ヴィルモシュ・タートライ/ハンガリー室内管の昼、受難(ハイドン)

夏休みの東北温泉旅行の記事にかまけておりましたゆえ、レビューはかなり間が空いてしまいました。今日はLPです。

IMG_3311.jpg

ヴィルモシュ・タートライ(Vilmos Tátrai)指揮のハンガリー室内管弦楽団(Hungarian Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲7番「昼」、49番「受難」の2曲を収めたLP。LP自体に録音年の表記はありませんが、Apple Musicでこの録音を聴くことができ、Pマークは1988年。レーベルはおそらくハンガリーのQuoliton。

このアルバム、先日DISC UNIONで見かけて手に入れたもの。鮮やかなブルーのジャケットにエステルハーザの夏の宮殿の写真が誇らしげに写っています。そしてなによりタートライ四重奏団の第1ヴァイオリンをつとめたヴィルモシュ・タートライの振るハンガリーのオーケストラということで、ぐっときて手に入れた次第。なんとなくゆったりとした音楽が流れ出してきそうなイメージ満点。なかなか希少なアルバムを手に入れたと思って喜んでいました。このアルバムを聴いてなかなかの演奏ゆえブログに取り上げることにして調べてみると、このコンビネーションでかなりの数のアルバムがリリースされていることがわかりました。これらはApple Musicに登録されています。登録されているアルバムを書き出してみると下記の通り。

交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」
交響曲26番「ラメンタチオーネ」、44番「悲しみ」、45番「告別」
交響曲39番、47番、54番
交響曲49番「受難」、59番「火事」、73番「狩り」
交響曲55番「校長先生」、67番、68番
交響曲27番、88番、100番「軍隊」
交響曲43番「火星」、82番「熊」、94番「驚愕」
交響曲31番「ホルン信号」、73番「狩り」

最後の一枚を除きHUNGAROTONの廉価版レーベルWHITE LABELからCDとしてリリースされていたものがApple Musicに登録されています。これらのアルバム、手元の所有盤にはまったくないもの。Apple Musicに登録されているアルバムの実物を手にいれるかどうかは実に微妙なところ。

ということで、このLPとApple Musicで聴き比べると、Apple Musicの方は聴きやすいものの明らかにデジタルくさい音。DACなどの専用システムは持っていないのでAir Playでの再生環境での比較です。世代的にネットオーディオにはまだ抵抗があり、CDの方がコレクション欲という意味でも音質という意味でも分があります。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
実に柔らかく瑞々しいオケのの音色。ゆったりとしながらも表情は変化に富んで、ハイドンの書いたメロディーの綾をザックリと音にしていきます。もちろん録音はLPらしいしなやかかつ味わい深いもの。主題に入ると自然な推進力の魅力が滲みでてきます。ソロが活躍するこの曲、ソロヴァイオリンはヴィルモシュ・タートライ本人。
2楽章、短調のレチタティーヴォはこれも適度な劇性をしっとりと表現したもの。そしてつづく後半のアダージョがこの曲の聴きどころ。悠久の時の流れを感じさせるゆったりとした音楽。昼のこの楽章の美しさを際立たせる至福の音楽。
3楽章はメヌエット。適度に粗いオケが音楽の表情を豊かに感じさせます。古き良き時代のハイドンの音楽そのもの。古楽器の演奏も悪くありませんが、この幸福感に勝るものはありません。
フィナーレ。速いパッセージにも適度に余裕があり、実に典雅。フルートのソロの軽やかな音色が印象的。オケが落ち着いてこともなげにフレーズをさばいていく様子が微笑ましい感じ。まさに味わい深い名演奏と言って良いでしょう。

Hob.I:49 Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
名曲「受難」。前曲の印象から悪かろうはずもありません。1楽章のアダージョから実にしっとりとした序奏が心に刺さります。ゆったりとゆったりと進む音楽。シュトルム・ウント・ドラング期特有の仄暗い雰囲気が色濃く出た演奏。古き良き時代のバランスの良いハイドンの交響曲の典型的な演奏。LPだからこそ感じるのどかな印象。
2楽章に入ると前曲同様、自然な推進力の範囲で曲をコントロール。表現が大げさなところは一切ないのに妙にしっとりとくる演奏。ハイドンの曲に宿る気配のようなものを十分に踏まえての演奏に宿る神々しいオーラが充満。よく聴くとフレージングのメリハリは実に豊か。ハイドンの音楽のツボを押さえているからこその演奏でしょう。流石にタートライのコントロール。いぶし銀の弦楽セクション。
メヌエットに入っても穏やかな音楽は変わらず、ホルンの深い響きの魅力が加わって一層響きが魅力的になります。木管陣も金管陣も優秀。フィナーレはざっくりとした弦楽セクションのテクスチャーの面白さがあり、メロディーラインの穏やかな躍動感と不思議にキレを感じる演奏。ライヴに近い緊張感もあり、音楽の行方を追いかけるように聴きますが、荒々しさが逆に心地よさにつながる演奏。最後はキリリと引き締めて終わります。

ヴィルモシュ・タートライの指揮するハンガリー室内管弦楽団の演奏、Apple Musicで多くの演奏を聴くことができますが、LPで聴く古き良き時代のハイドンの交響曲の典型的な演奏もいいもの。同じ演奏でもネットで聴くのと、LPで聴くのはちょっとニュアンスが異なります。少々のスクラッチノイズの向こうには分厚いダイレクトでしなやかな響きが広がっていました。これだけのいい演奏が、これだけの曲数残っているということで、TOWER RECORDの復刻シリーズでの再発売などが期待されます。中の人、この企画いかがでしょうか(笑) やはりCDでの再発売のほうが我々の世代にはありがたいですね。評価は2曲とも[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 受難 LP

コメントの投稿

非公開コメント

美しい老人の音楽

Daisyさん、こんにちは。
タートライはハイドンの交響曲を結構、録音していたのですね。初めて知りました。今、ナクソス・ミュージック・ライブラリーで「昼」を聴きながら書いていますが、仰る通り、「ハイドンの書いたメロディーの綾をザックリと音にしていく」、感じですね。

ハンガリーの音楽家の特徴として最も強く感じる点は、「自己顕示欲のなさ」です。私はそれを、コダーイ四重奏団に特に強く感じます。どこまでも音楽の追求と演奏への無私の奉仕で貫かれ、そこに自己顕示とか自意識(それに商業性)をあまり感じません。結果として出てくる演奏はストレートで質実剛健、充実感にあふれます。時として不器用な印象を与える時がありますが、でも逆にそこが何ものにも代えがたい魅力だと思います。

かつて東欧の演奏家たちは社会的に規制があり、娯楽もあまりなく、楽しみは練習のみ…と言えば言い過ぎでしょうが。まあ、そのような精神風土の中から生まれた貴重なスタイルは、やがて失われていく宿命なのかもしれません。

タートライも同様の傾向を感じますが、タートライ四重奏団の中でこのタートライだけは、年を経るにつれて音楽に柔らかいロマン性が加わり、それと反対のどこか達観したような簡素化が進行していったような気がします。ですから演奏は「美しく年を取った老人」だけが奏でることのできる悟りの境地に達しています。「昼」のヴァイオリンソロもとても美しく、しかも無駄な力が抜けた癒しの美音ですね。

それにしてもApple Musicは便利そうですね。私はアンドロイドなのでまだ使えず、かわりにAWAをダウンロードしてみました。320kbps(Wifiのみ)とうたっていますが、デジタル臭くフォルテが汚く歪んでとても聴けたものではありません。これならナクソス・ミュージック・ライブラリーAAC+128kbps)の方がはるかにマシです。これからは定額配信がますます増えるのでしょうが、それでCDが駆逐されるとすればとても悲しい事です。

Re: 美しい老人の音楽

Skunjpさん、毎度ありがとうございます。

ハンガリーの音楽家については、まさにおっしゃる通り。ハイドンが活躍していた地域はオーストリアでもあり、ハンガリーにも近かったことからハンガリーもハイドンは地元の音楽という認識があるのでしょう。特にHUNGROTONレーベルにはハイドンの珍しい曲の録音が多く、まさにご当地レーベルとしての沽券に関わるわけでしょう。

Apple Musicは確かに便利ですね。私は本格的に聴く用途ではなく通勤時に聴くのに役立ってます。以前のiTunesですと、CDからわざわざ取り込んだり、アルバムを買ったりする必要がありましたが、ちょっと検索して興味あるアルバムやアーティストを聴いてみるという使い方が性に合っているようです。これはこれで良く、アルバムも買い続けて音楽マーケットを支えなくてはなりませんね。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

四季迂闊者交響曲70番交響曲12番古楽器ライヴ録音天地創造マーラー太鼓連打東京芸術劇場ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:3ピアノ協奏曲XVIII:11ピアノ協奏曲XVIII:4バリトン三重奏曲SACDスコットランド歌曲ガスマンヴェルナーディヴェルティメント東京オペラシティベートーヴェンモーツァルトシューベルトアンダンテと変奏曲XVII:6LPピアノソナタXVI:38ヒストリカルピアノソナタXVI:31ラメンタチオーネ交響曲80番交響曲67番哲学者美人奏者ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番協奏交響曲ヴァイオリン協奏曲DVDファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:52ピアノソナタXVI:49交響曲47番ピアノソナタXVI:48十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76皇帝ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51ラルゴ五度交響曲1番ピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出ひばりチェロ協奏曲ピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:32ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.77軍隊リヒャルト・シュトラウス弦楽四重奏曲Op.74騎士弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:27ピアノソナタXVI:1弦楽四重奏曲Op.103シベリウス武満徹時の移ろい無人島交響曲42番交響曲4番ベルリンフィル交響曲19番ホルン信号告別弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54交響曲87番交響曲86番王妃弦楽四重奏曲Op.9フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6ピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナアレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲81番交響曲79番交響曲78番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムピアノソナタXVI:37スタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ベルクブーレーズピアノソナタXVI:6交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲オーボエ協奏曲悲しみリーム交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲97番奇跡交響曲34番交響曲77番交響曲18番ストラヴィンスキー温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番ピアノソナタXVI:47bis音楽時計曲ピアノ小品ピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:39ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ピアノソナタXVI:8ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場8人のへぼ仕立て屋に違いない弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲10番交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD剃刀ドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲107番交響曲62番変わらぬまこと交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲3番交響曲2番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
157位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ