カルドゥッチ四重奏団の弦楽四重奏曲集(ハイドン)

10月最初のアルバムはこちら。

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カルドゥッチ四重奏団(Carducci Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.50のNo.6「蛙」、Op.20のNo.4、Op.76のNo.2「五度」の3曲を収めたアルバム。収録は2006年、ロンドンの南、レオナルド・スタンレーの聖スウィザン教会(St. Swithun's Church)でのセッション録音。レーベルはクァルテットの自主制作だと思われるCarducci Classics。

演奏者もレーベルもはじめて聴くもの。よほど詳しい方しか聴いたことがないのではということで、お察しのとおり、湖国JHさんから貸していただいているもの。ジャケット写真を見ると、若手の美男美女の組み合わせのクァルテットです。調べてみると彼らのウェブサイトがありました。

Carducci String Quartet

かなりアーティスティックなつくりで、コンテンツも充実しています。

メンバーはもともとイギリスとアイルランドの音楽学校の卒業生で、卒業後、アマデウス、チンギリアン、タカーチ四重奏団などのメンバーのもとで学び、近年では7つ以上の著名な国際コンクールに入賞するなど、ヨーロッパの若手のクァルテットでは知られた存在とのこと。コンサートツアーは、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、ベルギー、スコットランド、ハンガリー、イタリアなどヨーロッパはもちろん、日本にも来ているようです。もともとイタリアのトスカーナ州の地中海岸に近いカスタニェート・カルドゥッチ(Castagneto Carducci)で開催されているカスタニェート・カルドゥッチ音楽祭で度々演奏しており、その街の名から市長の祝福を得てクァルテットの名前をとったということです。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:マシュー・デントン(Matthew Denton)
第2ヴァイオリン:ミカエレ・フレミング(Michelle Fleming)
ヴィオラ:エオイン・シュミット=マーティン(Eoin Schmidt-Martin)
チェロ:エマ・デントン(Emma Denton)

日本では今ひとつ知られた存在では無いと思いますが、実力はすばらしいものがあります。このアルバム、CDプレイヤーにかけたとたん、豊かな音楽が部屋に溢れ出してきました。弦楽四重奏としては理想的な響き。生の弦楽器が響きの良いホールので演奏しているような素晴しい響きを堪能できるアルバムです。流石に湖国JHさん、送り込んでくる玉が違います(笑)

Hob.III:49 / String Quartet Op.50 No.6 "Frosch" 「蛙」 [D] (1787)
一音目からなんと豊穣な響きでしょう。教会らしい豊かな残響をともなっていますが、鮮明さは保った理想的な録音。流石このクァルテットのためのレーベルといっていいでしょう。4人の息がピタリと合って、音色もボウイングもピシッと合った完璧なハーモニー。流麗さと適度な躍動感に音楽自体が活き活きと踊ります。1楽章から身をの出して聴き入る素晴しいアンサンブル。光のあたっている部分とその影の濃淡まで豊かな階調で描いていき、グラデーションの豊かなモノクロームの写真のような芸術性を感じます。
つづくボコ・アダージョは陰りの音楽。抑えた表情の中にも1楽章同様豊かな濃淡があり、静けさを基調としながらも、揺れ動く表情の面白さをじっくり堪能できます。そして光がさっと射して明るさを取り戻すメヌエット。軽妙なタッチを楽しむかのように弾みます。
フィナーレは蛙の鳴き声を思わせるバリオラージュ奏法による不思議な響きがユニークな曲。軽いタッチは続き、コミカルな表情をじつにうまく表現して、この曲の面白さを浮かび上がらせます。曲の構造をしっかり踏まえて演奏を巧みにコントロールする音楽性をもちあわせていますね。

Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
続いて、すこし遡って太陽四重奏曲からNo.4。冒頭の響きが蛙のフィナーレの韻を踏むような和音に感じるのは私だけでしょうか。この曲でもアンサンブルは見事。エッジが立った精緻さというよりはハーモニーが深く共鳴している感じ。このアンサンブルのしなやかさがこのクァルテットの特徴でしょう。4人の音楽が深いレベルで響きあっているのが良くわかります。奏者の呼吸が音楽の起伏をつくり、息づかいのしなやかさが音楽を流麗にしています。2曲目にして、このクァルテットの音楽にすっかり魅了されました。
2楽章では切々たる表情をつくりながらも自然さを残し、それぞれの奏者が代わる代わる音楽を引き継ぎ、糸を紡ぐようにメロディーを重ねていきます。とりわけチェロの存在感が印象的。さっぱりとしながらも楽器をよく鳴らして孤高の表情を焼き付けます。この曲の白眉のような素晴しい演奏。クッキリとしたメヌエットを経て、フィナーレはヴァイオリンの音階の軽快感、自在なテンポの変化をコミカルに聴かせ、最後まで軽さを失わない秀演でした。

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
最後はこれも名曲「五度」。予想通り適度にしなやかな入り。鋼のような響きを聴かせる演奏もありますが、しっとりとハーモニーを聴かせていく玄人好みの演奏。一貫して自然さを失わず、落ち着いて音楽の起伏を表現していくあたりは実に見事。この曲をこれだけしなやかに聴かせる演奏はあまり覚えがありません。音楽の安定感はチェロのリズムの刻みの自然な正確さにあるような気がします。若手にもかかわらずこの音楽の豊かな安定感は流石。万全のハイドン。
アンダンテはピチカートの伴奏が入りますが、不思議と余韻の長いピチカートがゆったり感を醸し出します。ヴァイオリンは低音から高音まで行き来しながらメロディーラインを浮かび上がらせます。この曲で最も特徴的なメヌエットはほどほどの切れ込みかたでザクザクとメロディーを刻み、あくまでも自然に楽章間を移っていきます。フィナーレも力が入りすぎることなく、適度な力感で攻め込み、バランスの良い盛り上がりを聴かせます。この全体の流れを見越しての冷静な視点の存在がこのクァルテットの一番の美点でしょう。最後はハイドンらしく、余裕を残しながら、コミカルな変化を楽しむように終わります。

いやいや、このアルバム、気に入りました。若手らしからぬ成熟した音楽が流れます。しかも強音やキレで聴かせるのではなく、自然な佇まいやフレージングで聴かせるなど、かなり音楽性に自信がないとできないスタイルでの演奏です。録音も良く弦楽四重奏の楽しみが詰まったアルバム。評価はもちろん全曲[+++++]をつけます。選曲も良く、多くの人に聴いていただきたい名盤です。手に入るうちにどうぞ!

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.50 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲Op.76 五度

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No title

なかなかマニアックなアルバムですが、選曲を見るだけで
「タダモノデハ無イ」感が漂ってきますね!
ウェブサイトを見たら、ショスタコ(ーヴィチ)の全曲にも取り組んでいる
うえ、本日10月11日は英国サウサンプトンにおいてエマ・ジョンソン
との共演でモーツァルトのクラリネット五重奏曲ライブ&レコーディング
じゃないですか!(でも、他のプログラムは何?)
晴海トリトンスクエア(カルテット・ウィークエンド)あたりでの来日公演
に期待したいものです。

Re: No title

だまてらさん、いつもコメントありがとうございます。

コメントの返信もれでおそくなってスミマセン。カルドゥッチ四重奏団は私もはじめて聴く団体でしたが、かなりの実力の持ち主。やはり生で聴く機会がほしいものですね。録音で味わえるこの響きを是非実演でと思うのは私もそうです。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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