ステファン・ポポフ/ハリー・ブリーチ/ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズのチェロ協奏曲集(ハイドン)

ふと手に入れた廉価盤だったんですが、これが思いもよらぬ名演奏。これだから収集はやめられません。

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ステファン・ポポフ(Stefan Popov)のチェロ、ハリー・ブリーチ(Harry Blech)指揮のロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ(London Mozart Players)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番の2曲を収めたアルバム。収録はPマークが1997年とだけ記載されています。レーベルはAutographeというさも廉価盤然としたもの。

このアルバム、手に入れたのは結構前なんですが、上に貼ったジャケット写真のみで、開くと中には何の記載もない白紙で、CD-Rや、廉価盤に良くあるづくり。演奏もさして期待していませんでしたが、ようやく先日聴いてみてビックリ。いやいやこれはなかなか名演奏です。ということでようやく日の目を見せる事にした次第。

チェロはステファン・ポポフと言う人ですが、日本語読みで同姓同名の関西フィルのヴィオラ奏者がいますが、どうやらまったくの別人のようで、ネットで調べてようやく略歴がわかりました。

ステファン・ポポフは1940年生まれのチェリスト。ブルガリアと英国の両国籍をもっているとのこと。12歳からチェロを学び始め、奨学金を得てモスクワ音楽院に進み、1961年から1966年までロストロポーヴィチなどに師事しました。その後ジュネーブ、フィレンツェ、ウィーンなど多くのコンクールで入賞しました。1966年にはチャイコフスキー国際コンクールのファイナリストに選ばれ、彼のロシア音楽の演奏に対してソ連作曲家賞を受賞しました。1971年から75年にはボストン大学及びニュー・イングランド音楽院で教え、1977年からはイギリスに移り、ロンドンのギルドホール音楽舞踊学校でチェロ科の教授として教えているそうです。

いろいろ検索してもアルバムはあまりヒットしませんので、録音はそれほど多くないのではないかと思います。

伴奏を担当するロンドン・モーツァルト・プレイヤーズはこのアルバムでも指揮を担当するハリー・ブリーチによって1949年に設立された室内管弦楽団。1984年までハリー・ブリーチ、1984年から1992年までジェーン・グラヴァー、1992年から2000年まではマティアス・バーメルトが首席指揮者を務めています。この辺の状況を考慮すると、この録音、1984年以前のものかもしれませんね。ネットをちょっと調べてみましたが、このアルバムの録音年を記載した情報には出会えませんでした。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
えも言われぬとろけるようなサウンド。序奏から力の抜けたオケの素晴しい演奏がぐっと来ます。ハイドンのハ長調協奏曲の晴朗な曲の理想的な入り。ハリー・ブリーチのコントロールするロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、いきなり素晴しい演奏ではっとさせられます。ステファン・ポポフのチェロもそれに合わせて、冒頭からリラックスして適度にメリハリをつけながら、軽々とした弓さばき。要所でゴリッとした響きのアクセントをつけて行きますがこれがなかなか痛快。オケとチェロが渾然一体になった素晴しいアンサンブル。この協奏曲をメインレパートリーとしているのではないかと思うほど、息のあった演奏。両者とも味わい深い燻し銀の演奏。ハイドンがこの曲に込めた多彩なイメージをすべて踏まえて、まったく力みなく色彩感豊かに演奏していきます。これは見事。カデンツァも短いものですが、実に豊かな音楽。1トラック目から夢見心地。
アダージョはロンドン・モーツァルト・プレイヤーズのとろけるようなサウンドがさらにとろけます。波に揺られながら海原に浮かんで青空を眺めているような心地。ステファン・ポポフのチェロは音程が多少ずれるところもありますが、十分味わいのうち。むしろこの優雅な崩しは誰にも真似の出来ない境地でしょう。終盤にいたるまでに、音楽が深く深く沈み込み、もはや自在な境地に至り、ハイドンの書いた音楽に打たれるのみ。至福の一時とはこのこと。
フィナーレに入ってもオケは力みゼロ。流石です。さわやかなそよ風のようなフィナーレ。ポポフのチェロはオケに乗って自在な弓さばき。ときおりゴリッとした特徴的なアクセントを効かせて変化をつけますが、フレージングが的確で、音楽の流れもすこぶる良いので、バランスの良い音楽になります。1番から予想を裏切る超名演です。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
若干1番より録音の鮮明度が上がっているような気がします。1番の録音も悪くありませんでした。ポポフのチェロの味わいある演奏は変わらず、1番のリズミカルな曲調からしっとりとした曲調に変わった分、表現の幅も大きくなってきています。音程の揺らぎまで大きくなりますが、不思議と味わいの範囲と聴こえます。伴奏のハリー・ブリーチ率いるロンドン・モーツァルト・プレイヤーズも盤石。長大な1楽章とその余韻のようなアダージョ、郷愁をさそうフィナーレともども非常に楽しめる演奏でした。

このアルバム、明らかに廉価盤然とした造りにしては、その演奏が素晴らしすぎます。これまでいろいろチェロ協奏曲は聴いていますが、1番は並みいる競合盤と比べてもまったく遜色なく、この演奏でなければ聴かれない深い味わいもあります。2番については1番の奇跡的とも思える完成度に比べると若干劣るのが正直なところですが、それでもポポフとブリーチ率いるロンドン・モーツァルト・プレイヤーズの独特の音楽は健在。こちらも悪くありません。実際の録音年もよくわからないアルバムですが、演奏はすべての人に聴いていただくべき素晴しいものです。評価は両曲とも[+++++]を進呈。いや、素晴しかった!

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tag : チェロ協奏曲

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これ、バルカン・フィルのロンドン等とのカップリングで聴きましたが、中々の演奏ですよね。

ちょっと前に進まない様な所があるけど、高音のテンションが好きです(笑)

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、こんばんは。
この音源、これまでいろいろなカップリングで発売されてきたのでしょうね。演奏者の名誉のためにいえば、こうした演奏は長く聴き続けられてほしいものです。私が取りあげたアルバムでは演奏者の紹介もありませんので、できれば演奏者の紹介くらいはつけてほしいものですね。
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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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