パーヴォ・ヤルヴィ/N響のマーラー交響曲3番(サントリーホール)

昨日10月6日は以前からチケットを取ってあったN響のコンサートへ行ってきました。

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ここ数年コンサートは適度に通ってますが、なぜか読響のコンサートが多かったですね。あんまり理由はないんですが、スクロヴァチェフスキなどのコンサートチケットをとった勢いでいろいろコンサートのチケットをとっているというのが正直なところ。N響もホグウッドの第九とか、デュトワのマーラー千人などを聴いていますが、読響ほどの頻度ではありません。

この日のコンサートは7月に行った読響のコンサートでもらったチラシを見て、N響の音楽監督に就任し、ヨーロッパでもすこぶる評判の良いパーヴォ・ヤルヴィがマーラーでも好きな3番を振るということで、久々に行く気になったもの。

また、先週の放送でヤルヴィ武満と「展覧会の絵」を放送していたのをたまたま見る機会があり、特に武満が存外にすばらしかったので、このコンサートを楽しみにしていました。

N響:N響90周年&サントリーホール30周年 パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団特別公演

この日のコンサートはN響の定期公演ではなくサントリーホールの30周年とN響の90周年を記念した特別公演とのこと。出演者は下記のとおり。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮
NHK交響楽団
メゾ・ソプラノ:ミシェル・デ・ヤング
東京音楽大学合唱団
NHK児童合唱団

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この日はいつも通り仕事を早めに切り上げ、溜池山王のサントリーホールに向かいます。こちらもいつも通り嫁さんが向かいのオーバカナルでワインとサンドイッチを注文して待ってましたので、軽く一杯あおって開場時間を待ちます。

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席はいつものライトスタンドにあたるRA席ではなく、少し高いRB席の一番前。AよりB席の方が高いというわかりにくい席名ですが、指揮者を右真横からみる絶好の席。ステージではかなりの奏者が練習に励んでおり、開演前にしては賑やか。とくに長大な交響曲中出番の多いトロンボーン奏者は最後まで響きを確認するように音出ししていました。

流石にマーラーの大交響曲、ステージ一杯に椅子が並び、正面奥のパイプオルガン前の席は合唱団の席。開演時間になると児童合唱団から入場、オケの奏者まで揃うと見た目だけでも圧巻のステージ。そしてヤルヴィの登壇で拍手喝采。この特別公演への期待の大きさが伺えます。

俊敏なヤルヴィのアクションでタクトが振り下ろされるとトロンボーンの象徴的なメロディーが轟きますが、意外と速めでサクサク入ります。入りからしばらくは期待したほどキレの良さはきかれず、マーラーでは個性が出し切れないのかと危惧させましたが、曲が進むにつれて徐々にオケも覚醒。そこここにキリリと鋭いアクセントをつけることで、マーラーの深層心理をえぐるような曲想が明るいライトに照らされて超鮮明に解像しクッキリと浮かび上がります。特にチェロやコントラバスのかき鳴らすような激しいアクセントがマーラー特有のドロドロとした響きではなく、峻厳さを帯びた険しい響きとなって襲い掛かり、非常にコントラストの強い音楽になっていきます。オケの方もヤルヴィのタクトに見事に反応し、特に金管群の安定感は見事なもの。静寂と爆発を繰り返えしながらもマーラーにしては楽天的な展開のこの長大な1楽章が超タイトに引き締まり、幾度かの強音の炸裂を経て、最後はビッグバンのように炸裂した響きをタクトがブラックホールのように吸い取る見事なもの。オケの集中力は尋常なレベルではありませんでした。
続くメヌエットは、直前の放送で聴いた武満の演奏の、豊かに響きながらも透明感を保った弦楽器の魅力で聴かせる演奏。楽章間の変化をかなりしっかりとつけてきます。好きなアバド盤はイタリア人らしい流麗さに溢れたコントロールですが、ヤルヴィは流れの良さはよりはフレーズごとの変化の巧みさで聴かせてきます。
3楽章のスケルツァンドは「子供の不思議な角笛」からの引用で、ここでもフレーズごとにキリリとまとめながら軽々とオケを吹き上がらせ、まるでオケの反応を楽しむような指揮ぶり。中間部に入ると1階席L側の扉がすっと開き、廊下の奥からトランペットによる見事なポストホルンが響き、ステージ上のオーケストラと一糸乱れぬアンサンブルを繰り広げます。このポストホルンは絶品でした。
そして4楽章に入るといよいよメゾ・ソプラノのミシェル・デ・ヤングが立ち上がり、深々とした美声を披露。この楽章は雄大な流れのように聴かせるかと思いきや、やはり響きを磨きコントラストで聴かせるヤルヴィ独特の音楽を色濃く感じさせるもの。フレーズのあちこちにエキセントリックな響きの面白さをまぶしてマーラーをリヒャルト・シュトラウスのように感じさせます。
5楽章の児童合唱団による有名なメロディーに入りますが、場内が若干ざわつきます。児童合唱の前列の一人が4楽章の入りから一人だけ立ち上がらず、5楽章の歌唱に入る場面でも一人だけ歌いません。まわりも心配そうにする中、清らかなコーラスは進み、鐘やトライアングルがちりばめられた祝祭的な音楽が終わります。
そして、この曲最大の聴かせどころの6楽章に入ります。これまでヤルヴィらしいアクセントをちらばめた音楽が、マーラーらしいというよりヤルヴィらしいと感じさせていて、この6楽章はどうくるかと構えていると、ここは響きの深みとしなやかさを前面に出してきました。武満できかせた弦の透明感あふれる響かせ方が活きて、実に美しいメロディーが重なります。終盤に入ると再び俊敏なヤルヴィの棒が目を覚まし、オケをぐいぐい煽りますが、オケの方も40キロ過ぎのマラソンランナーが最後の力を振り絞ってラストスパートをかけるがごとき様相。長大なこの曲最後の踏ん張りどころを管、弦、パーカッションなど全員が総力を振り絞ってクライマックスに向けてじっくり歩みを進めます。寄せては返すような大波の連続を経て、ティンパニ2台が揃って強打する終結への歩み。最後はホールを揺るがすような風圧を伴ってフィニッシュ。

ヤルヴィのタクトが降ろされると同時にブラヴォーと拍手が降り注ぎました。N響のメンバーも皆熱演。アクシデントはありましたが、児童合唱も女声合唱も完璧と言って良い出来でした。やはりヤルヴィの超鮮明、ハイレゾ的コントロールにオケが応えたということでしょう。特に金管の安定感は素晴らしいものがありましたし、個人的にはコントラバスやチェロの存在感のある演奏が印象に残りました。

ヤルヴィのマーラーは複雑な楽譜に記された音楽を微視的に、そしてアーティスティックにデフォルメして聴かせるもので、余韻に精神分裂的、あるいは暗澹たるマーラーらしさを感じさせることなく、純粋にアーティスティックなもの。そして、最近の演奏らしくコントロールを隅々まで行き渡らせ、その圧倒的なコントロール力で聴かせるもの。サヴァリッシュの音楽にはドイツの香りが、デュトワにはフランスの香りが感じられましたが、ヤルヴィの音楽にはには新時代の息吹が感じられました。現代の一流シェフを招き、欧米に引けを取らない素晴らしい音楽を楽しめるようになったと思わせるコンサートでした。

この日はNHKのカメラが多数客席に配置されてましたので、近日中に放送されることになるのではないかと思います。皆さんの目と耳で新時代の息吹を感じてみてください。



終演後は最近お気に入りのサントリーホール向かいのスペインバルで反省会。

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食べログ:バレンシアナバル ブリーチョ

2時間休憩なしの長丁場は聴き手も喉がカラカラ。ということでテンプラニーリョとサングリアを注文。このサングリアが美味い。

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ここは少なめの料理をいろいろ頼んでつまめるのでコンサートの後のちょい飲みに最適。いつも頼むレンズ豆とチョリソの煮込み。チョリソの濃厚な香りでワインが進みます。

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そしてムール貝のワイン蒸し。これはたっぷり出てきました。プリプリのムール貝も美味いんですが、パンを残ったスープに浸していただくのがグー。

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この日のパエリアはエスカルゴとウサギ肉。うちでも最近パエリアは作るのですが、ウサギ肉とエスカルゴは手に入りませんので無理。やはりプロの料理は違いますね。ひとしきりコンサートの余韻とおしゃべりを楽しんで帰途につきました。

これからはN響のプログラムもチェックしておかなくてはなりませんね。

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