ノルベルト・デュヒテルのオルガン協奏曲集(ハイドン)

協奏曲のアルバムが続きます。

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ノルベルト・デュヒテル(Norbert Düchtel)のオルガン、ミュンヘン・ラルパ・フェスターテ・バロックオーケストラ(L'arpa Festante Barockorchester München)の演奏で、ハイドンのオルガン協奏曲5曲(Hob.XVIII:5、XVIII:2、XVIII:10、XVIII:7、XVIII:8)を収めたアルバム。収録は2002年5月21日から23日、ドイツ中部、ニュルンベルクの近郊にあるマリア・リムバッハ(Maria Limbach)にあるワルファールツ教会(Wallfahrtskirche)でのセッション録音。レーベルは独ARS MUSICI。

このアルバム、実は同じ演奏者のオルガン協奏曲のVol.2を湖国JHさんから貸していただいているのですが、正体不明のオルガン協奏曲が含まれており、ちょっとその曲を調べ切れていないことから、たまたま手元の未聴盤ボックスにあった、Vol.1の方を取り上げた次第。Vol.2の方にはHob.deestというヘ長調(元の記述はイ長調としましたが誤りでしたので修正いたしました)の曲が含まれ、このアルバム以外にはこの曲の情報はなく、いろいろ調べているのですがいまひとつよくわかりません。どなたか情報をお持ちでしたら是非教えてください。

さて、気をとりなおして演奏者の情報を調べておきましょう。

ノルベルト・デュヒテルは1949年生まれのオルガン奏者。ドイルのヴュルツブルクの州立音楽院で教会音楽、作曲とオルガンを学び、その後ミュンヘン音楽大学に進みます。ドイツ国内の様々な高名なオルガニストに師事しオルガンの腕を磨き1979年からはミュンヘンのカトリック教会でオルガン演奏と即興演奏の講師を務めたほか、レーゲンスブルク、デトモルトなどでも教えています。南ドイツでは有名な存在ということです。
オケのミュンヘン・ラルパ・フェスターテ・バロックオーケストラは1983年に設立された古楽器オーケストラ。聴くのは初めてですが国際的に活躍しているとのこと。

一聴して堅実かつ、端正な印象。オルガンもオケも実に味わい深い音楽を奏でます。

Hob.XVIII:5 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [C] (before 1763)
教会らしく豊かな残響を伴いますが録音は鮮明で非常に聴きやすい響き。オケの序奏はゆっくり目ですが、キリリと引き締まった端正なもの。オケを存分に鳴らしていますが、テンポは揺らさず一貫して律儀な演奏。デュヒテルのオルガンも教科書的端正さを持った演奏。オルガンの音色はハイドンの協奏曲にふさわしいコミカルな陶酔感にあふれたもの。このアルバムに含まれるオルガン協奏曲はどれもメロディーラインの面白い小曲ゆえ、この端正な演奏によってそれぞれのメロディーの面白さが自然に浮かび上がるという寸法です。まさに必要十分な演奏と言えるでしょう。こう書くと手堅い演奏に思われるかもしれませんが、さにあらず。オルガンとオケの色彩感は素晴らしく、音楽を演奏する喜びが噴き出してくるよう。レビューのために何度か聴くうちにすっかりこの演奏の魅力にハマりました。千変万化する美しいオルガンの音色が律儀なオケに乗って楽しめます。ゆったりしたという感じではなく、落ち着いた心境による穏やかなキビキビ感という印象。1楽章の快活さ、2楽章のアンダンテの穏やかなリズムの魅力で聴かせ、そしてフィナーレも落ち着いて引き締めてきます。まさにこの曲の見本のような演奏。

Hob.XVIII:2 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [D] (before 1767)
オルガンのトランス状態のような陶酔感が聴きどころの曲。前曲同様落ち着き払った安定した演奏。なぜか前曲よりオケの響きが少し薄くなり、オルガンが強くなります。そのせいか1楽章の延々と続くオルガンの高音の音階を聴いているうちに、予想通り陶酔感につつまれてきます。淡々と弾かれることでかえって陶酔感が強まるよう。12分近くと長い2楽章のアダージョ・モルトは夢の国のよう。ここではゆったりと音楽が流れ、オルガンが自在にメロディーを揺らしながら音を乗せていきます。しばらく続くオルガンのメロディーがぐっと音程を下げるあたりの面白さはこの曲ならでは。堅実な演奏ゆえ中だるみすることなくこの曲の面白さをしっかり伝えます。フィナーレはしっかりと落ち着いた足取り。オルガンもオケも水も漏らさぬ堅実さでで進みます。オルガンの陶酔感は変わらず、オケがくっきりとメリハリをつけてサポートします。展開部で転調を重ねて上昇するあたりはこの曲のもう一つの聴かせどころ。淡々と進めることで、やはり曲の面白さが強調されます。いやいやこれは素晴らしい。

残りの3曲も安定した演奏ゆえ、曲の聴きどころなどを簡単に触れるだけにしておきましょう。

Hob.XVIII:10 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (before 1771,1760?)
オルガンの音色を変え、壮麗な響きで始まります。基本的に前2曲と変わらぬ落ち着いた演奏ですが、前曲に比べ、少々オルガンのタッチが重い感じ。音色を変えることによってタッチが変わるということなのでしょうか。聴き進めるうちにデュヒテルのオルガンの魅力に引き込まれます。聴きどころは2楽章のアダージョのメロディーラインの面白さ。あいかわらず淡々とした語り口で曲の魅力に迫ります。

Hob.XVIII:7 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (before 1766,1760?)
快活な1楽章とフィナーレに挟まれた、陰りのある短いアダージョの表情の深さが聴きどころ。両端楽章の穏やかな明るさを引き立てるようにしっかりと陰りを表現。楽章間の表情の変化で聴かせる曲。

Hob.XVIII:8 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (before 1766)
最後の曲。伴奏にオルガンが最初から寄り添い、不思議が音を重ねていきます。オルガンが再び堂々と響きわたります。オルガンの音色の変化もこのアルバムの聴きどころの一つ。ライナーノーツには曲ごとのオルガンの設定などにも触れられていますが、こちらが詳しくないのでよくわかりません(苦笑) ただしオルガンの音色の変化は鮮明な録音も相まって十分楽しめます。この曲も2楽章の曲想の面白さがポイントでしょうか。少々コミカルな表情を見せ、最後にウィットを効かせるよう。

ドイツのオルガニスト、ノルベルト・デュヒテルによるハイドンのオルガン協奏曲5曲を収めたアルバム。奏者の落ち着いた心情から立ち上る穏やかな音楽に癒されるような演奏。テンポは少し遅めで、畳み掛けるようなところはなく、スリリングでもないのに音楽にはメリハリがあり、そして抑えた表情がかえってメロディーの面白さを引き立てるよう。実に味わい深い演奏です。ハイドンのオルガン協奏曲には独特の音色感というか高揚感がありますが、抑えた表現でもその高揚感は十分つたわるいぶし銀の演奏です。評価は3曲目は重さを少し割り引いて[++++]、残りは[+++++]とします。

手に入るうちにどうぞ!

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : オルガン協奏曲

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No title

Daisyさん、こんにちは。

Hob deestの曲の件ですが、私はこのCDは所有していないので質問と推測ですが、deestの曲は、イ長調でしょうか? タワケコのCDの紹介にはヘ長調となっているので、タワレコの間違いですかね。

もし、ヘ長調であれば、youtubeに、XVIII : F1とF3の曲があるので、どちらかではないかと推測しますが、ちょっと聴いていただければと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=EEWwH1kRxc4&list=PL-FaA4k7UdNaICDfXhzCWHxt55Ct6y381&feature=player_detailpage

https://www.youtube.com/watch?v=zh4D-elRKcg&list=PL-FaA4k7UdNaICDfXhzCWHxt55Ct6y381&feature=player_detailpage

Re: No title

Haydn2009さん、コメントありがとうございます!

どんぴしゃり、手元の曲はHob.XVIII:F3です。ネットは調べたつもりですが、いまいちYouTubeを活用するという現代人のたしなみができておりませんでした。しかもご指摘のとおりヘ長調です!

実際に曲を聴いて確かめることができるといういい時代になったものですねぇ。ご指摘にもとづき記事も修正します!

No title

Daisyさん

よかったですー。
HobokenのXVIIIのsuplementには、F1、F2、F3とあり、F2は既に真作とされてますが、
F1の作曲者は、composition de G.J. Voglerと記載されており、
F3の作曲者は、composition probable de J.G. Langと記載されてますね。

なお、YoutubeにアップされているF1は、Hob. XVIII : 7と同一曲がアップされてます(元の音源はNaxosから出ているHae-won Changん゛ピアノを弾いている盤の物)なので、間違っているような気がします。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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