フェルディナンド・ライトナー/バンベルク響の軍隊、102番(ハイドン)

ちょと前にディスクユニオンで手に入れたアルバム。先日ファイのド派手な軍隊を聴いたので、穏やかな軍隊を聴きたくなって取りあげました。

Leitner100_102.jpg

フェルディナンド・ライトナー(Ferdinand Leitner)指揮のバンベルク交響楽団(Bamberg Symphony Orchestra)による、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、102番を収めたCD-R。原盤はHelliodorのDR 478 400というLP。収録年は記載されておりませんが、ネットで探すと1960年頃のものとわかりました。収録場所も不明です。レーベルは米Haydn House。

フェルディナンド・ライトナーが絡む演奏は今まで何枚かは取りあげていますが、穏やかな指揮をする人という印象以上のものはなかなかありません。

2013/09/23 : ハイドン–協奏曲 : ミッシャ・マイスキー/N響のチェロ協奏曲1番ライヴ
2012/01/29 : ハイドン–協奏曲 : ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスのカンタータ、ヴァイオリン協奏曲

Wikipediaによれば、1912年ベルリン生まれの指揮者。1926年にベルリン音楽大学に入学し、作曲をフランツ・シュレーカーに、指揮をユリウス・プリューヴァーに教わりました。ベルリン音楽大学を卒業後はピアニストとしてゲオルク・クーレンカンプやハンス・ホッターなどの伴奏者を務めていましたが、その後、1930年代に入るとフリッツ・ブッシュのアシスタントとして指揮者の道を歩みはじめ、1943年にノレンドルフ・プラッツ劇場の指揮者、1947年にはシュトゥットガルト国立歌劇場のオペラ監督になり、1950年からは音楽監督に昇格しました。1956年にはエーリッヒ・クライバーの後任としてアルゼンチンのブエノスアイレスのテアトロ・コロンの常任指揮者となりました。1969年から1979年までチューリッヒ歌劇場の音楽監督を務め、1977年から1980年までハーグ・レジデンティ管弦楽団の首席指揮者を歴任。1996年にチューリッヒで亡くなっています。

前にレビューしたようにN響も振っていますので、実際にライヴを聴いた方もいるかもしれませんね。ネットを検索すると、今でもかなりのアルバムがヒットしますので、それなりに実績のある人ですね。ドイツ音楽が得意のようですが、協奏曲の伴奏なども多く手がけていますので、堅実な人なのでしょう。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
モノラル録音。鮮度はほどほどながら、非常に安定感のある音。いつもながらHaydn Houseの板起こしは素晴しい仕上がりです。ライトナーはオーソドックスな演奏を絵に描いて写真に撮ったような律儀な指揮ぶり。テンポは微動だにしない一貫したもので、まさに教科書的な演奏。木管楽器の鮮度の高いツッコミが心地よいですね。良く聴くとオケ全員が素晴しいリズム感でせめぎ合い、キレの良い演奏を繰り広げています。まさに玄人好みの演奏。これだけオーソドックスなのに単調な印象は皆無。軍隊の1楽章の高雅な構成感が際立ちます。ファイやアーノンクールが外連であったことに気づかせる伝統の重さを感じさせる演奏。録音は古くても盛り上がりのキレは素晴しく、終盤は圧巻の出来。弦楽器の演奏精度の素晴らしさに驚きます。
軍隊の行進のアレグレットに入ってもライトナーの正統派過ぎる律儀さは健在。迫力も十分で、人によっては律儀すぎると思われるかもしれませんが、これはこれで見事な演奏。やはり奏者の上手さも重要な要素。素晴しい安定感は十分な練習と厳しい指導によって成り立っている事を窺わせます。トランペットのソロに続く大爆発も気品ある展開。
もちろん、メヌエットに入ってもスタンスは変わりませんが、振幅が大きくなって、迫力も一段アップ。通例2楽章、終楽章の象徴的な盛り上がりで聴かせる演奏が多い中、メヌエットをこれだけ聴かせてくるというのはなかなかの判断。
フィナーレはファイのように千変万化するリズムの面白さではなく、オケの安定したキレ味を楽しむがごとき、音量の小刻みなアクセルワークの変化を鮮明に演出。音を意図的に短く切り、キレの良さを際立て、オーケストラの醍醐味を表現。これをライヴで聴いたら痺れたでしょう。まさに正統派のオケの機能性を十分に発揮した演奏。まさにハイドンの王道を行く演奏でした。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
地味ながら構成美溢れる102番。前曲の印象からライトナーの美点がより活きると期待が膨らみます。序奏からフレージングが深く、劇性が上がっています。適度に力が抜け、独墺系オケの重厚な音色によってハイドンの名旋律が浮かび上がります。オケが香り立つよう。まさに燻し銀のオーケストラの響きの魅力にむせ返ります。しなやかな盛り上がりを次々とこなしながら曲を進めます。聴いているうちに完全にライトナーの術中にハマります。オーソドックスなのに迫力も気品も味わいもある、えも言われぬ演奏。1楽章から完璧です。
名曲、アダージョはビロードの手触りのような優しい表情でゆったりと入ります。春風がそよいでいるような優雅な雰囲気。この実に穏やかな気分は得難いもの。
前楽章で深くリラックスしたので、正統派のメヌエットの気高さが引き立ちます。これまた非常にオーソドックスなのに、クッキリ対比が効いて峻厳さが際立ちます。中間部の実に穏やか、しなやかな表情でまたまたリラックス。硬軟自在な展開に、味わい深い響きで暈取られて、至福のメヌエット。
指揮棒の先でオケを自在に操るような小気味好いフィナーレの入り。スロットルをあけても、コントロールは余裕たっぷり。ライトナーは、ここぞとばかりにコミカルな表情から図太い響きを繰り出し、まさにキレキレ。102番のフィナーレはハイドンの交響曲のフィナーレでも出色の出来だと思います。

なんとなく、オーソドックスな演奏をする人だとの印象で聴き始めましたが、実はさにあらず。軍隊の方は、この曲の演奏の中でも、一本筋を通した正統派の律儀な演奏という範疇ですが、流石にオケのコントロールが上手く、かなり聴き応えがあります。そして、102番はこの曲の穏やかな構成感を見事に浮かび上がらせる、燻し銀の名演と言っていいでしょう。ライトナーのような素晴しい腕をもった指揮者のハイドンは、曲自体の魅力を味わうには絶好の演奏と言っていいでしょう。評価は軍隊が[++++]、102番は[+++++]とします。102番は気に入りました。

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