【番外】関西・四国・中国大紀行(その9)

(つづき) その1

出雲大社を参拝後、出雲の親戚の家を3カ所廻って、予定時間を大幅にオーバー。今夜の宿は出雲から約200kmはなれた島根県の三朝温泉です。もうすこしゆっくりしたい気持ちもありましたが、これから徐々に東京に近づいていかないと帰りも大変な長距離ですので、余裕はありません。本当は時間に余裕があれば、日御碕か、前日定休日で行き損ねた奥出雲ワイナリーでも寄りたかったのですが、そうも言ってられない状況。

最後の親戚宅で、皆さんとの別れを惜しみながら、いざ出発です。親戚の方にインターまでの行き方を教わり、医大の近くから山陰自動車道斐川インターに向かいます。途中いつものようにカーナビに三朝温泉をセット、この距離なので休まず、一発で行くつもりです。前日尾道から北上してきた松江自動車道との宍道ジャンクションをすぐに越えて、松江玉造インターを過ぎ、東出雲、米子西と過ぎて、前回来た時と同様、日本海沿いを倉吉まで進むと思いきや、カーナビの指示は米子インターから南下、米子自動車道に入る指示。予想外の南下指示にちょっとあわてて、ナビの地図で広いエリアを確認すると、どうやら海沿いは高速ではなく、南下する高速道路を通る戦略のようです。海沿いは通ったことがありますので、またもや世界の裏側に出てしまうリスク覚悟でカーナビの指示に従い、米子自動車道を南下し、どんどん山の中に入っていきます。

目の前には大山の勇姿。やはりこのあたりでは抜群の存在感。富士山に似た風格をもつ山です。なんと走っている間にナビからいつものお姉さんの優しい声で「オカヤマケンニハイリマシタ」とのアナウンス。なんと鳥取県から飛び出てしまいました。ナビから降りるように指示が合ったのは蒜山(ひるぜん)インター。インターを降りると蒜山高原ということで、避暑地のような穏やかな景色が広がり、道も一般道ながらスイスイ進むいい道。途中国道482号から北に折れ、国道313号に入ります。流れの良い道なのでさらにスイスイ進みますが、そろそろ休憩ということで、目に入った道の駅犬挟(いぬばさり)で停まります。

少し休憩して、再び車を走らせ、30分ほどで倉吉市街に入ります。平日の夕刻なので少々渋滞気味ですが、のんびり走る車窓から、ちょっとユニークな形の建物が目に入ります。

鳥取に十世紀梨記念館 なしっこ館

倉吉の名物は梨なのでしょうか(笑) 梨といえば最近ではフナッシーが圧倒的な存在感。梨のテーマパークとは今ひとつピンと来ませんが、とりあえず「倉吉=梨」とのイメージは明確になりましたので、この施設の宣伝効果は無くはないでしょう。

市街を過ぎると道もすいて再びスイスイ。川沿いの道を進むと、三朝温泉の方向へ誘導する看板が見えて、いよいよ温泉街に入ります。この日にとった宿はこちら。

鳥取県三朝温泉 旅館大橋

三朝温泉も私は玉造温泉と同様、3度目の訪問。最初は学生の時、泊まったのはこの奥にあった国民宿舎だった記憶しています。学生時代の貧乏旅行、そして当時はじゃらんも食べログもなく、電話帳などで調べて料金を聞いて恐る恐る宿をとったという流れ。東京から今は懐かしい「青春18切符」で京都まで来て、最初の夜は天橋立のたもとにある文殊堂のバス停で寝袋でビバーク。翌日このあと訪れる投入堂を見たあと、三朝温泉の国民宿舎に泊り、温泉街の真ん中にある橋のたもとの河原の露天風呂に入った覚えがあります。この露天風呂は橋から丸見えの男らしいロケーションが魅力なんです。翌日は、出雲まで進み、前に書いたように玉造温泉の駅でビバークしたわけです。すでにそれから30年くらいたっていますね。2度目はやはり2009年、このときは三朝に泊まらず立ち寄っただけですが、共同浴場の株湯に入り、しみわたるようなラジウム泉の素晴らしさが印象に残りました。そうした記憶から、今回の旅では旅程が合えば三朝の素晴しいお湯に再び入ろうということで、計画していました。

今回はじゃらんの評価が高いということで、この旅館大橋を選んだのですが、この宿、木造の古い建物で、国登録有形文化財の宿というのも気になったもの。

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宿の玄関に車を乗り付け、いつも通り、5名6泊分の大荷物を下ろし、ロビーでおかしと抹茶をいただきながらチェックイン。ここ三朝でもおもてなしのお茶の文化は健在でした。到着したのは予定より1時間ほどおくれて18時頃。出雲での長居の影響を取り戻すことはできませんでしたが、宿には事前に連絡入れておいたため、なんとかなりました。

部屋に案内されると目の前には三朝川が流れ、鴨や鷺が水浴びをしています。

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左に目をやると、上流の三朝橋の方。その橋の下に河原風呂があります。今回は大人の旅行なため、無理はやめておきましょう(笑)

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この宿、重要有形文化財というだけあって、館内は木造でふるびたもの。歩くと建物が軋む感じがなんともいえません。ただし、歴史ある老舗旅館だけあって、そこここに生け花があり、目を楽しませてくれます。これは玄関ロビーから部屋に行く廊下に生けられていた大輪の百合。花のバランスも良く、何とも華やかなお点前。

着いたのは遅かったですが、やはり食事の前に、あの染み渡るような三朝の湯に浸かるべきでしょう。ということで私は旅館の大浴場のうち、この時間男性用だった、ふくべの湯へ。風呂のようすはこちらをご覧ください。

鳥取県三朝温泉 旅館大橋 温泉

旅館のウェブサイトによれば、温泉は含弱放射能泉-ナトリウム-塩化物泉で、ラジウム含有量が世界一と言われているもの。特に免疫力上昇などにも効果があると言われているとのこと。温度も42度程度でしょうか。のんびりと体を沈めて、ゆったりと時間のながれるのを楽しめる温度。窓の外の景色を楽しみながら、ぼおっとひと時をすごしました。いやいや、これだから温泉はやめられません。魂が抜け、放射能が充填され、お腹も減って、夕食を受け入れられる体になりました。

母親一行は部屋の風呂に交代で入っていたらしく、夕食の時間に間に合いそうもないという連絡。すでに脳細胞の生ビール中枢にかなりの電流が走っていたため、叔父と2人で、先に行っちゃいました!

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仲居さんも母親一行がすこし遅くなると知り、促してくれたので、スイッチオン(笑) いやいや風呂上がりかつ長距離ドライブのあとの一杯はウマイ! 喉にグビリときます。

母親と叔母もほどなく合流して夕食に。

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この宿はじゃらんの評価でも料理の評価が非常に高かった料理自慢の宿。その上。宿について部屋に置いてあったパンフレットには、気になる新聞記事がありました。この旅のちょっと前の5月1日の日本海新聞の記事で、日本旅行の2013年度お客さま宿泊アンケートの旅館食事部門でここ大橋が全国で1位に輝いたとのこと。この記事を見て、俄然期待が高まります。

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ここも達筆のお品書きが添えられていたのですが、達筆かつアーティスティック過ぎて読めません(苦笑) 旬の魚や野菜をつかった会席。
最初は八寸でしょうか。中央にグラスに串を竿にしてかけられた烏賊そうめん。串を抜くと出汁に烏賊が落ちて味がつくと言う趣向。兜の器や兜型に造られたお料理が5月の季節感を感じさせます。見た目の創意もともかく、味もしっかり、それぞれ一品ずつの変化がしっかりついて、最初から料理長の術中にはまった感じ。ベテランの仲居さんがさりげなく説明してくれる感じも含めて、風格すら感じさせる夕食のはじまり。

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続いて供されたのがアワビ、ユバ、おもちのしゃぶしゃぶ。つけだれにはアワビの肝とポン酢が添えられ、もはや脳内に香りの事前シュミレーション映像が先走ります。烏賊そうめんからアワビのしゃぶしゃぶという展開は刺激十分。まずは野菜を投入し、鍋の出汁に甘みを加えたところに、やおらアワビを投入れ、しゃぶ、しゃぶ。そして肝のタレにくぐらせて一口。ん~~ん。これはいいですね。アワビの香りと肝の余韻が混ざり合って舌に届きます。

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このあたりでお酒を注文。奥の日本酒は巌窟と名付けられた酒。これはこの宿のオリジナルのお酒とのこと。純米酒らしい芳醇な旨味で料理を引き立てます。それに手前は白ワイン。こちらは鳥取の北条ワイン製で旅館大橋のラベルを貼ったオリジナル。料理があまりに創意に溢れているので、迎え撃つ酒も、日本酒に白ワインで香りの変化に対応しようというコンセプト。

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つづいて出されたのがお造りで鬼海老がメイン。ちなみに私にも出てきましたので、生のエビはアレルギーで駄目だとつたえると、火を通してくるのではなく、貝に変わって出てきたのがこちら。貝の他はマグロにタコ、平目など。氷にのって出てきたのでどれも身が締まっていて美味。

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いちおう記念なので鬼エビの写真もとっておくと言ったら、嫁さんがピントがずれるくらいズームで鬼海老を近づけてきました。大変甘く美味しいエビだったとのこと。エビをしゃぶる一行を尻目にやはり平常心で貝をつまんで、日本酒をグビリ(笑)

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なぜか品書きにはない椀もの。穴子をあしらった糝薯。なぜか純米酒よりもスッキリした飲み口の白ワインに合います。どの料理にも花が添えられ、華やかな気分になりますね。料理長のもてなしの気持ちが伝わってきます。

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こちらも品書きにないうなぎの寿司。そろそろ満腹中枢にきていますが、味に変化があるので、いけてしまいます。

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ここで、肉好きの皆さん期待の一品。鳥取和牛の炙りステーキ。焼き加減も添えらたソースも最高。そして南天の花のつぼみがあしらわれる風流さ。目から涼しい気持ちがつたわり、私はぺろり。まわりを見渡すと、母親はすでに難儀してました(笑)

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そしてとどめの一発。のどくろの煮付け。お品書きにもあったことから予想はできてましたが、まさか丸一匹くるとは思ってませんでした。これがのどくろの淡い美味しさを引き立てるためか、薄味の煮付け。これは旨かった。身をつつきながら日本酒をちびる至福のひと時。のどくろさんには骨だけになっていただきました。このデリケートな旨味が木の芽の香りで引き立ちます。

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最後はご飯にみそ汁、卵焼きまで。私以外の一同はのどくろにかなり苦戦。満腹中枢が許容範囲を越えてしまい、本日のメインイベントののどくろを残してました。帰ってきてから母親が、「あののどくろをいただけなかったのは痛恨事」と3回言ってました。

最後に抹茶に甘いものまで出されて、この旅一番の夕食が終了。いやいや、料理自慢の宿とは聞いていましたが、この料理は図抜けていました。料理長の創意が溢れ出してくるような渾身の品の数々。目にも舌にも肝臓にも刺さる素晴しいものでした。

食後はちょっと休んで、なぜかブログ執筆。旅が進むスピードとブログを書くスピードがまったくシンクロせず、なんかのどくろの余韻の中で道後温泉の記事を書いたりして、なんだかよくわからない状態に(笑) 旅の疲れもたまってそうこうしているうちに休みました。



翌朝目覚めるとまだ5時前。外は晴天、この日も天気に恵まれました。部屋の川縁にあるソファーでブログを少し書いてから、昨夜とは入れ替わった大浴場に向かいます。

こんどは巌窟の湯。先程貼った宿のウェブサイトの巌窟の湯の写真をみていただくとわかるように、まさに石がゴロゴロした河原そのままのような風呂。もと河原に沸いていた温泉をそのまま湯船として建物を建てたという感じ。湯船ではなく川に入っているような気分になります。浴槽は3つで2つがラジウム泉、もう一つは大橋だけに湧くトリウム泉とのこと。いちおう3つ入ってみましたが、お湯の違いよりもゴロゴロころがる石で転ばないようにするのが大変で、いまひとつ泉質の違いを感じることに集中できませんでした。お湯は三朝独特の染み込むような柔らかな肌あたりであるのは変わりません。温泉に入り部屋に戻って、いつものように荷造りなどをして、朝食会場に向かいます。

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朝食もなかなか豪華。魚は鯵ではなく鰯の丸干し。この塩気がいいですね。みな口々に昨夜のどくろにたどり着けなかったことを言ってましたが、なぜか朝はよく食べてました。

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足の悪い母親には、少し高めの座椅子を用意していてくれていました。このあたりが流石なところ。

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そして外を見ると三朝川の流れに朝日があたって輝いていました。この日もいい天気になりそうです。

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朝食帰りの廊下に貼ってあったポスター。この日はこれからこのポスターに写った投入堂に行きますが、このポスターのキャッチコピーがキレてます。「日本一危ない国宝鑑賞」とあり、まさにその通り。この三徳山三仏寺投入堂は山を登らないと近づけません。過去2度の訪問でも上まで上がる時間がなく、国宝投入堂に近づけず、近くの細道から遠望したのみ。もちろん今回も登山をできるメンバーではありませんので遠望のみの予定です。

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さて荷造りも終わり、チェックアウトを済ませて出発の時間です。川をみると先程よりだいぶ陽が高くなり、この日も暑くなりそうですね。

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当家一行を世話していただいたベテランの仲居さんなどに見送られて宿を後にします。旅館大橋、食事もサービスも良い心に残る宿でした。また、来る機会があるといいですね。

旅はもう少しつづきます。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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