エドウィン・フィッシャー/ウィーンフィルのピアノ協奏曲(ハイドン)

今日はヒストリカルなアルバム。

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エドウィン・フィッシャー(Edwin Fischer)のピアノと指揮、ウィーンフィルの演奏によるハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)などを収めたアルバム。収録は1942年10月28日ウィーンでのセッション録音。レーベルはEMI CLASSICSですが、新星堂のThe Great Recordings of EMIというシリーズの一枚。

エドウィン・フィッシャーは高明なピアニストであり、手元にもバッハなど何枚かのアルバムがあったはずです。今回このアルバムを手に入れたの機に聴いてみようといろいろひっくりかえして探したのですが見つかりません(苦笑)

仕方なくライナーノーツなどから略歴を紹介しておきましょう。生まれは1886年、スイスのバーゼル。父はバーゼル市管弦楽団のオーボエ奏者とのこと。バーゼル音楽院でハンス・フーバーに師事、1904年に父が亡くなったのを機にベルリンに移り、シュテルン音楽院でリストの弟子だったマルティン・クラウゼに師事。次第にピアニストとして頭角を現します。同音楽院を卒業後演奏活動を開始すると同時にいきなり音楽院で教鞭をとることになります。1920年代以降ベルリン、リューベック、ミュンヘンなどで演奏活動を行い、当初はバッハを得意としていました。1931年、シュナーベルの後任としてベルリン音楽大学ピアノ科の教授に就任し、このころから積極的に録音を残すようになります。1933年にバッハの平均律、1934年にシューベルトの「さすらい人幻想曲」、1937年にフルトヴェングラーの「ピアノと管楽のための交響的協奏曲、そして1942年にフルトヴェングラーとブラームスのピアノ協奏曲2番を録音しています。このアルバムに収められたハイドンはまさにその頃の録音。その後ナチスから逃れるためスイスに戻り、1958年までルツェルン音楽院で教鞭をとります。1950年にはバッハの没後200年を記念してヨーロッパの主要都市でバッハの鍵盤用の全協奏曲を演奏、その後1954年まで演奏、録音活動を続けましたが神経性の腕の麻痺などに悩まされ、54年以降は録音から遠ざかり指揮などで活躍。亡くなったのは1960年、チューリッヒで。74歳でした。

同時代の演奏家である、コルトー、ギーゼキング、フルトヴェングラーと親交がありたびたび共演、またヴァイオリンのクーレンカンプ、チェロのマイナルディとはトリオを結成していた。クーレンカンプ没後シュナイダーハンが加わったとのこと。ピアニストのバドゥラ=スコダ、バレンボイム、ブレンデルはフィッシャー門下ということで教育者としても多くの名演奏家を育てた人でした。

このアルバムにはハイドンの協奏曲の他に、1937年収録のモーツァルトのピアノ協奏曲17番(K.453)、ダラバーゴの教会のための4声の協奏曲 作品2の9が収められています。ハイドン以外のオケはフィッシャー自身が1934年に結成した室内管弦楽団です。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
原盤は独ElectrolaのSP盤。ヒスノイズとわずかにスクラッチノイズが聴こえますが音質は良好。ちょっと低域が薄いですがキレは十分。もちろんモノラルです。速めの快活なテンポに乗ってウィーンフィルのキレのいい弦楽セクションが伴奏で入ります。フィッシャーのピアノは鮮烈なキレ味。速めのテンポに合わせて実に鮮やかなタッチで音階を刻んでいきます。くっきりとアクセントをつけて音楽が立体的に浮かび上がります。ちょっとドイツ風の重厚な演奏を想像していたのですが、ドイツ風のくっきりした面は感じさせつつもここまでキレたタッチを聴くことができるとは思いませんでした。録音の古さを脳内フィルターで除去するとドイツ風なアルゲリッチのようなピアノのキレ。いやいや見事なタッチです。さらりとしながらもくっきりと香り立つハイドンの古典的楽興。見事な1楽章です。
2楽章は先ほどまでの軽快さから一転、ぐっとウィーンフィルが沈み込み、なかなか深い情感を感じさせます。それに合わせてフィッシャーのピアノは今度は磨き抜かれた輝きを発します。ピークでちょっと音が歪むのはご愛嬌ですが、やはり脳内フィルターで録音のアラを除去すると素晴らしい音楽が流れます。ピアノのメロディーと伴奏のコントラストをかなりはっきりとつけるところなど、現代のピアニストでもこれだけの表現はなかなか聴くことができません。リリカルなメロディーが沁みますが、さすがフィッシャーとウィーンフィルの演奏だけあって高雅さも失いません。カデンツァはシンプルながらピアノの音の美しさは感極まるほど。極上のの輝き。ハイドンの協奏曲のピアノの輝きの極北。最後に暖かい音色のオケが向かいに来るところの安心感はすばらしいものがあります。
フィナーレは再びフィッシャーのピアノの鮮やかなタッチを堪能できます。ピアノの音階はまったく抵抗なく転がり、タッチが冴え渡ります。並のピアニストとは次元の違うタッチの冴え。これを実演で聴いたら鳥肌ものでしょう。最後は迫力よりもキレ味で聴かせて終わります。

このあとのモーツァルトのピアノ協奏曲もハイドン同様の魅力をもった素晴らしい演奏です。録音はさらに古いですが原盤のコンディションが良くノイズは逆に少なく聴きやすい録音です。こちらもオススメ。

エドウィン・フィッシャーのピアノと指揮、ウィーンフィルの演奏によるハイドンのピアノ協奏曲でしたが、あらためてエドウィン・フィッシャーという人の偉大さを再認識した次第。今聴くと録音のアラが少々気にならなくはないですが、その録音の奥に広がる深淵な魅力は十分伝わります。冴え冴えとしたタッチ、くっきりと浮かび上がるメロディー、恐ろしく立体感にあふれた音楽、そして気高さもあり、ピアノという楽器の表現できる音楽の素晴らしさに打ちのめされた感じ。脳内にアドレナリンが充満です(笑)。もちろん評価は[+++++]。ヒストリカル好きな方は是非入手すべき素晴らしい演奏です。

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tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 モーツァルト

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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