ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

12月11日、日曜は以前からチケットを取って合ったコンサートに。

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東京芸術劇場:コンサートオペラvol.4 モーツァルト/歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」

このところ気になるコンサートには出かけるようにしているのですが、オペラは滅多に食指が動きません。ところがこのジョナサン・ノットの振る東京交響楽団のコジ・ファン・トゥッテは、なぜか気になりチケットを取った次第。

モーツァルトはブログの初期にも書いた通り、1991年のアニヴァーサリーまでは随分アルバムを集めていました。オペラの中ではコジ・ファン・トゥッテはドン・ジョヴァンニと並んで好きなオペラのの一つ。もちろん刷り込み盤は1962年録音のベーム/フィルハーモニア管の名盤。エリザベート・シュワルツコップ、クリスタ・ルートヴィッヒ、アルフレート・クラウス、ジュゼッペ・タディなど目も眩むような名歌手揃いのアルバム。筋はたわいもない色恋沙汰の喜劇を、禁欲的に彫りの深い指揮を旨とするベームが振っているのに実に深い音楽となっているのは皆さまご存知の通り。怖い顔のベームが繰り出す魔法のような音楽と、名歌手たちの素晴らしい歌唱に痺れたものでした。

その、コジ・ファン・トゥッテを最近評判の良いジョナサン・ノットと東京交響楽団、そして豪華な歌手陣で聴け、しかもコンサート形式ということもあってオペラにしてはチケット代も破格の安さとあって、チケットを取った次第。ジョナサン・ノットも今回初めて聴きます。

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この日のキャストは次の通り。

指揮、ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット(Jonathan Knot)
舞台監修、ドン・アルフォンソ:サー・トーマス・アレン(Sir Thomas Allen)
フィオルディリージ:ヴィクトリヤ・カミンスカイテ(Viktorija Kaminskaité)
グリエルモ:マルクス・ウェルバ(Markus Werba)
フェルランド:アレック・シュレイダー(Alek Shrader)
ドラベッラ:マイテ・ボーモン(Maite Beaumont)
デスピーナ:ヴァレンティナ・ファルカス(Valentina Farcas)
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

フィオルディリージは当初、ミア・パーションが予定されていましたが急病のため代役でリトアニア出身のヴィクトリヤ・カミンスカイデとなった次第。ミア・パーションといえば、アイヴァー・ボルトン盤、ポール・マクリーシュ盤の天地創造でガブリエル/エヴァを歌っているほか、ルツェルン音楽祭でアバトのマーラーにも登場している名ソプラノということで期待していたのですが、これは残念でした。

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この日の東京は快晴。日曜日なので、ウィークデーのコンサートの時のように開演時間ギリギリに駆けつけるという苦労もありません。会場となる池袋の東京芸術劇場に早めについて、いつものようにワインを煽って、長いオペラの舞台に備えます。

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この日の席は2階席のほぼ正面ということで、舞台を俯瞰するなかなかいい席。ステージ上には中央にジョナサン・ノットが弾くハンマーフリューゲルが置かれ、その周りに2管編成の小規模なオケ用の座席がステージ中央に固められています。オケの後ろにはコーラス用の段、そして、オケの前にコンサート形式でのオペラ上演用に椅子4つと中央に小さなテーブルとシンプルな舞台。

定刻となり、東京交響楽団のメンバーがステージに上がりチューニングを終えると、ジョナサン・ノットがすぐに登場。ハンマーフリューゲルの横に立ち、指揮棒なしでさっと手を振り上げると、有名な序曲が流れ出します。ヴィブラートを抑えた弦楽器を中心に実にしなやかな響きがホールに満ちます。これから始まるドラマを暗示させるような不思議な旋律の繰り返し。モーツァルトならではのめくるめくような音楽がノットのコントロールで色彩感豊かに鳴り響いていきます。また寄せては返す波のように盛り上がる序曲を聴いただけでもこの日の演奏の素晴らしさを直感。テンポは速めで来るかと思っていたところ、落ち着いた進行。序曲が終わると、上手からグリエルモとフェルランド、老哲学者ドン・アルフォンソがスーツ姿で登場。舞台正面の椅子を使って、劇が始まります。

あらすじは、当ブログの読者の方なら大方ご存知でしょう。グリエルモとフェルランドがそれぞれの恋人が自分たちを裏切るようなことはないと信じているところにドン・アルフォンソは女性にも出来心はあると説き、どちらの言い分が正しいかを確かめるために賭けることになります。ドン・アルフォンソが仕掛けた、偽の出兵騒ぎによって恋人を失ったフィオルディリージとドラベッラ姉妹が、新たな恋人の恋心に翻弄される顛末の一部始終のドタバタ劇が展開するもの。聴きどころはフィオルディリージとドラベッラの美しいアンサンブル、ドン・アルフォンソと女中のデスピーナの悪役ぶり、そしてモーツァルトが恋心の変化を克明に描いたとめどなく湧き出るような美しい音楽でしょう。

素晴らしかったのは、まずはジョナサン・ノットが繰り出す音楽。ベームの名盤も素晴らしかったんですが、この日のオケは絶品。長いオペラなのに、ほぼノーミスで最初から最後までいきいきとした音楽が溢れ出て来るよう。ノットのコントロールが完全に行き渡っており、オケも見事に応じていました。東京交響楽団、見直しました。ジョナサン・ノットはハンマーフリューゲルを弾きながらの指揮でしたが、このハンマーフリューゲルにレチタティーヴォの場面転換が見事。要所でかなりテンポを落として場面転換を鮮明に印象付け、オケが加わった時の推進力が際立つ効果が実によくわかりました。
それから、ドン・アルフォンソのサー・トーマス・アレンの老練な演技と歌唱。老哲学者をまさに地で行く切れ味。やはりこうゆう役がキレてないとドラマの面白みが活きませんね。トーマス・アレンは舞台演出も担当していましたので、この日の劇のスリリングな展開はトーマス・アレンの功績でしょう。
そして女中デスピーナ役のヴァリンティナ・ファルカスの小悪魔的演技も絶妙でした。ミア・パーションの代役、ヴィクトリヤ・カミンスカイテは見事に代役をこなし、この日の聴衆の拍手を一番受ける好演。フィオルディリージの難度の高いアリアを溢れんばかりの声量と輝かしい高音で見事にこなし、圧倒的な存在感。他のキャストも歌手は粒ぞろいで、皆欠点らしいところ感じさせない素晴らしい仕上がりでした。
加えて、字幕の翻訳が巧妙で実に面白かった。ダ・ポンテが書いた台本の素晴らしさを実感できました。歌舞伎で言えば河竹黙阿弥の七五調に近い、言葉の綾の面白さを存分に味わえました。この日の舞台の裏方の隅々まで質の高いサービスが提供されていたのが印象的でしたね。

3時に始まり、途中幕間に25分の休憩を挟んで、終わったのが7時近く。長いオペラですが、劇の展開に惹きつけられっぱなしであっという間のひと時。もちろん最後のクライマックスのオケの熱演に会場からは万雷の拍手が降り注ぎ、ジョナサン・ノットも満足げに歌手と奏者を讃えていました。

コンサート形式のオペラを実演で観るのは初めてでしたが、かえって歌と音楽に集中できる分、悪くないですね。この日のコンサートは日本でのオペラの演奏のレベルの高さを実感できました。だいぶ前の海外旅行時にウィーンやケルン、フランクフルトなどで何度かオペラを見ていますが、これほどの集中力で全編をこなしてはいませんでした。このコンビでの次の出し物も是非聴いて見たくなりましたね。

オペラの分野では、ハイドンはモーツァルトには敵わなかったんだなぁと実感したコンサートでした。

(参考アルバム)
CosiFanTutteBohm.jpg
TOWER RECORDS / amazon /


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オペラ(^^)

こんにちは~

時には演奏会形式のオペラを鑑賞するのもおっしゃるように歌唱、演奏に集中しやすいから私も好きです(^^)
サー・トマス・アレン、まだまだ健在のお話を聞き嬉しくコメントします。今年も音楽会では沢山の訃報がありましたが、このようなベテランのご活躍は嬉しいですね。
CDやDVDなどで親しみがあります。

年末も押し迫ってまいりました。お風邪など引かれませんように、ラストスパート!

Re: オペラ(^^)

Sifareさん、コメントありがとうございます!

演奏会形式のオペラを生で観るの初めてでしたが、これは素晴らしかったですね。ただ、よく考えると演奏会形式は舞台を中心に視覚で楽しませるのとは異なり、音楽の良し悪しがよりシビアに感じられるはずです。今回のコンサートが良かったのは、とりもなおさず、ジョナサン・ノットのコントロールから生まれる素晴らしい音楽の魅力と、サー・トーマス・アレンの演出による舞台並みの本格的な歌手の演技によるところが大きいと思います。逆に凡庸な演奏では演奏会形式の方が粗があらわになってしまうような気がします。このジョナサン・ノットと東響、来年ドン・ジョバンニがかかるそうですから、これも聴いてみたいですね。今から楽しみです。

さて、ラストスパート指令がかかりましたので、あといくつか記事を書かねば(笑) Sifareさんも、良い年の瀬とお正月を!
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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