スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)

書きかけの記事がいくつかあるんですが、10月9日はコンサートに出かけましたので、レポートしときます。

読響とその桂冠名誉指揮者、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキのコンサート。毎回これが最後かもとの不安がよぎるなか、このところ毎年コンサートに出かけています。今年も読響にやってくるということでチケットとってありました。今回のプログラムはブルックナーの交響曲0番にベートーヴェンの交響曲7番。まずはコンサート情報を。

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読売日日本交響楽団:第541回定期演奏会

スクロヴァチェフスキは1923年10月3日生まれ。つまりこのコンサートの時には91歳ということになります。この日もその年齢が信じられないほどのキビキビとした指揮でサントリーホールを陶酔の坩堝と化してしまう素晴しい指揮ぶり。これまで何度もスクロヴァチェフスキのコンサートに通っていますが、間違いなく過去最高の出来でした。これは事件といってもいいほどの素晴しい出来。この日の聴衆はもの凄いエネルギーを発するスクロヴァチェフスキから、得難い音楽体験を受け取ったことでしょう。

2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ



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コンサートの開演はいつもどおり19:00。仕事を17:30ごろ切り上げ一路サントリーホールに向かいます。先についていた嫁さんとホール前のカフェでで合流して開演を待ちます。流石にスクロヴァチェフスキの公演だけあって、開演前にはホールの前はかなりのお客さん。読響のスクロヴァチェフスキの公演の素晴らしさを知ってか、一様に笑顔で開演前の時間を楽しんでいます。いつものように開演を知らせるパイプオルゴールが広場に鳴り響き、開演を待っていたお客さんがホールに吸い込まれます。

ホールに入るとまずは2階のドリンクコーナにまっしぐら(笑)。 

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まずはワインにサンドウィッチで腹ごしらえというところですが、開場直後にもかかわらずサンドウィッチが売り切れ! どうゆうことでしょう。なぜか嫁さんが鞄から大きなオリーブ入りフォカッチャを出して、勧めます。なんとなく気が引けましたが、サンドウィッチを切らしたサントリーホールのドリンクコーナーに明白な落ち度有りと妙に納得して、ワインとともにフォカッチャをがぶり。もちろん写真は撮りませんでしたが、2階のドリンクコーナーで巨大なフォカッチャをほおばる客を発見した皆さん、それは私です(笑)

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この日はいつものRA席。指揮者もオケもよく見えて、音もダイレクトに響くお気に入りの席。

1曲目は、あんまり馴染みのないブルックナーの0番交響曲。家に帰ってからザールブリュッケン放送響とのブルックナーの交響曲全集のCDを確認してみると、こちらにも0番は収録されており、他の指揮者はあまり取り上げないもののスクロヴァチェフスキは得意としている曲のようです。いづれにせよコンサートで聴く機会は滅多になかろうということで、聴く側も若干緊張気味。

定刻少し前にオケのメンバーがステージ登場。そして拍手に迎えられてコンサートマスターが登場しチューニング。この日のコンサートマスターは長原幸太さん。チューングを終えたステージ上に袖からスクロヴァチェフスキが登場すると、まさに嵐のような拍手。皆さん91歳にもなる指揮者の登場に早くも興奮気味。興奮と暖かさの入り交じった拍手の嵐にスクロヴァチェフスキも笑顔で応えます。いつもどおり脚をすこし引きずりながら指揮台に向かいますが、体調は悪くはなさそうです。前回コンサートの時より少し痩せたでしょうか。そして指揮台にあがり、いつもどおり極端に短い指揮棒を振り上げた途端、水をうったような静寂からブルックナー独特の弱音からの開始。リズミカルに音階を進めるとすぐに吠える金管。この日の読響、特に前半のブルックナーは完璧なアンサンブル。よほど練習を重ねたのか、弦楽セクションのボウイングは見事の一言。コンサートマスターの長原さんにピタリと従うように全員の弓がそろうところは圧巻。スクロヴァチェフスキが頬を膨らませながら振るタクトにもピタリとついて、しかも分厚い、まるでベルリンフィルのような深い響きをホールに轟かせていました。こちらが曲になじみが無い分、音楽が記憶を通りこしてダイレクトに脳髄に響きます。ブルックナーは習作として、番号をつけなかったこの曲ですが、スクロヴァチェフスキの手にかかると、いつものような巨大な伽藍が出現し、圧倒的な迫力。1楽章のアレグロは時折現れるもの凄い推進力のメロディーと静寂、深い呼吸が交錯する見事な構成。これほどのスケールの曲であると実演ではじめて知りました。
爆音の響きに酔えた1楽章に続いてアンダンテは、深い淵を思わせる沈みこみ。一転して精妙なオケの音の重なりによって荘重なメロディーが奏でられます。研ぎすまされたヴァイオリンの美しいメロディーを木管が響きを華やかに隈取り、幽玄な転調を加えながら独特の神々しさを感じさせます。このへんのスクロヴァチェフスキのコントロールは他の曲での演奏の通り、弦の深々としたフレーズと独特の唸りによって常人には表現できない世界観に至ります。まさにスクロヴァ節。
続くスケルツォはまさにオケが轟きまくります。速めのテンポで極端なアクセントを多用しながらも非常に流れの良い音楽。いつものようにティンパニの岡田さんが渾身の一撃を加え、頬がびりつくような轟音で音楽を引き締めます。ティンパニの岡田さん、これもいつも通り頻繁にマレットを変え微妙に響きを変えています。
フィナーレは癒されるような響きからはじまり、轟音を織り交ぜながらオケをグイグイと煽って音楽を創っていきます。指揮台に登るまでの足腰の弱さはどこにいったのか、指揮台のスクロヴァチェフスキの動きの機敏さと、リズムの正確さは驚くほど。ブルックナーの長大な曲を渾身の力で降り続けていますが、まったく疲れらしきものは見えず、クライマックスに向けてひたすらオケを煽っていく姿は、すでに神がかってます。ホール中がスクロヴァチェフスキの造り出す音楽と発散するエネルギーに圧倒されっぱなし。終盤のクライマックスは観客も身を乗り出してエネルギーを浴びるよう。最後の一音を轟かせ、スクロヴァチェフスキがタクトを下ろすと、場内から嵐のような拍手が降り注ぎます。スクロヴァチェフスキもオケの素晴しい出来に満足したのかオケを讃えながら拍手に応えていました。プログラムの前半から場内は異様な興奮につつまれていました。観客も脚の悪い爺を気遣ってか、カーテンコールは2度ほどで休憩に入ります。

あまりに素晴しい出来のオケに、後半のベートーヴェンにも期待が高まりますが、後半のベートーヴェンの7番、その予想を遥かに上回る怒濤の演奏でした。ベートーヴェンの7番といえば私の世代の刷り込みはもちろんカルロス・クライバー。熱狂の坩堝に叩き込まれる舞舞踏の聖化ですが、最初はクライバーの演奏と脳内で比べながら聴いてしまっていました。しかし、2楽章以降は完全にスクロヴァチェフスキの術中にハマりました。

1楽章は思いのほかオーソドックスに攻めてきます。テンポは予想したほど速くなく荘重な印象。前半のブルックナーの轟音が耳に残る中、逆に古典の矜持をあらためて保とうとする意図か、スクロヴァチェフスキもあえて少し抑え気味の1楽章の入り。印象が一変したのは2楽章。それまでどこかでクライバーの演奏をイメージしながら聴いていましたが、一楽章の最後の一音が鳴り終わるとアタッカですぐに2楽章に入り、そのフレージングはまさにスクロヴァチェフスキの真骨頂。さざ波のようにざわめく弦。現代風のあっさりした演奏とは対極にあり、しなやかにメロディーを刻みながらも、かなりはっきりとしたコントラストをつけて媚びない劇性を表現。ベートーヴェンの音楽がスクロヴァチェフスキによってちょっとブルックナーチックに響きます。そして、3楽章のスケルツォにもアタッカで入りますが、指揮棒を振り下ろす瞬間の気合いが凄い。鬼気迫るとはこのこと。ここからグイグイオケを煽ってフルスロットルの連続。スクロヴァチェフスキのエネルギーがオケに乗り移ってホールを揺るがすような迫力。フィナーレに入る時にはスクロヴァチェフスキの気合いが声になって注がれ、フルスロットルどころかオーバーヒート寸前の気合いの嵐。読響もスクロヴァチェフスキの煽りに見事についていき、ティンパニは皮が張裂けんばかりの打撃で応えます。この音楽と煽り、エネルギーが91歳の老指揮者から生み出されているとは信じられません。最後のリズムがカオスに包まれるところのコントロールも盤石。爆風のようなクライマックスを迎え最後の一音がなり終わると、今まで聴いた事のないようなブラヴォーの嵐が降り注ぎます。すぐにスタンディングオヴェーションになり、オケも一緒に老指揮者に惜しみない拍手を送ります。まさに奇跡のような音楽。ホールの全観客がスクロヴァチェフスキに打ちのめされた、心地よい脱力感。奇跡の瞬間に立ち会った観客の興奮したようすがホール内に満ち、脚を引きずりながらも何度かのカーテンコールに応じますが、爺が握手でコンサートマスターに退場を促します。オケのいなくなった広いステージに再び呼び戻されたスクロヴァチェフスキの快心の笑顔に観客も満足したのか、拍手が止んで素晴しいコンサートが終わりました。

ここ数年スクロヴァチェフスキのコンサートには通ってますが、いつも最高の演奏。今回はこれまでで最高の出来だと思います。ただ力任せな演奏ではなく、オケがクッキリとコントラストがついて格調高く響き、そして振り切れんばかりに鳴らせきってしまう手腕は見事。演奏に老いの影はなく、溌剌としてダイナミック、そして深い響き。この高みはどこまで行くのでしょうか。ほんとうに素晴しいコンサートでした。



心地よい興奮のなか、この日はサントリーホールの並びのカフェで反省会。

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食べログ:ARK HiLLS CAFE

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グラスワインに前菜盛り合わせ、パスタなどをいただきましたが、カジュアルな割に美味しいお店。料理が出てくるのも速いのでコンサートの反省会に向いています。

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サントリーホールのコンサートチケットを見せるとデザートがついてくるというサービスもいいですね。

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コンサートの余韻を楽しみながらゆっくり食事をして帰りました。

この至福の時間、再び味わう事ができるでしょうか。もちろん、スクロヴァチェフスキのコンサートの予定が発表されれば、次の機会もぜひ聴きたいものです。

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ジャンル : 音楽

tag : サントリーホール ブルックナー ベートーヴェン

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日記拝見して、横浜みなとみらいの同プログラムを当日券で聴いて参りました。

みなとみらいでは、ブルックナーが殊の外素晴らしかったです。

ベートーベンは、オーバーヒートしちゃった感じでしたが。

白熱の終演後、流石にかなりしんどそうでしたので、この調子でやって最終公演持つのか、と心配になってしまいました。

読響とスクロヴァチェフスキの固い絆を聴けたのが何より良かったです。

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、スクロヴァチェフスキのコンサート行かれたんですね!
私は学生時代は横浜で過ごしたものの、みなとみらいのホールには行ったことがありません。ベートーヴェンがオーバーヒート気味だったとのこと。やはりコンサートでの演奏は微妙なバランスにがいろいろ影響するということでしょう。奏者が規律を守ったまま没入できないと、もしかしたらオーバーヒート気味に聴こえてしまうのかもしれませんね。
> 読響とスクロヴァチェフスキの固い絆を聴けたのが何より良かったです。
その通りですね。やはり読響団員にはスクロヴァチェフスキに対する深いリスペクトを感じます。もう一度聴く機会はあるでしょうか。
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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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