ファイン・アーツ四重奏団のOp.74

今日は弦楽四重奏曲。以前取りあげてなかなか味わい深い演奏を聴かせたファイン・アーツ四重奏団の古い演奏のアルバム。

FineArts72.jpg
Haydn House

ファイン・アーツ四重奏団(The Fine Arts Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.1、No.2、No.3「騎士」の3曲を収めたCD-R。収録の情報は書かれていませんが、ファイン・アーツ四重奏団のウェブサイトに原盤のLPの収録情報が1964年と記載されています。レーベルは何度か紹介している米Haydn House。このアルバムもいつもCDを貸していただく湖国JHさんにお借りしたもの。

ファイン・アーツ四重奏団のアルバムはこれまで2度取りあげています。

2012/05/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団の「ひばり」
2011/01/04 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団のOp.77

何れも高評価をつけていますが、ひばりが1980年代、Op.77が1990年代終盤の演奏であるのに対し、今日取り上げるアルバムは1964年とかなり遡った年代の録音。しかもメンバーは全員入れ替わってますので、クァルテットとしては同じながら、実質的には異なるクァルテットです。はたして、後年の演奏に聴かれた各メンバーの自在な表現による味わい深い演奏のオリジンが感じられるでしょうか。このアルバム録音時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:レオナルド・ゾルキン(Leonard Sorkin)
第2ヴァイオリン:アブラム・ロフト(Abram Loft)
ヴィオラ:ベルナルド・ザスラフ(Bernard Zaslav)
チェロ:ジョージ・ソプキン(George Sopkin)

Fine Arts Quartet

ファイン・アーツ四重奏団のウェブサイトでは、歴代のメンバーがきちんと記載されている他、過去のディスコグラフィーも昔ものからきちんと記載されています。それを見るとCD時代の演奏は、前2記事で触れた2枚がすべてですが、1960年代を中心にVox boxレーベルからハイドンの主要な作品をかなり網羅した数の録音があります。以前オークションで8枚組のLPを見かけて、結局入手しませんでしたが、それがこの録音だったのでしょう。今日取り上げるHaydn HouseのCD-RはこのLPから起こしたもの。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
LPから起こしたとは思えないほどの安定した音質。メンバーは異なるものの、ファイン・アーツ四重奏団の後年の演奏の特徴と同じニュアンスは感じられます。各奏者とも実に伸び伸びと演奏しており、特にヴァイオリンはゆったりと優雅。ただ、音程がすこし落ち着かない部分があります。フレーズのポイントとなるところで、大胆に溜めをつくってメリハリを強調、このころのファイン・アーツの特徴的なキャラクターなのでしょうか。音楽の流れは良く、味わい深さも流石。
つづく2楽章は曲のもつ孤高の境地をどう表現するかがポイントとなりますが、ファイン・アーツの演奏はかなりあっさりと演奏することで、自然な美しさが印象的。大きな演出は控え、メロディーラインをじっくりと料理していく感じ。続くメヌエットは爽やかさを加えて、やはり淡々としたなかから音楽がにじみ出る感じ。フィナーレもテンポは上がりますが、ファイン・アーツらしい各奏者が同じ音楽性でつながっていながら、適度にばらついてざっくり仕上げてくるような音楽。メンバーは異なってもキャラクターは一貫していました。

Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
2曲目も演奏は安定して、前曲と変わらぬアプローチ。良い意味でばらつきもあり、音程のふらつきは前曲ほどではなく、安心して聴ける範囲。明るい曲想に合わせて、クッキリした快活さも加わりなかなか素晴しい演奏。アンダンテ楽章に入ると、各奏者が織りなす自然なフレージングから実に自然な音楽が沸き上がって来ます。この淡々とした音楽からどうしてこれだけ情感が満ちてくるかが不思議なところ。これが音楽と言う事でしょうか。メヌエット、フィナーレは聴いているのが楽しくなってくるようなコミカルな表情も見せ、微笑ましさが加わります。この曲は完成度高いですね。

Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
本命の騎士。前2曲とはエネルギーが違います。冒頭から緊張感漲る演奏。各楽器が鬩ぎ合う感じが素晴しい。音楽の流れの良さ、適度に粗い感じはそのままに、力感が加わり、演奏の迫力はだいぶ上がります。この曲の要求する集中力なんでしょうか。前曲で聴かせた軽さとは一転、迫真の演奏。ラルゴに入るとアンサンブルの精度が上がり、高い集中力のまま弦楽器から放出されるエネルギーに打たれるような素晴しさ。まさに燻し銀の演奏。大きな起伏の表現と、一つ一つのフレーズの表現のどちらも大きな流れにピシッと合って、大河のような雄大な音楽の流れを印象づけます。ラルゴの静寂を引き継ぐように、穏やかにメヌエットに入りますが、徐々にリズムと展開の面白さを聴かせ始めます。このへん感覚は、ハイドンのクァルテットを知り尽くしているとうかがわせるもの。クァルテットの面白さを十分に感じさせます。メヌエット自体は意外とさっぱりとした展開。もう少し踏み込んでくくるかと思いました。
フィナーレはこのアルバムの総決算的力の入り方。キレ味、躍動感、構成感も十分。最後に明るい調に転調するところで、少し軽い響きに変わるあたりも見事な演出。第1ヴァイオリンのレオナルド・ゾルキンのヴァイオリンも最後に素晴しく伸びのいい音を聴かせます。

ファイン・アーツ四重奏団の1964年の演奏。非常に良かった後年の演奏と同じテイストが一貫して流れていました。メンバーが全員変わっても、クァルテットにはそのクァルテットの伝統と文化がきちんと残っているのだと言わんばかりの演奏でした。細かい部分で精度が高い演奏でもなく、また音程のふらつきはかなり聴かれ、そうゆう視点で見てしまうと、ちょっと粗さが気になるかもしれませんが、精度が高いのに音楽が流れてこない演奏も多く、このファイン・アーツ四重奏団の演奏は音楽を楽しめる素晴しい演奏であるのは間違いありません。評価は2曲目のNo.2は完成度を買って[+++++]、他2曲は[++++]とします。いつもながらHaydn HouseのアルバムはLP起こしとしては驚異的な音質。アルバムの造りはちょっと粗いですが、昔の貴重な録音が現在でも提供されているのは非常にありがたい事ですね。

(私信)
湖国JHさん、今回もありがとうございました。次の指令、お待ちしています!

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

VOXのシリーズは、ハイドン・ファンには堪らないですよね(笑)

ファイン・アーツの次は、是非ともデカニーも取り上げて下さい。

デカニーも手堅くて、全集向きのカルテットだったと思うので。

Re: タイトルなし

小鳥遊さん,コメントありがとうございます。
デカニーですね。ちょっとネットを見たらファイン・アーツと分担してVoxBoxのハイドンの弦楽四重奏曲全集を完成させた団体とあります。これは興味ありますね。iTunesで落とせそうなので、聴いてみようと思います。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

モーツァルトチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲86番十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲10番交響曲9番交響曲11番交響曲12番ヒストリカル太鼓連打ロンドン交響曲2番古楽器交響曲15番交響曲4番交響曲37番交響曲18番交響曲1番ひばり弦楽四重奏曲Op.54SACDピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:2LPライヴ録音ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲102番軍隊交響曲99番時計奇跡交響曲95番交響曲98番交響曲97番交響曲93番驚愕ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35フルート三重奏曲ロッシーニオーボエ協奏曲ドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ミューザ川崎ストラヴィンスキーシェーンベルクマーラーチェロ協奏曲東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:318人のへぼ仕立屋に違いないファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26パレストリーナモンテヴェルディアレグリバードタリスすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:6告別美人奏者ピアノソナタXVI:39四季交響曲70番迂闊者アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンベートーヴェンシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲80番ラメンタチオーネ交響曲67番哲学者ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番ヴァイオリン協奏曲協奏交響曲DVDピアノソナタXVI:52交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:40サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出弦楽四重奏曲Op.64ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲42番無人島ベルリンフィルホルン信号交響曲19番弦楽四重奏曲Op.55王妃交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナアレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットオフェトリウムドイツ国歌カノンスタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生ピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノソナタXVI:47bisカートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実マリア・テレジアバリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲108番変わらぬまこと交響曲62番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
158位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
9位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ