Haydn Disk of the Month - February 2017

なんだかこのところ、暖かくなったかと思えば、寒くなり、季節の変わり目とはいえ落ち着かない日々ですね。そうこうするうちに、ここ数日東京でも花粉が飛び始めたようで、目の周りがかゆいかゆい。今年も憂鬱な季節が到来しました。

先月は母親をつれて伊豆の爪木崎まで出かけ、水仙を見たり、温泉に入ったりしたんですが、その後母親をふくむ家人がインフルエンザにかかったり、母親も部屋でころんだからか脚をいためたりしたので、ちょっと歩くのも不自由になってしまいました。休みの日にもどこにも出かけることなくしばらく療養に専念しておりました。あんまり引きこもっていると体力が落ちてきますので、先週末、怪我も回復してきたので久しぶりに勝沼までドライブにでかけ、のんびりしてきました。もちろん私は今月も仕事にあけくれへとへと。私のストレス発散は当ブログの執筆と美味しいワイン探し。ということで、久々にワイナリーを訪ねていろいろ仕入れてきました。

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写真は勝沼のシャトー・メルシャンのカフェ。ここは前回車椅子で入りやすいことがわかったので再訪。ランチプレートを頼むとお安くワインの試飲ができる仕組み。もちろんドライバーの私はノンアルコールのロゼ・フリー(涙)

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そしてこちらは、シャトー・メルシャンから車ですこし行ったところの勝沼ワイナリーマーケット。店主が書いた勝沼のワインを紹介する本を手に入れたことから知ったお店。勝沼の代表的なワイナリーはほとんど行っていますが、それでも知らないワインがいろいろあって選び甲斐があります。品揃えは素晴らしいですね。もちろんみたこともないワインを数本仕入れて帰りました。ワインが好きな方には観光地的なぶどうの丘よりもいいかもしれません。

母親も久々の遠出でしたが、徐々に体力も回復しつつありまんざらでもなかったようでした。



さて、本題の今月レビューしたアルバムからベスト盤を選ぶ、月末恒例の企画です。

2月は久々に本記事を入れると15記事も書くことができました。月に15記事も書くのはほぼ1年半ぶり。特段時間に余裕ができたというわけではなく、いいアルバムに多く巡り合ったからというのが正直なところ。日頃一番時間がかかるのがどのアルバムを取り上げるか選ぶところ。これというアルバムが決まれば、それなりにスイスイいくのですが、これぞと思うに至らないアルバムばかりがつづくことも珍しくありません。今月は素晴らしいアルバムが多かったということで、あえて絞らず、3組を選びました!



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2017/02/08 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】マルクス・ベッカーのピアノソナタ集(ハイドン)

まずは新譜から、マルクス・ベッカーのピアノソナタ集。ピアノソナタはこれまでにも名演奏をいろいろ取り上げてきましたが、そんな中でも、ベッカーの演奏はハイドンのソナタの変化と機知を実に巧みなタッチで浮かび上がらせる超一級の演奏。あまりの面白さにグイグイ引きこまれます。全く未知の人でしたが、その実力は素晴らしいものがあります。ピアノが好きな方は必聴の名盤です。

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2017/02/16 : ハイドン–管弦楽曲 : ハンス・シュタトルマイア/ミュンヘン室内管の十字架上のキリストの最後の七つの言葉(ハイドン)

つづいて、ハンス・シュタトルマイアとミュンヘン室内管による「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」。この曲も名曲ゆえ、名演盤がいろいろありますが、このシュタットルマイア盤もそのいずれにも劣らぬ素晴らしい演奏。爽やかさ、深さ、気高さが高度にバランスした入魂の演奏。入手はなかなか難しいかとは思いますが、この演奏の素晴らしさは当ブログが推さずに誰が推しましょう。絶品です。

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2017/02/25 : ハイドン–ピアノソナタ : テレーズ・デュソーのピアノソナタ集(ハイドン)

最後は、美貌のピアニスト、テレーズ・デュソーのピアノソナタ集。デュソーも未知の人でしたが、これほどまでに気品に満ちた演奏は今まで聴いたことがありません。たかがピアノですが、この楽器の表現力の奥行きを思い知らされた感じです。現代ではこうした演奏はもう聴かれなくなってしまったのでしょうか。こちらもLP故、入手は容易ではないでしょうが、良いもは良いということで選出です。機会があれば是非聴いていただきたい名盤です。



この3組を選ぶのも一苦労したほど、今月はいい演奏が目白押し。どのアルバムも素晴らしい演奏が脳裏に蘇ります。

2017/02/27 : ハイドン–協奏曲 : エリザベス・ウォルフィッシュのヴァイオリン協奏曲など(ハイドン)
2017/02/26 : ハイドン–オラトリオ : ジョン・ネルソン/オランダ放送室内フィルの「天地創造」(ハイドン)
2017/02/20 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管の哲学者、47番(ハイドン)
2017/02/18 : ハイドン–ピアノソナタ : ニキタ・マガロフのピアノソナタXVI:48(ハイドン)
2017/02/12 : ハイドン–声楽曲 : ミシェル・コルボのテレジアミサ(ハイドン)
2017/02/06 : ハイドン–室内楽曲 : エステルハージ・バリトン・トリオのバリトン三重奏曲集(ハイドン)
2017/02/04 : ハイドン–ピアノソナタ : ギルバート・カリッシュのピアノソナタ集(ハイドン)
2017/02/03 : ハイドン–ピアノソナタ : フレデリク・マインダースのピアノソナタXVI:49(ハイドン)

3月もいいアルバムに出会えますように。


2017年2月のデータ(2017年2月28日)
登録曲数:1,361曲(前月比±0曲) 登録演奏数:9,988(前月比+90演奏)

(追伸)
sifareさん、旅するドイツ語の情報ありがとうございました! 前回のアイゼンシュタットにつづきハイドンの特集も非常に面白かったです。私はアイゼンシュタットは行ったことがないので、エステルハージ宮殿の映像などは貴重でした。あと、アイゼンシュタットはワインの名産地でもあるのですね。ワイン、探してみます!

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エリザベス・ウォルフィッシュのヴァイオリン協奏曲など(ハイドン)

ようやくCDに戻ります。最近手に入れた協奏曲のアルバム。これもいい。

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TOWER RECORDS(別装丁盤) / amazon / amazon(別装丁盤) / ローチケHMVicon(別装丁盤)

エリザベス・ウォルフィッシュ(Elizabeth Wallfisch)の指揮とヴァイオリン、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の演奏による、ハイドンの協奏交響曲、ヴァイオリン協奏曲2曲(Hob.VIIa:4、VIIa:1)の3曲を収めたアルバム。収録は1990年2月、ロンドンのアビーロードスタジオの第1スタジオでのセッション録音。レーベルは英Virgin classics。

このアルバム、リリースされたのはだいぶ前のものですが、コレクションの穴になっていたもの。最近その存在に気づき入手しました。ジャケットのデザインが同じくVirginからリリースされているクイケン指揮のエイジ・オブ・エンライトゥンメント管によるパリセットとテイストが似ていて懐かしい感じ。クイケンのハイドンの交響曲はVirginからいろいろリリースされているのですが、他は手兵のラ・プティット・バンドでパリセットだけがエイジ・オブ・エンライトゥンメント管なんですね。しかもパリセットが抜群にいい出来だった上に録音時期も同じ頃のもということで、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管のこの頃の演奏は悪かろうはずもないとの期待で入手です。

指揮とヴァイオリンのエリザベス・ウォルフィッシュについて、簡単にさらっておきましょう。

エリザベス・ウォルフィッシュは1952年オーストラリア生まれの古楽器ヴァイオリン奏者。12歳でABC(オーストラリア放送)のコンクールでデビュー。ロンドンの王立音楽アカデミーで学び、いくつかのコンクールで優勝して頭角を現しました。1974年にはカール・フレッシュコンクールで入賞し、ソリストとしてや、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、王立リヴァプール・フィルなどのオケのリーダーとして主にイギリスで活躍したとのこと。その後は古楽器奏者として活躍しており、このアルバムのオケであるエイジ・オブ・エンライトゥンメント管やハノーヴァー・バンドなどのリーダーを務めるとともに、祖国オーストラリアでもオーストラリア室内管、オーストラリア・ブランデンブルク管などのリーダーとして活躍。近年は教職にあり、王立ハーグ音楽院やロンドンの王立音楽アカデミーでバロック・ヴァイオリンを教えているとのことです。

さて、肝心の演奏ですが、ソロとオケが一体となって溶け合う素晴らしい演奏でした。

Hob.I:105 Sinfonia Concertante 協奏交響曲 [B] (No.105) (1792)
こちらのヴァイオリン以外のソロは次のとおり。

チェロ:デヴィド・ワトキン(David Watkin)
オーボエ:アンソニー・ロブソン(Anthony Robson)
バスーン:フェリックス・ワーノック(Felix Warnock)

この曲の優雅な入りの雰囲気が実にいい。古楽器オケですが響きが溶け合い、厚みもある聴きやすい録音。自然な定位感が心地よいですね。アビーロードスタジオの録音は何気にいい録音が多いんですね。ヴァイオリンをはじめとするソロ4人はことさら自己主張することもなく自然な演奏で、この曲を聴かせどころを踏まえているよう。特にヴァイオリンとオーボエの音色の美しさが一歩抜けている感じ。オケは非常にリズム感がよく、曲がいきいきと流れ、ソロも演奏しやすそう。ソロの間のメロディーの受け渡しの面白さと、ソロ陣とオケの呼応の双方の面白さに自然に酔える演奏。カデンツァも実に素直な演奏。祝祭感満点の1楽章を存分に楽しめます。
2楽章に入るとオーボエの妙技にヴァイオリンやチェロが寄り添い、メロディーを引き継いでいく手作りの素朴な音楽楽しみに包まれます。そして終楽章はソロとオケのスリリングな掛け合いが聴きどころですが、ソロもオケも実にリズム感がよく、ウォルフィッシュがそろだけでなくオーケストラコントロール能力でも類い稀な力をもっていることがわかります。ヴァイオリンも表現は控えめながらそつなく美音を聴かせます。この曲ではソロのバランスが悪いと流れが悪く聴こえてしまいますが、そうした心配も微塵もなく安定感抜群。オケが軽々と吹き上がる快感。これぞハイドン!

Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
今度はヴァイオリン協奏曲ですが、一聴して以前高評価だったマルク・デストリュベ盤に非常に似たタイプの演奏。デストリュベ盤ではデストリュベのヴァイオリンの妙技も聴きどころだったんですが、いい意味でこちらはソロとオケの一体感が聴きどころ。ウォルフィッシュのヴァイオリンは上手いんですが、オケに溶け込むような上手さ。これはこれで非常にいい感じです。ソロもオケも非常に美しい音色で心地よさ満点。美音に癒されます。ウォルフィッシュはソリストでもありますが、オケのリーダーとしての役割りを踏まえたソリストといった立ち位置でしょう。オケの音色の調和を重視しソロの個性は少し弱める独特のバランス感覚ですね。どう個性を表現しようかというソロが多い中、逆に非常に新鮮に感じます。
その良さが光るのが続く2楽章。この演奏はハイドンのヴァイオリン協奏曲のアダージョ楽章の美しさをもっともいい形で表現した演奏の一つと言っていいでしょう。ソロとオケの素晴らしい一体感からハイドンの曲の美しさが素直に浮かび上がります。純粋無垢なヴァイオリンのメロディーが折り目正しく踊り、華やかさをふりまいていきます。
フィナーレは躍動感とキレが折り目正しく穏やかなテイストにまとまった秀逸なもの。古典期の曲にふさわしい器の中でスリリングさや起伏、変化を聴かせる実に座りのいいもの。ハイドンの協奏曲の理想的な演奏と言っていいでしょう。

Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
ヴァイオリン協奏曲をもう1曲。普通はこちらを先にまわす曲順が多いんですが、こちらの方がメロディーが明快で明るく聴き映えがするということで最後にもってきたのでしょう。前曲以上にソロもオケもキレていて申し分なし。1楽章の晴朗な展開、2楽章の癒しに満ちた絶妙な美しさ、3楽章のそよ風のようなヴァイオリンのボウイングということなし。こればかりは聴いていただかなくてはわからないでしょう。

エリザベス・ウォルフィッシュの振る、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管による協奏曲集ですが、これは名盤です。ソロもオケも隅々までウォルフィッシュのコントロールが行き渡り、リズミカルに音楽が弾みます。ハイドンの曲の楽しさ、美しさ、センスの良さが全てつまった演奏と言っていいでしょう。オケのエイジ・オブ・エンライトゥンメント管は非常に反応がよく、ハイドンの音楽のツボを完全に掌握。やはりハイドンのヴァイオリン協奏曲はモーツァルトの曲以上に魅力がありますね。評価はもちろん全曲[+++++]とします。

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tag : ヴァイオリン協奏曲 協奏交響曲 古楽器

ジョン・ネルソン/オランダ放送室内フィルの「天地創造」(ハイドン)

久々の映像ものです。しかもこれがなかなか良い。

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TOWER RECORDS / amazon(別装丁盤) / ローチケHMVicon

ジョン・ネルソン(John Nelson)指揮のオランダ放送合唱団(The Netherland Radio Choir)、オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団(The Netherlands Radio Chamber Ohilharmonic)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴ映像を収めたDVD。収録は2010年6月、オランダのアムステルダム近郊の五稜郭のような要塞都市ナールデン(Naarden)のナールデン大聖堂でのコンサートのライヴ。レーベルはEUROARTS。

天地創造をとりあげるのは久しぶりです。しかも今回は映像。前からちょっと気になっていたアルバムですが、入手していないことに気づき手に入れました。指揮者もオケもなじみのないものでしたが、同じ組み合わせでバッハのマタイ受難曲、ロ短調ミサやベートーヴェンのミサ・ソレムニスなどもセットになった宗教音楽集バージョンもリリースされているなどかなり本格的な内容。また天地創造の歌手は一流どころが揃っており、期待できそうな予感がありました。歌手は下記のとおり。

ガブリエル:リサ・ミルン(ソプラノ)
ウリエル:ウェルナー・ギューラ(テノール)
ラファエル:マシュー・ローズ(バリトン)
エヴァ:ルーシー・クロウ(ソプラノ)
アダム:ジョナサン・ベイヤー(バス)

指揮者のジョン・ネルソンは1941年、アメリカ人の両親のもと、コスタリカで生まれ、シカゴ近郊のホィートン・カレッジ(Wheaton College)、ニューヨークのジュリアード音楽院で学び、1976年から87年までインディアナポリス交響楽団の音楽監督、1985年から88年までセントルイス歌劇場の音楽監督、以後91年まで首席指揮者、1983年から90年まではニューヨーク州カトナーのカラマー国際音楽祭の音楽監督などを歴任。欧米の主要オケへの客演履歴も豊富で、欧米では知られた人のようです。1998年はら2008年までパリ室内管弦楽団の音楽監督。現在はパリに住み、古典的な宗教曲の普及や合唱指揮などで活躍しているとのこと。一連のDVDは最近の活動の記録ということでしょう。

このDVDを記事に取り上げたということは、もちろん演奏が良いからに他なりません。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭のメニュー映像は美しい要塞都市のナールデンの空撮映像から始まり、演奏会場となったナールデン大聖堂が素晴らしいロケーションにあることがわかります。大聖堂といっても十字のプランをもつゴシック様式の聖堂で小規模なオケと合唱で聖堂の半分がうまり、奏者と観客がほぼ同人数という規模。もちろん天井は高く石造りのため残響は豊かですが、鑑賞に問題があるほどではなく、録音は上手く処理しています。映像はカメラに動きがあってかなり凝ったもので、美しい聖堂でのコンサートを十分活かしたもの。
第1部のはじまりから、堅実な手腕でネルソンがオケをコントロールしていきますが、オケはまったく乱れを見せず、かなりの腕前揃いとみました。オケの規模の割に迫力は素晴らしく、タイトに引き締まっていい演奏。そしてコーラスも大聖堂に響きわたる迫力があり、オケとコーラスのコントロールは流石なところ。なにより素晴らしいのが歌手陣。最近では珍しい、5人構成でガブリエルとエヴァ、ラファエルとアダムはそれぞれ2人づつ設定されますが、ラファエルのマシュー・ローズが図太く鋼のような響きで存在感十分。ラファエルは天地創造の演奏の要だけに、この演奏の大きなポイント。ウリエルは古楽での登場が多いウェルナー・ギューラでしなやかな歌唱。そしてガブリエルのリサ・ミルンは可憐というよりよく響く声で迫力十分。ガブリエルのアリアの表情の豊かさはかなりもの。この3人の素晴らしい安定感がこの演奏の魅力の一つですね。そして聴き進むうちに、ネルソンの棒がオケをグイグイ引っ張り、ライヴらしい素晴らしい高揚感を表出していきます。盛り上げどころを心得た煽りが実に的確。オケも見事にそれに応え、第1部の終盤から小規模オケながら怒涛の高揚感に包まれます。そしてこうしたところでのコーラスの分厚いハーモニーが大聖堂に満ちていく幸福感。オケもコーラスも渾身の演奏でクライマックスを迎えます。

第2部は名曲の宝庫。ガブリエル、ラファエル。ウリエルともに聴かせどころを見事な歌唱でこなし、ネルソンはこんどはじっくりと歌手を支える側にまわって堅実な伴奏に徹します。速めのテンポで曲を進めるので見通しよく進め、第2部が間延びすることなく、美しい曲が代わる代わる響きわたるネルソンの酔眼。

第3部に登場するエヴァとアダムは如何にと思って聴き始めると、最初のウリエルのウェルナー・ギューラのあまりに見事な歌唱といままでで一番艶やかなオケの演奏に耳を奪われます。エヴァのルーシー・クロウは高音の透明感が素晴らしい歌唱。そしてデュエットの相手のアダムのジョナサン・ベイヤーもキリリと引き締まった硬質な声でいいアンサンブル。オケも曲の流れに乗って包み込むように歌手を支えます。ネルソンはかなり丁寧に指示を出して曲をまとめていきます。2つ目のアダムとエヴァのデュエットのなんという癒しに満ちた入り。デュエットも天上の歌声のよう。特にルーシー・クロウの声の抜けるような美しさは素晴らしいですね。そして終盤に差し掛かると大きなうねりの波に乗りながらも細かい指示で全メンバーのまとめて曲の大きな渦に乗せていきます。ハイドンが晩年に全精力を傾けて書いた名曲のすばらしさが圧倒的な高揚感のなかに浮かび上がります。そして終曲の冒頭の力みなぎる響きから、フーガのようにメロディーが繰り返されクライマックスへ。ネルソンは最後まで集中してオケとコーラスに指示を出しながら頂点を目指します。最後は神々しさを交えた響きに至り終了。大聖堂に暖かい拍手が満ちました。全員がスタンディングオベイション。この日の会場にいた観客は幸福感につつまれたでしょう。

ジョン・ネルソンという未知の指揮者による天地創造のライヴ。映像作品としてはコンサートの模様を丁寧に収録し、当日のライヴを見ているような感動を味わうことができる素晴らしいプロダクションです。歌手、コーラス、オケともにレベルが高く、しかも天地創造の演奏としては理想的なロケーションでのコンサートで、映像作品としては非常に楽しめるものに仕上がっています。演奏だけをとればこれより上の演奏もありますが、これはこれで貴重なもの。評価は[+++++]とします。オススメです!
惜しむらくはBlu-rayではないこと。ハイヴィジョン映像に慣れた現代の視聴環境にDVDの品質はちょっと難ありといったところでしょう。

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テレーズ・デュソーのピアノソナタ集(ハイドン)

なんだかピアノの響きにはLPが合うようで、ピアノソナタの名録音がつづきます。

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テレーズ・デュソー(Thérèse Dussaut)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ2曲(Hob.XVI:49、XVI:52)とファンタジア(Hob.XVII:4)の3曲を収めたLP。収録についてはネットで色々調べるとおそらく1972年にリリースされたもののよう。レーベルはARION。

こちらも先日ディスクユニオン新宿店で仕入れたもの。LP売り場は適度に分類されているんですが、交響曲や弦楽四重奏曲はハイドンのコーナーがあるもののピアノ曲はH前後のいろいろな作曲家のアルバムが混ざっており、LP時代には現在もCD化されていない未知のピアニストのアルバムがまだまだあるようで、売り場構成と相まって宝探し的楽しみがあります。このアルバムもそうして発見した一枚。

ジャケットをよく見ると古いスケッチですが、明らかにハイドンのような顔をした男がフォルテピアノの横に座り、鍵盤の前には貴婦人が立っているスケッチ。調べてみるとフランスの画家、ドミニク・アングルの1806年の習作「森の家族」とのこと。アングルは1780年、南仏のモントーバン(Montauban)生まれで、トゥールーズ、パリで学んだのち、当時の若手の登竜門だったローマ賞を受賞し、政府給費留学生として1806年にローマに渡ります。この絵がパリトローマのどちらで書かれたのかはわかりませんが、ハイドンはパリにもローマにも行っていませんので、実際の場面ではなく、当時ヨーロッパ中で知られていたハイドンから音楽を学んでいる姿を想像してスケッチしたものでしょうね。当時のハイドンの人気を物語るものでしょう。LPの魅力はこうしたジャケットにもあるわけで、たかが印刷ですが、なんとなくいい雰囲気が漂うわけです。

さて、本題に戻って、奏者のテレーズ・デュソーについて調べてみます。

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テレーズ・デュソーは1939年、ヴェルサイユ生まれのピアニスト。父は作曲家のロベール・デュソー(Robert Dussaut)、母も作曲家のエレーヌ・コルヴァティ(Hélène Corvatti)。フランスでマルグリット・ロンとピエール・サンカンにピアノを学び、ドイツではロシアのピアニスト、ウラディミール・ホルボフスキに師事しました。1957年には国際ARDコンクールで優勝し、以後はコンサートピアニストとして活躍、現代音楽にも積極的に取り組んできたそうです。近年は教育者として活躍しているとのこと。

Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
しっとりとしたタッチから流れ出る音楽。女性奏者らしいタッチの柔らかさが印象的。サラサラと流れながらも要所でのアクセントはくっきりとつけていきます。まさに気品に溢れた演奏。LPだからか研ぎ澄まされたピアノの音色の美しさが際立ちます。ハイドンの曲のメロディーの美しさも展開の面白さもアイデアの豊富さもすべて折り込んでさらりと美しくまとめいる感じ。ジャケットのスケッチが、女性ピアニストが演奏を終え、ハイドンが満足げに微笑んでいる姿にも見えてきました(笑) 実に品のいい演奏。
アダージョに入ると、実際の音量以上に静けさを感じさせます。楽章がかわって、気配も変わった感じ。聴き手を包み込むようなオーラが発散しています。心に沁み渡るような浸透力。仄暗い部屋の真ん中でスポットライトを浴びながら静かにピアノの響きと向き合うッデュソーの心境がつたわるようです。後半の左手のアクセントの連続は澄み渡るような美しさ。実際の力感ではなく、力感を表現するのは音の対比のみでできるのだとでも言いたげなほど、力が抜けているのに音楽の起伏は険しく感じられる演奏。美しすぎるアダージョ。
3楽章はメヌエット。ことさら演奏スタイルを変えることなくさらりと入り、淡々と進めていきます。キラメキを増す右手にと、絶えず静けさを保ち続ける冷静さのバランスが絶妙。

Hob.XVII:4 Fantasia (Capriccio) op.58 [C] (1789)
こだまのようにメロディーが響き合う小曲。テンポよくすすむ曲想にあわせてタッチのキレも一段と鮮やかになりますが、なにより素晴らしいのが可憐な雰囲気に満ちていること。やはりデュソーの演奏の特徴はこの気品にあります。時折前曲のソナタの演奏では見せなかった激しいアクセントが姿を現してちょっとびっくりしますが、この小曲でのメリハリをきっちりつけようということでしょう。最後の終わり方もちょっと驚く間をとって遊び心をみせます。最後まで透徹したタッチとしなやかさが感じられる名演奏です。

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Hob.XVI:52 Piano Sonata No.62 [E flat] (1794)
曲の構えが大きい分、ぐっと迫力を増した入り。最初の曲ではしなやかさが印象的だったんですが、この曲では力感は十分。素晴らしい迫力に圧倒されます。もちろん繊細な響きの魅力は保っていますので気品に満ちた迫力です。この曲ではやはり力感の表現がポイントとみたのでしょう、1楽章はしなやかな中にも迫力が満ち溢れ、力で押していくようなところもある演奏。
そしてアダージョも打鍵の余韻を実に品良く響かせます。余韻の隅々までしっかりコントロールされた演奏。ところどころでかなり力を抜いた音階をちりばめたり、アクセント、特に左手のメロディーをデフォルメしたりすることで、この優雅な曲にくっきりとした表情の変化をつけていき、音楽の彫りを深くしていきます。
終楽章のプレストへの入りが実に印象的。連続音から始まるこの曲の表情を見事に演じます。タタタタと続く音を実に表情豊かにしあげてきます。このセンスこそデュソーの演奏の真骨頂。全編に気品が満ちているのは音の響きに関する鋭敏な感覚があってのことでしょう。この曲でも一つとして同じ音をならさぬようタッチは非常にデリケート。速い音階の滑らかさとアクセントの対比も見事。突然テンポを落としたりとハイドンのしかけた機知にも呼応します。曲の読みが深いですね。この曲も見事の一言。

ディスクユニオンの売り場から掘り起こしたアルバムですが、これは宝物レベルの名盤でした。まったくしらなかったテレーズ・デュソーというピアニストによるハイドンでしたが、ジャケットに移る美麗な姿そのままの気品に溢れた名演奏でした。音に対する鋭敏なセンスを持ち合わせ、ハイドンのソナタから実に深い音楽を引き出す腕前の持ち主。1曲目のXVI:49ではそのセンスの良さで聴かせ、ファンタジアではタッチのキレのよさ、そして最後のXVI:52では迫力と彫りの深さで圧倒されました。LPのコンディションも悪くなく、美しいピアノの響きを堪能できました。評価は全曲[+++++]とします。

このところの陽気でだんだん目の周りが痒くなってきました。魔のシーズン突入ですね(笑) めげずに頑張ります!

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tag : ピアノソナタXVI:49 ピアノソナタXVI:52 ファンタジアXVII:4 美人奏者

【追悼】スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ

大好きだったスクロヴァチェフスキが2月21日、亡くなってしまいました。93歳でした。

当ブログを書き始めてからスクロヴァチェフスキのコンサートには7回も通ったことになります。

2016/01/23 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー8番(東京オペラシティ)
2014/10/10 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)
2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

スクロヴァチェフスキの演奏を最初に知ったのは、確か2000年の年末にN響を振った第九の放送でした。当時私はまったく知らない指揮者でしたが、なにげなく放送を見ていると、テレビの画面からものすごい気迫で音楽が吹き出してくるではありませんか。1楽章がはじまってしばらくでぐいぐい引き込まれ、老指揮者の棒にオケが集中して、エネルギーが噴出。あとにも先にもテレビで放送される音楽にあれほど引き込まれたことはありませんでした。その時の強烈な印象が私のスクロヴァチェフスキとの出会い。その後、ブルックナーやブラームスの交響曲全集などを手に入れ時折楽しんでいました。

2009年にブログを書き始めてから、それまで何故か遠のいていたコンサートに再び通うようになって、ふとしたことから2010年にスクロヴァチェフスキのコンサートのチケットをとって実演に接しました。曲はブルックナーの8番。指揮台に上がるまでは脚を引きずるようによたよたと登場するのに、いざタクトを振り上げると一変。独特の短い指揮棒を振り下ろすとよたよた歩きだったことが信じられないようなものすごいエネルギーでオケをリードし、気づくと眼前にブルックナーの大伽藍が圧倒的な存在で迫ってきます。音楽は完全にスクロヴァチェフスキに支配され、オケも指揮者のエネルギーに対決するように力演。終演後の嵐のような拍手にお客さんに感謝する姿も感動的でした。老いてなお、ものすごいエネルギーを発散する姿に打たれたものでした。

そして、機会があるごとにコンサートに通ったようすは上にリンクしたとおり。奇遇にも最後に聴いた昨年のコンサートもブルックナーの8番でした。いつも、これが最後かもと思いながら、7回もの感動を味わうことができたのは幸運だったでしょう。ブルックナー以外にもベートーヴェンや自作までふくめて皆全身全霊を込めた演奏で、どのコンサートも終演後の感動は変わらず。

日頃はハイドンばかり聴いていますが、実演では現代音楽もふくめてハイドン以外もいろいろ聴いているなか、もっとも好きな指揮者でした。

コンサートの思い出をかみしめながら、未入手のアルバムを何枚か手に入れて、聴いてみようと思います。

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ご冥福をお祈りします。

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レイモン・レッパード/イギリス室内管の哲学者、47番(ハイドン)

はい、LPです(笑)

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レイモン・レッパード(Laymond Leppard)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲39番、22番「哲学者」、47番の3曲を収めたLP。収録に関する情報は記載されていませんが、別途リリースされているCDに含まれている47番が1968年12月の録音ということで、おそらく3曲とも1968年ころの録音だと思われます。レーベルは蘭PHILIPS。

このLPは先日開催した第2回ハイドンオフの当日、開催前の時間にディスクユニオンで仕入れたもの。レイモン・レッパードは地味な指揮者ですが、以前取り上げた演奏はなかなか良く、好きな指揮者の一人。そのレッパードのLPを見かけ、収録曲を所有盤リストで調べてみると、39番と47番は手許にCDがあるものの、哲学者については未所有音源だとわかり、手に入れたもの。しかも未所有の曲は好きな「哲学者」で、LPもオランダプレスのPHILIPS盤ということで、手に入れないわけには参りませんね。

2014/11/11 : ハイドン–交響曲 : レッパード、マッケラスの交響曲77番、34番、18番(ハイドン)
2014/03/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管の交響曲39番(ハイドン)
2013/06/01 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・ジャンドロンのチェロ協奏曲1番、2番
2012/08/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管のラメンタチオーネ
2011/02/20 : ハイドン–協奏曲 : アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン協奏曲
2010/11/03 : ハイドン–オペラ : ベルガンサのオペラアリア集
2010/06/05 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパードのハイドン

レッパードの略歴などについてはラメンタチオーネの記事をごらんください。今日はこのアルバムに含まれている3曲のうち、冒頭の39番は米Haydn HouseのCD-Rを取り上げており、その原盤がこのLPということで、哲学者と47番を取り上げましょう。39番もCD-RとこのLPの音質比較などをする余地があるのですが、もともとHaydn HouseのCD-Rは湖国JHさんからお借りしていたものということで、手元にないため、比較は断念です。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
どうもこの曲は好みのツボがあるようで、冒頭から朴訥な音楽が流れると一瞬にしてハイドンの世界に引き込まれます。規則的に刻まれるリズムに乗って木管楽器と弦楽器によって奏でられるメロディーの心地よいこと。LPもミントコンディションで言うことなし。音量を絶妙にコントロールしながらゆったりとした起伏が描かれ、いきなりの味わい深さ。特に音量をスッとおとしながら弱音器つきの弦楽器が奏でるやさしい旋律に癒されます。何もしていないのですが、曲の真髄をえぐる演奏にアドレナリン噴出。
2楽章のプレストは実に落ち着いた演奏。キビキビとしているのですが、盤石の安定感で、オケも軽々と楽しみながら演奏しているよう。1楽章のアダージョでグッと聴かせたあとの爽快なプレスト。まさに展開の妙が味わえます。3曲入りのLPの2曲目ということで、2楽章の終わりでLPをひっくり返さねばなりません。

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3楽章のメヌエットも実に堂に入ったもので、コミカルかつ美しいメロディーの連続にハイドンの交響曲の楽しさが炸裂。適度にキレ良く、適度に弾み、適度に落ち着いたまさに名演奏。この自然さは素晴らしい。
そしてフィナーレに入るとここぞとばかりにオケが踊りだします。弾む弾む。これは演奏していたら楽しいですね。よくぞこれだけ曲に素直に楽しんで演奏できるものです。よく聴くとアクセントに独特なところもなくはないのですが、決して自己主張するようなことはなく、最後まで曲に素直な演奏で楽しませてくれます。これぞハイドン!

Hob.I:47 Symphony No.47 [g] (1772)
つづいて47番。この曲はマリナーの名前付き交響曲集に含まれているのでこのLPではじめて聴くわけではありません。後記するようにこの曲にもニックネームがついているために、マリナーの選集を補完す役割を担わされたということでしょう。演奏のスタイルは哲学者と変わらないものの、曲想にあわせて、冒頭からキレよく入ります。哲学者でもそうでしたが、ホルンの音色が実に美しい。オケの音色に華やぎが加わります。曲が速い分、オケの精度は哲学者より少し荒い気がしなくもありませんが、そんなことが気になるような演奏でもなく、冒頭から曲に引き込まれっぱなし。リズムがイキイキと弾み、弦のボウイングも鮮やか。
2楽章は流石に「告別」と同時期のシュトルム・ウント・ドラング期の最盛期に書かれた曲だけあって、仄暗い陰りと深みに溢れた名曲。レッパードは相変わらず安定感抜群で、邪念なくハイドンの曲に込められたこの時代の空気を再現することに集中しているよう。変に感傷的になることもなく、味わい深くもありながら淡々と曲を進め、曲自体の魅力を聴かせる役に徹します。次々と展開するメロディーの面白さに耳が釘付け。さらさらと筆が運ばれるしなやかな筆致。
3楽章のメヌエットは途中から逆行するためこの曲にはパリンドロウム(回文)というニックネームがついています。短い曲ながらハイドンの遊び心が込められた名旋律。
そしてフィナーレは1楽章のキレ味と呼応するようにオケが鮮やかさを取り戻します。曲の規模に対してフィナーレの充実度が勝るように感じるほどフィナーレは展開していきます。レッパードもここにきて畳み掛けるように攻めて終わります。

レイモン・レッパードと手兵イギリス室内管によるハイドンの交響曲集ですが、レッパードの無欲のコントロールがハイドンの交響曲の魅力を上手く引き出している感じ。録音も流石はオランダプレスのPHILIPSだけあって、1960年代としては十分瑞々しく、曲を存分に楽しむことができます。ちなみに哲学者はやはり一歩味わい深さが違いますね。47番の方はそれに比べると少し劣る感じがします。ということで評価は哲学者を[+++++]、47番を[++++]といたしましょう。

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tag : 哲学者 交響曲47番 ヒストリカル LP

ニキタ・マガロフのピアノソナタXVI:48(ハイドン)

なんだかLPの勢いが止まりません。こうなったら今月はLPに特化します!

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amazon(別装丁CD)

ニキタ・マガロフ(Nikita Magaloff)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:48)、ベートーヴェンのピアノソナタ30番、リストの「パガニーニによる大練習曲」の3曲を収めたLP。収録情報は記載されていませんが、同音源を収録したCDの情報によると1960年8月のおそらくセッション録音。レーベルはPHILIPSの日本盤ですが、フォノグラムではなく日本ビクター時代のもの。解説にソナタが奏鳴曲と記されているところに時代を感じますね。

このLPは最近オークションで手に入れたもの。手元にマガロフの弾くハイドンのアルバムはヴァントが伴奏を務めるピアノ協奏曲くらいで、その演奏もあまり記憶にありませんでした。ところが最近記事にした、フレデリク・マインダースのピアノソナタを聴いて、マインダースのしなやかな演奏の原点がマガロフに師事していたというところにあるような気になり、マガロフのソナタを聴いてみたいと思っていたところ、タイミングよくオークションで見つけて手に入れたという次第。こうした巡り合わせもあるもんですね。

2017/02/03 : ハイドン–ピアノソナタ : フレデリク・マインダースのピアノソナタXVI:49(ハイドン)

ピアニストの演奏の個性というのはなんとなく師事したピアニストの影響を受けるもの。ブログを始めたばかりの頃、カルメン・ピアッツィーニの演奏が師事したハンス・レイグラフの演奏にそっくりだったので調べたらレイグラフに師事していたことがわかりびっくりしたことが、当ブログで奏者の略歴などをいちいち調べるようになったきっかけとなりました。

2010/02/15 : ハイドン–ピアノソナタ : ピアノソナタ全集のあれこれ

ということで、マインダースの、ハイドンの演奏としては珍しくリズムよりもしなやかさに聴きどころを持ってきた背景には師事したマガロフの影響があるだろうとの仮説を検証するためにマガロフを手に入れたという、歴史を遡る仮説検証的興味が脳内に充満している状態。ハイドン以外に特段詳しくもない私でも、ニキタ・マガロフといえばショパンを得意としていたようであるというくらいの感触は持っていて、仮説もそれほど的外れなものではなさそうであるとの憶測もあり、興味津々といったところ。

さらに歴史を遡るわけではありませんが、一応マガロフの略歴もwikipediaなどからさらっておきましょう。

ニキタ・マガロフは1912年、ロシアのサンクト・ペテルスブルクでジョージア(グルジア)貴族の家系に生まれたピアニスト。1918年に家族共々ロシアを離れてフィンランドに渡ります。家族ぐるみの付き合いだったプロコフィエフに刺激を受け、ウクライナ出身のピアニスト、アレクサンドル・ジロティとともに音楽を学び、その後パリ音楽院に進みピアノ学部長のイシドール・フィリップに師事、またパリ音楽院を卒業した1929年にはラヴェルに才能を認められます。マガロフも恩師であるイシドール・フィリップから優雅で折り目正しい趣味のよさを受け継いでいるとのこと。ピアニストとして活躍し始めたのは戦後になってからで、やはり、ショパンの演奏で知られるようになり、特に1974年から78年にかけてPHILIPSレーベルに録音したショパンのピアノ音楽全集は、初めての全曲録音としてのみならず、録音も良く、またマガロフの叙情的かつ端正な演奏が評判となった名盤とのことです。
教育者としても有名で、1949年、あのディヌ・リパッティの後任として1949年から1960年までジュネーブ音楽院の教授を務め、教え子にはマルタ・アルゲリッチ、マリア・ティーポ、イングリット・ヘブラーなど錚々たるピアニストがいます。
私生活ではヨーゼフ・シゲティの伴奏を務めていた縁で、シゲティの娘と結婚し、スイスのジュネーブに居を構えました。亡くなったのは1992年、スイスレマン湖畔のヴェヴェイとのこと。

マガロフの録音履歴を見ると、1950年代後半からポツポツと録音され始めていますので、今日取り上げるアルバムも1960年とごく初期のもの。しかも、ジャケットにもレーベル面にも誇らしげに”HI-FI STEREO”とグィーンと表示されており、ステレオ初期のもの。このレーベルは珍しいですね。

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Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
盤のコンディションはそこそこでしたが、2度ほどクリーニングしてノイズは綺麗さっぱり無くなり、演奏に集中できます。多少歴史を感じる雰囲気はありますが、ピアノの響きは非常にいい感じ。しなやかさは期待通りですが、叙情的すぎず、落ち着いたタッチから紡ぎ出されるピアノの音色が心地よいですね。前の記事のハンス・シュタットルマイアの演奏でも感じた「気品」に満ちた演奏。端正な中にも程よい芳香が感じられる演奏。この録音当時48歳くらいですので、この味わい深さは流石です。
このソナタは2楽章構成。2楽章に入ると、クッキリとメロディーを浮かび上がらせるタッチのキレを感じさせます。曲の勢いよりも少し遅れて盛り上がる独特の雰囲気。早いパッセージもさりげなくこなしますが、どこかに力の抜けた感じを伴い、優雅さがあります。ハイドンのソナタからは展開の面白さを強調する演奏が多い中、あえてさり気なく弾き進め、メリハリはメロディーを浮かび上がらせるところくらいで、やはりしなやかかつ雰囲気を重視した演奏。そう、仮説通り、フレデリク・マインダースの演奏の原型を感じさせる演奏でした。ただ鍵盤へのタッチから音がなるだけのピアノですが、こうした気配や魂のようなものが師から弟へ受け継がれていくわけですね。

つづいてベートーヴェンの30番、B面はリストの「ラ・カンパネッラ」を含む「パガニーニによる大練習曲」。ベートーヴェンも力感よりも味わいが勝る、まさに気品に満ちた演奏。そして、ショパンとともに得意としていたリストでは、驚くようなきらめきに満ちた演奏でした。これはいいですね。

わたしは、あまりイメージのなかったニキタ・マガロフでしたが、ひょんなきっかけから興味をもち、マガロフという人のことを調べ、その音楽を聴き、なんとなくこの人の音楽というか、独特の美学にふれたような気になりました。また、このところいろいろピアノの古い演奏を聴き、ピアノという楽器の表現力の幅広さをあらためて知った気がします。さらっと聴くとなにげない演奏ですが、実に深い演奏でした。ベートーヴェンとリストと組み合わされたハイドンという構図もいいですね。いいアルバムを手にいれることができました。評価は[+++++]とします。

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tag : LP ピアノソナタXVI:48 ヒストリカル

ハンス・シュタトルマイア/ミュンヘン室内管の十字架上のキリストの最後の七つの言葉(ハイドン)

やはりLPが続きますが、良いものは良いということでご容赦を。

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ハンス・シュタットルマイア(Hans Stadlmair)指揮のミュンヘン室内管弦楽団(Orchestre de Chambre de Munich)の演奏で、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版。収録はレーベル面にPマークが1974年とだけ記されています。レーベルは仏DECCA。

ハンス・シュタットルマイアは、モーリス・アンドレのトランペット協奏曲のDG盤の伴奏を務めた人といえばわかる人もいるのではないでしょうか。

2012/06/09 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレ/ミュンヘン室内管のトランペット協奏曲

ハンス・シュタットルマイアはオーストリア生まれの指揮者で作曲家。1929年、リンツの南の街ノイホーフェン・アン・デア・クレムス(Neuhofen an der Krems)生まれで、終戦後リンツ、およびウィーン音楽院でクレメンス・クラウスとアルフレート・ウールに指揮法を学んだ他、ヴァイオリンや作曲も学びます。1952年にシュツットガルトに移り、オーストリアの作曲家ヨハン・ネポムク・ダーフィトに主に作曲を学びました。その後、シュツットガルトで合唱指揮などを手始めに指揮者として活動し始め、1955年から1995年までこのアルバムのオケであるミュンヘン室内管弦楽団の首席指揮者を務めました。1976年以降はザルツブルク音楽祭にも招かれ活躍しているそう。録音も協奏曲の伴奏を中心に結構な数が残されており、堅実な指揮を旨としていたようです。

今日取り上げるアルバムは最近ディスクユニオンで仕入れたもの。仏DECCA盤という珍しいものであり、いつものようにクリーニングして針を落としてみると、DECCAらしいキレ味と仏盤らしい上品な響きを兼ね備えた素晴らしい響きが吹き出してくるではありませんか。あまりに見事な響きにうっとりとするほど。ということで記事にした次第です。

Hob.XX:1 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 [D] (1785)
非常に広い空間に気持ち良く響き渡る弦楽オケの音色。厚みはそこそこながら透明感とキレ味は十分。しかもこの曲の序奏に込められた力感を十二分に踏まえた入魂の演奏。しなやかかつ流麗、そして間をしっかりととって劇性も十分。この曲の深い情感を踏まえた見事な序奏です。次々と襲い来るメロディーの波に打たれます。
第1ソナタに入っても、フレージングの深さと燻し銀の弦楽器の音色は変わらず、歴史を感じさせる大理石の彫像の少しデフォルメされた立体感の心地よさのようなアーティスティックさと落ち着きが同居しています。音楽の安定感は揺るぎなく、自信に満ちたもので、ひたすら音楽に没入していく感じ。ここにきて弦楽器の響きの軽さというか風通しのよさがともすると重くなりがちなこの曲の圧迫感を巧みに避けているポイントだと気づきます。不思議に爽やかさも感じるのは音色に秘訣があったよう。
第2ソナタではさらにその爽やかさが曲の重厚な展開を中和し、むしろ午後の柔らかな日差しのまどろみのような気配をも感じさせます。ソロと全奏のしっとりとした対比の美しさもそこそこに、グッと音量の変化をつけたデフォルメで個性的な印象を作ってきます。曲も中盤に入るところで、微妙に踏み込みを見せてくるあたり、シュタットルマイア、かなりの手腕と見ました。特に音を美しく響かせることに対する感覚は非常に鋭敏。弦楽器のみで織りなすテクスチャーの豊かさはかなりのもの。
第3ソナタに入ると、表現の幅はまたまた少し踏み込み、語り口もより深くなってメロディーの展開を一つ一つ慈しみながら進めていくようになります。曲が進むに連れてだんだん表現が深くなっていく面白さ。このデリケートな変化こそこのゆったりした曲が続くこの曲の醍醐味でもあります。穏やかな演奏の中でも、時に大胆に、時に柔らかくと響きが千変万化。名曲ですね。

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LPをひっくり返して第4ソナタに。CDだと曲が切れ目なく続くんですが、LPならではのこの一呼吸も悪くありません。第3ソナタからのエネルギーが絶えずに引き継ぐ感じが第4ソナタの入りのポイント。それを受けて少し冷ますように展開する曲の面白さ。ゆったりとスロットルをコントロールしながら曲の勢いを自在に制御していきます。途中のソロがまた味わい深く、曲の流れに完全に一体となった流れの良さを保ち、見事な弓さばきで絵巻物が進みます。ソロは完全にオーケストラ同じ流れの中でメロディーを置いていきます。これは相当の腕前。
好きな第5ソナタ。非常に控え目なピチカートに鳥肌が立ちます。ピチカートの強さ一つで曲の雰囲気が一変。途中から弦の慟哭のような激しいアクセントも気高く雄大。激しい慟哭はLPならではの溝の転写がわずかに聞こえますが、それもLPの味わいでしょう。再び非常に控え目なピチカートにぞくっとします。一貫してしなやかな展開にこれだけの起伏が織り込まれ、まさに劇的な展開。この曲の表現を極めたと言っていいでしょう。
終盤、第6ソナタは曲想がガラッと変わってもやはり劇的な序奏から入ります。序奏が終わるとお花畑のような幸福感に包まれる優しいメロディー、そして険しい響きが交互に現れ、聴くものに展開の喜びと理解の試練を与えられているよう。ハイドン自身がこの曲に一方ならぬ情熱を注いていたことを思い知らされる素晴らしい音楽の展開。いつもながら凡人の想像力の遥か彼方の閃きが音楽となっていることに打ちのめされます。そして全てを許すような癒しに満ちた音楽に移る絶妙の展開へと続きます。
最後の第7ソナタはクライマックスの火照りの余韻を冷ますような落ち着きを取り戻し、曲を振り返るような郷愁と枯淡の境地の入り混じった雰囲気を感じさせます。7つのソナタの一環した展開の中に、ソナタごとの特徴を絶妙に描き分けてくる非常に多彩な表現力。素晴らしい技術の裏付けがあってのことでしょうが、それを感じさせない自然さを保っているのが素晴らしいところ。
そして、最後の地震はゆったりと落ち着いて、このオケの良いところが全てでた劇的ながら爽やかで、かつアーティスティックなもの。これまで聴いた地震の中でも最もアーティスティック。タイプは違いますがジュリーニの壮年期の演奏のような気品を感じさせる見事さでした。

ハンス・シュタットルマイアと手兵ミュンヘン室内管によるハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」ですが、この曲の管弦楽版の数多の録音の中でも1、2を争う名演奏でした。この爽やかかつ深い音楽の素晴らしさ、そして気品溢れる演奏は表現意欲やテクニックという座標とは全く異なる、ハイドンの音楽への深い愛情と指揮者の人生を通して会得した気品のようなものに裏付けられたもの。LPの溝から音楽というか、魂が浮かび上がってきたような素晴らしい演奏です。調べた限りではCD化されたことはなさそうですが、こうした名演奏が現代でも容易に手に入るようにしていただきたいものですね。見かけたら即ゲットをお勧めします。評価は規定外の[++++++]をつけたいくらいですが、平常心を保ち[+++++]としておきます。

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tag : 十字架上のキリストの最後の七つの言葉 LP

ミシェル・コルボのテレジアミサ(ハイドン)

再びLPに戻ります。

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ミシェル・コルボ(Michel Corboz)指揮のローザンヌ室内管弦楽団とローザンヌ声楽アンサンブルの演奏で、ハイドンの「テレジアミサ」を収めたLP。収録情報は掲載されていませんが、リリースは1977年の模様。レーベルはERATOの国内盤。

このLP、最近オークションで手に入れたもの。コルボのハイドンは以前に2度ほど取り上げており、そのどちらも絶妙な美しさの超名演だっただけに、このアルバムがオークションに出品されているのを発見した時は息を殺して周囲の動向に最新の注意を払い、厳かに落札した次第。

2010/12/19 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】ミシェル・コルボのスタバト・マーテル
2010/09/20 : ハイドン–声楽曲 : ミシェル・コルボのチェチーリアミサ

もちろん、コルボと言えばフォーレのレクイエムが有名で、まさに天上の音楽のようなしなやかな音楽が刷り込まれていますが、ハイドンのチェチーリアミサもスタバト・マーテルもどちらも絶品。実演でもラ・フォル・ジュルネでモーツァルトのレクイエムにバッハのロ短調ミサの名演を聴いていますので、実力は折り紙つき。このLPのテレジアミサも悪かろうはずもなく、いつものように到着したLPをクリーニングして針を落とすと、期待通りあまりに素晴らしい音楽が湧き出してくるではありませんか! 幸いLPも素晴らしいコンディションで、スピーカーの奥にオケとコーラスがしなやかに広がります。

歌手は次の通り。

ソプラノ:ユタ・シュプレッケルセン(Uta Spreckelsen)
アルト:ハンナ・シャウアー(Hanna Schaer)
テノール:ジョン・エルウィス(John Elwes)
バス:ミシェル・ブロダール(Michel Brodard)

Hob.XXII:12 Missa "Theresienmesse" 「テレジアミサ」 [B flat] (1799)
期待通り、いきなり透明感溢れるオケの音色に耳を奪われます。国内盤ですが音のキレも十分。導入のキリエから大河の流れの五とき盤石の安定感あるサウンドがスピーカーから吹き出します。なんでしょう、この図太い音色は。歌手陣もコルボの好みでしょうか、ソプラノからバスまで声質が揃って見事なハーモニーを作っていきます。そしてもちろん、コーラスが大波のうねりのごとき広がりでオケを包み込みます。ソプラノのユタ・シュプレッケルセンののびのびとした高音は見事。
スクラッチノイズは皆無で、続くグローリアも大河の如し。すべての音符が自然に鳴らされるコルボの至芸。曲に素直に演奏することが最上の結果をもたらすことを確信するいつものコルボの素晴らしいアプローチ。オケとコーラスの雄大な響きだけでもこの曲の真髄に触れた気分。途中から音量を落としアルト、バス、ソプラノ、テノールの順にソロに入りますが、全員がしっとりと落ち着いた歌唱でまとめてくるあたりの演出の見事さもコルボならでは。もはや自然さに神がかったようなオーラが滲みます。

LPを裏返してクレド。もはや完全にコルボのコントロールに身を任せて、オケとコーラスの大波のうねりを楽しみます。演奏者の煩悩は全く介在せず、ハイドンが書いたままの音楽が完全に再現されているような気になります。それだけ説得力のある演奏ゆえ、この演奏以外の演奏には混ざり物があるように聴こえるほど。宗教曲ゆえ、演奏者自身の心の純粋さが問われるのでしょうね。深く沈む所の闇の深さも見事。テンポもアクセントもハーモニーも全てが曲の定め通りに進んでいるように聴こえる快感。音楽に一本揺るぎない統一感が感じられます。
続いて短いサンクトゥスですが、この幸福感はなんでしょう。あまりの素晴らしさに言葉もありません。
そしてベネディクトスに入ると、一旦冷静さを取り戻しますが、実に味わい深いソプラノのソロが入るとやはり落ち着いていられないほどの見事な歌唱に釘付けになります。知らぬ間に4人のアンサンブルになりますが、バランスが完璧すぎて現実のことと思えないほど。奇跡のアンサンブルとはこのことでしょう。全員が完璧なタイミングで入り。全員が完全にコルボの棒の支配下にあります。これ以上の演奏がありえないほどの凄みを感じます。
そして最後のアニュス・デイ。なぜか終末を感じさせる陰りが、迫力を増して迫ってきます。これほど真剣な響きが心に迫る演奏はかつてあったでしょうか。コルボのコントロールの頂点はここにありました。そして曲は一変して明るい調子に変わり、最後に神への感謝の気持ちに包まれるよう。この表情の描きわけの自然ながらくっきりとした変化は多くの宗教音楽を振ってきたコルボならではのものでしょう。オケの表現力は最後まで見事の一言。最後は華やかに盛り上がって終わります。

コルボのミサ曲が悪かろうはずはないとの、それなりの感触を持って聴き始めましたが、さにあらず。悪かろうはずはないどころか、これ以上の演奏が誰ができるのかわからないほどの素晴らしい説得力に満ちた演奏に打ちのめされました。LPのコンデションも最高ゆえ、スピーカーから分厚いコーラスとオケの響きが溢れ出し、これまでのすべての演奏の記憶を塗り替えるような素晴らしい演奏でした。もしかしたらコルボのベスト盤と言ってもいいかもしれません。このテレジアミサの素晴らしい音楽はこのLPを聴いて初めて真価に触れた気分です。もちろん評価は[+++++]とします。

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tag : テレジアミサ LP

【番外】第2回ハイドンオフ開催

昨年8月にふとしたことから当ブログの読者の皆さんにお声掛けして、当ブログ始まって以来の「オフ会」なるものを開催した経緯は以前に書かせていただきました。

2016/08/17 : 徒然 : 【番外】真夏の夜の、、、ハイドンオフ開催!

それから半年。再びよくコメントをいただく方々にお声をおかけして、昨日2月10日に第2回ハイドンオフを開催いたしました。

前回参加していただき、当ブログの本文よりも濃厚なコメントで名盤にさらなるスポットライトを当てていただくSkunJPさんと若いのに恐ろしくマイナーな名演アルバムのコレクションを誇られる小鳥遊さんの2名は誠に残念ながらお仕事の都合で欠席、参加されたのはオーディオマニアとしても有名なだまてらさんと、今回初顔のHaydn2009さん、私と合わせて3名でのオフ会でした。

Haydn2009さんは、少し前にダグラス・ボストックの帝国、ラ・ロクスラーヌの記事でも紹介した通り、下記のサイトを運営している生粋のハイドンマニアです。

ハイドン作品辞典

このサイトではハイドンの全作品に加えて偽作まで含めて整理された情報が掲載されており、ディヴェルティメントやアリアなど、なかなか情報がない曲に至るまでホーボーケン番号で整理されており、私もよく参照させていただいております。また、2009年にはアイゼンシュタットやウィーンにも行かれているそうで、羨ましい限りです。

今回、Haydn2009さんが参加されるにあたり、なんと上記サイトの情報をまとめて自費出版された書籍をいただきました!

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日本語で読める信頼できるハイドンの作品リストは、おそらく大宮真琴さんの「新版ハイドン」以来なのではと思います。大宮さんの書籍も絶版になって久しく、ネットも含めて非常に貴重な情報ですね。

3人だけのオフ会でしたが、予想どおりというか、それ以外予想できないとおり、ディープな話題満載(笑)。普段の実生活では全く話題にならないハイドン、音楽、オーディオなどの話題で大いに盛り上がりました。もちろん、隣席の冷たい視線を浴びずに済むよう、個室居酒屋を手配。時を忘れてハイドン談義に花が咲きました。そう頻繁にはできませんが、今後もたまには開催していきたいと思いますので、ご参加の要望があれば、ブログのメールフォームかTwitterのアカウントまでお知らせいただければと思います。

適度に酔っ払ってお店を出るときに、勢いで1枚パチリ(笑)

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他の皆さんも掲載許可を頂きましたので記念に載せておきます! 右からHaydn2009さん、だまてらさん、私の順です。

なお、オフ会の最中に狂言の話になったのをきっかけに、終了後、四谷三丁目の狂言の会場としても使われる隠れ家的いい雰囲気のお店でだまてらさんと2次会。なんとトーレンスのTD124やマッキントッシュなどのヴィンテージシステムでマイルスのカインド・オブ・ブルーを聴きながらもう一杯堪能。マイルスもコルトレーンもビル・エヴァンスもポール・チェンバースも実に深みのあるいい響きで楽しめました。聴き入るとマスターがヴォリュームをすっと上げ、音がぐっと前に。至福のひとときでした。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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