【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)

なんとなく、このアルバムがリリースされているのは知ってましたが、手元に来たのはつい最近です。

IlGiardino2.jpg
TOWER RECORDS / HMV ONLINEicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコ(Il Giardino Armonico)の演奏で、ハイドンの交響曲46番、22番「哲学者」、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの交響曲(BR C-2)、ハイドンの交響曲47番ののあわせて4曲を収めたアルバム。収録は2014年6月16日から20日、ベルリンのテルデクス・スタジオでのセッション録音。レーベルはAlpha Productions。

このアルバム、ジョヴァンニ・アントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第2巻に当たるもの。第1巻については以前に記事にしております。

2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

全集の完成はハイドンの生誕300周年にあたる2032年と、東京オリンピックのさらに12年後という気の長い話ですが、ハイドンの全交響曲を演奏、録音するというプロジェクトの大きさを考えると妥当なものでしょう。デビュー盤の第1巻はなかなかの出来だっただけに、2枚目の出来は今後の全集の成否を占うものということで、これまた関心が集まるものです。世の中のハイドンファンもその出来に注目していることでしょう。また、現在全集の半ばまで来ているトーマス・ファイにとっては商業的なライバル出現ということで、うかうかしていられない存在ということかもしれません。

Hob.I:46 Symphony No.46 [B] (1772)
前作と同様、古楽器のざらついた音色による迫力あふれる演奏が特徴。冒頭から躍動感にあふれ、かなりオケに力が入り、アクセントを執拗につけていくスタイル。ヴィヴァルディを得意としているアントニーニの得意とするスタイルといっていいでしょう。曲はシュトルム・ウント・ドラング期の最高傑作45番「告別」交響曲と同じ頃の作品。演奏によっては構成の見事さに焦点を合わせてくるところですが、アントニーニは荒々しさと力感を強調してきます。前作でアントニーニのアプローチは新鮮に映りましたが、この曲で改めて聴くとハイドンのこの時期の交響曲の魅力の一面を強調しているものの、ちと迫力に焦点を合わせ過ぎというように聴く人もあるかもしれません。このあたりが古楽器演奏の難しいところ。
つづく2楽章のポコ・アダージョは、この時期のハイドン特有の仄暗い情感を味わうべき楽章ですが、アントニーニは表情と音量を抑えて逆にさらりとこなしてきます。1楽章の喧騒に対して、あえて抑えて対比を鮮明にしようということでしょう。
そしてメヌエットは、堂々としたというよりも、こちらも淡々とした表情で描きます。どうしてももう少し豊かな表情づけを期待してしまうのはこちらの聴き方の問題でしょうか。
そして、フィナーレは1楽章の迫力の再来を予感させ、音量を抑えて始まりますが、そここで炸裂を予感させるようなキレ味を垣間見せて、盛り上がり切らず、聴くものをじらすようなコミカルな展開。非常にユニークな構成の曲を力感ではなくユーモアで聴かせる器を見せます。フィナーレはいい仕上がり。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
なぜか惹きつけられるユニークなメロディーのこの曲。アントニーニはこのユーモラスな1楽章を古楽器独特のさらりとした表現でゆったりと描きます。音楽自体の愉悦感に加えて古楽器のちょっとしたフレージングの面白さを織り交ぜて遊び心を加えていきます。弦楽器による伴奏の音階の音量を極端に抑えて静けさのようなものを感じさせ、結果的にユニークなメロディーを引き立てるといった具合。このアプローチはいいですね。
2楽章のプレスト、よくコントロールされた躍動感が心地よい楽章。前曲1楽章のちょっと力任せなところは影を潜め、曲の面白さを踏まえた粋な表現。ところどころで聴かせるキレの良いアクセントが効果的。
前曲につづきこの曲でも、早めのテンポであえてあっさりとしたメヌエットの表現。この曲ではこの表現に一貫性を感じます。最後の一音をさっとたたむように鳴らすあたりにもそうしたアントニーニの意図が見えるよう。そしてフィナーレは快速な躍動感で一気に聴かせます。この哲学者はしっくりきました。

この後、なんとも独特なヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの曲を挟みますが、この全集、ハイドン第1巻にもハイドンと同時代のグルックの曲を挟んでいるところをみると、時代の空気を他の作曲家の作品から呼び込もうという狙いでしょうか。私にはハイドンの引き立て役と感じられます(笑)

Hob.I:47 Symphony No.47 [g] (1772)
このアルバム最後の曲。このアルバムで一番力入ってます。素晴らしい迫力ですが、私にはちと力みすぎに聴こえてしまいます。いきなり耳をつんざくようなアクセントの連続。響きも少々濁って楽器が美しく鳴る範囲を超えているような印象。曲自体はとても美しいメロディーがちりばめられた曲ですが、アントニーニは完全にスロットル全開できます。抑えるところはもちろん抑えているのですが、やはり力みすぎて単調に聴こえてしまうような気がします。
2楽章はこれまで同様、さらりと表情を抑えた速めのアプローチ。あえて歌いすぎないところは古楽器による演奏としては珍しくありません。そしてさらりとしたメヌエットですが、この曲では1楽章からの力感重視のスタイルからか、かなりアクセントを明確につけてきます。そしてフィナーレは予想どおり嵐のような盛り上がり。強音の迫力は1楽章同様ですが、不思議とここでは1楽章ほどクドさを感じません。鮮やかなキレ味でたたみかけて終わります。

ジョヴァンニ・アントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第2巻。名刺がわりの第1弾につづいて、アントニーニのやりたいことがより鮮明に表されたアルバムということでしょう。演奏評に書いたように、哲学者ではこの曲を面白さを踏まえて余裕あるコントロールで曲を表現しているのに対し、最後の47番ではフルスロットルで痛快という領域を超える灰汁の強い表現を聴かせます。聴く人によって評価が分かれる演奏かもしれません。私の評価は哲学者が[+++++]、冒頭の46番が[++++}、そして47番は[+++]としたいと思います。

膨大なハイドンの交響曲全集の2枚目ですが、力まかせの演奏はちょっと心配です。古楽器では全集に至らぬものの、ホグウッド、ピノック、グッドマンなどの先人の録音がありそれぞれ良さがあります。現代楽器でもファイの知的な解釈による全集がある中、アントニーニのこのシリーズがハイドンの交響曲全集に一石を投じることができるかは、今後のリリースにかかっているといっていいでしょう。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲全集 交響曲46番 交響曲47番 哲学者 古楽器

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:39サントリーホールブルックナーマーラーヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉LP交響曲97番告別交響曲90番交響曲18番アレルヤ奇跡交響曲99番弦楽四重奏曲Op.64ひばりフルート三重奏曲悲しみ交響曲102番ラメンタチオーネ交響曲86番モーツァルトヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ベートーヴェン驚愕哲学者小オルガンミサニコライミサミサブレヴィス交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲古楽器交響曲19番交響曲81番交響曲全集交響曲80番マリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードピアノソナタXVI:20豚の去勢にゃ8人がかり騎士オルランド無人島Blu-ray東京オペラシティチェロ協奏曲1番交響曲9番交響曲10番交響曲11番交響曲12番ロンドン太鼓連打交響曲15番交響曲2番交響曲4番交響曲37番交響曲1番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメント東京芸術劇場リヒャルト・シュトラウス交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャオーボエ協奏曲ピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ミューザ川崎ストラヴィンスキーシェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31タリスバードモンテヴェルディパレストリーナアレグリすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲46番交響曲51番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士弦楽四重奏曲Op.74交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードカノンオフェトリウムモテットドイツ国歌スタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番変わらぬまこと交響曲62番交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
122位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ