざ波のような軍隊独特のヴァイオリンパートのワクワク感が絶妙。表現巧者ぶりが伝わります。意外に表情に細かい変化をつけて実に豊かな音楽を造っていきます。想像したほどロシアっぽくない巧みな演奏。
続く2楽章アレグレットは、1楽章の勢いを保ったまま、すんなり入ります。予想通りアクセルに応じたオケの爆発が心地よく、淡々と爆発していきます。テンポが一貫しているので、ダイナミクスの変化に意識が集中します。気づいてみるとなかなかよく考えたアプローチ。この楽章では爆発は適度におさめて、コントロールの巧みさを保っています。
メヌエットに入ると、明るさと優雅さを感じさせながらも力感はかなりのもので、フィナーレに意識が向くように促しているよう。徐々にインテンポで斬り込むようになり、テンションも上がってきます。筋肉が温まって、黒光りしてきているよう。
フィナーレは居合いのような間とキレが交錯。すべてがコンドラシンのイメージ通りに進んでいるように、完璧にコントロールされています。オケのキレは最高。沸き上がるティンパニ、キレまくるヴァイオリン、地響きのようなグランカッサ。最後は怒濤の迫力で終わります。ライヴですが楽章間の雑音や拍手はカットされています。

非常にタイトな魅力に溢れた軍隊でした。コンドラシンはオケをギリギリと引き締め、引き締まった響きをつくる才能に溢れた人である事がいまさらながらわかりました。肝心のCDの2枚目に収められた巨人も素晴しい演奏。私は巨人もアバドのカミソリのようなキレ味が味わえるシカゴ響とのLPが刷り込み盤ですが、このコンドラシンの演奏は亡くなる日の演奏とは思えない瑞々しくフレッシュな感覚が支配した演奏。響きが立っているというか、緊張感が張りつめていると言うか、まったく緩むところがない素晴しい演奏。鮮度の高い響きにたいする天性の感覚をもっていたのでしょう。もしかしたらアバド盤より良いかもしれません。コンドラシンという人の音楽の真髄に触れた気がします。軍隊の評価は、やはり[+++++]をつけない訳にはいかないでしょう。

さて、今日は月末、、、

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tag : 軍隊 ライヴ録音

【新着】リチャード・エガー/AAMの「受難」(ハイドン)

今日は新着アルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

リチャード・エガー(Richard Egarr)指揮のエンシェント室内管弦楽団(Academy of Ancient Music)の演奏で、ヘンデルのオラトリオ「サウル」からシンフォニア、F.X.リヒターのグランド・シンフォニー第7番、シュターミッツのシンフォニア第4番、モーツァルトの交響曲第1番、そしてハイドンの交響曲第49番「受難」の5曲を収めたアルバム。収録は2011年9月21日から23日、ロンドンの聖ユダ・オン・ザ・ヒル教会(St Jude-on-the-Hill)でのセッション録音。レーベルはAAMとオケの自主世作レーベル。

エンシェント室内管弦楽団AAMといえば、ハイドンに造詣の深い皆様は良くご存知のとおり、クリストファー・ホグウッドと組んで古楽器演奏の草創期を代表するオケ。今回調べてみると、設立は1973年、やはりホグウッドが18世紀から19世紀の音楽を当時の楽器で演奏するために創設したオーケストラ。L'OISEAU-LYREレーベルからリリースされたモーツァルトやハイドン、バロック期の繊細、典雅な録音の数々は多くの人が耳にしたと思います。ホグウッドの監督のもと、1996年からはオーボエ奏者のポール・グッドウィンが副指揮者、ヴァイオリン奏者のアンドルー・マンゼが副音楽監督となっていたそうですが、この時期の録音が少ないため、日本ではホグウッドのイメージが強いでしょう。2006年からはこのアルバムの指揮を担当するリチャード・エガーが音楽監督に就任し、ホグウッドは名誉音楽監督になっているとのこと。

リチャード・エガーはイギリス生まれの鍵盤楽器奏者、指揮者。鍵盤楽器はハープシコード、フォルテピアノ、現代ピアノとなんでもこなします。少年合唱から音楽を学び始め、ヨーク・ミンスター、マンチェスター、ケンブリッジなど各所で学び、古楽はグスタフ・レオンハルトに師事しました。上で紹介したように2006年にホグウッドの創設したエンシェント室内管弦楽団の音楽監督に就任しています。それまで、ハイドン&ヘンデル・ソサイアティー、ターフェル・ムジークなどにも客演し、また現代オケもいろいろ振っているそう。

今日取り上げるアルバムのタイトルは「交響曲の誕生(Birth of the Symphony)」。ヘンデルのシンフォニアに聴かれる交響曲の萌芽から、徐々に交響曲の形式が定まり、ハイドンの名交響曲「受難」で締めるという構成。聴いていると、まさに時代の大きな流れを俯瞰しているように感じる見事な企画。ハイドンに至るまでのエガーのコントロールは、まさに自然なソノリティが美しい古楽器オーケストラの演奏。ホグウッドやピノックなどによって開拓されてきた古楽器の演奏は、現代楽器のアンチテーゼたる、古楽器らしい響きを意図的に演出した演奏だったと気づかされました。そうと感じるほどに、このエガーの演奏は自然。ここに至って古楽器演奏は、時代のパースペクティブに素直に位置づけられる自然さを獲得したかのように感じる説得力があります。

ハイドンの直前に置かれたモーツァルトの1番(K.16)が想像を絶する素晴らしさ。ホグウッド盤、ピノック盤でも印象に残りましたが、古楽器ながら実に自然にフレーズが進み、音の重なりが織りなす感興が噴出。落ち着いたエガーの棒から生気が迸り出るよう。音量を上げて聴くと、まさに交響曲と言う形式がすぐ後の時代に高みに昇りつめるのを予感させるような迫力。堂々とした響きから音楽の力が伝わります。今まで聴いたモーツァルトの1番ではダントツの出来。モーツァルトの爽やかなメロディーに酔いしれます。

Hob.I:49 / Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
冒頭から感動的な響きが沁みます。実にしっとりとした序奏。ゆっくりゆっくりと朝日が昇るようすを眺めるようなさわやかな気分にさせられる入り。これ以上自然な表情をつくるのは難しいと思わせる完成度。描かれるメロディーラインとその間に全神経が集中。小規模なオケなのに、凄い厚みと迫力が宿っています。オケの鳴らしどころをわきまえた素晴しいデュナーミクのコントロール。現代楽器のような色濃い表情ながら、時折ハッとするようなノンヴィブラートのヴァイオリンの旋律の爽やかさにこの演奏が古楽器であることに気づかされます。
続く2楽章のアレグロ・ディ・モルトは、古楽器のキレと、押し寄せる現代楽器並みの迫力が両立して、聴くものを凛とさせる素晴しい攻め。本当の意味で楽器の区別を無用にするような説得力。この名旋律あふれる曲の真髄をとらえた迫真の演奏。手に汗握るとはこのことです。エガーの実に巧みなコントロールにオケが鮮やかに反応し、瞬時に畳み掛ける変化を聴かせます。
メヌエットは、シュトルム・ウント・ドラング期独特のほの暗い情感の濃さを落ち着いて描いていきます。柔らかな木管楽器群にとろけるようなホルンの音色が重なり、メロディーに潜む色を滲ませていきます。良く出汁の効いた吸い物をいただくような至福の心境。メロディーと響きが五感をフルに刺激しながら、超リラックス。分析的過ぎない録音もグッドです。
フィナーレに入ると、わずかにレガートを効かせるなどをしながら変化をつけますが、聴き所は図太いエネルギーを巧みにコントロールするアクセルワーク。速いパッセージをこなしながらめくるめくスペクタクルな演出。自然な力感に自然な感興、そして曲の素晴しさを堪能できるダイナミックさもあわせもつ演奏。このアルバムの締めに相応しい完璧な演奏でした。

古楽器演奏の礎を築いたエンシェント室内管の新たな時代を切り開くような素晴しい演奏。交響曲の誕生と題されたこのアルバムの企画も冴えており、演奏も文句なし。古楽器か現代楽器かというような議論を無意味にさせるような本質的な魅力をもつ演奏というのが偽らざるところ。真実はわかりませんが、ハイドンの時代から現代の演奏に至るまでの演奏スタイルの変遷の中には、現代に構築された、さも古楽器然とした演奏ではなく、このエガーのような自然な力感と音楽を演奏する悦びに満ちたダイナミックな演奏があったのではないかと思います。一聴すると才気に溢れる個性的な演奏ではありませんが、実に音楽的に練られた良い演奏。激、気に入りました。新世代の古楽器演奏として、ギィ・ヴァン・ワースとレザグレマンの演奏とともに要注目の演奏でしょう。評価はもちろん[+++++]です。

ここまで書けば、ハイドン好きな皆さんは素通りできませんね(笑)

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tag : 受難 古楽器

ウィーンコンツェルトハウス四重奏団のOp.20-5聴き比べ(ハイドン)

ご存知のようにウィーン・コンツェルトハウス四重奏団には、WestminsterとPREISER RECORDSからかなりの数のハイドンの弦楽四重奏曲の録音がリリースされています。PREISER RECORDSからリリースされたアルバムにつけられた解説にはWestminsterの他にVanguardやDeutsche Grammophone、そしてコロムビアにも録音がある旨記されていて気になっていたもの。

こちらが先日ディスクユニオンで手に入れたアルバム。

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ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団(Wiener Konzerthaus Quartett)の演奏による伝ハイドンのセレナード、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.5、モーツァルトの弦楽四重奏曲KV.458「狩」の3曲を収めたアルバム。収録は1960年11月、東京とだけ記されていますが、セッション録音のようです。レーベルはDENON。

このアルバムに収録された当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:アントン・カンパー(Anton Kamper)
第2ヴァイオリン:ヴァルター・ヴェラー(Walter Weller)
ヴィオラ:エーリッヒ・ヴァイス(Erich Weiss)
チェロ:ルートヴィヒ・バインル(Ludwig Beinl)

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こちらはご存知PREISER RECORDSの全3巻のハイドンの弦楽四重奏曲集の第2巻。この2枚目に上のDENONのアルバムに収められているOp.20のNo.5が収録されています。収録年、収録場所などは記載されていませんが、解説などから1956年以前の収録でしょう。

PREISER RECORDSの解説によれば、WestminsterとPREISER RECORDSの録音はすべて1956年以前のもので、メンバーも1934年創設当時のメンバーとのこと。

第1ヴァイオリン:アントン・カンパー(Anton Kamper)
第2ヴァイオリン:カール・マリア・ティッツェ(Karl Maria Titze)
ヴィオラ:エーリッヒ・ヴァイス(Erich Weiss)
チェロ:フランツ・クワルダ(Franz Kwarda)

比較的近い間にいろいろなレーベルに録音しているウィーン・コンツェルトハウス四重奏団ですが、その違いはどのようなものか、興味は尽きません。当ブログでは過去2回レビューで取りあげていますが、何れもWestminster盤。

2013/08/23 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のOp.64のNo.6
2011/10/08 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のOp.64のNo.2

Westminster盤は鮮明ながら耳に刺さるような鋭い響きが特徴で、このクァルテット独特の味わい深い響きを楽しむのには向かないのが正直なところ。今回手に入れたDENON盤は日本での録音のため、また違った響きが聴かれそうですね。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
シュトルム・ウント・ドラング期の頂点である1772年に作曲された短調の傑作。最初は、聴き慣れたPREISER RECORDS盤からいきましょう。

ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の一番の特徴である、アントン・カンパーのゆったりと、まったりとしながらもところどころで伸び伸びとした美しい響きを聴かせるヴァイオリンの音色が心地良い演奏。全体にゆったりとした間が支配し、この曲がはらむ緊張感のようなものは前に出てこず、逆に優雅なえも言われぬ雰囲気に包まれる演奏。録音はもちろんモノラルで、Westminster盤のような尖ったところはなく、実にマイルド。時代なりですが、非常に聴きやすいもの。ヴァイオリンも鮮明さよりも中音の響きの厚さが良く出て、良い味わいが感じられます。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏スタイルにぴったり。
2楽章のメヌエットはアダージョのような風情。ポルタメントを効かせるほどではありませんが、演奏は古き良き時代を感じさせるもの。アンサンブルは良くそろっているのですが、エッジが立っていないので、リズムではなく響きを乗せているようなアンサンブル。これはこれで他のパートの響きをよく聴いての演奏でしょう。じっくりと燻らしたように音楽が進みます。燻製が出来上がるのを煙を見ながら待つような心境。
3楽章のアダージョはウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のゆったりとした音楽が最もマッチした楽章。この曲のこの時代を代表する演奏でしょう。優雅に響く弦楽器の響きにとろけそう。これぞ古き良きウィーンの香り。ハイドン弦楽四重奏のヒストリカルな演奏に我々が期待する美しさすべて詰まっています。技術を超えた音楽がここにあります。
終楽章はフーガの旋律を実に堂々と奏でて、メロディーが象徴的にそびえ立つように感じる入り。演奏が進むにつれて味わい深いアンサンブルの魅力に包まれますが、メロディーラインの複雑に絡み合うようすをわかりやすく整理して聴かせてくれているようで、主旋律がクッキリ、堂々と描かれることで音楽の印象も現代の印象とはだいぶ異なって聴こえます。

久しぶりにPREISER RECORDSの美音を堪能。つづいて今回手に入れた日本での録音。

比較すると録音は鮮明さが上がって、ステレオ空間に各楽器がクッキリ定位するもの。ライナーノーツにはマスターテープの保存状態が悪く、このCDはLPから起こしたものと記載されています。スクラッチノイズなどは皆無で品質は悪くありません。響きはデッドで、スタジオでの録音でしょうか。PREISER RECORDSのえも言われぬ味わい深い音色とはことなり、音が少し痩せて、線が細い感じ。特にヴァイオリンなどの高音の線が細い感じ。演奏の基調はゆったりとヴァイオリンをならしていくアントン・カンパーが握り、演奏自体の方向性は変わらないものの、録音によって音楽の印象は大きく異なります。鮮明な分、音程の粗がちょっと目立ったり、乾いた感じの弦の音色がが雰囲気を冷静にさせていますが、逆に鮮明な分、各パートがクリアに浮かびあがってボウイングが手に取るようにわかります。録音の違いを脳内で補正すると演奏はほぼ同じ方向性。録音による古き良き時代のウィーンの印象ではなく、演奏自体からにじみ出るエッセンスがウィーン風であったことっがわかり、日本での録音ということで、その貴重さもつたわって来ます。
2楽章のメヌエットはPREISER RECORDS盤よりもテンションが高く、タイトさが緊張感ををはらみます。アンサンブルも今度はエッジがクッキリとして、ざらついた各弦楽器の浸透力のある響きが呼応。チェロの弓さばきも鮮明に録られ、非常に鮮明に各楽器が響きます。
聴き所のアダージョは、前盤が録音の雰囲気の影響が色濃く出た、味わいの深さだったのに対し、このアルバムでは録音のベールをはがし、演奏自体のもつ響きの強さに裏付けられた味わいが聴こえてきます。かなり鮮明に録られていますが、味わいの深さはもしかたら前盤以上。音量を上げて聴くと心に刺さるよう。奏者の息づかいが聴こえてくるような鮮明さ。
フィナーレのフーガのメロディーの象徴的な扱いは前盤同様。まるでバッバを聴いているような厳粛な気持ちになります。ゆったり刻むテンポで逆に迫力を増し、かなり克明なメリハリがついたフィナーレ。冬の陽で立体感が際立つ山容を見るよう。

ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の時期を違えた2種の録音。PREISER RECORDSのアルバムはまろやかな録音と相俟って、このクァルテットに我々がイメージする古き良きハイドンの弦楽四重奏曲の理想的な響きが聴かれます。久しぶりに聴き直してみると、この演奏の貴重さをあらためて感じた次第。とくにアダージョ楽章のえも言われぬ陶酔感は貴重ですね。一方、1960年の来日時に録音されたであろうDENON盤は、響きが鮮明なぶん、このクァルテットの演奏自体の貴重なスタイルを解き明かしているよう。各奏者の音色やボウイングまで鮮明に録られており、PREISER RECORDS盤と同様の味わいの秘密に近づいた気にさせるもの。人によってはこちらの鮮明な響きを好まれる方も少なくないのではないかと想像しています。評価は両盤[++++]とします。古き良きウィーン情緒を感じたいのなら、間違いなくPREISER RECORDSをお薦めします。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20 ヒストリカル 偽作 ハイドンのセレナード

【新着】スヴャトスラフ・リヒテル1984年東京ライヴ(ハイドン)

今日は最近リリースされたアルバム。

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スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)のピアノで、ハイドンのピアノソナタ2曲(Hob.XVI:24、XVI:32)、ドビュッシーの前奏曲集第1巻より10曲、映像第1集より1曲の合わせて13曲を収めたアルバム。収録は1984年3月27日、東京文京区の蕉雨園でのライヴ。レーベルはNHK CD。

突如リリースされたこのアルバム。リヒテルはレコーディングが好きではなかったとのことで、ご存知のとおり、残された録音の多くはライヴ。ハイドンは好きだったようで、ライヴで残されたハイドンのソナタはかなりの数にのぼります。手元にもかなりの数のアルバムがあり、これまでに3度ほどリヒテルのソナタを取りあげています。リヒテルのハイドンは、恐ろしいまでの力感の表現に特徴があり、リヒテルのハイドンのライヴと聞けば、手を出さざるを得ません。

2013/07/15 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】リヒテルのピアノソナタライヴ集
2010/11/23 : ハイドン–ピアノソナタ : リヒテルの1993年のソナタ録音
2010/02/23 : ハイドン–ピアノソナタ : リヒテルのソナタ録音

今日取り上げるアルバムはなかでも非常に変わったもの。アルバムにつけられた帯には「リヒテル 幻の東京リサイタル」とあります。ライナーノーツによれば、リヒテルが企画していたフランス、トゥールの音楽祭に、日本のセゾングループのデヴェロッパーだった西洋環境開発が日本からも集客しようと協力したことから、リヒテルがこれに感謝し、日本への演奏旅行の合間に開いた、ブライヴェートコンサートの様子を収めたものとの事。場所はリヒテルが気に入ったと言う理由で、文京区にある日本家屋の蕉雨園。

この蕉雨園は明治30年(1897年)、当時の宮内大臣、田中光顕(たなかみつあき)が建てた回遊式庭園をもつ日本家屋。場所はちょうど目白の椿山荘の裏あたりにあります。所有者は講談社とのことで、撮影などにも利用されており、私も仕事のロケで1992年頃訪れたことがあります。蕉雨園という名は漢学者の諸橋轍次博士がここに来たおり、園内にある松尾芭蕉ゆかりの芭蕉庵、五月雨庵などにちなみ、「芭蕉葉上孤村の雨 蟋蟀聲中驛路の塵」という詩を詠み、その中の「蕉」と「雨」の二文字をとって蕉雨園という名がついたそう。

このコンサートは、当時のセゾングループの代表でリヒテルのファンだった堤清二さんが、セゾングループのお客さんなどを100名を集めた非公開のコンサートとして開催したとのこと。日本家屋でのコンサートということで、当初は畳敷きだったものを、急遽板張りに変えるなどの突貫工事もあったようです。ライナーノーツには、当時リヒテルが好んで弾いていたヤマハのピアノをもちこみコンサートにこぎつけたようすを、当時リヒテルのピアノの調律を担当していた村上輝久さんが回想された文章が付され、そのときの苦労がつたわってきます。

プログラムのハイドンはリヒテルが日本建築に合うだろうと選んだものとのこと。リヒテルはハイドンの音楽に和の印象をもっていたのでしょうか。

ちなみに、今回リヒテルについて調べているうちに、リヒテルの詳細な演奏履歴をまとめた年表をもつサイトを発見しました。

リヒテルさんのお部屋

この「リヒテルさん年表」がスゴイ。今回の演奏会の前後を記した1980年代のページにしても、詳細なコンサートの開催日とプログラムまで精緻にまとめられており、この日の演奏会についても触れられています。これは一見の価値有です。

Hob.XVI:24 / Piano Sonata No.39 [D] (1773)
ヤマハらしい硬質なピアノが、超デッドな日本建築の空間に響きます。スタジオとはまた異なる解放感のあるデッドさ。楽器は響いているのに空間がが響いていない不思議な雰囲気。リヒテル特有の険しさが、ダイナミックさではなく禁欲的に響くデッドなピアノ音によって伝わってくるよう。ところどころタッチが乱れるところがありますが、それも音楽の乱れとは感じさせない一貫した強さと聴かせるのがリヒテルの凄いところ。ピアノの響きの髄の部分だけで推進するハイドン。中音域のクッキリとした表情だけで進む感じ。音量を上げると強靭なタッチの迫力に打たれます。ソナタ形式の充実を構造から体験できるような演奏。
つづくアダージョは短調の憂いに満ちた穏やかな曲調から、ほのかに明るい光が射すようになり、じっくりと和音の余韻を楽しむような演奏。リヒテルはデッドな空間に漂うピアノ余韻をもコントロール。
フィナーレは再び鋼のようなタッチでピアノを鳴らしきります。これを狭い日本家屋で眼前で聴いたらさぞや凄い迫力だったでしょう。和室に響く乾いた拍手が印象的です。

Hob.XVI:32 / Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
気のせいか前曲よりもピアノの響きが滑らかになったように聴こえます。聴き慣れた名曲。同じ空間のはずですが、左手で弾く低音の迫力が俄然アップして図太い隈取りがついたようなメリハリ。超リアルなピアノの骨格が鳴るような響き。あまりのリアリティと迫力に圧倒されます。リヒテルも空間の響きに慣れたのか、余韻のコントロールがつながりよくなっています。演奏によっては色っぽく響く事のあるこの曲が、峻厳な険しさに満ち、クリスタルのような冷たい輝きを帯びています。終盤、インテンポで攻め込むような鬼気迫る印象まで帯びて、やはりリヒテルのタッチの力感に打ちのめされるよう。
もうすこし詩的な余韻を含むと予想したメヌエットは、かなりあっさりした表情。さらさらとした潔い音楽。中間部の強いタッチも少し抑えて、後半のきらめくような美しいメロディの部分に移ります。この抑えが効いて、フィナーレの恐ろしく強靭なタッチがぐっと引き立ちます。力強い打鍵の連続に、リヒテルの気合いが乗り移ったよう。スピーカーから音が飛んでくるような超ハイテンションなフィナーレ。波動に立ち向かうように聴きます。響きの滝に打たれるよう。最後まで強靭なタッチに圧倒されました。ふたたび乾いた拍手に包まれました。

このあとのドビュッシーはこれほどの強靭さは陰を潜め、響きの少ない空間で、余韻の伝搬を楽しむように響きに戯れるリヒテルの姿が印象的。ドビュッシーはハイドンより平常心で楽しめました。リヒテルはやはりハイドンには力感を求めていたのでしょう。最初のハイドン2曲の演奏は、コンサートではなく、まさに禅の修行のごとし。楽しむのではなく、勝負のような演奏でした。この演奏、ある意味リヒテルのハイドンの真髄に迫る演奏かもしれません。ハイドンのソナタの極北の姿をあらわした究極の演奏でしょう。この演奏は明らかにマニア向け。一般の方へお薦めするにはハード過ぎる演奏かもしれません。評価が難しい演奏ですが、いちおう[++++]としておきましょう。修行されたい方は是非(笑)

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【追悼】クラウディオ・アバド逝く

今朝、いつものように通勤電車の社内でiPhoneの日経電子版を読んでいました。今月は文化面の「私の履歴書」が小澤征爾さん。時代の空気がつたわるような語り口が興味深く、毎日楽しみに読んでいました。それから、電子版で設定したいくつかのキーワードで収集した自動記事収集のページを見ていると、「C・アバド氏死去」との見出しをみつけ、ちょっと言葉にならない驚きと同時に、やはりかとの想いも。

2013/09/12 : コンサートレポート : アバド/ルツェルン祝祭管来日中止

昨年の秋、来日予定だったアバドとルツェルン祝祭管。これが聴き納めだろうとなんとなく思って、普段は滅多に手を出さない高額チケットを嫁さんと2枚で予約し、チケットを手に入れた直後、来日中止になってしまったくだりは上の記事のとおり。今回は未完成とブルックナーの9番というどちらも作曲家絶筆の作品という意味深なプログラムの予定でした。晩年はアバドらしい精緻を極めたくっきりとしたオーケストラコントロールに鬼気迫る迫力が宿った演奏を聴かせたアバドですが、その響きを生で体験しておきたかったですね。

アバドは、ハイドンを好きになる以前から好きな指揮者でした。

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アバドを最初に聴いたのは、予備校生の頃、なんとプロコフィエフの「アレクサンドル・ネフスキー」のLP。長岡鉄男激賞の超鮮明録音として有名になったDGのアルバムです。殺気を感じるような静寂と床が吹き飛ぶようなグランカッサの重低音の迫力にビックリ。当時は父親のステレオを借りて、TANNOYのバークレーという38cmウーハーのスピーカーをブルブル言わせて聴いたものです。それまで親しんでいたFM放送でエアチェックしたゲンナジー・ロジェストヴェンスキーのロシア的ヴァナキュラーな演奏とは異次元の現代美術のような峻厳な構成。まったく異なる解釈にプロコフィエフの真価を知った次第。これでアバドの印象が決定的になりました。

その後、1983年のロンドン交響楽団の来日公演時に東京文化会館でラヴェルのラヴァルスとマーラーの5番を聴いています。このとき私は大学生。LPで聴いていたアバドのイメージと、ちょっとギクシャクした指揮振りがあまりにイメージが異なったのに当惑したのを覚えています。しかし音楽のシャープさはイメージ通り。

そして、その後ロンドン交響楽団とのストラヴィンスキーやフランスもの、そしてグルダと組んだウィーンフィルのモーツァルトの協奏曲などをLPで買い集めました。

なかでも、印象に残っているのは、ロンドン響とのモーツァルトのジュピターと40番のLP。それこそ擦り切れるほど聴いた愛聴盤。私のジュピターの刷り込みはアバド盤です。それまでの演奏史の垢と指揮者の情感を取り去って、オブジェとして再構成した音楽に、最後にイタリア風の晴朗な艶を加えたようなアバドの演出によって、透明感溢れる白亜のアポロン的神殿が浮かび上がる素晴しい演奏でした。終楽章のフーガの建築的美しさは今でもアバド盤を超えるものはないと思ってます。

アバドの音楽の本質は、クライバーの燃え滾る炎の塊のような直接情感に訴える演奏ではなく、大脳皮質に冷静に訴えるような知的な刺激をともなう演奏であり、時に覚めた印象や、振り切れない印象をもつこともありましたが、他の人にはない知的興奮をもたらす素晴しい音楽でした。アバドのハイドンもしかり。火を吹くようなキレ味の奇跡も愛聴盤です。

2013/05/18 : ハイドン–交響曲 : クラウディオ・アバドの98番、軍隊
2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」

今日は久しぶりに「アレクサンドル・ネフスキー」のLPを取り出し知的興奮を味わってます。フレーズごとにめくるめく切り替わる音楽にアドレナリン大噴出。LPを最初に聴いたときの興奮が蘇り、なつかしさが溢れます。

偉大な才能が逝き、歴史となりました。ご冥福をお祈りします。

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tag : プロコフィエフ 長岡鉄男 LP

ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)

最近ディスクユニオンで手に入れたCD-R。

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ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のクリーヴランド管弦楽団(Cleveland Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲86番、マーラーの交響曲9番!の2曲を収めたCD-R、ハイドンの収録は1976年2月27日、クリーヴランド管の本拠地、セヴェランスホールでのライヴとありますが、裏面では何と2月11日とあります。どちらが本当かわかりません。レーベルははじめて手にする米Don Industrialeとしゃれた名前のCD-Rレーベル。

ハイティンクはハイドンの録音をほとんど残していませんが、おそらく専属契約だったPHILIPSではネヴィル・マリナーとコリン・ディヴィスの録音が大量にあり、レパートリーが重なっていたからでしょう。ただし、コンサートのライヴを記録したCD-Rはいろいろリリースされており、コンサートではハイドンをよく取りあげていた可能性があります。当ブログでも見かける度に手に入れたり借りたりしてレビューしています。

2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

これまで、取りあげた演奏は1989年が最も古く、あとは2000年代に入ってからのもの。今日取り上げる86番は1976年でしかもアメリカのオケということで、ハイティンクの若々しい指揮振りが聴かれるかどうかといったところがポイントでしょう。

以前の記事でもハイティンクの略歴などにふれていなかったため、少し調べてみましょう。

1929年、オランダ、アムステルダム生まれの指揮者。アムステルダム音楽院で学び、最初はヴァイオリニストとしてオーケストラに加わっていたが、1954年から55年にかけてフェルディナント・ライトナーに師事し指揮を学んだそう。デビューは1954年、オランダ放送組合管弦楽団(現オランダ放送フィル)のコンサートで、1955年には副指揮者、1957年には首席指揮者となりました。そして、その後長年つれそうことになるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の指揮をはじめてまかされたのがジュリーニの代役として1956年のこと。その後1959年にエドゥアルト・ファン・ベイヌムの急死により、名門アムステルダム・コンセルトヘボウの第1指揮者に名をつらね、1961年には首席指揮者となりました。このときハイティンク32歳ということで異例の大抜擢でしょう。コンセルトヘボウとは1988年まで、その後1967年から79年までロンドンフィルの首席指揮者、1978年から88年までグラインドボーン音楽祭の音楽監督、1987年から2002年までロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督など著名なポストを歴任しました。2006年からはシカゴ交響楽団の首席指揮者を務めています。

このアルバムの演奏当時はアムステルダム・コンセルトヘボウ管の首席指揮者時代。一方オケのクリーヴランド管は黄金期を築いたセルが1970年に亡くなり、1972年からはマゼール時代に入り、第二の繁栄期でした。アメリカでも指折りのオケに実力派ハイティンクが客演した期待のコンサートということでしょう。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
録音はそこそこ鮮明ですが、時代なりの粗さもあります。テープヒスノイズがちょっと目立ちますでしょうか。会場の物音も程よく聴こえる臨場感を感じる録音。冒頭からハイティンクらしい筋骨隆々とした演奏。音楽の骨格をきっちり描くハイティンクならでは引き締まった音楽。オケの隅々までハイティンクのコントロールが行き届いて、音のキレは抜群。弦楽器陣のボウイングが全員きれいにそろって、統率が行き届いています。音量を上げると引き締まったリズムの刻みが痛快。巨木から鋭い鉈で彫像が一気に掘り出される瞬間を見るよう。背筋がピンと伸びる緊張感が漲ります。鉈を次々に打ち込み、彫像があらわになります。見事すぎる1楽章。50歳を前にした全盛期のハイティンクの覇気がスピーカーから伝わってきます。
つづくラルゴは緊張感を保ちながら、引き締まった音楽が続きます。ゆったりとした雰囲気はなく、一音一音に緊張感が漲ります。音量をかなり緻密にコントロールして、ダイナミクスは抑えながら、それでもなぜか彫りの深い険しい表情をつくっていきます。テンポは落としているのに、ゆったりとした音楽とは対極にある緊張感。
楽章間の咳払いと調弦のようすが、会場の緊張感をつたえます。
メヌエットもハイティンクらしい、純音楽的なもの。よく鍛えられたオケが楔を打つように音を刻んでいきます。この響きの純度の高さこそがハイティンクのもとめる音楽の骨格なんでしょう。
やはりクライマックスはフィナーレにありました。これまでの演奏も筋骨隆々としたものでしたが、フィナーレは力感が2段上がり、水際立った迫力で音塊が飛んできます。徐々にドライブがかかり、荒々しいほどのエネルギーが噴出。ハイティンクはここでも冷静沈着にオケをコントロールして、オケが乱れることもありません。クライマックスに向けて、オケは恐ろしいばかりの覚醒したようなキレを聴かせます。最後はまだ力感を増す余地があったかと驚くほどエネルギーが集中。恍惚とするほどのクライマックス。ブラヴォー!

やはりハイティンクはオケを鳴らすツボを押さえていますね。華やかさはないのですが、聴くものをグイグイと引き込む迫力ある響きを巧みに造っていきます。特にこの86番はハイティンクも得意としていたのでしょう、ハイティンクの芸風がビシッと決まる曲です。以前取りあげたドレスデン・シュターツカペレとの2004年のライヴもよかったんですが、このクリーヴランド管との76年のライヴはそれを上回る純粋な力感が楽しめます。いやいや、こうゆう86番を聴いてしまうと、古楽器や最近のオケは力感では太刀打ちできませんね。もちろん評価は[+++++]です。

ハイティンクには「悲しみ」のライヴもあるようなので、気長に探してみたいと思います。

なお、このアルバムの後半以降はマーラーの9番。これもまた鬼気迫るスゴイ演奏です。アルバムのメインはマーラーですよね、普通(笑)

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tag : 交響曲86番 ライヴ録音 CD-R

リリー・クラウス/シモン・ゴールドベルク/アンソニー・ピニのピアノトリオ(ハイドン)

当ブログはカスタマー・フォーカスを旨としております(笑)

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リリー・クラウス(Lili Krauss)のピアノ、シモン・ゴールドベルク(Szymon Goldberg)のヴァイオリン、アンソニー・ピニ(Anthony Pini)のチェロによるハイドンのピアノ三重奏曲3曲(XV:26、XV:27、XV:29)と、シモン・ゴールドベルクのヴァイオリン、ワルター・ジェスキンド(Walter Susskind)指揮のフィルハーモニア管弦楽団(The Philharmonia Orchestra)の演奏でハイドンのヴァイオリン協奏曲(VIIa:1)を収めたアルバム。今日取り上げるピアノ三重奏曲の収録は1939年8月29日と9月1日、収録場所はロンドンとだけ記載されています。レーベルはDante ProductionsのLYS。

非常に懐かしいこのアルバム。手に入れたのはかなり昔のだったと思います。このアルバムは手元の所有盤リストに掲載していたのですが、3曲収められたピアノトリオの評価は[++++]としていました。そうしたら、このお正月、いつもコメントを戴き、当ブログの評価についてもずいぶん参考にしていただいている戎棋夷説さんが、twitterで、「ハイドン音盤倉庫でなぜこれが評価[+++++]でないのか、考えてしまった。」と、疑義まではいきませんが、大人の表現でつぶやかれていらっしゃいます。

このアルバムの評価はかなり昔のことゆえ、これは責任重大ということで、あらためて取り出し、レビューしなくてはと思い立った次第。

所有盤リストの評価は、かれこれ15年がかりでつけています。ちなみに1997年当時の所有盤リストを確認するとアップルマーク3つ。つまり最高評価としていました。当時は3段階評価だったわけですね。それを5段階の現行評価に変換し、いろいろいじって現在に至ってますが、この3曲の評価をいつ変えたものなのかは記録はなく、判然としません。

ここは現在の耳で虚心坦懐にレビューしなくてはならないでしょう。

リリー・クラウスは1903年ハンガリーのブダペスト生まれのピアニスト。ユダヤ系とのこと。ブダペスト音楽院で、シュナーベル、コダーイ、バルトークらに学び、1930年代にはウィーン音楽院で再びシュナーベルに師事。モーツァルトやベートーヴェンを得意としており、シモン・ゴールドベルクと組んで室内楽の演奏に早くから取り組んでいました。1942年からのアジア遠征で訪問したインドネシア、ジャワ島で日本軍に捉えられ、終戦まで軟禁されたとのこと。戦後は国際的に活躍し、日本にも度々来ています。亡くなったのは1986年で、永住先のアメリカ、ノースカロライナ州アッシュビル。

シモン・ゴールドベルクは一度アルバムを取りあげています。

2013/07/11 : ハイドン–協奏曲 : シモン・ゴールドベルク/オランダ室内管のヴァイオリン協奏曲

略歴は上の記事をご覧ください。奥さんは日本人で亡くなったのは富山ということで、おなじみの方も多いでしょう。

チェロのアンソニー・ピニは1902年、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれのチェリスト。10歳でグラスゴーに移り、それからロンドンに上りデビュー。1932年にトーマス・ビーチャムの招きでロンドンフィルの首席チェロ奏者となり、以降イギリスの主要なオケのチェロセクションのリーダーとして活躍した人。1989年に亡くなっているとの事です。

このアルバムのピアノトリオの録音は1939年と古いもので、SPからの板起こしと思われますが、録音ははっきりと骨格を捉えた素晴しいものゆえ、時代を超えて音楽が我々の耳に迫ってきます。

Hob.XV:26 / Piano Trio (Nr.40/op.73-3) [f sharp] (1795)
若干のヒスノイズは伴いますが、素晴しい立体感。リリー・クラウスの弾くピアノは眼前にあるよう。ノスタルジックな印象もありますが、落ち着き払ったトリオのゆったりとした演奏にうっとりとします。特にピアノ余韻の美しさは素晴しいですね。1930年代の録音としては流石のクォリティ。ピアノの音は転がるような滑らかさ。
この曲の2楽章は交響曲102番の2楽章を転用したもので、メロディーの美しさは折り紙付き。リリー・クラウスがフレーズを非常にうまく描いて、ゆったりと詩情溢れる展開。ゴールドベルクのヴァイオリンも独特の弓の摩擦が濃いような音でメロディーを重ね、えも言われぬような濃い雰囲気になります。
秀逸なのはフィナーレ。静寂のなかから音符が浮かび上がるような独特の入り。テンポもゆったりして慌てるそぶりはなく、淡々と弾き進めていきますが、ゴールドベルクのヴァイオリンも独特の図太い音色でメロディーを重ね、徐々に感極まるような成熟した響きに至ります。極上のヒストリカルな響き。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
名曲XV:27。ゴールドベルクとリリー・クラウスはもともと2人で組んでの演奏活動も長いため阿吽の呼吸。チェロのピニは音量は抑え気味ですが、そっと音を乗せて、脇役に徹するよう。この曲では時代を超えて躍動感が伝わります。リリー・クラウスのピアノの演奏は、余韻の美しさの限りを尽くしたようなもの。シモン・ゴールドベルクは直裁な音色を活かしながらもしなやかにアンサンブルに応じて、後年の唯我独尊的演奏とは異なる柔軟さが光ります。1939年という録音年代が信じられないようなしなやかさ。
このアルバム一番の聴き所はこの2楽章でしょう。あまりの詩情の濃さにむせ返りそう。リリー・クラウスのピアノだけでもデリケートなニュアンスに富んだ素晴しい演奏。古い録音ながら、このニュアンスの豊かさは何なのでしょう。ピアノと言う楽器の表現力の多彩さに今更ながら驚きます。圧倒的な音の分厚さ。現代の録音よりも音楽的に感じます。
3楽章は驚くべきダイナミックさとキレ。もはやピニは完全に脇役。リリー・クラウスとシモン・ゴールドベルクの火を噴くような掛け合い。パンチアウト!

Hob.XV:29 / Piano Trio (Nr.45/op.75-3) [E flat] (1796)
一転して落ち着いた導入の曲。良く聴くとピニのチェロも抑え気味ながら、実に味わい深い演奏であることがわかります。丹念に陰を描くような控えめな姿勢ですが、テンポの正確さと、抑えた音量のコントロールは流石。やはり名人芸はシモン・ゴールドベルク。ヴァイオリンのメロディーを追いかけているだけでで至福の時間。落ち着いた1楽章を聴いているだけでトリップしそうです。終盤にドビュッシーかと思うような音階の閃きがあり、リリー・クラウスのピアノの抑えたタッチが冴え渡ります。
前曲のアンダンテで感極まってましたが、このアンダンティーノも素晴しい。この演奏を上回る詩情はあり得ないと思わせる豊かな音楽。部屋の中に香しい花のつぼみの香りが満ちているよう。
そしてフィナーレで、一気に花が咲き乱れたような爽やかな明るさ。途中の絶妙な抑え具合と、アクセントの付け方はもはや神がかっています。リリー・クラウスのピアノがこれほど素晴しいと今更気づかされました。このアルバムの録音は1939年の原盤に込められたデリケートなニュアンスをそのまま伝える素晴しさ。おそらくSPはもっと素晴しいのでしょう。最後はキリリと締めて終わります。

リリー・クラウスとシモン・ゴールドベルクの凄さを思い知らされるような空前絶後の演奏。リリー・クラウスのデリケートなニュアンスに富んだ演奏は現代では真似の出来る人はいないでしょう。古き良き時代を感じさせると同時に、古さを感じさせない普遍性もあります。シモン・ゴールドベルクのヴァイオリンは独特の音色で穏やかに合わせていくところと、キリリと引き締まった攻め込むところの使い分けが見事。そして決して前に出てこないアンソニー・ピニの脇役振りも見事。これほど素晴しい演奏だったとは、昔の記憶とは異なります。そう、このアルバム、[+++++]意外の評価はつけ難いですね。早速修正です。

戎棋夷説さんが違和感を感じられたのも無理もありません。今後ともご指導よろしくお願いいたします。

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tag : ピアノ三重奏曲 ヒストリカル

ブルーノ・ワルター/ニューヨークフィル1954年「奇跡」聴きくらべ(ハイドン)

まずは、お正月にディスクユニオンに寄った際にみつけたアルバム。

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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にウィーンフィルとの1938年「軍隊」、ロンドン交響楽団との86番、フランス国立管弦楽団とのモーツァルトの「フリーメイソンのための葬送曲」が収められたアルバム。奇跡の収録は1954年と記されていますが、ネットを確認すると1954年11月21日のライヴであることがわかります。レーベルはなつかしい伊AS disc。

もう一枚は手元にあったこちら。

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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にというかこのアルバムのメインはコロムビア交響楽団とのモーツァルトのオペラ序曲、「フリーメイソンのための葬送曲」など。奇跡の収録は上記アルバムのライヴの直後である1954年11月29日と12月6日。ニューヨークの30番街スタジオでのセッション録音。こちらはSONY CLASSICAL。

上のアルバムの演奏を所有盤リストに登録する際、ブルーノ・ワルターの膨大なディスコグラフィを整理されているDannoさんのサイトで調べて、この2つの演奏が同じオケの間を置かずの録音であることが判明し、聴き比べてみたくなった次第。

Bruno Walter Home Page

ワルターのハイドンは以前、偶然にも奇跡の演奏を取りあげています。

2011/09/07 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ワルター/フランス国立管弦楽団の「奇跡」

Dannoさんのサイトのワルターのハイドンのディスコグラフィを見ると、奇跡はこの他1937年のウィーンフィルとの演奏とあわせて4種で、今回手に入れたアルバムで4種すべてがそろったことになります。にんまり(笑)

さて、ワルターといえばどうしてもモーツァルトという印象ですが、ハイドンもワルターらしい慈しみに溢れた演奏なんですね。久しぶりにワルターのハイドンの素晴らしさを満喫です。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
まずは、AS discのライヴ盤から。録音はモノラル。

もの凄い迫力の序奏。ライヴらしく会場の物音がリアルに録られています。主題に入ると音は歪み気味ながら、素晴しい覇気で畳み掛けるように攻め込みます。音が割れ気味ながら、それが異様な迫力をともない、もの凄い緊張感。音量を上げて聴くとヴァイオリンパートが弦が赤熱しているように感じるほど、キレキレの演奏で火傷しそう。炎のような1楽章。
つづくアンダンテは全体に落ち着いた表情ではじまりますが、弦楽器のテンションの高さは1楽章そのままで、耳に刺さるように切れ込んできます。ニューヨークフィルの弦楽セクションがこれほどの浸透力をもつとは思いませんでした。聴いているうちに弦の迫力に圧倒されるようになります。間奏の穏やかさと弦楽器の圧倒的な存在感の対比が素晴しい効果。これをライヴで聴いていたらのけぞっていたでしょう。細かいところなど全く気にする余裕がないような圧倒的な迫力。
メヌエットは予想どおり、大きな筆で一気に書き上げるような豪快かつおさまりも考えた緻密な設計。特にそっと抑える部分の存在が、筆の勢いの良さを際立たせるプロの技。会場の観客が凍りついている気配が感じられるほど。神々しいとはこの演奏のことでしょう。途中のオーボエとトランペットのソロは少ない楽器の演奏に集中します。トゥッティでは音が割れますがかまわずグイグイ進みます。
奇跡の聴き所のフィナーレ。キレよく入りますが、オケが煽る煽る。オケの全員がクライマックス目指して殺気立っているよう。それゆえアンサンブルは粗いんですが、それが迫力を増し、火の玉が育って巨大隕石になって飛んでくるよう。金管も弾けるよう。最後の一音の余韻が消えるのを待たずに嵐のような拍手が降り注ぎます。いやいやこの日の会場の熱狂はいかばかりのものかと思います。ワルターがここまで煽ってくるものかと再認識したライヴ。

さて、続いてその8日後のセッション録音であるSONY CLASSICAL盤。

同時期の録音ではありますが、流石にセッション録音なので、録音は2段階くらい上をいきます。こちらもモノラルながら細部まで鮮明で、Hi-Fi調。スタジオで鮮明に録られたオーケストラの彫刻的なフォルムの迫力が直に伝わる録音。ライヴの粗い録音から伝わる炎のような熱気とは異なり緻密なコントロールが印象的。弦楽器は鮮明かつ厚みを感じる落ち着いた演奏。ワルターが煽っているのか、フレーズの入りは速めに斬り込みますが基本的に落ち着いた演奏。
アンダンテもワルターのコントロールが行き届いて、メロディーラインの豊かな表情と、キリリと引き締まった表情が相俟って完成度の高い響きをつくっています。細部まで鮮明な録音によって先程のキレキレの演奏とはずいぶん印象が変わり、彫刻的ながら穏やかさが目立ちます。奏者も平常心。これはこれで完成度の非常に高い演奏。
メヌエットは鮮明な録音によって、モノラルながら迫力あるフォルムが目立ちます。スピーカの前でニューヨークフィルが実際に演奏しているようなリアリティ。先程の盤でのオーボエとトランペットのソロはライブならではのノリがありましたが、こちらは本当に上手い。セッション録音らしい完成度の高さが生み出す迫力に酔います。
フィナーレは特段テンポが速い訳ではなく、むしろじっくり行く感じで聴いていきますが、迫力はかなりのもの。徐々にオケが白熱して、荒々しさが加わります。ライヴとは異なりますが、セッション録音であっても、この曲のフィナーレは奇跡的でしょう(笑)

今更ながらに後者のセッション録音の完成度の高さが印象に残った次第。ワルターは練習嫌いではじめてのオケでもさほど練習をせず本番にのぞむそうですが、このセッション録音を聴く限り、コントロールは行き渡り、この演奏も交響曲「奇跡」名演奏の一つとして十分にお薦めできるものです。前者のライヴ盤はそれとは異なり、突き抜けた迫力が聴きどころ。録音はそれほど良くはありませんが。粗い響きから浮かび上がる会場の興奮を共有できる貴重な録音と言っていいでしょう。ほんの少しの間を置いて録られた2つのアルバムですが、音楽の本質を共有しながらも、ライヴとセッション録音の違いにスポットライトを当てた事になります。評価は両者ともに[+++++]とします。SONY CLASSICAL盤は上方修正です。AS disc盤ははじめて聞きましたが、ワルターのライヴの見本の様なすばらしさ。これを聴いてしまうと、ワルターから逃れられなくなるのでしょうね。

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tag : 奇跡 ライヴ録音

ピアノ三重奏曲のメンテナンス完了

すいません。年始早々仕事が忙しくて、なかなかレビューがはかどりません。

年末からお正月にかけて、グリフォン三重奏団の演奏をきっかけに、ずいぶんピアノトリオの演奏を聴き直しました。ピアノトリオや弦楽四重奏はヤープ・シュレーダー等のように奏者がいろいろなアルバムに顔を出しているケースもあります。このため団体名だけでなく奏者の名前も併記しておくと、過去の演奏などと比べる時に便利ということで、聴き直しついてに演奏者名を丹念に記載し、ようやくピアノ三重奏については完了しました。アルバムを聴いていてふと奏者について調べたくなった時に、奏者名で検索すると意外なアルバムに顔を出しているのに気づいたりします。

ピアノ三重奏曲1 - ハイドン音盤倉庫所有盤リスト(Piano Quartet, Trio 1 - Haydn Recordings Archive)
ピアノ三重奏曲2 - ハイドン音盤倉庫所有盤リスト(Piano Quartet, Trio 2 - Haydn Recordings Archive)

弦楽四重奏曲やピアノ四重奏曲などについてもかなり追記したんですが、あと少し残ってます。時間がある時に直していきたいと思います。

まあ、自分でちょこちょこメンテナンスして悦に入っているだけということで。趣味は結果ではなくプロセスが目的ですのでご容赦ください(笑)

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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