デニス・ヴォーン/ナポリ管の91番、オックスフォード、協奏交響曲(ハイドン)

いやいや良く降りました。東京は金曜日中から土曜の朝まで雪が降り続き、うちのまわりは30センチくらい積もってました。先週に引き続き記録的な大雪です。ということで、道やらガレージなど雪かきして、また腰が痛い(笑) ちなみに先週の雪かきで腰は少し鍛えられましたので、痛みは先週ほどではありません。要は慣れの問題でしょう。

さて、いろいろあって2日ほど明けてしまったので、レビューをしなくてはなりませんネ。

DenisVaughan.jpg

デニス・ヴォーン(Denis Vaughan)指揮のナポリ管弦楽団(Orchestra of Naples)の演奏で、ハイドンの交響曲91番、92番「オックスフォード」、協奏交響曲の3曲を収めたアルバム。収録は1960年代の録音と記されています。レーベルは米Haydn House。

例によってこのアルバムも湖国JHさんに貸していただいているもの。指揮もオケも全く未知のものゆえ、ちょっと調べておきましょう。

デニス・ヴォーンは1926年、オーストラリアのメルボルン生まれの指揮者。メルボルン大学で音楽の学位をとり、その後イギリスの王立音楽大学でオルガンとコントラバスを学んだそう。その後オルガン奏者としてイギリスで活躍しましたが、1950年にロイヤルフィルに加わり、トーマス・ビーチャムともにアメリカツアーに参加します。1954年にはロイヤルフィルの合唱指揮者と副指揮者となり、ビーチャム合唱団を設立。他にも1950年代から60年代にかけて、彼を含む4人のハープシコード奏者で毎年コンサートを開くなど活動は多彩。指揮者としてはスカラ座、ハンブルク、ミュンヘンの歌劇場で働き、バイロイトではクナの助手を務めたり、トスカニーニの招きでクレンペラー、チェリビダッケ、バーンスタイン、マゼールらとともにイタリア、パルマの記念コンサートで指揮するなど、ずいぶん活躍したことが伝えられています。1966年にローマに移り、その後、ナポリ管弦楽団とのシューベルトの交響曲全集とハイドンのパリセット前後の12曲のを含む一連の録音によって有名になりました。このアルバムに収録されているのはまさにその一部。その後、1972年から80年までミュンヘン国立歌劇場、1981年から84年までオーストラリアのアデレード歌劇場の音楽監督を務めました。プッチーニ、ヴェルディ、ドヴォルザークの自筆譜の研究者としても知られているそう。近年では2005年にロイヤル・フェスティバル・ホールでロンドン・フィルを振っているようです。また前立腺がんであることを公表し治療にあたっているとのことです。

経歴を見る限り、若い頃は華々しい活躍をした人のようですが、現在彼のことを知るひとは少ないかもしれませんね。だからこそ、当ブログではちゃんと取りあげなくてはならないわけです。

Hob.I:91 / Symphony No.91 [E flat] (1788)
意外と言っては失礼ですが、冒頭から雄大なオケの響きに圧倒されます。ナポリ管弦楽団というよりはドイツのオケのような佇まい。オケをのびのびと鳴らし、細かいところではなく音楽の骨格を面でとらえるようなおおらかかつ豪快な演奏。いつもながらHaydn Houseの板起こしは安定度抜群で図太い音色が心地よいですね。まさにハイドン演奏の王道を行くようなおおらかな演奏。
アンダンテに入ると1楽章よりもキビキビとするという意外な展開。良く聴くと弦楽パートの伸びやかなボウイングでイタリアのオケだと納得する次第。弦楽器の分厚くのびのびとしたフレージングはこのアルバムの聴き所でしょう。続くメヌエットでも分厚いオケの迫力あるフレージングは健在。録音は近接マイクの音を主体とした実体感重視のもの。往年のDECCAを思わせる迫力重視の録音です。中間部のやわらかい音楽をじっくり聴かせるところは流石。ハイドンの音楽を良く知った人ととの印象です。
フィナーレは弦楽器群の畳み掛けるようなせめぎ合いがポイント。木管とホルンの響きがうっすらと滲んで、オケも覇気に溢れた演奏です。かなりの力感にザロモンセット作曲前夜の興奮がつたわってくるよう。

Hob.I:92 / Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
聴き慣れたオックスフォードですが、やはり音楽の骨格をがっちりと描いていく才能を持ち合わせているようですね。テンポはやや遅めなんですが、それでも音楽がキビキビと進むように流れるあたりにヴォーンの真骨頂がありそうです。各パートの演奏のキレは素晴しいものがあります。特にヴァイオリンパートの彫刻的にさえ感じる立体感は素晴しいですね。
こちらも2楽章はテンポは落ちてもキビキビ。タイトな音楽が曲全体を引き締めます。終盤の印象的な間の取り方も絶妙。ここは聴き所でしょう。つづくメヌエットの迫力も前曲同様。引き締まったボディービルダーの筋肉を見るよう。オケの鳴りの良さが際立ちます。間奏ではハープシコードの繊細な響きが加わりえも言われぬ雰囲気になります。やはり弦の分厚い推進力溢れる響きが音楽を造っていきます。
有名なフィナーレの入りのメロディーを聴いて、デニス・ヴォーンの才能に確信がもてました。弾むような推進力とキレが高度に融合した素晴しい音楽。畳み掛けるようにオケが迫力ある響きで加わり、このフィナーレの構造の素晴しさを誇るようにアクセルをコントロールしていきます。際立つヴァイオリンのキレ。少々クラシカルではありますが、この演奏の素晴しさには目を見張るものがあります。ザクザクと切れ込む超名演です。

Hob.I:105 / Sinfonia Concertante 協奏交響曲 [B] (No.105) (1792)
一転しておおらかな響きに戻ります。ソロは下記のとおり。

ヴァイオリン:Franco Gulli
チェロ:Giacinto Caramia
オーボエ:Elio Ovchinnekoff
ファゴット:Ubaldo Benedettelli

確信に満ちた指揮にしたがってオケは盤石の安定感。4人のソロもオケの上でおおらかに戯れるように安定した演奏。1楽章は演奏見本のような素晴しい完成度。ソロのテクニックも確か。時折リズムを際立たせるような変化を聴かせますが、基本的に安定した演奏。図太いオケの響きに酔いしれます。カデンツァのヴァイオリンの美音は見事です。
アンダンテはソロの妙技のせめぎ合いのよう。良く聴くと4人とも自身の音楽をしっかり持っており、あわせると言うレベルではなく、個性のぶつかり合いから生まれる豊穣な魅力に溢れた音楽になっています。
そしてフィナーは堂々とした構築感で聴かせます。ヴァイオリンの印象的なフレーズを受けて、オケも間を工夫した受けで応えます。アルバムの終わりに相応しい高揚感。最後の音まで存分に響かせて終わります。

このアルバム、これほどの演奏だと思いませんでした。今や知る人ぞ知るデニス・ヴォーンですが、ゆったりした音楽の中にもハイドンの機知が溢れ、実に個性的な演奏となっています。特筆すべきは録音(リマスターか?)の良さ。往年のDECCAのようなオンマイクながら精緻に切れ込む、印象的な録音。ソロとオケのバランスも的確です。大波のように押し寄せるオケの響きが快感です。流石にハイドンの交響曲を12曲録音している人。評価は1曲目の交響曲91番が[++++]、その後の2曲が[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲91番 オックスフォード 協奏交響曲 ヒストリカル

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

古楽器ラメンタチオーネアレルヤ交響曲3番交響曲79番チェロ協奏曲1番オックスフォード驚愕交響曲88番交響曲19番交響曲58番交響曲27番アンダンテと変奏曲XVII:6ショスタコーヴィチベートーヴェン紀尾井ホールラヴェルストラヴィンスキードビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎LP協奏交響曲オーボエ協奏曲日の出ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:38サントリーホールスタバト・マーテルピアノソナタXVI:39ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:37ブルックナーマーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉ヒストリカル交響曲90番告別交響曲97番交響曲99番交響曲18番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番モーツァルト交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52ライヴ録音SACD武満徹チェロ協奏曲交響曲80番交響曲全集交響曲81番交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり騎士オルランド無人島Blu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲12番交響曲11番交響曲10番ロンドン太鼓連打交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:7ロッシーニドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4バードタリスアレグリパレストリーナモンテヴェルディすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオオフェトリウムモテットドイツ国歌カノン弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲108番交響曲107番交響曲62番変わらぬまことジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
167位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
13位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ