カンブルラン/読響:太鼓連打、巨人(東京芸術劇場)

4月8日土曜は以前からチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

Cambreling103.jpg
読売日本交響楽団:第196回土曜マチネーシリーズ

現在読響の常任指揮者として活躍しているシルヴァン・カンブルランが、ハイドンの太鼓連打を取り上げるということでチケットを取ったもの。組み合わされる曲はマーラーの巨人。上のチラシのデザインを見ても明らかなとおり、メインディッシュはマーラーですが、もちろん私の興味は太鼓連打。

カンブルランが特別に好きなわけではありませんが、これまで随分コンサートに行っています。

2017/02/01 : コンサートレポート : カンブルラン/読響:メシアン「彼方の閃光」(サントリーホール)
2015/04/11 : コンサートレポート : カンブルラン/読響のリーム、ブルックナー(サントリーホール)
2014/04/18 : コンサートレポート : カンブルラン/読響のマーラー4番(サントリーホール)
2012/12/21 : コンサートレポート : カンブルラン/読響の第九(サントリーホール)
2012/04/16 : コンサートレポート : カンブルラン/読響の牧神の午後、ペトルーシュカ
2010/11/22 : コンサートレポート : カンブルラン/読売日響の朝、昼、晩
2010/07/14 : コンサートレポート : カンブルランのデュティユー
2010/05/02 : ハイドン–交響曲 : カンブルランのハイドン
2010/05/01 : コンサートレポート : カンブルランのハルサイ爆演

これまで読響のコンサートにはいろいろなプログラムが取り上げられましたが、私の聴いたなかでよかったのはやはり現代音楽。先日聴いたメシアンも素晴らしかったし、デュティユー、リームも絶品。最初にカンブルランを聴いたのが春の祭典でしたが、そのあと火の鳥もペトルーシュカも聴いて、こうしたプログラムでのカンブルランの色彩感豊かなコントロールが現代曲に華やかさを加え、フランス人らしいキレを感じさせているんですね。

逆にあまり良くなかったのはブルックナー。読響でブルックナーといえばスクロヴァチェフスキですが、カンブルランの演奏はフレーズがせかせかして明らかにブルックナーには合わない感じがしました。

やはりカンブルランは現代音楽で、独墺系の音楽に合わないのかといえば、さにあらず。2010年にはハイドンの朝、昼、晩を聴いていますが、これがなかなか良かったんですね。その記憶があって、今回は太鼓連打目的でチケットを取ったわけです。



IMG_8170.jpg

会場は池袋の東京芸術劇場。前日に母親が骨折の治療のため入院したのでバタバタしていましたが、前日中に手続きまで含めて終わりましたので、コンサートに行ける余裕ができました。

IMG_8172_20170409010832839.jpg

マチネーということで開演は14時。いつもどおり少し早めについて、バーラウンジでワインを飲みながら腹ごしらえです。

IMG_8173.jpg

席は2階のステージ右脇。サントリーホールならRAあたりです。15分前くらいに席についてもらったチラシなど眺めながら開演時刻を待ちます。ステージ上は1曲目のハイドンに合わせて小編成のオーケストラ用の配置、、ですが、ハイドンの演奏に使うティンパニの後ろにはさらにティンパニが2台用意されており、後半のマーラー用のパーカッション群もちらほら見えます。

程なく開演時刻になり、オケのメンバーが登壇。コンサートマスターは荻原尚子さん。4月1日付でコンサートマスターに就任とのことで、このコンサートがデビューのようです。チューニングが終わり、カンブルランが登場。最初の入りはタクトで指示せず、ティンパニに任せます。遠雷のように入るものの最近の流行りか、途中から乱打に。1楽章は非常にシャープな演奏。ノンヴィブラート気味な弦の透明な響きをベースに、テンポよく各パートがクッキリ鮮明にメロディーを重ねます。カンブルランが首席指揮者になってからかなり演奏を重ねているので、各楽器もカンブルランの指示どおりに鮮やかな演奏。木管のニュアンスの豊かさに、金管群も非常に緻密な演奏で応えます。1楽章の構成感の見事さは惚れ惚れするほど。一部トランペットが音を外したところがある他は完璧な演奏でした。
素晴らしかったのが2楽章。一定のテンポでサクサク進めますが、音楽自体は非常に豊か。特に新コンサートマスターの荻原尚子さんのソロヴァイオリンのゆったりとした美音は別格。いい人をコンサートマスターに迎えましたね。
そしてメヌエットも見通しの良い展開。音量をスッと落としたり、気持ちよく吹き上がったりとスロットルコントロールの面白さが存分に活かされた演奏。
フィナーレは、この曲の総決算とばかり、古典の枠の中で自在に吹き上がるオケの小気味好いキレ味と、実にニュアンス豊かに鳴り響くメロディーの交錯に、最後は分厚く響き渡るオケの迫力を存分に聴かせて終了。やはりカンブルランの抑制を効かせながらも巧みにオケをコントロールするハイドンは素晴らしいですね。充実した演奏に会場からも万雷の拍手が降り注ぎます。

休憩中にステージ上は大オーケストラ用の配置に様変わり。休憩後もコンサートマスターは萩原さん。マーラーも実演では色々聴いていますが、1番「巨人」は初めて。カンブルランが登壇し、最初のフラジオレットの弱音が鳴り出し、遅めのテンポで入ります。カンブルランは弱音部を実にニュアンス豊かに丁寧に描いていくので、録音ではなかなかニュアンスが伝わりにくいところがしっかりと描かれていきます。1楽章ではステージ下手の扉を開け舞台裏からファンファーレが鳴り響く箇所が何箇所かありますが、扉の開き具合を微妙に変えて音量をコントロールしているのが印象的でした。太鼓連打同様、木管楽器の柔らかな響きと、金管陣の安定感は素晴らしいものがありました。流石にハイドンとは規模が異なる大オーケストラゆえ迫力はかなりのもの。静寂からオケの爆発に至るコントロールも見事に決まり1楽章を終えます。
2楽章はヴィオラやヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどの弦楽器が大活躍。特にヴィオラの力感漲るボウイングは見事。オケを俯瞰できる席だったので、メロディーをパートごとに受け継いでいくやり取りの面白さが視覚的に入って来ます。タイトに引き締まったオケの響きがグイグイ迫ってくる快感。暗澹たる3楽章も実に丁寧なコントロールで聴きごたえ十分。3楽章までは冷静さも緊張感も保ち続けて見事な展開でした。
そしてフィナーレはオケの爆発に始まり、何度かの爆発を経て壮麗な最後に至りますが、このフィナーレの最後が少し力みが見られてちょっとくどい感じを残してしまいました。ここがマーラーの難しいところでしょう。4楽章の中盤までは理性的にコントロールが行き渡っていましたが、最後はゴリ押しした感じで惜しかったですね。もちろん会場のお客さんからはブラヴォーの嵐。ほおがびりつくほどの迫力でのフィナーレは素晴らしい迫力でした。読響も素晴らしい精度でカンブルランの指示に応じていましたので、カンブルランも満足そうに奏者を讃えていました。

おなじみのカンブルランの振ったハイドンの太鼓連打とマーラーの巨人。大迫力の巨人を楽しんだ人も多かったと思いますが、私はカンブルランの太鼓連打が深く印象に残りました。交響曲の父が書いた古典の完成形としての交響曲の秩序と機知と美しいメロディーが溶け合った曲に対し、その100年近く後に交響曲がたどり着いた、世紀末の成熟と退廃。演奏の方も。古典の名曲を現代音楽の奇才がきっちり料理しきった演奏と、マーラーという作曲家の作品を丹念に描きつつも、その演奏の難しさも感じさせたコンサートでした。

この秋、カンブルランはメシアンの歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」を取り上げるとのこと。まずは手元のメシアン全集のケント・ナガノの演奏でも聴いて、どうするか決めようと思います。CD4枚分は長いですからね〜(笑)

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 東京芸術劇場 マーラー 太鼓連打

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ブルックナーマーラーサントリーホールヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉LP交響曲97番告別交響曲90番交響曲18番アレルヤ交響曲99番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ラメンタチオーネモーツァルトヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:32ベートーヴェン驚愕哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲交響曲80番交響曲81番交響曲19番交響曲全集古楽器交響曲21番マリア・テレジアピアノソナタXVI:20クラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり無人島騎士オルランドBlu-rayチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲10番交響曲12番交響曲9番交響曲11番太鼓連打ロンドン交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:4天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:7ドニぜッティライヒャオーボエ協奏曲ロッシーニピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ストラヴィンスキーミューザ川崎シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26タリスモンテヴェルディアレグリバードパレストリーナすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:39美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノ三重奏曲日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードカノンドイツ国歌モテットオフェトリウムスタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番変わらぬまこと交響曲107番交響曲108番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
94位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
9位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ