尾高忠明/オーケストラ・アンサンブル金沢の「ロンドン」ライヴ(ハイドン)

ひょんなことから手に入れたこのアルバム。聴いてみるとアルバムとしてなかなかの出来ですね。

Otaka.jpg
amazon

尾高忠明(Tadaaki Otaka)指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢(Orchestra Ensemble Kanazawa)の演奏で、ハイドンの交響曲104番「ロンドン」ほかを収めたアルバム。収録は2009年3月21日、金沢の石川県立音楽堂でのライヴ。レーベルはワーナー・ミュージック・ジャパン。

このアルバムは一夜のコンサートの模様をそのまま収めたもの。ハイドンのロンドンは最後に置かれ、その前に、パーセルの「ディドとエネアス」組曲、モーツァルトのピアノと管弦楽のためのロンド(K.382)、ブリテンのピアノ、弦楽四重奏と弦楽合奏のための「若きアポロ」(Op.16)、ディーリアスの「春を告げるカッコウを聴く」、「夏の夜に川面で」が置かれています。モーツァルトとブリテンの曲のピアノは小菅優。この日のコンサートのコンセプトまでは解説に書かれていませんが、どの曲もイギリスつながりのようです。直接イギリスと関係なさそうなモーツァルトのピアノと管弦楽のためのロンドは、イギリス旅行のあとに書かれたピアノ協奏曲5番(K.175)の第2楽章を置き換えるために書かれたものということで、合点がいきました。このようなイギリスつながりの曲を配したコンサートの最後にハイドンのロンドンが置かれること自体、なかなか通好みのプログラムです。

指揮者の尾高忠明は知らない人はいないでしょうが、ことハイドンの演奏という意味ではほとんど馴染みはありません。私は昔N響を振ったコンサートを聴いたことはありますが、残念ながら記憶もあまり残っておりません。おぼろげな記憶では日本人風の堅実な演奏をする人との印象のみです。ということで、コレクションにも尾高忠明の録音はなく、なんとこのアルバムが初めて手に入れた録音ということになります。

このアルバムを取り上げたのは、やはり演奏が良かったから。最初のパーセルから、モーツァルト、ブリテン、ディーリアスとじつに繊細かつ堅実な仕事。録音が非常に良いのも相まって、ハイドンを聴くまでにすでにこのアルバムの魅力にうっとりです。オーケストラ・アンサンブル金沢、略してOEKのアルバムも初めて聴きます。単なる地方のオケだろうと、ちょっと油断してましたが、演奏はかなりの精度。この録音を聴く限り、かなりの腕利き揃いと見ました。ジャケットに写る石川県立音楽堂も約1500席と小規模ながらサントリーホールと肩を並べるようなクラシック専用のホールで、ここの響きの美しさが録音にプラスになっているようです。特にモーツァルトとディーリアスはかなりいい感じ。ハイドンが権威主義的に感じるほどに、その前にリラックス。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
序奏は小編成のオケながら厚みを感じるほど充実したオケの響き。各楽器の存在が混濁なく鮮明に把握できる録音。迫力もあるの清透な響きを楽しめます。なんとなくディーリアスなどこれまでの曲のしなやかな佇まいは、このロンドンの堂々とした響きを際立たせるために配置されていたような気がします。オケの響きに脂っこいところがまったくないのに迫力と推進力がある不思議な印象。
アンダンテでも印象は変わらず、不思議に爽やかな響きに彩られた音楽が進みます。明らかにヨーロッパの奏者の音楽とは異なる和のテイストを感じます。アクセントは力強くオケの響きも充実しているのにどうしてそういう印象になるのか、いまひとつピンときませんが、メリハリがついていても基本的に淡白な音楽の造りだということでしょうか。
つづくメヌエットに入るとオケの充実した響きはかなりのもの。隙のない見事な演奏ですが、根底には清らかな和のテイストを感じてしまいます。和食がつづいて、ちょっと脂っこいものが恋しくなる時の気分と同じような印象(笑)
フィナーレまでくると、やはり締めも和でなくてはと開き直った心境になります。尾高忠明のオーケストラコントロールは緻密でかなりの精度ですが、ここまできてなんとなく感じたのはフレーズを歌わせるというところの入れ込みがあまりなく、ダイナミクスで聴かせるという音楽の造りが、独特の和風な印象につながっているのではないかということ。最後まで堂々、緻密な面にくらべて、躍動感や歌う感じがおとなしい印象でした。

このアルバムの聴きどころは、メインに据えられたハイドンではなく、パーセル、モーツァルト、ブリテンやディーリアスでしょう。華やかに響くモーツァルト、前衛の気風にあふれたブリテン、そして癒しに満ちたディーリアス、これらの曲の演奏では曲に素直に忠実に演奏していく尾高忠明の指揮が活きて、確かに曲の魅力を上手く引き出せているように感じます。ハイドンまでの曲と、ハイドンでの印象がかなり変わってしまいましたが、これはハイドンの音楽の演奏の難しさを表しているような気がします。ハイドンの曲に仕込まれた堂々として、時にユーモラスにも響くメロディーに命が吹き込まれてはじめて、魅力的に響くということがこの演奏からわかったような気がします。ハイドンの評価は[+++]としますが、このアルバムで、尾高忠明とオーケストラ・アンサンブル金沢の素晴らしさを発見できました。OEKには他にもハイドンの録音があるようなので、聴いてみたくなりました。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ロンドン ライヴ録音

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103古楽器ピアノソナタXVI:378人のへぼ仕立屋に違いないファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:46アレグリモンテヴェルディ東京オペラシティパレストリーナバードタリスすみだトリフォニーホール天地創造ライヴ録音ピアノ協奏曲XVIII:11マーラーストラヴィンスキー弦楽四重奏曲Op.9アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:48告別ヒストリカル交響曲1番交響曲97番ピアノソナタXVI:39美人奏者四季交響曲12番迂闊者交響曲70番東京芸術劇場太鼓連打ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:3バリトン三重奏曲SACDスコットランド歌曲ディヴェルティメントヴェルナーガスマンモーツァルトシューベルトベートーヴェンLPピアノソナタXVI:38哲学者ラメンタチオーネ交響曲80番交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番ヴァイオリン協奏曲協奏交響曲DVDピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:20アリエッタと12の変奏XVII:3サントリーホール帝国ラ・ロクスラーヌ皇帝弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ピアノソナタXVI:50五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出ひばり弦楽四重奏曲Op.64チェロ協奏曲ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33リヒャルト・シュトラウス軍隊騎士弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:27ピアノソナタXVI:1シベリウス武満徹交響曲4番無人島交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号交響曲19番弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲87番交響曲86番フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲81番交響曲78番交響曲79番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードドイツ国歌モテットオフェトリウムカノンスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ブーレーズベルク交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番オーボエ協奏曲リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10奇跡交響曲34番交響曲18番交響曲77番温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番音楽時計曲ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番小オルガンミサ大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD剃刀ドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲62番変わらぬまこと交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲3番交響曲2番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
114位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
10位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ