エサ=ペッカ・サロネン/フィルハーモニア管のマーラー「悲劇的」(東京オペラシティ)

5月18日(木)は、以前からチケットを取ってあったコンサートに行ってきました。

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東京オペラシティコンサートホール エサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

エサ=ペッカ・サロネン(Esa-Pekka Salonen)指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏で、プログラムはストラヴィンスキーの「葬送の歌」とマーラーの交響曲6番「悲劇的」の2曲。

1曲目のストラヴィンスキーの「葬送の歌」とは聞き覚えのない曲でしたが、それもそのはず。解説によれば、長らく紛失とされていた曲で、2015年にサンクトペテルスブルク音楽院の図書館で発見されたばかりのものとのこと。もともとストラヴィンスキーの師であった、リムスキー・コルサコフが1908年に亡くなった際に書かれた曲とのことで、ストラヴィンスキー26歳の頃の作品。

もちろん、この日のお目当は2曲目のマーラー。サロネンはあまり馴染みがなかったので一度聴いてみようと思っていたところしかも難曲のマーラー6番。日頃はハイドンばかり聴いていますが、ご存知のとおり、コンサートではマーラーやブルックナーは結構聴いています。逆に家でマーラーを1曲聴き通す忍耐力もあまりなくなってきていますので、コンサート以外ではなかなか聴くことができません。もちろん、大編成オケの迫力は実演に限りますね。

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この日は仕事を早々に切り上げ、勤務先からも近い東京オペラシティに向かいます。いつものように嫁さんが先に着いていて、サンドウィッチとワインを買って待っていたので、軽く腹ごしらえをして準備万端。

この日の席は、海外オケでチケットも高いので、ちょっと節約して3階席。ステージの右側で、指揮者とオケを真上から見下ろす感じの席でした。ステージ右側の低音弦やトロンボーンやチューバなどは見えませんが、指揮者の表情やアクションがよく見えて視覚的にはなかなかいい席でした。

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ステージ上は、1曲目のストラヴィンスキーもかなりの大編成の曲ということで、タケミツメモリアルホールのステージいっぱいにオケの席が配置され、かなりの数の団員が音出しをしています。定刻になりオケのメンバーが登壇しますが、日本のオケと異なり、演奏しないスタッフ(マネジメント?)の人もステージ上でメンバーと何やら談笑していて、緊張感のレベルが違うのが微笑ましいところ。

客席のライトが暗くなって、チューニングが始まり、程なくサロネン登場。1曲目のストラヴィンスキーが始まります。葬送の曲だけにゆったりとした曲調で暗澹、雄大な響きの曲。リズムが爆発することもないですが、調性には緊張感が伴います。解説にはストラヴィンスキー自身の言葉が引用されていました。

「巨匠の墓の周りを、オーケストラのソロ楽器の奏者たちが、皆で列をなして、進んでゆく。低い声で歌われる合唱の震え声を模倣するかのようにざわめくトレモロ。その深遠なる後景とともに、花輪を捧げるかのごとく旋律がかけめぐる。」

サロネンはかなり丁寧に奏者に指示を出しながらオケを緻密にコントロール。静かな葬儀の様子を描くような指揮ぶり。オケも緻密さを保って15分くらいの曲をまとめました。もちろん聴きなれぬ曲なのでサロネン自身の音楽がどのようなものかを感じ取るほどには至りませんが、響きの中には日本人同様の透明感が漂い、フレーズの一つ一つを練るようなヨーロッパの伝統とは別のものを感じました。フィンランド出身ということもそんなイメージにつながっているのかもしれませんね。日本初演との触れ込みも手伝って、観客も温かい拍手でサロネンを称えます。そしてサロネンは指揮台の楽譜を高く持ち上げ作曲者を称えました。

この曲の初演はついこの間の2016年12月にゲルギエフ指揮のマリインスキー歌劇場管弦楽団によるもので、一部が下記のリンク先で見られます。
Grammphone Live Streaming

一旦サロネンが袖に下がり、団員が一部入れ替わった後、休憩なしでマーラーに入ります。

サロネンは拍手が鳴り止まぬうちに、タクトを振り上げ演奏を始めます。1楽章のチェロとコントラバスによるリズムが始まりますが、速い。しかもその後のオケの入りのタイミングが乱れて聴こえます。これは後でわかったんですが席の問題でしょう。オケ直上の3階席で、ご存知のようにこのタケミツメモリアルホールは天井が非常に高い。そしてオケの真上には大きな反射板。直接音と反射板による間接音、そしてホールの残響が音域によって異なったタイミングで到着することに原因がありそうです。これが2階席だったら明らかに直接音がメインとなるでしょうが、3階席ということで直接音と間接音の差が少なくなります。金管の音も派手に滲んだ響きに聴こえるので嫁さんはずいぶん迫力があったとの感想。このホールの3階席ははじめてでしたが注意が必要ですね。
演奏に戻ると、サロネンは最初から超ハイテンションでオケを煽ります。一貫して早めのテンポを保ち、しかも所々でテンポをさらに上げたり独特のコントロール。先日聴いたカンブルランの巨人では強奏以外の部分を非常に丁寧に描いてしっとりとした旋律の美しさでハッとさせられましたが、そう言った意図は皆無。むしろ細かい点に気をとられることなくグイグイオケを煽ってマーラーのこの曲に仕込まれた分裂症的連鎖爆発をあぶり出すかのようにエネルギッシュな指揮。フレージングもあっさりというより淡白に近い割り切り方で逆に畳み掛けるようなエネルギーで聴かせます。オケはサロネンの煽りに懸命に合わせている感じ。精度は最近の日本のオケの方が上かもしれませんが、逆にこの割り切り方は日本のオケにはない響きかもしれません。日本のオケだともう少し行儀よくなってしまいそうですね。長い1楽章でサロネンの意図がハッキリと伝わりました。1楽章の指揮だけでボクシングの試合12ラウンド分のカロリーを消費した感じ。聴く方にもそのエネルギーが伝わります。
続くスケルツォは弦のキレとリズムのキレが印象的。相変わらずサロネンはテンポを速める煽りを随所に挟んで曲を引き締めます。特徴的なサロネンの解釈の中でも最もオーソドックスだったでしょうか。直裁なサロネンのコントロールが最もマッチしたというところでしょう。
そして天上の音楽のような3楽章はタクトを置いての指揮。やはりすっきりとした速めのテンポで見通しの良さが信条のような演奏。この曲の刷り込みは1979年の来日公演の予習用に買ったカラヤン/ベルリンフィルのLP。磨き抜かれたベルリンフィルの弦楽セクションの響きにうっとりとしたものです。サロネンはこれまでの楽章とは変わってフレージングは丁寧にこなしフィルハーモニア管の弦の美しさを印象に残します。ただチェレスタやハープはキリリとしたリズムを保つことでサロネンらしい引き締まった音楽が展開します。
そしてこの日の演奏を決定的に印象付けた終楽章。1楽章の演奏から予想はしていましたが、その予想を上回るエネルギー。もうハチャメチャに煽る。もちろん秩序が乱れることはありませんが高速道路フルスロットルでぶっ飛ばすような激演。やはり背景にはマーラーの分裂症的連鎖爆発があるのでしょう。サロネンも超ハイテンションで終楽章を通します。感動的だったのは最後の一撃がホールに消え入り、静寂をサロネンがゆったりと顔を上げるまで続いたこと。もちろんブラヴォーが降り注ぎ、最近聴いたコンサートの中では一番の嵐のような拍手に包まれました。

やはり録音で聴くのとはレベルの違うエネルギーに圧倒されたというのが正直なところでしょう。おそらく録音でこの演奏を聴いてもその凄さは伝わらないかもしれませんね。ホールにいた人だけが味わえるたぐいまれな完全燃焼の瞬間。拍手はオケが退場しても続きサロネンはスタンディングオベイションを続ける観客に深々とこうべを垂れ、拍手に応えていました。

細かいことにこだわらず、この曲の表現を一点絞ったサロネンの戦略が功を奏したということでしょう。

ホールを去る観客の興奮気味の笑顔が印象に残った一夜でした。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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