クルト・ザンデルリンク/ドレスデン・シュターツカペレの告別、ロンドン(ハイドン)

先日カワサキヤさんにコメントをいただき、その存在を知ったLPですが、幸いオークションですぐに手に入れることができました。

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クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ハイドンの交響曲45番「告別」、104番「ロンドン」の2曲を収めたLP。収録は1967年5月19日、ドレスデンのルカ教会でのセッション録音です。レーベルはDeutsche Grammophoneの日本盤。

カワサキヤさんのコメントのとおり、クルト・ザンデルリンクのハイドンといえば、ベルリン響を振ったパリセットが有名であり、私も昔から愛聴しているアルバムです。その他ザンデルリンクのハイドンはライヴを中心にいろいろとアルバムがリリースされており、当ブログでもこれまで結構な回数取り上げています。

2013/09/13 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの「驚愕」ライヴ2種
2013/02/16 : ハイドン–交響曲 : ザンデルリンク/読響の「熊」1990年サントリーホールライヴ
2012/11/13 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の王妃、86番
2012/06/30 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ザンデルリンク/スウェーデン放送交響楽団の39番ライヴ
2010/11/04 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルの熊ライヴ
2010/06/18 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの86番

ザンデルリンクのハイドンの交響曲は、パリセットに代表されるように、堅実なテンポに乗って、適度な覇気と、適度なメリハリ、そして揺るぎない古典の秩序を感じさせるもの。ハイドン交響曲の理想的な演奏といっていいでしょう。そのザンデルリンクが、いぶし銀の音色をもつドレスデン・シュターツカペレを振った、告別とロンドンのセッション録音ということで、弥が上にも期待が高まります。

いつものようにVPIのレコードクリーナーと美顔ブラシで丹念にクリーニングしてから、やおらプレーヤーに乗せ、針を落とします。

Hob.I:45 Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
いきなり燻らせたような渋い響きのドレスデン・シュターツカペレの音色にはっとさせられます。LPの状態は非常によく、ノイズレス。ザンデルリンクらしいバランスを保った上での適度な推進力に心躍ります。徐々にオケに力が満ちていき、劇的な曲想の1楽章に適度な隈取りを与え、軽い陶酔感に至ります。冒頭からバランスの良さに酔います。
つづくアダージョは弱音器付きの弦楽器と木管のしっとりとしたアンサンブルで穏やかにメロディーを奏で、絶妙な翳りを聴かせます。要所でテンポをスッと落として余韻を楽しませながら、ゆったりと音楽を進めます。とろけるように音を重ねるホルンが印象的。
メヌエットも実にしっとりと進めます。力みなく、どこも尖らず、リズムも溜めず、完璧なバランスでゆったりと進む音楽。ルカ教会に響きわたるホルンの余韻の実に美しいこと。さりげない演奏に見えても、デュナーミクのコントロールは実に巧みで、細かい表現の積み重ねで到達した至芸というところ。
そしてフィナーレの前半は適度な喧騒感を催させ、後半への対比をしっかりと印象付けます。微妙な早足感が絶妙な効果。そして奏者が一人ずつ去るアダージョ。なんという癒しに満ちた音楽。深い祈りのような柔らかさに包まれます。ドレスデン・シュターツカペレの燻らしたような音色による素晴らしいメロディーが、少しずつ細くなっていきます。ハイドンの天才を思い知らされる美しすぎる瞬間。最後は室内楽のような純粋な響きに昇華し、静寂に音楽が吸い込まれます。なんという美しさ。絶品です。

Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
一転して図太い響きがルカ教会に満ちます。ハイドンの最後の交響曲の堂々とした大伽藍が見えたと思うと、ゆったりと音量をコントロールして余韻を楽しませ、再び号砲が轟きます。このあたりの自然さを巧みな演出で聴かせるのはザンデルリンクならでは。力感ではなく演出で浮かび上がる素晴らしいスケール感。一貫してゆったりとしているで、音楽は壮大極まりない、まるで大山脈を遠望するよう。小細工なし、派手な演出もなしながら、大きくうねり盛り上がる曲想。あまりに揺るぎない構築感と説得力に圧倒されます。ロンドンの1楽章の理想的な演奏と言っていいでしょう。
アンダンテもゆったりした流れを引きつぎ、こちらは蛇行する大河の流れのよう。自然ながら巧みにテンポをコントロールして陰影を深く刻み、曲の立体感を保っているのが素晴らしいところ。呼吸の自然さが全ての流れをまとめているよう。
メヌエットももちろん雄大。これが王道の演奏なのでしょう。彫りが深くしっかりとリズムを刻み、要所でメリハリをつけた理想的な演奏。
そしてクライマックスのフィナーレ。入りのしなやかな和音から雰囲気満点。穏やかに緩急、動静を繰り返しながら徐々に盛り上がっていきます。つなぎの部分の柔かさが険しさを引き立て、一貫したテンポが雄大さを際立たせる高度なバランスの上に成り立つクライマックス。最後はドレスデン・シュターツカペレのいぶし銀の響きが振り切れて終了。

いやいや素晴らしい演奏でした。ルカ教会での残響の多い録音ゆえ、鮮度に欠けるきらいはあるものの、そうした響きからでもつたわってくる、この素晴らしい完成度は並のものではありません。この録音がなぜCD化されないか理解に苦しみますね。まさにハイドンの交響曲の理想像といていい演奏だと思います。演奏のスタイルは新しいものではありませんが、これが古さを感じるといえば、全くそうではなく、まさに普遍的な魅力を保ち続けるものと言っていいでしょう。絶品です。もちろん評価は両曲共[+++++]とします。

カワサキヤさん、素晴らしいアルバムの情報をいただきありがとうございました!

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ロンドン 告別 LP

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No title

こんにちは

このLP、私も緑ジャケットのヘリオドール盤で出ていた頃のを持っています。
当時これほど充実感のあるハイドン・シンフォニーのレコードは少なかったので、初めて針を下ろしたとき大満足でした。

Re: No title

michaelさん、コメントありがとうございます。

私が手にいれたのはDGの国内盤ですがヘリオドール盤は輸入盤でしょうか。DGの方も音はそれほど悪くはありませんが、状態のよい輸入盤のキレのいい響きは魅力です。演奏がいいだけに輸入盤も探してみたくなりますね。

No title

私のも国内で出たヘリオドール盤です。その後多くがDGスペシャルとして再発売されていますが、両シリーズで持っている重複盤もあって;刻印が同じなので、原盤も同じでしょう。このヘリオドール盤はチューリップ時代のDG盤よりHiFi化されているようです。
なお、このザンデルリンク盤の音源は東独シャルプラッテンと書かれていますね。

Re: No title

michaelさん、情報ありがとうございます。

そうするとドイツ・シャルプラッテン盤があるかもしれないということですね。まあ、こうゆうのは気長に探さないと出会いませんのでメモしておきます。手元のアルバムを聴いた感じだと、もう少しキレがあってもいいかなというところです。

お役に立ててよかったです。

ザンデルリンクの「告別」と「ロンドン」をLPで入手され、素晴らしいレビューをお書きになって頂き、私まで幸福な気持ちでいっぱいです。わたくしがこの演奏を知ったのは、昭和49年7月のレコード芸術の付録、「最新レコード名鑑 交響曲編」(門馬直美編著)です。この「最新レコード名鑑」は原則として隔月でレコード芸術に付録としてつけられ、協奏曲編の宇野功芳さんと、室内楽曲編(上下二冊)の大木正興さんは、ことに面白く、いまでも愛読しています。一頁に一曲、三枚のレコードを推薦するものです。ちなみに門馬さんは「告別」で1.ザンデルリンク、2.ヤニグロ(ヴァンガード)3.バルシャイ(メロディア)を推薦しています。ヤニグロ、バルシャイもそれぞれ好演ですが、ザンデルリンクは抜群です。そして、そのザンデルリンクだけがCD化されておりません。なんとしてもCD化してほしい演奏です。

Re: お役に立ててよかったです。

カワサキヤさん、コメントありがとうございます。

門馬直美さん、大木正興さんと懐かしい名前ですね。昔は雑誌の情報がたよりだったので、舐めるように読んだのを思い出しました。ザンデルリンクの告別とロンドンはコメントをいただいた通りの名演でした。最近はLPもまた復活の兆しがあり、私も多くはありませんがLPをいろいろ物色して楽しんでおります。コンディションの良いLPの彫りの深い響きに触れると、LPというメディアの可能性の大きさを思い知らされます。おそらく自動的にいい音がするのではなく、聴き手の器次第といったところが趣味性の高さにつながり、人々の心をつかんでいるのだと思います。LPも捨てたものではありませんね。

No title

Daisy様、こんばんは。michael様、カワサキヤ様、横槍失礼いたします。
このザンデルリンクのLP、私も持っていたと思い、倉庫から探してみました。ドイツ盤のLPで、番号は「STEREO 135 034」とあります。現在、イギリスのアマゾンで検索すると、ヒットするLPと同じ物です。久しぶりに「ロンドン」から聴いてみましたが、序奏が終わり主部に入ったあたりの風格漂う演奏は、尋常ではありません。フルートをはじめ管楽器の音色も自然で美しく、しかもそこには少しの誇張も感じません。近年、個人的には初期・中期の交響曲ばかり聴いていたせいか、「ロンドン」はなんだか立派過ぎて敬遠気味でしたが、このザンデルリンク盤、「ロンドンの1楽章の理想的な演奏」という評価にまったくもって賛同いたします。この楽章としては、もしかしてベスト1かもしれません。「告別」の方は私の所有盤では最初の方で少しチリノイズが混じります。全体として「ロンドン」より録音の抜けが悪いかもしれません。
michaelさんがお持ちのへリオドール盤というのは、70年代に「ヘリオドール1000シリーズ」として出た「Heliodor MH 5049」だと思われます。今となってはこうした国内盤の廉価LPの方が、もしかして手に入れるのは少し難しいかもしれませんね。

Re: No title

cherubinoさん、コメントありがとうございます。

最近、LPを聴く機会がずいぶん増えています。CDでも国内盤、輸入盤でずいぶん音が違うものがありますが、LPの場合はさらにリリースによってずいぶんかわりますね。特に古い録音はCDとLPではLPの方が鮮烈な音が楽しめるものが多いので、LPを探したくなります。CDの便利さも貴重ですが、これぞというアルバムに針を落としてその響きに浸る楽しみは何にも代えがたいものですね。

このザンデルリンクのLPも、機会があればドイツ盤を手に入れて聴いてみたいものです。ロンドンの1楽章がさらに彫りの深い揺るぎない響きを聴かせるのでしょう。それを想像するだけでも楽しいものです。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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