【新着】ポール・マクリーシュの四季(ハイドン)

色々あって間が空きましたが、新着アルバムを取り上げます。注目の大物リリースです。

McCreeshSeasons.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ポール・マクリーシュ(Paul McCreesh)指揮のガブリエリ・コンソート&プレイヤーズ(Gabrieli Consort & Players)、ヴロツワフ・バロック管弦楽団(Warocław Baroque Orchestra)、国立音楽フォーラム合唱団(National Forum of Music Choir)によるハイドンの最後のオラトリオ「四季」。収録は2016年6月20日から23日にかけて、ポーランドのチェコ国境に近い街、ヴロツワフの国立音楽フォーラム(National Forum of Music)でのセッション録音。レーベルは国立音楽フォーラムの自主制作だと思われますがリリース元はSignum Classics。

マクリーシュは、以前名門ARCHIVから天地創造や演奏会用アリアなどをリリースしていました。収録は天地創造が2006年、アリアが2004年ということで、かれこれ10年以上経過しています。

2010/07/30 : ハイドン–声楽曲 : マクリーシュ伴奏の歌曲
2010/05/29 : ハイドン–オラトリオ : ダイナミック! マクリーシュの天地創造

そのマクリーシュが今度はレーベルを変えて四季をリリースしたということで気になっていたアルバム。マクリーシュのこれまでのハイドンの録音は経費節減の現代にあっては珍しく全てセッション録音。今回はヴロツワフの国立音楽フォーラムの自主制作レーベルということで、ライヴレコーディングかと思いきや、これもセッション録音です。このあたりはマクリーシュのこだわりでしょうか。

調べてみるとこのアルバム、シリーズものの4枚目ということで、これまでベルリオーズのレクィエム、メンデルスゾーンの「エリア」、ブリテンの「戦争レクィエム」に続くリリースとのことで、それぞれ大規模オーケストラによる録音。ベルリオーズはライヴですが、他はセッション録音です。

今回四季を聴くにあたってARCHIVの天地創造の方も聴き直して見ましたが、こちらも大編成オケによる迫力の演奏。基本的に大オーケストラの迫力で聴かせることにポイントが置かれた演奏と言っていいでしょう。そして今回の四季についてもアルバムに掲載された収録風景を見ると古楽器としては異例の大編成。メンバー表を見て見ると第1第2ヴァイオリンがそれぞれ18人で合わせて36人、ホルンは10人という規模のものでした。

指揮のポール・マクリーシュは1960年ロンドン生まれのイギリスの指揮者。マンチェスター大学でチェロや指揮を学び、1982年には手兵ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズを設立。早くから名門ARCHIVレーベルに先の天地創造を含む多数の録音を残しているため、ご存知の方も多いでしょう。マクリーシュはまたヴロツワフで開催されるオラトリオとカンタータの音楽祭の芸術監督も務めていることから、この一連のシリーズの録音がなされたのでしょう。

歌手陣は下記の通り。
ハンネ:キャロリン・サンプソン(Carolyn Sampson)
ルーカス:ジェレミー・オヴェンデン(Jeremy Ovenden)
サイモン:アンドルー・フォスター=ウィリアムズ(Andrew Foster-Williams)

Hob.XXI:3 "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799-1801)
冒頭から凄まじい打撃で入ります。大オーケストラによる渾身の分厚い響きがタイトに引き締まってグイグイ攻めて来ます。アンプのヴォリュームを上げるとまさにホールの中でオケの至近距離で聴いているようなリアリティ。第1曲でサイモン、ルーカス、ハンネの順に歌が入りますが、オケとの音量バランスが通常の録音よりも歌手の音量が低く録られているように感じます。これは実際の音量に近いバランスなのでしょう。セッション録音なのでもう少し歌手にスポットを当ててもよかった気がします。3人とも堅実な歌唱ですが、サイモンのアンドルー・フォスター=ウィリアムズがこの役としては少々軽めの個性的な声。美しいメロディーが続く四季ゆえ、メロディーを聴かせるところではリラックスしてゆったりと音楽を奏でていき、コーラムも大編成らしく大河の流れのような悠然とした分厚い響きが心地良いですね。春の最後の三重唱とコーラス「おお、今や何と素晴らしい」は前半の三重唱が終わると再び渾身の大音響に包まれます。ここは相当な大音量で聴いてこそ味わえる迫力でしょう。音量を絞ると弱音部が貧弱になってしまいます。本来ライヴだと手に汗握る迫力を感じるところでしょうが、セッション録音のせいか妙に冷静な印象も付きまといます。
以後、夏、秋、冬と演奏のレベルは一貫していて、流石にセッション録音らしい精度を感じさせますが、同様にライヴでしか味わえない音楽の流れの面白さはちょっと希薄になってしまっているようにも感じます。もちろん、これだけ大編成のオケの録音としては十分以上の精度での演奏で、表現上もクッキリとメリハリがつき、おまけに大爆発連発の演奏なんですが、比較的デッドでちょっと分析的な録音に加えて、一貫して冷静なコントロールがそう感じさせるのでしょう。

私もこの演奏に対する印象が固まらす、最初に聴いた時にまず迫力に驚き、伏線となる天地創造を聴き直して傾向を確認して、またまたこちらを聴き直してなんとなく共通する印象を汲み取り、さらに通勤時にApple Musicで聴き直してこの印象を確認した次第。私にしては珍しく、かなりの回数聴いてようやくこの演奏の本質というか傾向が見えてきた次第です。

ポール・マクリーシュによるハイドン最後のオラトリオ「四季」の最新の録音ですが、これまで触れたように大編成古楽器オケによるど迫力の演奏としてこの演奏を評価する人もいらっしゃるでしょう。マクリーシュのこだわりは音楽の流れというより、完成度の高い大オーケストラによる迫力の響き自体にあるような気がします。それゆえライヴ収録という手法をとらず、あえてセッション録音によって制作されましたが、私はライヴでの大きな音楽の流れの面白さが加わった方が良かったのではないかと思っています。全編均質な仕上がりの良さと冷静さが、このハイドンの大曲「四季」の本質的な面白さを表現仕切れていない印象を残してしまったように思います。評価は[++++]とします。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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