エドゥアルド・ファン・ベイヌム/RCOの驚愕、奇跡、97番(ハイドン)

今日はヒストリカル。

Beinum949697.jpg
HMV ONLINEicon / HMV ONLINEicon(DECCA盤) / amazon(DECCA盤) / TOWER RECORDS(DECCA盤)

エドゥアルド・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、96番「奇跡」、97番、ブルックナーの交響曲7番の4曲を収めた2枚組のアルバム。ハイドンの収録は驚愕が1951年9月、奇跡が1952年12月、97番が1953年5月、いずれもアムステルダム・コンセルトヘボウの大ホールでのセッション録音。原盤はDECCAですが、手元のアルバムはRETROSPECTIVEレーベルのもの。最近DECCAからもハイドンのみの1枚がリリースされています。また、この3曲に関してはDECCAのLPから起こしたと思われるHaydn Houseのアルバムも手元にあります。

実は最近DUTTONの1947年録音の奇跡を手に入れ、そちらのレビューをしようとして比較のためにこのアルバムを聴いてみると、双方それぞれ良さがあるのですが、一般の人にオススメするにはこちらのアルバムの方が好ましいということで、急遽レビュー盤を変更した次第。奇跡に限って言えば1947年の方は小気味よくスタイリッシュな演奏なのにくらべ、こちらはくっきりとして迫力もある演奏という違いがあります。

そもそもエドゥアルド・ファン・ベイヌムにはハイドンの交響曲は他に軍隊の録音があり、ザロモンセットから4曲を録音しており、ハイドンの交響曲をレパートリーとしていた節はありますが、これまで一度も取り上げておらず、私自身ベイヌムの他の演奏にも親しんでいなかったので、どのような音楽を作る人か、いちどちゃんと聴いてみたいと思っていた人でした。

一応Wikipediaなどを参考に略歴などに触れておきましょう。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムは1941年、オランダ東部のアルンヘム生まれの指揮者。16歳で地元アルンヘム管弦楽団にヴァイオリニストとして入団、翌年アムステルダム音楽院に入り、ピアノ、ヴィオラ、作曲を学びました。1920年にピアニストとしてデビューしますが、アマチュアオーケストラや合唱の指揮を始め、指揮者に転向することになります。1927年に指揮者としてデビュー、オランダのハールレム交響楽団の音楽監督となり、1929年アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団への客演が成功裏に終わり、1931年にピエール・モントゥーの推薦、メンゲルベルクの招きで同楽団の次席指揮者となったのち、1938年から首席指揮者になりました。1945年、メンゲルベルクがナチスへの協力で追放されると、コンセルトヘボウの音楽監督兼終身指揮者に就任します。1949年にはロンドン・フィルハーモニーの首席指揮者に就任、そして1956年からはロサンジェルス・フィルの終身指揮者に就任します。晩年は病気がちだったとのことで1959年4月、アムステルダムでのリハーサル中に心臓発作で倒れ、57歳で亡くなりました。

アムステルダム・コンセルトヘボウ管はオランダ人の音楽監督を置くということで、ベイヌムの後任は若いベルナルド・ハイティンクが務めることになりますが、あまりの若さにオイゲン・ヨッフムが補佐として常任指揮者として1964年まで加わりました。

ベイヌムはメンゲルベルクのロマン的音楽づくりに対して客観的な解釈でコンセルトヘボウに新風を吹き込んだとされています。今聴くベイヌムのハイドンはその指摘どおり、かっちりとした迫力に満ち、しかも流れの良さも併せ持つなかなか見事なものです。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
1950年代の録音としてはかなり鮮明。いくぶん速めのテンポで健全なインテンポによるキリリと引き締まった音楽を創っていきます。ベイヌムの演奏スタイルはハイドンの音楽に実によくマッチしたもの。弛緩ない引き締まった表情で、ハイドンの音楽が凛々しく響き渡ります。驚愕の1楽章は構成感の緻密さが聴きどころですが、ベイヌムの手にかかると立体感あふれる彫像のような見事なフォルムを見せます。
2楽章のビックリもタイトに引き締まって、こけおどし的側面は皆無。ハイドンの音楽の気高さを強調するように、引き締まった音楽のままグイグイ攻めていき、ゆったりとした表情は見せません。オケの響きも各楽器の響きのバランスがよく、音楽の一体感も見事。
メヌエットもタイト。楽章間の対比やテンポの変化は逆に最小限。まさに一貫してタイトな音楽。休符も短めで音楽の流れの良さを強調しているよう。よく聴くとそれでも抑えるべきところで音量を絞り、単調になるのを避けています。
フィナーレはこれまでの一貫したスタイルの総決算。適度な前のめり感を保ちながらグイグイきます。オケの響きは引き締まりまくり、後年の響きの豊かなコンセルトヘボウと同じオケとは思えない禁欲的な響きで圧倒します。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
続いて奇跡。驚愕の一貫してタイトな表情にくらべ、少し余裕が増して落ち着きを保っているように聴こえます。演奏の基調は前曲と同じものを感じますが、曲に仕込まれたウィットを活かしてコミカルさを感じさせる余裕があります。速いパッセージのヴァイオリンの流麗なところは流石コンセルトヘボウ、録音の違いか柔らかな印象も加わり、引き締まりながらも表情豊かなかなかいい演奏。
つづくアンダンテは前曲と異なり、普通にゆったりとした表情の演奏。中間部の攻め込みにベイヌムらしいタイトな印象を垣間見せますが、すぐにゆったりとした表情に戻ります。
メヌエットも余裕がある一般的演奏。驚愕の攻め込むスタイルがベイヌム風だとすれば、こちらは普通の演奏ですが、ハイドンの曲としては、このほんのりとタイトでバランスの良い演奏の方が曲の良さが引き立ちます。
フィナーレもタイトさを感じさせるバランスの良い演奏。この曲の面白さを象徴する楽章ですが、楽譜に仕組まれたウィットに反応してオケも自在に攻めてきます。バランスの良い秀演でした。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
最後の97番は簡単に。一番最近の録音ながら、音はちょっとこもり気味。演奏は奇跡と同様余裕をもったバランスの良い演奏。聴くと確かに新古典主義的な端正なフォルムを感じさせます。1950年代には垢抜けた演奏として受け取られたということは想像できます。この97番も奇跡もちょっと聴くとオーソドックスな、どちらかというと個性的な演奏とは言い難い演奏ですが、適度にタイトな表情の魅力と、演奏からにじみ出る味わい、ハイドンの曲の面白さを素直に表した良さがあり、これはこれで完成度の高いなかなかいい演奏です。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムと手兵アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるハイドンのザロモンセットからの3曲、ベイヌムとはどうゆう音楽を奏でる人だったのかを知ることができる興味深い演奏でした。驚愕の攻め込む姿勢は非常に挑戦的ですが、ちょっと平板さもはらんでいました。逆に落ち着いて音楽をとらえた奇跡と97番は突き抜けた個性を感じさせる演奏ではありませんが、ハイドンの交響曲の演奏としては理想的な高次のバランスを保った名演とみなすことができるでしょう。こうした評価は人によってはまったく逆転することもあるでしょうが、私はバランスの良い演奏の方を採りたいと思います。というわけで評価は驚愕が[++++]、残り2曲が[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 驚愕 奇跡 交響曲97番 ヒストリカル

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

驚愕Blu-rayライヴ録音モーツァルトチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲86番十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲10番交響曲12番交響曲11番交響曲9番ヒストリカルロンドン太鼓連打交響曲2番交響曲15番古楽器交響曲4番交響曲1番交響曲18番交響曲37番ひばりSACD弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:14LPピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:1天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場軍隊時計交響曲99番交響曲102番交響曲97番奇跡交響曲95番交響曲98番交響曲93番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:36フルート三重奏曲ライヒャロッシーニオーボエ協奏曲ドニぜッティピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ストラヴィンスキーシェーンベルクミューザ川崎マーラーチェロ協奏曲東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:318人のへぼ仕立屋に違いないファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26タリスバードモンテヴェルディパレストリーナアレグリすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:6告別ピアノソナタXVI:39美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルトベートーヴェンピアノソナタXVI:38交響曲67番哲学者交響曲80番ラメンタチオーネピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲35番交響曲46番ヴァイオリン協奏曲協奏交響曲DVDピアノソナタXVI:52交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3サントリーホール帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出弦楽四重奏曲Op.64ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33騎士弦楽四重奏曲Op.74交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹交響曲42番無人島時の移ろいベルリンフィルホルン信号交響曲19番弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番王妃トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6ピアノ五重奏曲チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲81番交響曲78番交響曲79番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードカノンオフェトリウムモテットドイツ国歌スタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bis音楽時計曲ピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実マリア・テレジアバリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲62番変わらぬまこと交響曲107番交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
117位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
8位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ