シャルトル弦楽四重奏団のOp.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5(ハイドン)

8月も終わりに。暑い暑い夏でした。でしたといってもまだ暑い日が続くかもしれませんね。8月は弦楽四重奏を集中的に取りあげましたが、最後に到着した1枚を取りあげます。私の所有盤リストにないアルバムをいつも貸していただく湖国JHさんから届いたアルバム。

ChartresQ.jpg
amaozn(mp3)

シャルトル弦楽四重奏団(Quatuor à Cordes de Chartres)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5の3曲を収めたアルバム。収録は1992年9月、パリの西方60kmほどの所にあるトロンブレ・ル・ヴィコントという街の聖マルタン教会でのセッション録音。レーベルは仏BNL PRODUCTIONS。

シャルトル弦楽四重奏団の演奏は手元に「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」がありますが、調べてみると他にもう1枚、Op.20のNo.5、鳥、五度を収めたアルバムがあるようですね。

シャルトル四重奏団は1984年に結成されたクァルテットで、アマデウス四重奏団、ジュリアード、アルバン・ベルク、ファイン・アーツなど錚々たるクァルテットから指導を受けたそうです。情報が少ないためあまり細かい事はわかりませんが、簡単なウェブサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Quatuor de Chartres : qatuor a cordes

この録音当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:パトリス・レグラン(Patrice Legrand)
第2ヴァイオリン:ロベール・アリボー(obert Aribaud)
ヴィオラ:ジル・デリエージュ(Gilles Deliège)
チェロ:フィリップ・ペナングー(Philippe Pennanguer)

Hob.III:67 / String Quartet Op.64 No.3 [B flat] (1790)
フランスのクァルテットらしく少し線の細さを感じさせながらもクッキリと軽いタッチが特徴の入り。適度に鮮烈
、大きなメリハリよりもフレーズ事にしなやかに表情をつけながら、流れの良さを意識した一貫した演奏。普通もうちょっと第1ヴァイオリンが目立つ所でしょうが、このクァルテットは4人対等、というより第1ヴァイオリンが控え目で、4人のアンサンブルの織りなすリズミカルな表情の方に狙いがあるよう。奏者ごとの掛け合いの面白さが聴き所。1楽章は軽めの入り。
続くアダージョは彼らの特徴がぐっと引き立ちます。4人がしっかり深いフレージングで絡まって、深い音楽に入ります。クッキリと透明感ある音色による深い音楽なので、爽やかさも保って程よいバランス。重さはなく、音楽にも澱みがありません。癖がないのに深さを感じるなかなかの演奏。チェロが時折ぐっと踏み込んできて、音楽にメリハリをつけていきます。
メヌエットも力みなく穏やかなもの。構えのない,穏やかな心境を映しているような実に晴れ晴れとした音楽。ただただ音楽の演奏を楽しんでいるよう。不思議と凡庸さは感じず、朗らかさが印象に残ります。
前楽章のニュアンスを保ちながらフィナーレに入ります。フィナーレも全く構えなし。力感は異なりますが、先日聴いたスメタナ四重奏団と似た音楽を感じます。一人一人の奏者が折り重なるようにしてしなやかな音楽を織り上げていくよう。スメタナより若い分、フレッシュさと透明感が漂って、モダンな印象もあります。なかなか玄人好みの演奏。不思議と豊かな気持ちになる演奏。悪くありません。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
短調の緊密な音楽。曲にのめり込む事なく予想通り淡々とした入り。すこし粗さがあるのが良い意味で表情を豊かにしています。淡々と音楽をこなしていくので、曲に込められた創意を聴き取ることに集中できます。音楽の流れの中に適度なメリハリ、適度な鮮烈さがあるので淡々としながらも単調にはなりません。
メヌエットは短い楽章。しなやかさを保ちながらほどほどのキレ。非常に落ち着いた演奏。音楽の起伏の変化を穏やかな心情で楽しむよう。
やはりこのクァルテットの持ち味はアダージョの透明感を保った深い音楽です。前曲と同様、クリアなのに実に深い音楽が流れ出してきます。とくにヴァイオリンの高音分のキリリとしたクリアな音色がそう感じさせるのでしょう。そして良く聴くと抑えた部分のコントロールが実に緻密である事に気づきます。
フィナーレも安心して聴けます。この曲も素晴しい出来。

Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
最後は明るい曲。速めのテンポでこの曲のリズミカルな面白さを強調するよう。4人の線は適度に荒れて緊密な一体感をもつような演奏ではありませんが、音楽が粗い感じはしません。不思議とライヴ感があり、生演奏を眼前で聴いているような印象。このアルバムでは一番フレッシュな演奏。勢いで一気に聴かせてしまいます。曲ごとにスタンスをきちんと変えてきています。
得意の緩徐楽章。自然なのに深いニュアンスがきっちり表現できるあたり、テクニックとは異なる次元の音楽性をもっているようですね。
スケルツォは珍しく溜めが目立ちます。この曲では前2曲とは異なり楽章感の対比を結構鮮明に弾きわけています。フィナーレはアルバムの終結にふさわしい穏やかさ。このクァルテットの得意な表情を存分に感じさせ、ハイドンの楽譜どおり、自然に虚心坦懐に音にしていきます。この終楽章の自然さはこのアルバム一番の聴き所。何でもない演奏にも聴こえますが、その中から実に深い音楽が聴こえてきます。音楽がすすむにつれて穏やかに盛り上がる感興。静かな音楽から豊か感情が沸き立つよう。体が音楽にあわせて自然に動きます。最後はびしっと決めて終わります。

聴き始めは自然なソノリティが印象的な演奏だと感じましたが、聴き進めるにつれて、このクァルテットの術中にはまったよう。決して派手な演奏でも。劇的な演奏でもありませんが、タイプの違う3曲を並べて、このクァルテット流に穏やかに料理する腕前をみてくれと言わんばかりの演奏。それぞれ家庭料理をプロが料理したように、見た目は普通でも、口に含んだとたんにプロの仕業とわかる深い味わいが広がる感じと言えばいいでしょうか。私は非常に気に入りました。弦楽四重奏曲をいろいろ聴き込んだ玄人の人に是非聴いていただきたい味わい深い演奏です。評価は3曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、いつも素晴しいアルバムありがとうございます!

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.64 弦楽四重奏曲Op.42 弦楽四重奏曲Op.33

コメントの投稿

非公開コメント

シャルトルの2枚は、初めて聴いた時は困惑しました。

独特の浮遊感みたいなものがあって、中々前に進まない。

正直、散漫な演奏だなって(笑)

1stが控え目だから、きっとそんな印象を受けたんでしょうね。

でも不思議と手放せなかった。

改めて聴くとこれはこれで好いなぁ。

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
>独特の浮遊感
そうですね、なんとなくとらえどころのない感じはします。このアルバムでは最初の曲にその感じが強いですので、なおさらそう感じさせるのかもしれませんね。
良く聴くとなかなか奥行きの深い演奏なんですね。聴く時の心境等もありますので、久しぶりに聴くとまた違った印象をもつことも多いですね。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ブルックナーマーラーサントリーホールヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉LP交響曲97番告別交響曲90番交響曲18番アレルヤ交響曲99番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ラメンタチオーネモーツァルトヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:32ベートーヴェン驚愕哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲交響曲80番交響曲81番交響曲19番交響曲全集古楽器交響曲21番マリア・テレジアピアノソナタXVI:20クラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり無人島騎士オルランドBlu-rayチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲10番交響曲12番交響曲9番交響曲11番太鼓連打ロンドン交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:4天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:7ドニぜッティライヒャオーボエ協奏曲ロッシーニピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ストラヴィンスキーミューザ川崎シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26タリスモンテヴェルディアレグリバードパレストリーナすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:39美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノ三重奏曲日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードカノンドイツ国歌モテットオフェトリウムスタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番変わらぬまこと交響曲107番交響曲108番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
109位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
9位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ