キリル・コンドラシン/北ドイツ放送響の「軍隊」ライヴ(ハイドン)

しばらく仕事が忙しく更新が滞っておりました。今日はCD-R。

Kondrashin100.jpg

キリル・コンドラシン(Kyrill Kondrashin)指揮の北ドイツ放送交響楽団(North German Radio Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、ヒンデミットの「気高い幻想」組曲、マーラーの交響曲1番「巨人」の3曲を収めた2枚組のCD-R。ハイドンの収録は1981年1月26日のライヴ。収録会場の表記はありません。レーベルはCD-Rでは良く取りあげるEn Larmes。

コンドラシンがハイドンを振っているとは知りませんでした。コンドラシンといえばロシア音楽を得意としており、聴いたことがあるのはシェエラザードくらい。ハイドンはともかく、モーツァルトやベートーヴェンまでふくめて、独墺系の音楽を振るイメージがありませんでしたので、このCD-Rをディスクユニオン店頭で発見したときには意外なという印象と、それでもコンドラシンの軍隊ならば、キリリと引き締まったタイトな響きが聴かれるだろうという期待もありました。

キリル・コンドラシンは1914年にロシアのモスクワ生まれの指揮者。家族はオーケストラの団員一家で、モスクワ音楽院で学び、1931年にはモスクワの青年劇場にて指揮をはじめ、1938年から42年までレニングラード歌劇場で研鑽を積み、1943年から56年までボリショイ劇場の常任指揮者として活躍しました。1958年に開催された第1回チャイコフスキーコンクールにて1等を獲ったヴァン・クライバーンの伴奏を担当し、コンクール後クライバーンとともにアメリカを演奏旅行し、冷戦後はじめてアメリカを訪問した指揮者となったそう。コンクールで演奏したラフマニノフの3番とチャイコフスキーのコンチェルトを演奏、録音。ミリオンセラーとなり世界的に知られるようになりました。1960年からはモスクワ・フィルの音楽監督となり、1975年まで務める間にショスタコーヴィチの交響曲4番、13番を初演しました。1978年にアムステルダムコンセルトヘボウに客演中、オランダに亡命し、コンセルトヘボウの常任客演指揮者に就任したそう。今日取り上げる演奏はまさに、その直後の1981年の録音です。ちなみにコンドラシンが亡くなったのはこの演奏の2ヶ月後の1981年3月、おそらくこのアルバムに収録されているマーラーの交響曲1番の演奏後、ホテルに戻ったあと心臓発作にて亡くなっています。ということで、このアルバムはコンドラシンの最晩年の貴重な録音ということになります。ハイドンも気になりますが、最後の録音たるマーラーも気になりますね。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
録音は悪くありません。81年相応といったところでしょうか。鮮明さはほどほどですが、低音から沸き上がる迫力はかなりのもの。オケが鳴り響く余韻も悪くありません。冒頭から落ち着いた表情ながら適度に粗さをともなったダイナミックかつ推進力ある演奏に引き込まれます。図太い響きを惜しげもなく披露。アクセルを吹かすと心地よくエンジンが吹き上がる様子が快感。さざ波のような軍隊独特のヴァイオリンパートのワクワク感が絶妙。表現巧者ぶりが伝わります。意外に表情に細かい変化をつけて実に豊かな音楽を造っていきます。想像したほどロシアっぽくない巧みな演奏。
続く2楽章アレグレットは、1楽章の勢いを保ったまま、すんなり入ります。予想通りアクセルに応じたオケの爆発が心地よく、淡々と爆発していきます。テンポが一貫しているので、ダイナミクスの変化に意識が集中します。気づいてみるとなかなかよく考えたアプローチ。この楽章では爆発は適度におさめて、コントロールの巧みさを保っています。
メヌエットに入ると、明るさと優雅さを感じさせながらも力感はかなりのもので、フィナーレに意識が向くように促しているよう。徐々にインテンポで斬り込むようになり、テンションも上がってきます。筋肉が温まって、黒光りしてきているよう。
フィナーレは居合いのような間とキレが交錯。すべてがコンドラシンのイメージ通りに進んでいるように、完璧にコントロールされています。オケのキレは最高。沸き上がるティンパニ、キレまくるヴァイオリン、地響きのようなグランカッサ。最後は怒濤の迫力で終わります。ライヴですが楽章間の雑音や拍手はカットされています。

非常にタイトな魅力に溢れた軍隊でした。コンドラシンはオケをギリギリと引き締め、引き締まった響きをつくる才能に溢れた人である事がいまさらながらわかりました。肝心のCDの2枚目に収められた巨人も素晴しい演奏。私は巨人もアバドのカミソリのようなキレ味が味わえるシカゴ響とのLPが刷り込み盤ですが、このコンドラシンの演奏は亡くなる日の演奏とは思えない瑞々しくフレッシュな感覚が支配した演奏。響きが立っているというか、緊張感が張りつめていると言うか、まったく緩むところがない素晴しい演奏。鮮度の高い響きにたいする天性の感覚をもっていたのでしょう。もしかしたらアバド盤より良いかもしれません。コンドラシンという人の音楽の真髄に触れた気がします。軍隊の評価は、やはり[+++++]をつけない訳にはいかないでしょう。

さて、今日は月末、、、

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tag : 軍隊 ライヴ録音

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