ジャン=ジャック・カントロフのヴァイオリン協奏曲集(ハイドン)

ゴールデンウィーク中はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンなどを聴きながらのんびりと過ごしましたが、肝心のハイドンのレビューに戻らねば、ハイドンの音楽の素晴しさを広く全世界に伝えるという崇高なミッションを持つ当ブログの矜持が保てません。

ということで、今日はまたまた湖国JHさんからの課題曲。いやいや、こちらの所有盤の隙間の名演盤を刺されました(笑)

Kantrow.jpg
amazon

ジャン=ジャック・カントロフ(Jean-Jacques Kantorow)のヴァイオリン、クリスチャン・ベンダ(Chirstian Benda)指揮のシュツットガルト室内管弦楽団(Stuttgarter Kammerorchester)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲3曲(Hob.VIIa:1、VIIa:3、VIIa:4)を収めたアルバム。収録は1995年1月、シュツットガルト近郊のルードヴッヒスブルク(Ludwigsburg)でのセッション録音。レーベルはスイスのCASCAVELLE。

ジャン=ジャック・カントロフは名前は知っているものの、ちゃんと聴くのははじめての人。ということでちょっと調べてみました。1945年フランスのカンヌ生まれのヴァイオリン奏者、指揮者。13歳でパリ音楽院に入り、1960年代にはロンドンで開催されたカール・フレッシュ国際ヴァイオリンコンクール、ジェノヴァで開催されたパガニーニ国際コンクールなどのコンクールで数々の優勝、入賞をはたし、国際的に知られる存在となりました。70年代にはソロ、そして室内楽演奏者として活躍しました。教育分野ではストラスブール、ロッテルダムの音楽院にて教職につき教授職を引退するまで教育に従事しました。80年代からは指揮もこなし、欧州各地の室内楽団などの指揮者として活躍しています。

このアルバムで指揮を担当しているクリスチャン・ベンダはチェコ生まれのチェロ奏者、指揮者。ネットを検索するとNAXOSからプラハ室内管を振ったロッシーニ、バッハなどかなりの枚数のアルバムがリリースされていますので、ご存知の方も多いかもしれませんね。私はこちらもはじめて聴く人。ハイドンはこのアルバムのみのようです。

Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
クリスチャン・ベンダの振るシュツットガルト室内管はキビキビとしながらもバランスのよい正統派の演奏。序奏から程よい緊張感を保ち、リズムのキレの良さはかなりのもの。その爽快なオケに乗ってカントロフのヴァイオリンもキビキビとキレの良いボウイングでハイドンの美しいメロディーを奏でてていきます。オーソドックスな演奏ですが、良く聴くとリズム感の良さ、鋭いフレージング、高度なバランス感覚が感じられるなかなかいい演奏。ハイドンの最も有名なヴァイオリン協奏曲を楽しむ演奏として広くお薦めできる名演盤という印象です。カントロフはストラディヴァリウスを弾いていますが、非常に良く楽器が響いてヴァイオリンの音色の美しさを堪能できます。特に高域の引き締まった音色は出色。1楽章は最後まで引き締まった一貫した美音を披露。最後のカデンツァでその一貫した表情を突然崩し、自在にヴァイオリンを鳴らして別世界のような音楽を披露。風流を解する人のようですね。最初から見事な演奏にこちらもぐっと身を乗り出して聴きます。
続くアダージョは、カントロフの磨き抜かれたハイテンションの美音の魅力にやられます。かなり抑えたオケのピチカートにのって圧倒的な存在感のヴァイオリンソロ。この美音は素晴しい。決して緩む事のない緊張感が素晴しいですね。
フィナーレはオケがすこし踏み込んでクッキリとした表情の伴奏で変化を付けます。カントロフのヴァイオリンはもはや神がかっていると言っていいほどの磨き込まれ方。さりげないのに深い演奏。オーソドックスなのに変化に富んで実に表情豊か。私の好きなタイプの演奏。終盤に至るとオケもかなり大胆にアクセントを効かせたり、曲のツボをおさえた垢抜けた表現で惹き付けます。カントロフも変化で応報。実に聴き応えがあります。1曲目から完全にカントロフのペースにハマりました。

Hob.VIIa:3 / Violin Concerto "Merker Konzert" 「メルク協奏曲」 [A] (c.1765/70)
オケの表現力が上がり、冒頭からかなりスリリングな演奏。クリスチャン・ベンダ、只者ではありませんね。カントロフも受けて立ち、最初から穏やかに火花散る掛け合い。曲想が前曲よりスリリングな分、演奏も前曲より起伏をハッキリさせています。時折ぐっと惹き付けられる高音の美音を轟かせながら、ベンダの振るオケとのジャブの打ち合いを楽しむよう。演奏はスリリングですが、非常に落ち着いた奏者の感覚がコントロールしているのがわかります。この曲でもカデンツァの崩したスタイルが絶妙。カデンツァとは技巧の披露ではなく奏者の風流さを聴かせるところとの位置づけですね。1楽章終盤にむけたオケとの掛け合いの息の合い方が尋常ではありません。見事。
2楽章はテンポをあまりおとさず、表情だけが癒しに向かい絶妙のリラックス感。アーティスティックな緊張感を失わないアダージョに痺れます。
フィナーレは1楽章の終盤のスリリングな展開が再び顔を出します。協奏曲の演奏では奏者とオケの息がどこかズレた部分があるもので、逆にあまりにリズムが合っていると緊張感がないもの。このカントロフとベンダの演奏はリズムがピタリと合っているのに極めてスリリングな希有な演奏。この緊張感は聴いていただかなくてはわからないでしょう。手に汗握るとはこのこと。松ヤニが飛び散るような素晴しい迫力。最後にカントロフのこれまた見事なカデンツァを楽しませてもらって終了。

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
脳の音楽中枢がこれまでの2曲で全開になってますので、冒頭からカントロフとベンダの名演奏にアドレナリン大噴出。あまりに見事なカントロフのヴァイオリンに言葉も出ません。ハイドンの名旋律にただただ打たれるように音楽を浴びます。
この曲ではアルバム最後の曲だからか、アダージョのテンポを前曲よりも落とし、すこしゆったりした表情になります。美しいメロディーにカントロフも音を震わせながら入り、すぐに澄みきった美音に変わります。オケはビロードのように柔らかく響きを変え、ここではじめてオーソドックスなアダージョの魅力を披露します。
最後のフィナーレは前曲同様スリリングな音楽な魅力炸裂。この対比の見事さ、純粋に音楽的な演出設計の巧みさ、そしてやはりカントロフの美音の魅力が圧倒的です。軽やかに駆け上がる音階。手を切りそうなほどの鋭いキレ味。オケも抜群のキレ味。いやいや素晴しい!

ヴァイオリン協奏曲では以前取りあげたマルク・デストリュベ盤やカルミニョーラ盤、エリナ・ヴァハラ盤など名盤揃いですが、もしかしたらこのカントロフ盤はそれを上回ると感じるほど。カントロフの美音の素晴らしさは尋常ではありませんし、ベンダの振るシュツットガルト室内管もキレキレ活き活きとした演奏で完璧なサポートです。これは脱帽。3曲とも[+++++]とします。

残念ながらこのアルバム、頼みのamazonでも入手難ゆえ入手は容易ではないでしょう。お持ちの方は家宝として神棚にお供えしてください(笑)

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ヴァイオリン協奏曲

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

モーツァルトチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲86番十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲10番交響曲9番交響曲11番交響曲12番ヒストリカル太鼓連打ロンドン交響曲2番古楽器交響曲15番交響曲4番交響曲37番交響曲18番交響曲1番ひばり弦楽四重奏曲Op.54SACDピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:2LPライヴ録音ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲102番軍隊交響曲99番時計奇跡交響曲95番交響曲98番交響曲97番交響曲93番驚愕ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35フルート三重奏曲ロッシーニオーボエ協奏曲ドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ミューザ川崎ストラヴィンスキーシェーンベルクマーラーチェロ協奏曲東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:318人のへぼ仕立屋に違いないファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26パレストリーナモンテヴェルディアレグリバードタリスすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:6告別美人奏者ピアノソナタXVI:39四季交響曲70番迂闊者アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンベートーヴェンシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲80番ラメンタチオーネ交響曲67番哲学者ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番ヴァイオリン協奏曲協奏交響曲DVDピアノソナタXVI:52交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:40サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出弦楽四重奏曲Op.64ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲42番無人島ベルリンフィルホルン信号交響曲19番弦楽四重奏曲Op.55王妃交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナアレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットオフェトリウムドイツ国歌カノンスタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生ピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノソナタXVI:47bisカートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実マリア・テレジアバリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲108番変わらぬまこと交響曲62番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
158位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
9位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ