トン・コープマンのクラヴィーア四重奏曲集(ハイドン)

東京もめっきり涼しくなってきたので、涼やかな響きを楽しめる室内楽のアルバムを取り上げます。

KoopmanDivertiment.jpg

トン・コープマン(Ton Koopman)のハープシコード、ラインハルト・ゲーベル(Reinhard Goebel)、アルダ・ストゥーロプ(Alda Stuurop)のヴァイオリン、チャールズ・メドラム(Charles Medram)のチェロで、ハイドンのクラヴィーア四重奏曲6曲(Hob.XIV:12、XIV:3、XVIII:F2、XIV:8、XIV:9、XIV:4)を収めたLP。収録年はLPには記載がありませんが、同じ音源を収めたと思われるCDも手元にあり、Pマークは1980年、82年と記載があります。レーベルは蘭PHILIPS。

このLPは最近手に入れたものですが、同音源を含む下のCDはかなり前から手元にあります。

KoopmanDivertimentCD.jpg
amazon

こちらのCDは上のLPにクラヴィーア協奏曲なども加えた2枚組の廉価盤です。こちらも廃盤のようですが、amazonではまだ入手可能のようです。これまでコープマンについて取り上げた記事は下記の通り。

2016/06/23 : コンサートレポート : トン・コープマン オルガン・リサイタル(ミューザ川崎)
2011/03/12 : 徒然 : 追悼:アヴェ・ヴェルム・コルプス
2011/01/14 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】コープマン3度目のオルガン協奏曲
2010/09/23 : ハイドン–交響曲 : 新着! コープマンの97、98番

コープマンはハイドンの録音を色々残していますが、97番、98番の記事にも書きましたが、交響曲の録音はなんとなくイマイチで、モーツァルトの交響曲のキレの良さと比べると、ちょっと聴き劣りするもの。そんな中ででもオルガン協奏曲やクラヴィーア協奏曲の古い録音はなかなかいいんですね。今日取り上げるアルバムもコープマンの面目躍如。才気迸るとはこのことでしょう。

共演者のラインハルト・ゲーベルは1952年生まれてムジカ・アンティクァ・ケルンの創設者。アルダ・ストゥーロプの情報は見つかりませんでしたが、ハイドンの録音ではリチェルカール・コンソートのバリトン八重奏曲のアルバムやエステルハージ四重奏団のメンバーとして録音を残すなどで知られた人。チェロのチャールズ・メドラムは1949年、トリニダード・トバゴ出身でモーリス・ジャンドロン、ニコラウス・アーノンクールに師事した人と、古楽器の名手揃い。

収録されている曲は元はディヴェルティメントやコンチェルティーノ(小協奏曲)などと呼ばれていますが、編成はハープシコードにヴァイオリン2、チェロということで、ピアノ四重奏曲、あるいはクラヴィーア四重奏曲というのがわかりやすいでしょう。ピアノ三重奏曲が晩年の作品が多いのに比べ四重奏の方は1760年代と若い頃の作品が多いのが特徴でしょう。

Hob.XIV:12 Concertino [C] (c.1760)
いきなり鮮明な響きにつつまれます。コープマンのハープシコードの音色がくっきりと浮かび上がり、その周りにヴァイオリンとチェロがこちらもくっきり定位。LPのコンディションも最高。流石PHILIPSでしょう。この演奏、LPもいいんですが、CDの方も廉価盤であるにもかかわらず素晴らしい録音が堪能できます。同じPHILIPSのDUOシリーズのコリン・デイヴィスの交響曲集がLPとは異なる鈍い響きで失望させられたのに比べると雲泥の仕上がり。曲の構成は3楽章構成でアレグロ、アダージョ、アレグロ。初期の作品らしくシンプルでメロディーも明快。テンポは揺らさずキリリと引き締まった音楽が流れます。特にアダージョのメロディーラインの美しさが印象的。

Hob.XIV:3 Divertimento [C]
この曲もまるで練習曲のように屈託のないシンプルさ。アレグロ・モデラート、メヌエット、アレグロ・ディ・モルト。非常に短い曲ですがハイドンの作品らしく構成は明快。3楽章には足を踏み鳴らすような音が入り、ハイドンの遊び心に呼応します。

Hob.XVIII:F2 Concertino [F] (c.1760)
ホーボーケン番号では協奏曲に分類される曲ですが、今はクラヴィーア四重奏の仲間と見做されています。モデラート、アダージョ、アレグロ・アッサイの3楽章。作曲年代は前2曲と変わらないためか、前2曲と変わらぬ構成感ですが、音階の美しさや、構成の変化の付け方にだんだん磨きがかかってきたようにも思えます。演奏の方もヴァイオリンがかなり踏み込んだアクセントをつけて、アンサンブルの緊張感も上がります。

IMG_9642.jpg

LPをひっくり返して後半3曲。

Hob.XIV:8 Divertimento [C] (c.1768/72)
アレグロ・モデラート、メヌエット、フィナーレの3楽章。いつもながらハイドンの曲の書き分けの巧みさには驚くばかり。1楽章ではリズムをためる面白さを強調しますが、何も仕込みがないところの鮮やかなタッチがあってこそ、このリズムの変化が面白く聞こえます。ハイドンが仕込んだネタをしっかりと汲み取って、しっかりと響かせます。所々で短調の響きが交錯する面白さを拾います。4人は軽々と演奏しているようですが、こうした演奏のポイントをしっかり踏まえていきます。

Hob.XIV:9 Divertimento [F] (before 1767)
アレグロ、メヌエット、アレグロ・モルト。冒頭からコミカルなリズムが弾みます。演奏の方も愉悦感たっぷりにハイドンの書いたリズムを汲み取っていきます。もはや曲に没入しての演奏ですが、推進力は徐々に上がってアンサンブルの呼吸もピタリと揃います。細かいリズムの変化がパート間でしっかりと受け継がれる快感が味わえます。

Hob.XIV:4 Divertimento [C] (1764)
あっと言う間に最後の曲。アレグロ・モデラート、メヌエット、フィナーレの3楽章構成、最後だからか心なしか落ち着いて演奏しているように聞こえます。コープマンはリズムを自在に動かしてフレーズの終わりをなぜか今までの曲よりしっかりと間を取り、一歩一歩踏みしめながら歩いていくような足取り。ヴァイオリンもそれに合わせてメリハリをしっかりとつけます。これはオリジナルのLPの曲の配置だからわかることでしょう。

トン・コープマンの若き日のハイドンのクラヴィーア四重奏曲集の録音。それぞれの曲はやはり若書きゆえ深みがあるとは言えませんが、それでもハイドンならではの構成の面白さは満喫できます。そしてこのアルバムのポイントはコープマンの自在なハープシコードさばきに加えて弦楽器の3人の端正な演奏が生み出す、室内楽の面白さが詰まったアンサンブル。古楽器ならではの繊細な響きから、クッキリとした音楽が浮かび上がる快感。CDでもこの面白さは味わえますが、LPになると鮮明な定位と実体感ある響きの力強さで、さらに楽しめます。評価は全曲[+++++]といたします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 古楽器 ディヴェルティメント

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No title

Daisyさんこんばんわ

私も、このCD(同じPhilips DUO)とLP(2枚組。ジャケットの図柄は異なる。今は他人の手に渡ってしまっています)を聴いています。確かに、同じ音源でしたね。LPの方は、私が当時使っていたレコード針のカートリッジが高域あがりのせいか、かなりキンキンした音だったような記憶があります。それはそれでいい音色だったのですが。
なお、CDの方は、Hob. XIV : 1が収録されていませんが、LPの方は、Hob. XIV : 1が収録されていたので、CD化する時の収録時間の関係で、残念ながら、はじかれてしまったと思います。

いい機会なので、今晩は、このCDをかけながら寝ようと思います。

Re: No title

Haydn2009さん、コメントありがとうございます。
LPの方ですが、もう一枚もリリースされているはずだと思ってちょっと探してましたが、2枚組でリリースされたこともあるんですね。CDには協奏曲も入っていますがそのためにXIV:1がはみ出しちゃったというわけでしょう。商売を考えると有名曲が入っていた方がいいという判断でしょうが、この手のアルバムを買う人自体、マニアックな層でしょうから、マイナー曲を外すというデメリットもありそうですね。このCD、室内楽の楽しさを伝える名盤ですので、復活されるといいですね。

No title

Daisyさん ごめんなさい。
今、手元から離れてしまっているので記憶違いしてました。
かつて私の手元にあったのは、2枚組LPではなく、4枚組のBOX setでした。

私が持っていたBoxsetの写真がありましたので紹介します。

https://www.cdandlp.jp/ton-koopman-reinhard-goebel-charles-medlam/haydn-:-concerti-concertini-divertimenti/lp-box-set/r118334133/

Re: No title

Haydn2009さん、情報ありがとうございます。
このジャケット見覚えあります。コープマンがワイルドだった頃の姿が懐かしいですね(^_^) 4枚組のLPが2枚組のCDになって1曲はみ出たということですね。そうなるとその1曲が聴きたくなっちゃうんですよね〜、悩ましい。

Re: Re: No title

Haydn2009さん、天地創造は都響の方に行かれたんですね。
ネット上の評判はスウェーデン放送合唱団のコーラスをはじめなかなか評判が良かったようですね。こちらは都合がつかずに聴けず残念でした。天地創造がこれだけ集中して取り上げられるのは東京でも珍しいこと。これをきっかけにハイドンへの理解が広がるといいですね。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

モーツァルト天地創造交響曲61番交響曲5番ピアノソナタXVI:46ストラヴィンスキーシューベルトチャイコフスキーピアノソナタXVI:52ピアノソナタXVI:20チェロ協奏曲ライヴピアノ協奏曲XVIII:11弦楽四重奏曲Op.2序曲バッハ軍隊ヴィヴァルディベートーヴェンオペラ序曲アリア集パイジェッロ弦楽四重奏曲Op.76皇帝ヒストリカル日の出ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:49ブーレーズラヴェルサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.71無人島騎士オルランドアルミーダチマローザ変わらぬまこと哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:3弦楽四重奏曲Op.20交響曲79番アレルヤ古楽器ラメンタチオーネ交響曲3番驚愕チェロ協奏曲1番交響曲88番オックスフォード交響曲19番交響曲58番交響曲27番アンダンテと変奏曲XVII:6紀尾井ホールショスタコーヴィチドビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎オーボエ協奏曲協奏交響曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:39ブルックナーマーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉告別交響曲90番交響曲97番奇跡交響曲99番交響曲18番ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ミサブレヴィスニコライミサ小オルガンミサ交響曲95番交響曲93番交響曲78番時計ピアノソナタXVI:23王妃SACD武満徹ライヴ録音交響曲80番交響曲全集交響曲81番マリア・テレジア交響曲21番クラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかりBlu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲12番交響曲11番交響曲10番太鼓連打ロンドン交響曲2番交響曲4番交響曲15番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニライヒャドニぜッティ弦楽三重奏曲シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26タリスアレグリモンテヴェルディバードパレストリーナピアノソナタXVI:6美人奏者四季交響曲70番迂闊者ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナー交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオドイツ国歌モテットカノンオフェトリウム弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bis音楽時計曲カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲107番交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

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