ブルーノ・ワルター/ニューヨークフィル1954年「奇跡」聴きくらべ(ハイドン)

まずは、お正月にディスクユニオンに寄った際にみつけたアルバム。

WalterNPO96_1954L.jpg

ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にウィーンフィルとの1938年「軍隊」、ロンドン交響楽団との86番、フランス国立管弦楽団とのモーツァルトの「フリーメイソンのための葬送曲」が収められたアルバム。奇跡の収録は1954年と記されていますが、ネットを確認すると1954年11月21日のライヴであることがわかります。レーベルはなつかしい伊AS disc。

もう一枚は手元にあったこちら。

WalterNPO96_1954.jpg
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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にというかこのアルバムのメインはコロムビア交響楽団とのモーツァルトのオペラ序曲、「フリーメイソンのための葬送曲」など。奇跡の収録は上記アルバムのライヴの直後である1954年11月29日と12月6日。ニューヨークの30番街スタジオでのセッション録音。こちらはSONY CLASSICAL。

上のアルバムの演奏を所有盤リストに登録する際、ブルーノ・ワルターの膨大なディスコグラフィを整理されているDannoさんのサイトで調べて、この2つの演奏が同じオケの間を置かずの録音であることが判明し、聴き比べてみたくなった次第。

Bruno Walter Home Page

ワルターのハイドンは以前、偶然にも奇跡の演奏を取りあげています。

2011/09/07 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ワルター/フランス国立管弦楽団の「奇跡」

Dannoさんのサイトのワルターのハイドンのディスコグラフィを見ると、奇跡はこの他1937年のウィーンフィルとの演奏とあわせて4種で、今回手に入れたアルバムで4種すべてがそろったことになります。にんまり(笑)

さて、ワルターといえばどうしてもモーツァルトという印象ですが、ハイドンもワルターらしい慈しみに溢れた演奏なんですね。久しぶりにワルターのハイドンの素晴らしさを満喫です。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
まずは、AS discのライヴ盤から。録音はモノラル。

もの凄い迫力の序奏。ライヴらしく会場の物音がリアルに録られています。主題に入ると音は歪み気味ながら、素晴しい覇気で畳み掛けるように攻め込みます。音が割れ気味ながら、それが異様な迫力をともない、もの凄い緊張感。音量を上げて聴くとヴァイオリンパートが弦が赤熱しているように感じるほど、キレキレの演奏で火傷しそう。炎のような1楽章。
つづくアンダンテは全体に落ち着いた表情ではじまりますが、弦楽器のテンションの高さは1楽章そのままで、耳に刺さるように切れ込んできます。ニューヨークフィルの弦楽セクションがこれほどの浸透力をもつとは思いませんでした。聴いているうちに弦の迫力に圧倒されるようになります。間奏の穏やかさと弦楽器の圧倒的な存在感の対比が素晴しい効果。これをライヴで聴いていたらのけぞっていたでしょう。細かいところなど全く気にする余裕がないような圧倒的な迫力。
メヌエットは予想どおり、大きな筆で一気に書き上げるような豪快かつおさまりも考えた緻密な設計。特にそっと抑える部分の存在が、筆の勢いの良さを際立たせるプロの技。会場の観客が凍りついている気配が感じられるほど。神々しいとはこの演奏のことでしょう。途中のオーボエとトランペットのソロは少ない楽器の演奏に集中します。トゥッティでは音が割れますがかまわずグイグイ進みます。
奇跡の聴き所のフィナーレ。キレよく入りますが、オケが煽る煽る。オケの全員がクライマックス目指して殺気立っているよう。それゆえアンサンブルは粗いんですが、それが迫力を増し、火の玉が育って巨大隕石になって飛んでくるよう。金管も弾けるよう。最後の一音の余韻が消えるのを待たずに嵐のような拍手が降り注ぎます。いやいやこの日の会場の熱狂はいかばかりのものかと思います。ワルターがここまで煽ってくるものかと再認識したライヴ。

さて、続いてその8日後のセッション録音であるSONY CLASSICAL盤。

同時期の録音ではありますが、流石にセッション録音なので、録音は2段階くらい上をいきます。こちらもモノラルながら細部まで鮮明で、Hi-Fi調。スタジオで鮮明に録られたオーケストラの彫刻的なフォルムの迫力が直に伝わる録音。ライヴの粗い録音から伝わる炎のような熱気とは異なり緻密なコントロールが印象的。弦楽器は鮮明かつ厚みを感じる落ち着いた演奏。ワルターが煽っているのか、フレーズの入りは速めに斬り込みますが基本的に落ち着いた演奏。
アンダンテもワルターのコントロールが行き届いて、メロディーラインの豊かな表情と、キリリと引き締まった表情が相俟って完成度の高い響きをつくっています。細部まで鮮明な録音によって先程のキレキレの演奏とはずいぶん印象が変わり、彫刻的ながら穏やかさが目立ちます。奏者も平常心。これはこれで完成度の非常に高い演奏。
メヌエットは鮮明な録音によって、モノラルながら迫力あるフォルムが目立ちます。スピーカの前でニューヨークフィルが実際に演奏しているようなリアリティ。先程の盤でのオーボエとトランペットのソロはライブならではのノリがありましたが、こちらは本当に上手い。セッション録音らしい完成度の高さが生み出す迫力に酔います。
フィナーレは特段テンポが速い訳ではなく、むしろじっくり行く感じで聴いていきますが、迫力はかなりのもの。徐々にオケが白熱して、荒々しさが加わります。ライヴとは異なりますが、セッション録音であっても、この曲のフィナーレは奇跡的でしょう(笑)

今更ながらに後者のセッション録音の完成度の高さが印象に残った次第。ワルターは練習嫌いではじめてのオケでもさほど練習をせず本番にのぞむそうですが、このセッション録音を聴く限り、コントロールは行き渡り、この演奏も交響曲「奇跡」名演奏の一つとして十分にお薦めできるものです。前者のライヴ盤はそれとは異なり、突き抜けた迫力が聴きどころ。録音はそれほど良くはありませんが。粗い響きから浮かび上がる会場の興奮を共有できる貴重な録音と言っていいでしょう。ほんの少しの間を置いて録られた2つのアルバムですが、音楽の本質を共有しながらも、ライヴとセッション録音の違いにスポットライトを当てた事になります。評価は両者ともに[+++++]とします。SONY CLASSICAL盤は上方修正です。AS disc盤ははじめて聞きましたが、ワルターのライヴの見本の様なすばらしさ。これを聴いてしまうと、ワルターから逃れられなくなるのでしょうね。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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