カンブルラン/読響:太鼓連打、巨人(東京芸術劇場)

4月8日土曜は以前からチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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読売日本交響楽団:第196回土曜マチネーシリーズ

現在読響の常任指揮者として活躍しているシルヴァン・カンブルランが、ハイドンの太鼓連打を取り上げるということでチケットを取ったもの。組み合わされる曲はマーラーの巨人。上のチラシのデザインを見ても明らかなとおり、メインディッシュはマーラーですが、もちろん私の興味は太鼓連打。

カンブルランが特別に好きなわけではありませんが、これまで随分コンサートに行っています。

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これまで読響のコンサートにはいろいろなプログラムが取り上げられましたが、私の聴いたなかでよかったのはやはり現代音楽。先日聴いたメシアンも素晴らしかったし、デュティユー、リームも絶品。最初にカンブルランを聴いたのが春の祭典でしたが、そのあと火の鳥もペトルーシュカも聴いて、こうしたプログラムでのカンブルランの色彩感豊かなコントロールが現代曲に華やかさを加え、フランス人らしいキレを感じさせているんですね。

逆にあまり良くなかったのはブルックナー。読響でブルックナーといえばスクロヴァチェフスキですが、カンブルランの演奏はフレーズがせかせかして明らかにブルックナーには合わない感じがしました。

やはりカンブルランは現代音楽で、独墺系の音楽に合わないのかといえば、さにあらず。2010年にはハイドンの朝、昼、晩を聴いていますが、これがなかなか良かったんですね。その記憶があって、今回は太鼓連打目的でチケットを取ったわけです。



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会場は池袋の東京芸術劇場。前日に母親が骨折の治療のため入院したのでバタバタしていましたが、前日中に手続きまで含めて終わりましたので、コンサートに行ける余裕ができました。

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マチネーということで開演は14時。いつもどおり少し早めについて、バーラウンジでワインを飲みながら腹ごしらえです。

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席は2階のステージ右脇。サントリーホールならRAあたりです。15分前くらいに席についてもらったチラシなど眺めながら開演時刻を待ちます。ステージ上は1曲目のハイドンに合わせて小編成のオーケストラ用の配置、、ですが、ハイドンの演奏に使うティンパニの後ろにはさらにティンパニが2台用意されており、後半のマーラー用のパーカッション群もちらほら見えます。

程なく開演時刻になり、オケのメンバーが登壇。コンサートマスターは荻原尚子さん。4月1日付でコンサートマスターに就任とのことで、このコンサートがデビューのようです。チューニングが終わり、カンブルランが登場。最初の入りはタクトで指示せず、ティンパニに任せます。遠雷のように入るものの最近の流行りか、途中から乱打に。1楽章は非常にシャープな演奏。ノンヴィブラート気味な弦の透明な響きをベースに、テンポよく各パートがクッキリ鮮明にメロディーを重ねます。カンブルランが首席指揮者になってからかなり演奏を重ねているので、各楽器もカンブルランの指示どおりに鮮やかな演奏。木管のニュアンスの豊かさに、金管群も非常に緻密な演奏で応えます。1楽章の構成感の見事さは惚れ惚れするほど。一部トランペットが音を外したところがある他は完璧な演奏でした。
素晴らしかったのが2楽章。一定のテンポでサクサク進めますが、音楽自体は非常に豊か。特に新コンサートマスターの荻原尚子さんのソロヴァイオリンのゆったりとした美音は別格。いい人をコンサートマスターに迎えましたね。
そしてメヌエットも見通しの良い展開。音量をスッと落としたり、気持ちよく吹き上がったりとスロットルコントロールの面白さが存分に活かされた演奏。
フィナーレは、この曲の総決算とばかり、古典の枠の中で自在に吹き上がるオケの小気味好いキレ味と、実にニュアンス豊かに鳴り響くメロディーの交錯に、最後は分厚く響き渡るオケの迫力を存分に聴かせて終了。やはりカンブルランの抑制を効かせながらも巧みにオケをコントロールするハイドンは素晴らしいですね。充実した演奏に会場からも万雷の拍手が降り注ぎます。

休憩中にステージ上は大オーケストラ用の配置に様変わり。休憩後もコンサートマスターは萩原さん。マーラーも実演では色々聴いていますが、1番「巨人」は初めて。カンブルランが登壇し、最初のフラジオレットの弱音が鳴り出し、遅めのテンポで入ります。カンブルランは弱音部を実にニュアンス豊かに丁寧に描いていくので、録音ではなかなかニュアンスが伝わりにくいところがしっかりと描かれていきます。1楽章ではステージ下手の扉を開け舞台裏からファンファーレが鳴り響く箇所が何箇所かありますが、扉の開き具合を微妙に変えて音量をコントロールしているのが印象的でした。太鼓連打同様、木管楽器の柔らかな響きと、金管陣の安定感は素晴らしいものがありました。流石にハイドンとは規模が異なる大オーケストラゆえ迫力はかなりのもの。静寂からオケの爆発に至るコントロールも見事に決まり1楽章を終えます。
2楽章はヴィオラやヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどの弦楽器が大活躍。特にヴィオラの力感漲るボウイングは見事。オケを俯瞰できる席だったので、メロディーをパートごとに受け継いでいくやり取りの面白さが視覚的に入って来ます。タイトに引き締まったオケの響きがグイグイ迫ってくる快感。暗澹たる3楽章も実に丁寧なコントロールで聴きごたえ十分。3楽章までは冷静さも緊張感も保ち続けて見事な展開でした。
そしてフィナーレはオケの爆発に始まり、何度かの爆発を経て壮麗な最後に至りますが、このフィナーレの最後が少し力みが見られてちょっとくどい感じを残してしまいました。ここがマーラーの難しいところでしょう。4楽章の中盤までは理性的にコントロールが行き渡っていましたが、最後はゴリ押しした感じで惜しかったですね。もちろん会場のお客さんからはブラヴォーの嵐。ほおがびりつくほどの迫力でのフィナーレは素晴らしい迫力でした。読響も素晴らしい精度でカンブルランの指示に応じていましたので、カンブルランも満足そうに奏者を讃えていました。

おなじみのカンブルランの振ったハイドンの太鼓連打とマーラーの巨人。大迫力の巨人を楽しんだ人も多かったと思いますが、私はカンブルランの太鼓連打が深く印象に残りました。交響曲の父が書いた古典の完成形としての交響曲の秩序と機知と美しいメロディーが溶け合った曲に対し、その100年近く後に交響曲がたどり着いた、世紀末の成熟と退廃。演奏の方も。古典の名曲を現代音楽の奇才がきっちり料理しきった演奏と、マーラーという作曲家の作品を丹念に描きつつも、その演奏の難しさも感じさせたコンサートでした。

この秋、カンブルランはメシアンの歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」を取り上げるとのこと。まずは手元のメシアン全集のケント・ナガノの演奏でも聴いて、どうするか決めようと思います。CD4枚分は長いですからね〜(笑)

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tag : 東京芸術劇場 マーラー 太鼓連打

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