トン・コープマン オルガン・リサイタル(ミューザ川崎)

一昨日6月21日は川崎まで出かけて、トン・コープマンのオルガンを聴いてきました。

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ミューザ川崎公演情報:トン・コープマン オルガン・リサイタル

このコンサート、別段ハイドンがプログラムに組み込まれているわけではなく、なんとなく久しぶりにオルガンもいいなと思ってチケットをとってあったもの。コープマンはオルガンの達人でもあり、音響の良いミューザ川崎の巨大なパイプオルガンをどう操るのか興味津々といったところでした。

プログラムは下記のとおり、コープマン得意のブクステフーデやバッハなどを中心としたもの。

D.ブクステフーデ(1637-1707):
 トッカータ ヘ長調 BuxWV157
 わが魂よ、今ぞ主をたたえよ BuxWV214/215/213
 プレリューディウム ニ長調 BuxWV139
J.P.スヴェーリンク(1562-1621):
 大公の舞踏会 SwWV319
 エコーファンタジア イ短調 SwWV275
L.-C.ダカン(1694-1772):
 イエスがクリスマスにお生まれになった時
J.S.バッハ(1685-1750):
 装いせよ、おお、魂よ BWV654
 目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声 BWV645
 幻想曲 ト長調 BWV572
(休憩)
J.S.バッハ:
 フーガ ト短調 BWV578「小フーガ」
 天にまします我らの父よ BWV682
G.A.ホミリウス(1714-1785):
 我が神よ、われ心を汝に捧げん
J.S.バッハ:
 パッサカリア ハ短調 BWV582

さて、当のコープマンですが、ハイドンの録音はかなり前にPHILIPSに録音したオルガン協奏曲集やハープシコード協奏曲集などいい録音も多いのですが、最近ハイドンはめっきり少なくなっています。

2011/01/14 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】コープマン3度目のオルガン協奏曲
2010/09/23 : ハイドン–交響曲 : 新着! コープマンの97、98番

特にザロモンセットの録音に取り掛かったと思われた97番、98番の録音以降、交響曲の録音はリリースされておらず、おそらく断念されたものと思います。

ということでハイドンの新録音にはイマイチ期待できない状況でもあり、純粋にオルガンを楽しもうということして、コンサート会場に向かいました。

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この日は昼間母親の病院の付き添いということで仕事をお休みしていたので、川崎にも早めにつくことができました。まずはホールのチケットカウンターで予約していたチケットを受け取ります。時間があるので、ホールの1階のレストランフロアを物色していると、牛タン屋さんがあったので入ってみることに。

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食べログ:杉作

特に調べて行ったのではありませんが、これがなかなか旨かった。昔仙台に仕事で住んでいた頃よく通ってた喜作の味に近いですね。喜作のほうがタンの旨味が若干濃いでしょうか。それでも麦飯にテールスープに御新香というゴールデンコンビは仙台の牛タンを思わせるもの。料理もすぐに出てくるのでコンサートの際の食事にオススメです。

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お腹もいっぱいになったんですが、まだ時間に余裕があったので、カフェで時間つぶし。幸いからっと心地よい風が吹く天候だったのでのんびりコーヒーを楽しんで開場時間をまちました。

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開場時刻になり、ホールにもどります。

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ミューザ川崎は川崎駅直結の便利なところ。私も何度かコンサートに通ったことがありますが、音響の良さで知られたホール。よく通うサントリーホールや東京オペラシティのタケミツメモリアルホールよりも響きは自然です。

取った席はサントリーホールでお気に入りの席とほぼ同じRA席。オケならば右上から見下ろす位置ですが、今日は正面高くに位置するパイプオルガンの演奏会ゆえ俯瞰的な面白さを味わえるわけではありません。

ホールの構造はサントリーホールと同じくステージ周りを客席が取り囲むワインヤード型。パイプオルガンのコンサートではステージ裏の席は後ろにオルガンが来るため使わず、ステージよりメイン間客席側のシートのみ使ってお客さんを入れる方式。ということでそのエリアはほぼ満席。オルガニストとしてのコープマンの人気ゆえのことでしょう。

ほどなく開演時刻になり、ほぼ満員の客席の照明が落ちて、正面の巨大なパイプオルガンに照明があたり、脇かからコープマン登場で、静かなホールが拍手に包まれます。

最初は腕試しといったところでしょう。ブクステフーデの曲が3曲続きます。パイプオルガンの重厚な図太い低音をベースにフーガが折り重なるような曲。コープマンは難曲をものともせず、軽やかに弾き進めていきます。最初の曲だからか、オルガンの重厚な響きがホールに満ちて、響きが巨大なホールに吸い込まれて消える様子を楽しみます。流石に響きの良いミューザ川崎。遠くで何段もの鍵盤を自在に行き来し、足では低音の音階を操る超絶技巧を凝らすコープマンの姿が見えますが、リズムに淀みがなく淡々と進めるので、不思議と難しい曲に聴こえない安心感があります。

ブクステフーデはバッハより前の時代の人ゆえ、曲自体は教会で弾かれるもので、まさに典型的にオルガンで弾かれるイメージとピッタリの曲。ハイドンの時代とは全く異なる重厚かつ教条的な響きが新鮮でした。なによりコープマンがオルガンを駆使してホールを大音響で満たしながらも、もの凄い勢いで曲を進めていくのに圧倒されます。

つづいてスヴェーリンクの2曲はブクステフーデの壮麗さから一転して、独特の仄暗いベールに覆われた美しいメロディーが印象的。スヴェーリンクの曲はグールドのライヴでファンタジアを聴いているくらいでほとんど馴染みがありませんが、オルガンで聴くと実に魅力的。時代はブクステフーデよりもさらに遡り、ルネサンス時代。解説によれば1曲目は「大公の舞踏会」という題の曲で、大公とはトスカーナ大公で、フィレンツェのメディチ宮廷での舞踏会の雰囲気が感じられるとのこと。2曲目はエコーファンタジアという曲で、フレーズがエコーのように繰り返されながら展開していく曲。迫力ではなくオルガンの深い神秘的な響きの魅力を堪能しました。

続くダカンの曲はクリスマスの素朴な祝祭感がにじみ出る曲。オルガンの音色の魅力を色々な角度から炙り出そうということでしょう。このような素朴な曲ほどオルガンの音色の魅力が際立ちます。

そしていよいよバッハ。「装いせよ、おお、魂よ」、「目覚めよ、とわれらに呼ばわる声」、幻想曲ト長調と続きます。流石にバッハの曲になった途端に雰囲気が一変。これまでオルガンが音楽を響きとしてつたえていたものが、厳かな音楽が律動するのがつたわってきます。ゆったりと流れる1曲目、そしておなじみのポピュラーなメロディーの2曲目、めくるめく音階が上下しながら壮麗に展開する3曲目と、バッハだけでもオルガンの様々な魅力を感じられるような選曲。コープマンの演奏する姿を見ながら聴くと、両手両足を駆使してのスリリングな印象が強いですが、目を閉じて音楽だけ聴くと癒しに満ちた音楽と聞こえるのが不思議なところ。もちろんバッハまでくると、お客さんも拍手喝さいでコープマンの演奏をたたえます。コープマンはいつも通り、首振り人形のように頭を下げながら満面の笑みで拍手に応えていました。

休憩を挟んで後半はプログラム自体も4曲と少なめ。おそらくアンコールを意識した構成なんでしょう。バッハのおなじみ小フーガから始まり、「天にまします我らの父よ」、ホミリウスという未知の作曲家の作品、そしてバッハの「パッサカリア」と進みます。休憩後で耳が慣れたせいか、音楽に純粋に浸ることができました。最後のパッサカリアの不気味な低音のメロディーの繰り返しを聴いていると、ふと、ガミラス帝国のデスラー総統のイメージが頭の中に浮かんできたではありませんか。ホールをびりつかせるほどの大音量の重低音に包まれながら、バッハの魂ではなく宇宙戦艦ヤマトの記憶が蘇ってくるとは思いませんでした(笑)

パッサカリアが終わると何度かのカーテンコールのあと、アンコールに突入。アンコールで演奏された曲は下記のとおり。

スカルラッティ:ソナタ ト長調
バッハ:主キリストよ、われ汝に呼ばわる
カバニリェス:第2旋法によるティエント

バッハの重苦しい雰囲気のあとのスカルラッティの色彩感とハイドンにも通じる楽興は個人的にはこの日一番の演奏に聴こえました。そして、「主キリストよ、われ汝に呼ばわる」はブレンデルのピアノで親しんだ曲ですが、メロディーのわりに足のペダルを駆使して演奏は困難を極めているように見えました。コープマンはそんな難曲をスイスイ弾いていきますが、スイスイすぎなくもない印象(笑)、この曲が最後のつもりが、何度か拍手に呼び戻され、最後にカバニリェスの曲を披露。アンコール3曲とサービス満点のコンサートでした。

やはり、生で聴くオルガンはいいですね。マーラーやブルックナーもそうですが、コンサートでの音楽体験はオーディオセットで聴く音楽とは次元が異なり、奏者のパッションと並外れた迫力、そしてなによりその瞬間限りという緊張感がそろっての体験。普段ハイドンばかり聴いている耳のいい刺激になりました。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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