リンデ・コンソートのディヴェルティメント集(ハイドン)

今日はお休みの日に相応しく、のんびりと聴ける曲。

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ハンス=マルティン・リンデ(Hans-Martin Linde)指揮のリンデ・コンソート(Linde Consort)の演奏による、ハイドンのディヴェルティメント4曲(Hob.II:20、II:11、II:G1、II:1)を収めたアルバム。収録は1986年4月27日から5月1日にかけて、スイス、バーゼルの南のアルレスハイム(Arlesheim)にある改革派教会でのセッション録音。

このアルバム、例によって湖国JHさんから貸していただいたもの。いつも何枚かづつやり取りしているんですが、差し詰め、3月の課題曲のようなタイミングで今回もいろいろ何枚か貸していただいています。

ハンス=マルティン・リンデといえば、私の世代はリコーダー奏者のイメージが強いのですが、そればかりではなく指揮者として活躍しているようですね。リンデの指揮するハイドンは一度とりあげています。

2012/01/29 : ハイドン–協奏曲 : ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスのカンタータ、ヴァイオリン協奏曲

リンデの情報はリンク先をご参照ください。今回調べたところ、他にも交響曲の録音があるようですね。こちらは未入手ですので、手に入れてみたいと思います。今日とりあげるディヴェルティメントは、ハイドンの曲の中でもかなりマイナーな存在。ただし、良く聴くと実にいい曲も多く、ハイドンの作品の中でも、特に掘り起こし甲斐のある分野。今日は虚心坦懐にディヴェルティメントを味わいたいと思います。

今日取り上げるディヴェルティメントは何れも1755年から60年代までと、ハイドン20代から30代はじめくらいまでに書かれた曲。ハイドンがエステルハージ家の副楽長に就任したのが1761年ですので、ごく初期の作品群ということになります。聴いてみると若書きと言う印象はまったくせず、実に楽しげな雰囲気が伝わってくる名曲揃い。ハイドンの才能が若くして花開いていた事がよくわかります。

Hob.II:20 / Divertimento [F] (1755-57)
9声部のディヴェルティメント。アレグロ-メヌエット-アダージョ-メヌエット-フィナーレの5楽章構成。リンデ・コンソートの演奏は、まさに屋外で歓談を楽しむためのBGMのような風情。テンポはゆっくり、演奏はのびのびとして、緊張をはらまず、まさに喜遊曲。教会での録音らしく、豊かな残響の中に管弦楽が響きわたり、実に伸びやかな演奏。録音も1986年としては鮮明で、オケが教会内で自在に演奏するようすが見事に録られています。ヴァイオリンとヴィオラに加えてホルンとオーボエの響きが加わり、えも言われぬ幸福感。1楽章から癒し満点。楽章間の対比よりも、一貫した流れを重視して、実に楽しげに演奏を進めていきます。デヴィエルティメントとはこうゆうものなのでしょう。3楽章の途中で現れるピチカートや弦楽器のメロディーラインの美しさが、後のハイドンの作曲の豊かな創意を垣間見させます。4楽章のメヌエットではオーボエの隈取りで響きをメロディーラインを際立たせ、フィナーレでは各楽器が代わる代わるメロディーラインを引き継ぎ、響きの変化はめくるめくほど。まさに音を楽しむための曲。リンデは曲の真髄を知り尽くしているようにオケを操り、まさに至福の時間。素晴しい。

Hob.II:11 / Divertimento "Der Geburtstag" 「誕生日」(6 Qurtette fur Flote, Violine, Viola und Violincello Op.5 Nr.6) [C] (c.1763)
6声部のディヴェルティメント。今度はプレスト-アンダンテ-メヌエット-フィナーレの4楽章。2楽章は「夫婦」と名付けられ、「誕生日」という呼称とともに古い筆写譜に記載されていたとのこと。フィナーレは主題と変奏という構成。入りは華やか。先程の曲には入らなかったフルートが加わり、リンデ自身が演奏しています。フルートとチェンバロが加わりぐっと明るさが引き立ちます。2楽章はヴァイオリンとコントラバスの会話のような曲。独特の語り口で静かに男と女が会話するようにも聴こえます。聴き所は4楽章の変奏。10分近い、この頃の作品としては大曲でしょう。冒頭、ヴァイオリンで奏でられるテーマが次々と楽器を変えながら変化していきますが、音楽が展開しながら、豊かさを増し、そして多彩な響きに引き継がれていく様子は見事。リンデのコントロールはここでも穏やかさを保ち、純粋に演奏を楽しんでいるよう。ハイドンが微笑みながら曲を書くようすを想像しながら極上の時を過ごします。ソロを担当する各楽器の奏者は腕利き揃い。音楽が迸り出てくるような見事な演奏。

Hob.II:G1 / Cassatio [G] (1755/60)
1曲目同様9声部のディヴェルティメント。楽章構成も1曲目と同じ。所有盤リストにこれまで演奏がありませんので、はじめて聴くことになります。1楽章はリラ・オルガニザータ協奏曲のような流麗な入り。1楽章と終楽章が短く、メヌエットと挟まれたアダージョが充実した曲。とりわけアダージョの静かな中にもメロディーラインの美しさ際だつ構成が印象的。4楽章のホルンのえも言われぬ響きも痺れます。全般にこれまでの中ではシンプルな曲想の曲ですが、リンデの素朴ながら豊かな響きの演奏により極上の音楽に仕上がっています。各パートそれぞれがソロとしても聴き映えがするほど豊かな演奏であり、それがアンサンブルの豊かさにつながっています。

Hob.II:1 / Cassatio [G] (c.1755)
2曲目同様6声のディヴェルティメント。アレグロ-アンダンテ・モデラート-メヌエット-主題とファンタジアの4楽章構成。すでにリンデの音楽にどっぷりつかって、極上の温泉の湯を楽しんでいるような気分。若きハイドンが書いたディヴェルティメントの素晴しさに打たれっぱなし。美しいメロディーが次々と楽器を変えながら押し寄せてくるのをただただ楽しみます。奏者の妙技を楽しむばかりでなく、音の重なりと波の高さの変化に鋭敏となり、脳の音楽を感じる中枢と癒し中枢がフル稼働。聴き所はやはり終楽章。ゆったりとしたテーマが奏でられた後、オーボエ、コントラバス、フルートと楽器を変えながらメロディーが次々と変化していきます。羽の生えた天使が空を飛び回っているような幸福感。実に優雅に音楽を奏で、その余韻をそのまま残すように曲を終えます。

ハンス=マルティン・リンデと彼の手兵リンデ・コンソートによるハイドンのディヴェルティメント集。これは圧倒的な名盤です。ここにはハイドンの最上の音楽が溢れていました。交響曲、弦楽四重奏曲、オラトリオなど世に知られたハイドンの名曲は数多くありますが、このアルバムに収められたあまり広く知られていないディヴェルティメントには、人が音楽を楽しむ、もっとも大切なものが込められているように感じます。ゆったりと音、響き、メロディー、変化を感じ、等身大の音楽をじっくりと楽しむエッセンスがたっぷり注入されています。リンデの演奏は、その事を良く踏まえ、音楽自身が持つ活き活きとした力を自然に表現した素晴しい演奏。心に刺さる素晴しい演奏です。評価はもちろん[+++++]。いつもながら現役盤ではありませんが、amazonで中古は手に入ります。このアルバム、湖国JHさんに貸していただいたものですが、この素晴しさに、私も1枚注文です。多くの人に聴いていただきたい至宝でしょう。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ディヴェルティメント

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No title

Daisyさん こんにちは。

これは、以前は、EMIから出ていた(ジャケットの絵柄も違います)もので、私はそちらの
EMI盤を持ってます。確か90年頃に購入したものと思います。

お気に入りのCDなので、Daisyさんにこのように解説いただけると、より一層楽しめます。
ハイドンのディベルティメントという分野は、なかなか演奏される機会はないのですが、
モーツァルトの有名なそれに比べても、秀逸な曲はいくつもあると思いますので、
もっと演奏される機会が増える事を望んでいます。

1番と11番の曲は、よく似た曲だと思います。どちらも好きな曲です。
交響曲6番「朝」の冒頭と同じ朝日が昇るイメージのフレーズは、どちらの曲にも使われて
いますね。

G1は、意外にもDaisyさんの所有リストにありませんでしたね。
他に、この曲の音源は、Hussの盤(Divertiment Vol.4-KOCH SCHWANN または、
そのKOCH SCHWANNの一連のシリーズをまとめたBIS盤)があります。




Re: No title

Haydn2009さん、コメントありがとうございます。
このアルバムにも、元はEMIの録音であると書かれていますので、その原盤の方をお持ちなわけですね。実は手元にはBISによるフスの5枚組のディヴェルティメント集もあり、その原盤であるKochのアルバムもあったことから登録が漏れていたのに気づき、昨日いろいろ聴きながら登録しました。このBIS盤と重なる手元のKoch盤は3枚のみで、一部の曲はBIS盤ではじめて入手したわけです。ということで、G1に関しては、フス盤が手元にあり未登録なだけでした。なお、今回登録してあらためて気づいたんですが、BISの5枚組には一部2007年、2009年の録音も収録されており、Koch盤をまとめ直しただけではなく、新録も含まれているのですね。この辺はBISの素晴らしいところでしょう。
リンデ盤、何処かで再リリースしてもらいたいものですね。

No title

えーっ!私にとってもハンス=マルティン・リンデってリコーダー奏者に
他ならないのですが、指揮者でもあったんですね?
カール・リステンパルト指揮、ザール室内オケによる、ブランデンブルグ
協奏曲集では、第4番の冒頭で2本のリコーダーによるひなびた、それ
でいて素晴らしい掛け合い(漫才ではなく・・・)を披露してましたっけ。
ハイドンを振れるということは、モーツァルト、ベートーヴェンに始まって
ロマン派まで何でもいける筈!お齢からして新録音をバンバンという訳
にはいかないのが惜しいですね。

Re: No title

だまてらさん、コメントありがとうございます。
おぼろげな記憶ながら、リンデといえばダウランドなどの古楽を実に艶やかに演奏するイメージです。リンデが伝統的な演奏だったのに対し、ブリュッヘンが新進気鋭の存在だったイメージが強いですね。この演奏にもリンデのあの艶やかさが健在です。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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