【新着】フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管の四季(ハイドン)

久々の新着アルバムです。

Herreweghe4S.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe)指揮のシャンゼリゼ管弦楽団(Orchestre des Champs-Elysées)、コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(Collegium Vocale Gent)の演奏で、ハイドン最後のオラトリオ「四季」を収めたアルバム。収録は2013年4月10日から13日、オーストリアのインスブルック公会堂でのセッション録音。レーベルはヘレヴェッヘの録音を専門にリリースするφ PHI。

古楽器演奏においては知らぬ人はいないヘレヴェッヘですが、手元のアルバムを調べてもヘレヴェッヘの指揮するハイドンの録音はありませんでした。唯一クイケンの指揮する天地創造で合唱指揮を担当してるアルバムがあるのみでした。手元にあるのはharmonia mundiに大量に録音したバッハのカンタータ集の録音が十数枚ほどとヨハネ、マタイ受難曲など。ヘレヴェッヘのバッハは透明感とほどよいしなやかさからハイドン以外では結構集めたほうです。

フィリップ・ヘレヴェッヘは1947年、ベルギーのヘント生まれの指揮者。少年時代はイエズス会の少年聖歌隊員だったそうで、実家が医者であったことから精神科医を目指してヘント大学医学部で心理学を学びましたが、ヘント音楽院でピアノ、チェンバロ、オルガンなどを学び、結局医学をあきらめ音楽家になることになりました。1970年代には指揮活動に従事し、コレギウム・ヴォカーレ・ヘントを創設。その演奏がアーノンクールらに注目され、レオンハルトなどと共同で進められていたバッハのカンタータ全集の一部を担当したということです。1977年にはルネサンスから現代音楽までをレパートリーとするシャペル・ロワイヤルを設立、他にもルネサンス音楽を専門に演奏するヨーロッパ声楽アンサンブル、ロマン派などを中心に演奏するシャンゼリゼ管弦楽団、現代音楽を専門とするアンサンブル・ミュジック・オブリークなどを主宰。現代楽器のオケでは王立フランダース・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任するなど活動は多彩です。

歌手は下記の通り。
ハンネ(ソプラノ):クリスティーナ・ランズハマー(Christina Landshamer)
ルーカス(テノール):マクシミリアン・シュッミット(Maximilian Schmitt)
シモン(バス):フローリアン・ベッシュ(Florian Boesch)

Hob.XXI:3 / "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799-1801)
第一部「春」
バッハのカンタータなどで親しんだ柔かな肌合いの古楽器の演奏。適度な覇気に落ち着いたテンポでじっくりと踏みしめていくような展開。メロディーの語り口の上手さは流石ヘレヴェッヘというところ。録音は癖のない自然なもの。残響も適度で非常にバランスの良いものです。冒頭からティンパニの自然な迫力を感じる理想的な録音と言っていいでしょう。
歌手は、バスのフローリアン・ベッシュはクッキリとエッジの利いた硬質の声。テノールのマクシミリアン・シュミットは柔らかい透明感に溢れた声。そしてソプラノのクリスティーナ・ランズハマーは高音の伸びが素晴しい可憐な声。そしてやはり合唱はヘレヴェッヘの演奏に共通した柔らかなハーモニーが特徴。天地創造のクリスティ盤と同様、自然な歌を楽しめる名盤の予感です。曲がすすむにつれて自然なハーモニーの美しさに徐々に引き込まれていきます。ハイドン最晩年の澄みきった心情を表すように淡々と演奏が進んでいきます。最後の三重唱と合唱による「おお、今やなんと素晴らしい!」では自然さを保ちながら、オケが渾身の響きで入り、リズミカルに美しいメロディーを奏で、清透なコーラスのやまびこのように重なっていく様は、清らかな迫力。この演奏の特徴が最も良く出たところでしょう。第一部から高い完成度にもかかわらず、それを感じさせない自然な演奏にうっとりです。

第二部「夏」
物憂い雰囲気ではじまる夏もヘレヴェッヘの自然な語り口は変わらず、淡々と音楽が流れ、徐々に起伏の面白さに引き込まれていきます。迫力で聴かせる演奏ではなく、音楽の流れと語り口の面白さでで聴かせる演奏。夏の前半のハイライト「朝焼けが訪れて」では、オケとコーラスがここぞとばかりに盛り上がりますが、それまでのしなやかさがあっての盛り上がりが映えるというもの。力まかせなところはなくてもかなりの起伏です。そしてルーカスのカヴァティーナ「自然は、重圧に喘いでいる」ではマクシミリアン・シュッミットが染み渡るような柔らかい声でじっくりメロディーを聴かせます。そしてハンネのアリア「何という爽やかな感じでしょう」ではクリスティーナ・ランズハマーのどこまでも延びていく高音の魅力にうっとり。ちょっと好みです。ざっくりと生成りの肌合いのオケに乗って気持ち良さそうに歌うランズハマーの美声に酔います。終盤はティンパニによる雷鳴が近づいてくるところの静寂感から嵐に変わるところの演出の見事さで、再びガッチリとつかみます。最後の「黒い雲は切れ」では癒しに戻ります。

第三部「秋」
CDを換えて2枚目。ヘレヴェッヘの指揮は緩む事なく淡々と進み、ハイドンの書いた音楽のとおり進みます。やはり、3曲目の「ごらんなさい、あそこのしばみの茂みの方へ」でオケが大波が来たように盛り上がります。軽快な曲の多い秋ですが、ここに来てオケの演奏精度の高さは流石というべきところ。終盤の狩のホルンによるファンファーレが高揚感ばかりでなく渋い表情も併せ持ち、このあたりのコーラスも見事。いつ聴いても盛り上がる最後の「万歳、万歳、ぶどう酒だ」もコーラスの圧倒的存在感。オケよりもコーラスが主導権をとっているよう。舞曲が宴席の興奮を伝え、まるでオペラのような展開に。オケとコーラスと鳴りものが渾然一体になって陶酔します。

第四部「冬」
モノクロームの冬の暗い風景のような序奏から入りますが、徐々に色彩が戻ってくるようにオケの表情がはっきりとしてきます。このあたりの微妙な表情の変化のコントロールは実に緻密。半ばでハンネと合唱による不思議なメロディーが出現。いつもこの曲の響きに惹き付けられます。「くるくる回れ」という糸車の歌。終曲の前のシモンのアリア「これを見るが良い、惑わされた人間よ」から、終曲三重唱と合唱「それから、大いなる朝が」は派手さはない展開なんですが、この大オラトリオの最後にふさわしい、神々しい雰囲気が漂います。最後に明るい響きが鳴り響くところは、フィガロの最後のすべてを許すメロディーが鳴る場面を彷彿とさせる癒しに満ちた聴き所。最後のコーラスによるフーガ締めくくります。

フィリップ・ヘレヴェッヘが満を持して録音した、ハイドン最後のオラトリオ「四季」。期待に違わぬ素晴しい出来です。私の好きなウィリアム・クリスティの「天地創造」と同様、古楽器ながら実に素朴にハイドンの名旋律をじっくりと奏でていき、歌の素晴らしさ、コーラスの素晴らしさに溢れた演奏。歌手、コーラス、オケそれぞれ万全。そして自然でじっくりと盛り上がりを楽しめる録音の良さもポイントです。久しぶりの大型プロダクションということで聴く方も力が入りました。手元のアルバムは輸入盤に丁寧な日本語訳をつけたマーキュリーのリリース。いつもながら丁寧な仕事に感服です。評価はもちろん[+++++]です。久々に四季の素晴らしさに打たれました!

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 四季 古楽器

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:39サントリーホールブルックナーマーラーヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉LP交響曲97番告別交響曲90番交響曲18番アレルヤ奇跡交響曲99番弦楽四重奏曲Op.64ひばりフルート三重奏曲悲しみ交響曲102番ラメンタチオーネ交響曲86番モーツァルトヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ベートーヴェン驚愕哲学者小オルガンミサニコライミサミサブレヴィス交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲古楽器交響曲19番交響曲81番交響曲全集交響曲80番マリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードピアノソナタXVI:20豚の去勢にゃ8人がかり騎士オルランド無人島Blu-ray東京オペラシティチェロ協奏曲1番交響曲9番交響曲10番交響曲11番交響曲12番ロンドン太鼓連打交響曲15番交響曲2番交響曲4番交響曲37番交響曲1番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメント東京芸術劇場リヒャルト・シュトラウス交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャオーボエ協奏曲ピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ミューザ川崎ストラヴィンスキーシェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31タリスバードモンテヴェルディパレストリーナアレグリすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲46番交響曲51番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士弦楽四重奏曲Op.74交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードカノンオフェトリウムモテットドイツ国歌スタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番変わらぬまこと交響曲62番交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
122位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ