エマーソン弦楽四重奏団のOp.20のNo.5、冗談

今日は珍しくメジャー盤を取りあげます。

EmersonSQ.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / iTunesicon

エマーソン弦楽四重奏団(Emerson String Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲7曲(Op.20のNo.5、Op.33のNo.2「冗談」、Op.54のNo.1、Op.64のNo.5「ひばり」、Op.74のNo.3「騎士」、Op.76のNo.2「五度」、Op.77のNo.1)を収めたアルバム。収録は2000年12月、2001年1月、2001年5月、ニューヨークのクィーンズ・カレッジのレフラック・コンサートホールでのセッション録音。レーベルは名門DG。

このアルバム、”THE HAYDN PROJECT”との輝かしいタイトルがつけられています。奏者のエマーソン弦楽四重奏団はDGの看板アーティストとして、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ショスタコーヴィチ、バルトーク、ヴェーベルンなど主立った作曲家の弦楽四重奏曲全集を録音しています。名門レーベルの重責を担うクァルテットといって間違いないでしょう。

このアルバム、手に入れたのはかなり前でしたが、あまりちゃんと聴いていませんでしたし、所有盤リストに登録し損ねていたので、ちょっと忘れられた存在となっていました。最近CDラックを整理していて、おっとこれあまり聴いていなかったと気づいてようやく注目した次第です。

エマーソン弦楽四重奏団について、さらっておきましょう。エマーソン弦楽四重奏団は1976年に設立された、ニューヨークを拠点に活動するクァルテット。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に所属するクァルテットです。すでにアルバムは30種以上リリースされ、グラミー賞も受賞しています。エマーソンと言う名前はアメリカの哲学者、詩人であるラルフ・ワルド・エマーソンに由来しているとのことです。この演奏当時のメンバーは下記の通り。

ヴァイオリン:ユージン・ドラッカー(Eugene Drucker)
ヴァイオリン:フィリップ・セッツァー(Philip Setzer)
ヴィオラ:ローレンス・ダットン(Lawrence Dutton)
チェロ:デイヴィッド・フィンケル(David Finckel)

第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンは曲によって交代するという体制だそうです。2人のヴァイオリンの力量が拮抗しているということでしょうか。

今日はこのアルバムから、最初の2曲を取りあげます。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
聴き慣れたメロディーラインですが、弦の音に深みがあって、良い楽器を使っていそうな響き。少々残響が多めのホールでの収録。エマーソンの演奏は太く安定感がありながらビロードのようなきめ細かい肌合いの弦の音色に特徴があります。テンポやフレージングはオーソドックスな範疇ですが、良く磨き込まれている感じがつたわります。アメリカのクァルテットらしく、癖もなく、きっちり機能的な印象もあり、ほの暗いはずのこの曲の陰りよりも、じつは健康的な印象が残るのが不思議なところ。音楽の根底に美しく磨き上げながらも、あっけらかんとした明るさのようなものがある印象。続くメヌエットでも美しくメロディーラインを描いていきますが、陰影の深さはそこそこあるものの、美しい響きをつくることに集中しているような印象があります。高い技術に裏付けられた均質な演奏がそう感じさせるのでしょうか。響きを美しくすることと音楽の深さでは前者に力点があるよう。
エマーソンの意図が功を奏しているのが続くメヌエット。やはり響きの美しさは一級、しかもフレージングの自在さは一段上がって、この曲の面白さを良く踏まえた演奏。滑らかな演奏を聴いているうちにえも言われぬ境地に。
フィナーレのフーガは精度の高いアンサンブルと独特の燻製をかけたような音色の魅力がうまく出た演奏。後半の迫力はこのクァルテットのポテンシャルを示すよう。

Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
前曲の印象からこの曲はエマーソンに合うと思っていましたが、ドンピシャ。やはりこの晴朗な明るさと快活さの表現は得意としているようです。リズミカルに進むこの曲の1楽章は、この曲に求められる快活さをじつに上手く表現しています。ロシア四重奏曲の澄み渡るような晴朗さはエマーソンにぴったり。グイグイ攻めていきます。楽器が良く鳴っている感じ。
スケルツォに入ると、鮮明さとドライヴ感がさらに上がり、一定のリズムに乗ってヴァイオリンが伸び伸びとメロディーを乗せていきます。キレの良さも相変わらず。
前曲同様ラルゴの磨き込まれた美しい響きが別格の美しさ。とくにヴァイオリンの凛とした引き締まった響きが旋律をクッキリ浮かび上がらせて、鮮明な音楽をつくっていきます。
冗談という曲名のもととなったコミカルなフィナーレは、正攻法の演奏でちょっと真面目過ぎるきらいもあります。ヴィオラとチェロのやわわらかな音色が表情を穏やかにしていますが、コミカルな印象は後退。この楽章を聴くと真面目なクァルテットだという印象を強くします。

エマーソン弦楽四重奏団のハイドンは、高い技術に裏付けられた、美しい響きが特徴の演奏でした。演奏の質は非常に高く、弦楽四重奏の面白さを十分感じさせる一方、響きを磨く事に集中しているようで、音楽自体の面白さ、表現の面白さは、すこし控え目。音楽の深さと言う面では、先達のハイドンの名演奏とは少し距離があるようにも感じます。Deutsche Grammophoneの看板アーティストとして弦楽四重奏の有名曲をきっちり録音するという意味では安定した力をもっているのでしょう。ハイドンの弦楽四重奏曲を教科書的演奏で楽しむ演奏というところでしょう。評価は両曲とも[++++]としておきます。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲Op.33 冗談

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

剃刀ひばり古楽器弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:268人のへぼ仕立屋に違いない東京オペラシティバードタリスパレストリーナモンテヴェルディアレグリ天地創造すみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ライヴ録音マーラーストラヴィンスキー弦楽四重奏曲Op.9アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:6交響曲97番ヒストリカル告別交響曲1番美人奏者ピアノソナタXVI:39四季迂闊者交響曲70番交響曲12番東京芸術劇場太鼓連打ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:3アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4SACDバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンディヴェルティメントヴェルナーモーツァルトベートーヴェンシューベルトLPピアノソナタXVI:38ラメンタチオーネ哲学者交響曲80番交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番協奏交響曲ヴァイオリン協奏曲DVDピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:20サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76皇帝ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出チェロ協奏曲ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33軍隊リヒャルト・シュトラウス騎士弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲4番無人島交響曲42番ベルリンフィル交響曲19番ホルン信号弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲87番交響曲86番フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番オーボエ協奏曲リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10奇跡交響曲18番交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ピアノソナタXVI:8ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲108番交響曲107番変わらぬまこと交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲2番交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
151位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
12位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ