【新着】スーザン・ハミルトンのスコットランド歌曲集(ハイドン)

今日は久々の歌曲の新着アルバム。着いてビックリ、素晴らしいアルバムでした。

SusanHamilton2.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

スーザン・ハミルトン(Susan Hamilton)のソプラノ、マンフレート・クレーマ(Manfredo Kreamer)率いるレア・フルーツ・カウンシル(The Rare Fruits Council)の演奏で、ハイドンの編曲したスコットランド歌曲集から11曲、フランチェスコ・ジェミニアーニのスコットランド民謡を元にした曲11曲のあわせて22曲を収めたアルバム。収録はハイドンの没後200年である2009年の2月19日から23日にかけて、ベルギーのナミュール近郊のフラン=ワレ城近くのサン・レミ教会でのセッション録音。レーベルはludi musici。

もともとハイドンの歌曲は好きな方なので、未入手のアルバムを見かけると手に入れるようにはしてるんですが、歌手がスーザン・ハミルトンと知りすぐにamazonに注文。到着してビックリ。たしか1枚組のCDなのにずしりと重いではありませんか。開梱してまたビックリ。150ページ近くある4カ国語で書かれた非常に美しい印刷のブックレットにCDがさらりと挟んである体裁。このアルバムのコンセプトに、曲の解説、歌詞、そして間にはスコットランドを想起させる美しい絵画がふんだんに差し込まれており、体裁上は書籍がメインでCDがオマケといってもいいくらいの力の入りようです。ハイレゾにネット配信全盛の中、このプロダクションは見事。プロダクションとしての完成度は素晴らしいものがあります。

スーザン・ハミルトンがスコットランド歌曲集を歌うアルバムは以前に別のアルバムを取り上げていますが、このアルバムでノックアウトされた口です。

2010/07/23 : ハイドン–声楽曲 : スコットランド歌曲集、マリーの夢

スーザン・ハミルトンはスコットランド出身の歌手で、バロックから現代音楽までをこなす歌手とのこと。以前のアルバムでもネイティヴなスコットランド人らしい発音と透き通るような声がまさにスコットランド民謡のメロディーと溶け合ってえも言われぬ雰囲気を醸し出していました。

そして、このアルバムでは、前アルバムと重なる曲もあるにもかかわらず、そして前アルバムの2002年の録音から7年しか経過していないにもかかわらずリリースされたということで、その存在価値があるからこそのリリースだと思われます。
そもそもハイドンのスコットランド歌曲集はこれまでにも多くのアルバムがリリースされているのはご存知の通りですが、組み合わされたジェミニアーニはハイドンより半世紀近く前に生まれたイタリアの作曲家で、最後はイギリスやアイルランドで活動していたようですが、そのスコットランド民謡を基にした曲はあまり知られていないものかもしれません。そのような2人の作曲家の曲を組み合わせてアルバムを企画したところにこのアルバムの面白さがあるわけです。これがまた絶妙に合う。性格の異なるモルトのブレンドで香り高いウイスキーができるようなイメージでしょう。

伴奏を担当するのはレア・フルーツ・カウンシル。訳すと「珍果実評議会」あるいは「早熟果実評議会」となりますが、なんだかふざけた名前の団体。リーダーのマンフレート・クレーマーはアルゼンチン生まれのヴァイオリン奏者、指揮者。1986年から91年までムジカ・アンティクァ・ケルンのリーダーを務め、その後名だたる古楽器オケ、指揮者と共演を重ね、1996年に古楽器アンサンブルのレア・フルーツ・カウンシルを設立したとのこと。

ジェミニアーニの曲もなかなか面白いのですが、今日はハイドンの曲をピックアップしてコメントしておきましょう。メンバーや編成は曲名のリンク先の所有盤リストの情報をご覧ください。

ジェミニアーニの曲もスコットランドの風景が浮かび上がるようないい曲ばかり。その中にハイドンの曲がランダムに散りばめられた構成です。

Hob.XXXIa:18 - JHW XXXII/1 No.18 "My boy Tammy" 「私の坊やタミー」 (Hector Macnaill)
ヴァイオリン、チェロ、ハープシコードの伴奏。冒頭からスーザン・ハミルトンの独特の声に癒されます。険しさが畳み掛けてくるような曲想の曲を切々と歌います。伴奏は古楽器のキレの良さがそのまま活きています。

Hob.XXXIa:10 - JHW XXXII/1 No.10 "The ploughman" 「農夫」 (Robert Burns)
軽快なテンポに乗って農夫の日常を描く曲。今度はチェロは抜きでハープシコードがフォルテピアノに変わりますが、それだけで響のニュアンスが大きく変わります。

Hob.XXXIa:45 - JHW XXXII/1 No.45 "The gard'ner wi' his paidle" 「鍬の手をもつあの農夫」(Robert Burns)
徐々に心に沁みるいい曲になってきました。スーザン・ハミルトンの抜けるような自然な高音の魅力がすばらしく、聴いていながらゆりかごで揺られているような夢見心地になってきます。

Hob.XXXIa:71 - JHW XXXII/1 No.71 "Young Damon" 「若きデイモン」 (Robert Fergusson)
まさにスコットランドの空気を吸いながら聴いているような気にさせられる名曲。朗々と歌う自然な低音から高音への発声が実に爽やか。ヴァイオリンが寄り添うように伴奏し、ハープシコードは音量を抑えて優しく包み込むよう。

Hob.XXXIa:219bis - JHW XXXII/3 No.186 "The night her silent sable wore" "She rose, and let me in" 「彼女は立ちあがり、招き入れてくれた」
Brilliantのスコットランド歌曲集の第1巻の2曲目に配された曲なので、それこそ擦り切れるほど聴きました。ハイドントリオ・アイゼンシュタットの演奏に比べて陰影が深く、スコットランドらしい雰囲気はこちらが上でしょう。録音も素晴らしくまさに絶品。

Hob.XXXIa:143bis - JHW XXXII/3 No.254 "Morag" 「モラグ」 (Robert Burns)
寂しげなフォルテピアノの伴奏に、突き抜けるような素晴らしい高音の歌声が印象的な曲。シンプルな曲から詩情が溢れ出してきます。

Hob.XXXIa:44 - JHW XXXII/1 No.44 "Sleepy bodie" 「眠れる人」
前曲と対比させるように明るい入りの曲。伴奏のヴァイオリンとフォルテピアノが躍動。そしてスーザン・ハミルトンも本来の弾むこ声を聴かせます。

Hob.XXXIa:1 - JHW XXXII/1 No.1 "Mary's dream" 「メリーの夢」 (Alexander Lowe)
名曲。ヴァイオリンの序奏から沁みます。スーザン・ハミルトンの以前の録音にも含まれていた曲。訥々とした語り口から積む気出される詩情、風景、風、そして波。5分弱の曲に込められたドラマ。あんまりいいのでモルトウィスキーをちびりながらスコットランドの風景を想いながら聴きます。

Hob.XXXIa:149 - JHW XXXII/2 No.149 "O'er the hills and far away" 「丘を越え彼方へ」
癒しから疾風のような曲に転じます。曲の配置もよく考えられていますね。見事に曲想の変化に合わせていくヴァイオリンのマンフレート・クレーマの器の大きさがわかります。

Hob.XXXIa:2 - JHW XXXII/1 No.2 "John Anderson" 「ジョン・アンダーソン」(Robert Burns)
入りの印象的なヴァイオリンソロが曲の深さを象徴するよう。そのあとつづくスーザン・ハミルトンの孤高の歌唱が引き立ちます。

Hob.XXXIa:1bis - JHW XXXII/3 No.201 "Mary's dream" 「メリーの夢」 (Alexander Lowe)
先ほどの同名曲の異なるヴァージョン。やはり沁みます。こういう曲はスーザン・ハミルトン以外では聴けない体になりつつあります。美しいメロディーにつけられたハイドンの伴奏が曲の美しさを引き立てます。

スーザン・ハミルトンの歌う、スコットランド民謡をハイドンが編曲した歌曲集。ハイドンが最晩年に人助けからはじめたスコットランド民謡の編曲の仕事ですが、ハイドンの晩年の楽しみの一つだったのでしょう。1曲1曲に素晴らしい伴奏がつけられ、メロディーだけでなく伴奏も相まってスコットランドの自然を想起させる素晴らしい曲に仕上がっています。そしてハミルトンの歌で聴くこれらの曲は、その最良の演奏でもあります。冒頭にふれたようにプロダクションとしても素晴らしいものに仕上がっていますので、歌曲が好きな方には絶対のオススメ盤です。評価は全曲[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : スコットランド歌曲 古楽器

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

剃刀ひばり古楽器弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:268人のへぼ仕立屋に違いない東京オペラシティバードタリスパレストリーナモンテヴェルディアレグリ天地創造すみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ライヴ録音マーラーストラヴィンスキー弦楽四重奏曲Op.9アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:6交響曲97番ヒストリカル告別交響曲1番美人奏者ピアノソナタXVI:39四季迂闊者交響曲70番交響曲12番東京芸術劇場太鼓連打ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:3アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4SACDバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンディヴェルティメントヴェルナーモーツァルトベートーヴェンシューベルトLPピアノソナタXVI:38ラメンタチオーネ哲学者交響曲80番交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番協奏交響曲ヴァイオリン協奏曲DVDピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:20サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76皇帝ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出チェロ協奏曲ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33軍隊リヒャルト・シュトラウス騎士弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲4番無人島交響曲42番ベルリンフィル交響曲19番ホルン信号弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲87番交響曲86番フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番オーボエ協奏曲リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10奇跡交響曲18番交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ピアノソナタXVI:8ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲108番交響曲107番変わらぬまこと交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲2番交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
98位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
5位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ