【新着】エーリヒ・ヘーバルト/アンサンブル・コルディアのヴァイオリン協奏曲、悲しみ(ハイドン)

今日は新着アルバム。

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TOWER RECORDS / HMV ONLINEicon

エーリヒ・ヘーバルト(Erich Höbarth)指揮、ヴァイオリン独奏、アンサンブル・コルディア(Ensemble Cordia)の演奏で、ボッケリーニのシンフォニア(G.522)、ハイドンのヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、ボッケリーニのチェロ協奏曲、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」の4曲を収めたアルバム。収録は2013年5月9日、イタリア、ボルツァーノのコンサートホールでのライヴ。レーベルは墺fB。

最近にわかに活気づきはじめたハイドンの交響曲の録音。全集が進行中ですが怪我で進行が危ぶまれるファイ、最近全集の録音をスタートしたアントニーニとイル・ジャルディーノ・アルモニコ、全集になるかはわかりませんが、ニコラス・マギーガンとフィルハーモニア・バロック・オーケストラ、そして抜群のキレのよさを聴かせた、ロビン・ティチアーティ。ハイドンの交響曲演奏に新風をもたらす演奏がいろいろリリースされて嬉しい限り。そんななかのこのエーリヒ・ヘーバルトの新盤の登場です。

エーリヒ・ヘーバルトはご存知のようにモザイク四重奏団の第1ヴァイオリン。1956年ウィーン生まれのヴァイオリン奏者、指揮者。ウィーン音楽院、ウィーン国立音楽大学、ザルツブルクのモーツァルテウムなどで学び、モーツァルテウムではシャーンドル・ヴェーグに師事しています。1977年にはヴェーグに招かれ、ヴェーグ四重奏団の第2ヴァイオリンと、マスタークラスの助手となっています。1980年から87年までウィーン交響楽団の第1コンサートマスター、1979年からはアーノンクール率いる、ウィーン・コンツェントス・ムジクスのコンサートマスターと活躍しています。同じく1979年からはウィーン弦楽六重奏団を創設し、古典の作品を古楽器で演奏するスタイルで25年間にわたり同じメンバーで活動を続けました。1987年からはご存知古楽器で弦楽四重奏を演奏するモザイク四重奏団を創設しています。ヴァイオリンのソリストとしては多くの有名オケとの共演履歴があり、アルバムにも多数登場しています。最近では教職に就く一方2000年からはカメラータ・ベルンの芸術監督を務めています。

モザイク四重奏団の録音はハイドン、モーツァルトともに昔はよく聴いたアルバムでおなじみですが、ヘーバルトが指揮をしているとは知りませんでした。その腕前や如何に。

1曲目のボッケリーニのシンフォニアから、鮮やかで分厚い音色の古楽器オケが迫力満点、グイグイ引っ張る推進力、そしてしなやかに流れる音楽を聴かせます。これは期待できるかも。途中入るヴァイオリンソロはヘーバルトでしょうが、録音上はソロというよりコンサートマスター的にオケと比較的近くでかぶっている感じ。

Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
古楽器オケ特有の鮮度の高い響き。序奏からオケのキラキラするような色彩感が印象的。序奏がいい感じだったんですが、ヘーバルトのソロが序奏のオケとは若干異なる距離感でいきなり入るので少々違和感があります。オケよりもソロのほうが明らかに残響が多く、ソロの録音とのミキシングの問題でしょうか。録音に若干違和感があるものの、ヘーバルトのヴァイオリンは楽器をよく鳴らしきった落ち着いたもの。定位感に違和感がある以外は悪くありません。演奏のタイプとしては愛聴盤のマルク・デストリュベ盤に近いですが、デストリュベがバランス良く流麗なのに対し、こちらは多少淀みはあるものの楽器自体を巧みに鳴らし、新鮮な響きを作っているという違いがあります。1楽章のカデンツァは派手さを抑えて楽器の美音をじっくり聴かせるタイプ。なかなか玄人好みの演奏です。
美しいメロディーが印象的なアダージョですが、ここではピチカートがバックなせいか定位感に違和感はありません。ヘーバルトが淡々と美音を奏でていきますが、ヴァイオリンの音の美しさ自体に惚れ惚れします。艶やかすぎず、古楽器の素朴な音色を生かしながら不思議と厚みも感じる音色。華美にならない落ち着きがあるのが素朴な美しさを保っているポイントでしょうか。
フィナーレはしなやかな迫力につつまれて入ります。曲想の切り替えが鮮やかで曲が引き締まります。やはり最新の録音だけあって鮮度の良さはかなりのもの。柔らかさを表現できるほどの鮮度と言えばいいでしょうか。フィナーレの起伏をダイナミックに描きながらヴァイオリンとオケが交互にせめぎ合います。いやいや、ライヴとは思えない完成度ながら、躍動感はライヴならではの出来。これはいい。

つづくボッケリーニのチェロ協奏協奏曲のチェロのソロの残響が少し多め。協奏曲が2曲とも同様の録音ということで、意図的なものかもしれませんね。

Hob.I:44 Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
さて、アルバムの最後に置かれたお目当ての「悲しみ」。予想どおり鮮度の高い迫力十分の古楽器オケの序奏から入ります。若干調律に乱れがなくもないですが、冒頭からオケが弾けてます。演奏に力がみなぎり、各奏者がちょと前のめりになりながら、一心不乱に合わせてくる、あのライヴの恍惚のようなものの気配が満ち溢れます。オケの各パートに少々荒さが見られますが、逆にそれが迫力につながっていて、音楽に躍動感を与えています。
つづくメヌエットも、音楽に込められたエネルギーは変わらず、オケがグイグイと推進します。フレーズごとに表情とテンポを次々と変えていきながら、この時期のハイドンの作品に共通する仄暗い表情を深めていきます。
ことのほか素晴らしかったのがつづくアダージョ。もともと美しい曲ですが、アンサンブル・コルディアの適度に粗いながらも古楽器特有の色彩感に溢れた音色、ヘーバルトによる音楽の豊かな表情が最も生き生きと聴かれた楽章。この演奏より精度の高い演奏は多々ありますが、音楽の豊かさにかけてはこのアルバムにかなう録音は多くはありません。作為のない音楽の魅力といったらいいのでしょうか。
予想どおり、フィナーレはものすごい迫力の入り。火の玉のようなオケ。力みすぎて違和感を生じる演奏も多いなか、不思議に違和感を感じることはなく、畳み掛けるオケの魅力が実にうまくとらえられています。吹き抜けるようなフィナーレ。ライヴですが会場ノイズはまったく気にならず、拍手もカットされています。

エーリヒ・ヘーバルトの振るアンサンブル・コルディアという古楽器オケによるハイドンとボッケリーニの協奏曲、交響曲を収めたアルバム、意外に迫力重視の演奏。モザイク四重奏団の演奏からヴァイオリンの美音の印象は想像できましたが、オケから色彩感豊かな響きとこれだけの迫力を引き出すとは想像できませんでした。演奏の精度に着目するとあまりいい評価はできませんが、音楽の面白さは逆に粗さが豊かさにつながり、太い筆で書いた独特の書のような趣を感じさせ、これはこれでいい演奏です。私は気に入りましたので評価は[+++++]とします。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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