ボフスラフ・マトウシェクとプラハ室内管のヴァイオリン協奏曲集(ハイドン)

今日はヴァイオリン協奏曲集。

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ボフスラフ・マトウシェク(Bohuslav Matoušek)のヴァイオリン、リボール・ハラヴァーチェク(Libor Hlaváček)指揮のプラハ室内管弦楽団(Prague Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲2曲(Hob.VIIa:1、VIIa:4)、このアルバムではハイドン作と書かれホーボーケン番号(Vlla:B2)も付されてていますが偽作で今はカンナビッヒ作曲のヴァイオリン協奏曲とされる曲の合わせて3曲を収めたアルバム。収録は1971年1月4日から13日、プラハのスプラフォン・ドモヴィナ・スタジオでのセッション録音。レーベルはスプラフォンの廉価盤シリーズのSupraphonet。

ハイドンのヴァイオリン協奏曲はなにげに素晴しい演奏が多く、未知のアルバムを聴くときには緊張が走ります。このアルバムも湖国JHさんから貸していただいているもの。奏者の紹介からわかるとおり、普段は指揮者なしを定番としているプラハ室内管とチェコの腕利き奏者による演奏と想像できます。アルバムの立ち位置から考えても悪かろうはずはありません。

ヴァイオリンのボフスラフ・マトウシェクは1949年、チェコのプラハとブルノのちょうど中間にあるハブリーチクーフ・ブロト生まれのヴァイオリニスト。プラハ音楽芸術アカデミー等で学び、その後アルテュール・グリュミオー、ナタン・ミルシュタイン、ウォルフガング・シュナイダーハンなどに師事しました。1970年にはプラハの春音楽祭にて、マタチッチ指揮のチェコフィルとドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を演奏し、2年後の1972年にはプラハの春音楽祭の国際コンクールにて1等を獲りました。今日取り上げるハイドンのヴァイオリン協奏曲はこのプラハの春デビュー直後の1971年の録音ということでマトウシェクが活躍し始めた頃の貴重な録音ということになります。

プラハ室内管については、以前にいろいろ演奏を取りあげていますので、奏者の情報はそちらをご覧ください。

2013/02/03 : ハイドン–協奏曲 : ティルシャル兄弟による2つのホルンのための協奏曲(新盤)
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Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
通常は指揮者なしを特徴としているプラハ室内管ですが、協奏曲となると合わせるのに指揮者が必要なのでしょうか。録音は1971年ということで時代なりでしょう。オケはプラハ室内管らしく、力感のこもった分厚い響き。マトウシェクのヴァイオリンはグリュミオーに師事しただけあって、中音の存在感をキーとした美しい音色が印象的なもの。華美ではありませんが、引き締まったボウイングにほのかに色気を感じる、なかなか通好みの響き。オケは几帳面にリズムを刻みながら、要所を締め、カッチリとサポートしていきます。1楽章のカデンツァはヴァイオリンの胴鳴りの美しさを引き出すなかなかのもの。カッチリとししながら、味わいもある通好みな演奏。
続くアダージョはハープシコードの雅な響きに縁取られたピチカート中心のオケに乗って、マトウシェクのヴァイオリンが淡々と美しいメロディーを奏でていきます。全般にカッチリとした枠組みの中での演奏。
フィナーレはリズムの鮮度があがり、躍動感とまではいきませんが、活気を感じる流れ。表現のスタイルでの冒険はありませんが、枠のなかでの音楽の変化を楽しむような素朴な良さがあります。もしかしたら古典派の音楽の演奏の本質的な魅力は、こうゆうところにあるのかもと思わせる説得力を感じます。

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
なんとなく演奏のスタイルが把握できたので、安心して聴けるようになります。色彩感豊かなこの曲の導入もマトウシェクとプラハ室内管のキリリとした枠にはまって、多少古風な印象もありますが、聴き手であるこちらがそれが快感に感じる心境にもなっております。現在ではこの曲の様々な演奏を聴く事ができ、この美しいフレーズをのびのびと奏でることに違和感はありませんが、1971年当時の状況を想像するに、このカッチリとした枠の美しさが粋だったんでしょう。現在では逆にちょっと時代を感じるこの演奏がかえって魅力的に感じるから不思議なものです。箱庭的な美しさの魅力でしょうか、マトウシェクのヴァイオリンはヴァイオリンの迫力ではなく響きの美しさや、多彩な響き、色彩感を感じさせるもの。楽器も良く鳴って快感。ハラヴァーチェクのコントロールも等身大の音楽をやろうとしているようで好感がもてます。
意外と言っては失礼ですが、2楽章のアダージョはぐっと心にしみる深い音楽にハッとさせられました。オケの素朴な伴奏とヴァイオリンソロの淡々とした語り口が妙にしっくり来て、ハイドンの音楽に引き込まれます。マトウシェクのヴァイオリン、妙に味わい深く、心にぐさりと来ます。オケも一段呼吸が深くなって音楽も深く沈みます。
フィナーレは弦楽器群の魅力ある響きから入りますが、オケも枠のなかでのアクセルワークが巧みで、ヴァイオリンと掛け合いながら巧みに強弱をコントロールしていきます。

このあとはカンナビッヒのヴァイオリン協奏曲。ハイドン作ではないと知って聴くからかと思いますが、曲の構成と展開が独特で、意外と面白い曲です。マトウシェクもオケもハイドンの時よりリラックスしているようですが、これは収録日がこの曲だけ異なるからでしょうか。

さて、本来はハイドンの真作であるヴァイオリン協奏曲を3曲収めればよいところ、3曲目にカンナビッヒの曲を持ってきた意図は、この曲によってハイドンの曲の魅力を引き立たせようという意図があるのではないかと邪推しています。やはり曲の構成と展開の面白さはレベルの差があるように感じます。ということで、このアルバム、他に名だたる演奏も多い事から、評価は冷静にと思って聴いていきましたが、特に2曲目のアダージョの出来の良さで、ちょっといい感触をつかみました。1曲目は[++++]、そして2曲目はまとまりと色彩感、アダージョの情感をとって[+++++]とします。

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tag : ヴァイオリン協奏曲 偽作

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