【番外】関西・四国・中国大紀行(その16)

(つづき) その1

京都は北野天満宮前の一本うどんで有名な「たわらや」で少し遅めの昼食を済ませ、京都での寄道をあきらめたので、あとは伊勢に向けて走るだけです。北野天満宮の駐車場でカーナビに、伊勢神宮、それも外宮をセットして、いざ出発です。旅している間にもう最後の宿泊地に向かうということで、旅も大詰めです。

北野天満宮の駐車場を出るとなぜか北野天満宮沿いに御前通を北上するよう指示され、そのまま街中のかなりの細道をぐんぐん進みます。そしてこちらも細い寺之内通にあたり、東に入ります。そのまま千本通も突っ切ってまたあえてさらに細道を東に進み、ようやく大きな通り、堀川通に出ます。ナビの案内は、普通はもう少し大通りを進むように案内されるのですが、京都の町屋、細道を味わって帰れとカーナビが気をまわしたとしか思えません(笑)

堀川通りはかなりの大通り。やはり金曜の京都市内はすこし混雑していて、西陣織会館などを横目にゆっくりと堀川通を南下。観光バスが沢山停まっている二条城をやりすごし、堀川五条でこんどは東に折れます。これは五条通ですが、もっとわかりやすく言うと国道1号線。そのまま東に進むと五条大橋で鴨川を越え、清水寺の入口をすり抜けて行きます。名だたる観光地を看板だけ眺めてやり過ごして先を急ぎます。母親にも「ここが二条城、鶯張りの床がキイキイ鳴くところ」とか「ほら、鴨川」とか、「この奥が清水寺」などとイメージのみ膨らむようにガイド。結局京都の北の方まで行って、うどんを食べただけというイメージを残さないよう、観光気分を無理やり盛り上げます(苦笑)

国道1号をそのまま滋賀方面に進むと、ようやく京都東インターで名神高速に乗ります。やはり京都市内の一般道は少し混んでいたので、高速に乗ると快適。大津、瀬田、草津などを越え、草津田上インターで往路も走った新名神高速に入ります。スイスイ進んで、往きに休んで、忍者の気配だけ感じた甲賀の土山サービスエリアもやり過ごし、さらにどんどん進みます。亀山ジャンクションから伊勢自動車道に入り、津、久居などを越え、嬉野パーキングエリアで小休止、松阪、勢和多気などを通り過ぎて、伊勢まであと少しと多気パーキングエリアでも一休み。少し休んで、再びハンドルを握ると、もう伊勢はすぐそこでした。

伊勢神宮は外宮と内宮がありますが、外宮から参拝するというのがならわしということで、この日は外宮に参拝。翌日内宮に参拝するという流れです。伊勢西インターで降りるよう指示があり、外宮の看板を目当てに進むと、すぐに伊勢神宮雨外宮の駐車場がありました。

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伊勢神宮

ようやく到着した伊勢神宮。昨年20年に一度の式年遷宮を終えたばかりということで、参拝客も特に多いということです。しかもこの旅で立ち寄った出雲大社も昨年60年に一度の平成の大遷宮を終えたということで、出雲と伊勢を両方お参りするというのもトレンドだそうです。別段トレンドに乗る事を意識して旅程を組んだわけではありませんが、結果的にトレンドに乗ってたということになります(笑)

伊勢神宮は私は学生時代に一度来ています。建築学科の学生でしたので、つねに設計、製図などの締め切りに追われておりまましたが、いつも締め切り後は友人宅などに集まって打ち上げをしていました。

大学に入ってすぐの製図の課題は文化財の図面を書く演習。現在はなんでもCADの時代でしょうが、私が学生時代はもちろん手書きの図面が中心でした。文化財の図面では分厚いアイボリーケント紙に烏口に墨を含ませて書きます。その最初の課題が伊勢神宮外宮の立面図でした。

見本となる図面からデバイダー(両方針のコンパス)で長さを写し取り、ケント紙に鉛筆で下書きを書いて行きます。直線部分は定規で書きますが、屋根のそり、鰹木の胴の膨らみ、宝珠の曲線などは雲形定規で書き、特に屋根のそりは板を削って専用のカーブ定規を造って書きます。下書きが終わると烏口で墨を乗せていきますが、時にははみ出してしまうので、そうした場合は、乾いてから、カミソリでケント紙の表面ごと薄く削りとります。毛羽だってしまうと再度墨を乗せた時に沁みてしまいますので、じつになめらかに削り取るという職人技が必要になる訳です。そうして烏口の使い方などを学びます。課題となった伊勢神宮の図面は今でも大切に保管しております。

ということで、伊勢神宮の図面を書いたあと何度目かの製図の課題の提出を終えた時、もちろん製図の締めきりの日は皆徹夜なんですが(笑)、突如、誰ともなく、「やっぱりこれから伊勢神宮を見に行くべきだ」とのクライマーズ・ハイならぬ製図提出徹夜ハイの状況に出た閃きに対し、「うん、行こう!」ということで、当時の仲間と徹夜明けにもかかわらず、打ち上げの夜が明けるころいきなり伊勢詣でに出発し、日帰り参拝という強行軍での旅程でした。

そんな参拝の記憶も、30年以上経た今は、もうおぼろげになり、経過年数から考えるとその時から2度ほど式年遷宮をへての再訪ということになります。

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駐車場の脇には外宮の配置図があり、近道もあったのですが、やはり正面からお参りすべしということで、砂利を踏みしめる心地よい音を楽しみながら、正面にまわります。

外宮は豊受大御神(とようけのおおみかみ)をお祀りしている豊受大神宮。伊勢神宮のサイトによれば、豊受大御神はお米をはじめ衣食住の恵みをお与えくださる産業の守護神とのこと。明日お参りする内宮は天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)をお祀りしている皇大神宮(こうたいじんぐう)で、総氏神ということです。内宮の天照大神が伊勢神宮の頂点であり、外宮はその配下であるという構図のようですが、お米をはじめとする衣食住の恵みを与えてくださる産業の守護神だということで、なんとなく外宮の方に親近感を覚えます。
 
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北御門口の駐車場から表参道までまわり、表参道火除橋を渡るとすぐに手水舎があります。苔むした岩に注がれる清水。白木の枠と柄杓だけでなんとなく神々しい雰囲気が漂います。

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手水舎の横に見えたのは勾玉池。伊勢神宮が伊勢神宮たる所以はこの広大な敷地とうっそうと茂る木々。神様が宿るようなロケーション。

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勾玉池の脇には新しく建てられたように見えるせんぐう館。式年遷宮にかかわる資料などが展示されているとのことでした。

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参道にもどると、さっそく大きな鳥居。一の鳥居。鳥居だけでもかなりの大木です。よく見ると独特のプロポーション。神明鳥居というもっともシンプルな形式で貫を留める楔だけでも大迫力。構造的な意味もありますが、図太い木材と合わせると、なんとなく力感を表す意匠とも見て取れます。また鳥居の柱には紙垂(しで)のついた榊が飾られ、聖域に入ることを印象づけます。

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一の鳥居、二の鳥居をくぐってそのまま歩いて行くと、右側に神楽殿がありお札やお守りなどを売っています。帰りにお札を買って帰ることにして、先に進むと、程なく右側に御正殿(ごしょうでん)が見えてきます。ただしこちらは式年遷宮前の御正殿。20年少しの時を経て茅葺の屋根は苔むし、白木は黒く変色しています。伊勢神宮の御正殿は唯一神明造りと呼ばれるもので、屋根は茅葺、ヒノキの白木のままで、茅葺の屋根も民家と異なり煙で常時燻しているわけではないので、そう長持ちしません。穢れのない美しい姿を長く保つシステムが式年遷宮という素晴らしい仕組みなのでしょう。こうして1500年もの長きに渡って究極の洗練された姿を保ち続けているんですね。

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苔むす屋根から時の流れを感じつつ、脚を進めると、並んで建つ真新しい御正殿の前に着きます。もちろん御正殿の垣の中は撮影禁止。一番外側の板垣の柱一本一本に紙垂のついた榊がつけられ、神々しさのレベルが上がって、まさに神域。まずはこれまでトラブルなく旅してこれたことを感謝し、お賽銭を投げて妙に神聖と言うか神妙な気持ちでお参りします。お参りしているのは外玉垣御門。玉垣の中には玉砂利ではなく大粒の石が敷き詰められています。時折木靴を履いた神職の方が玉垣の中に入ってお供え物をしています。

伊勢神宮のサイトによれば、御垣内の御饌殿では、毎日朝夕の2度、天照大御神はじめ神々に神饌をたてまつるお祭りがご鎮座以来一日も絶えることなく行われているとのこと。

幾重にも施された垣の中に正殿があり、千木の先が遥か先に見えます。外宮の正殿の千木の先端は垂直に切り落とされ、内宮の水平にカットされたものとは異なる造り。玉垣で仕切られた見えぬ奥に神聖さが宿ります。

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正殿から参道に戻ると、周りには巨木が林立しそれも伊勢神宮らしさを盛り立てます。ふと見ると先程から巨木を抱きしめて動かない若い女性がいますが、パワーをもらっているということでしょうか。

夕方の陽が傾きかけた中の外宮参拝でしたが、ミッション達成ということで、のんびり歩きながら駐車場に戻ります。途中、神楽殿でお札などをいただき、北御門口の方への近道を通って駐車場へ。

内宮より狭いと言ってもやはり敷地は広大。皆さんいい散歩となりました。

車に乗り込み、外宮横のコンビニで少々買い物をしてこの度最後の宿に向かいます。宿は内宮のすぐ隣の宿です。

旅は大詰め。あとちょっと続きます。

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