高関健/東京シティフィルの天地創造(東京オペラシティ)

昨夜は気になっていたコンサートに出かけました。

TakasekiCreation.jpg
東京シティフィルハーモニック管弦楽団:第309回定期演奏会

コンサートに行くたびにチラシで次のコンサートを物色するのですが、なんと今週来週、東京で天地創造が2回も取り上げられます。一つがこちらの高関健の振る東京シティフィル、もう一つが大野和士の振る都響。東京がアイゼンシュタットになったような祝祭感! 両方とも聴きたかったのですが、いろいろな都合もあり、なんとなく聴いたことのなかった東京シティフィルの方のチケットを取った次第。

指揮・チェンバロ:高関 健(Ken Takaseki)
ソプラノ:安井 陽子(Yoko Yasui)
テノール:中嶋 克彦(Katsuhiko Nakashima)
バス:妻屋 秀和(Hidekazu Tsumaya)
合唱:東京シティ・フィル・コーア(TCPO Chor)
合唱指揮:藤丸 崇浩(Takahiro Fujimaru)

高関健も東京シティフィルも名前はもちろん知っているものの録音も含めて聴くのはまったくはじめて。
高関健は群馬交響楽団のイメージがありますが、国内の主要オケの音楽監督を歴任し、今は東京シティフィルの常任指揮者と京都市交響楽団の首席客演指揮者で芸大指揮科の教授を務める人。1955年生まれで桐朋学園在学中にカラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝し、ベルリンでカラヤンのアシスタントを務めていたそう。その後、バーンスタイン、小澤征爾に師事するなど、桐朋、カラヤン、バーンスタインという流れは小澤征爾と同じなんですね。
東京シティフィルは東京に数多存在するオーケストラのうちの一つで、なんとなくN響、読響などとはランクがちょっと違う感じですが、最近の在京オーケストラの水準は以前とは比べものにならないほど上がっていますので、お手並み拝見といったところ。

天地創造のアルバムのレビューは数えてみたら51種も書いていましたが、コンサートはこれまで2度のみです。

2017/06/04 : コンサートレポート : 鈴木秀美/新日本フィルの天地創造(すみだトリフォニーホール)
2010/10/31 : コンサートレポート : アーノンクールの天地創造(サントリーホール10/30)

ハイドンの作品の中でも最高傑作であり、天地創造というコーラスを伴う大規模なオラトリオは録音よりも生で聴きたいものですね。この日のコンサートはお手並み拝見といった気持ちでチケットを取ったわけですが、結果からいうと実に素晴らしいコンサートで、天地創造という名曲を存分に楽しめる超名演でした。



この日の会場は東京オペラシティ。いつも通り西新宿の職場から歩いてオペラシティに参上。先に待っていた嫁さんと合流して、いつも通りサンドウィッチとワインで腹ごしらえ。

IMG_9716 (1)

ワインはいつものものではなく、東京オペラシティ開館20周年記念で勝沼の鳥居平今村の甲州とブラッククイーンが供されており、それを注文。お腹も満ちたところで、いざ、天地創造です。

この日の席は1階前方中央と日頃めったに取らないS席。6列目でしたがステージが拡大されていたので、実質4列目。普段は上から俯瞰できる2階席右側を取るのですが、そちらが空いていなかったので、珍しくS席とした次第。オケの至近距離で響きもダイレクトですが、前方の奏者以外の奏者の様子がよく見えないので、眺めは今ひとつです。

ほどなくコーラスのメンバーが登場。ステージ後方にかなりの人数が並びます。そしてオケも天地創造としては大編成でしょう。オペラシティーのステージが狭く感じるほど。定刻になり歌手と高関健が登場。高関健さんはなんとなく近所のおじさんがタキシードを着てステージに上がったような気さくな感じ(笑) このところファビオ・ルイージ、ジョナサン・ノット、エリアフ・インバル、エサ=ペッカ・サロネンとスタイリッシュな指揮者のコンサートが続いていましたので、隣の嫁さんも指揮者というのはスタイリッシュなものだと思い込んでいたとのこと。高関健はチェンバロも兼ねているので、指揮台はなくステージにたち、チェンバロを20センチくらいの台に乗せ、立ってチェンバロと指揮をこなすスタイル。オケの東京シティフィルも、普通のオケにはいるギラついたオーラを発するような奏者は見当たらず、なんとなくアマチュアオーケストラ風な佇まい。

高関健が拍手に応えて実に気さくに微笑み観客に向かって挨拶を終え、奏者の方に向き直って両手を振り下ろすと、第一部冒頭の混沌の描写が始まります。響きはゆったりとしたもので最初はかなり遅めのテンポでじっくりと描いていきます。ヴァイオリンも丁寧すぎるくらい表情をつけたボウイングで、これより遅いと音楽が停滞しかねないくらい。コンサートの冒頭ゆえかオケもまだ少し硬い感じがありますが、奏者の数が多いので迫力はかなりのもの。そして注目のラファエルの第一声。ラファエルとアダムはバスの妻屋秀和。この日の妻屋さん、実に素晴らしかった。大柄な体に似つかわしくキリリとひきしまったバスがホールに轟きます。ラファエルこそ天地創造の要が持論ですが、アーノンクールの来日公演でのフローリアン・ベッシュの度肝を抜くような声量には及ばずとも、存在感と伸びやかさは十分。そこからのオケが徐々にオケが目覚めて湧き上がるように盛り上がります。ウリエルの中嶋克彦は非常に柔らかで透明感のある声。こちらも声量はほどほどながらしなやかな歌唱が絶品。そしてガブリエルとエヴァの安井陽子は明るく非常に伸びやかな高音の美しい声でチャーミング。第一部の聴きどこのガブリエルのアリアは名盤の名歌手の歌唱にも迫る素晴らしいものでした。この日の歌手陣は3人とも素晴らしい歌唱でした。高関健のコントロールは精緻な演奏ではありませんが、自然な呼吸とアゴーギクはハイドンの音楽の素朴な良さを引き立てます。第一部では前半に硬さが見られたものの、これはコンサートの常。大編成オケの迫力を活かしてゆったりと盛り上げ、要所で各楽器の音色を際立たせるアクセントを設けるなど流石に芸大指揮科の教授。曲全体の流れを一貫して保ちながら場面ごとの情景描写に変化をつける円熟の技。第一部終盤の盛り上がりは素晴らしいものがありました。

この日は第一部終了後に休憩が入り、休憩中にチェンバロを入念に調律し直していました。第一部の演奏は素晴らしかったんですが、お手並み拝見の想定内。ところが、休憩後の第二部以降はそれを超える想定外の素晴らしさ。天地創造の第二部はご存知の通り、素晴らしいアリアの宝庫。休憩でリラックスできたのか、オケも歌手もすっかり落ち着き払って、演奏の方は所謂ゾーンに入って、もはやハイドンの音楽と一体化したような素晴らしさ。淀みない音楽の流れに乗って、歌手が代わる代わるアリアを披露。剛腕指揮者の強烈なドライブとは正反対の自然な音楽。ハイドンの名演奏の多くはこうした素朴な中から心弾むような音楽が溢れ出してくる演奏。まさにこの日の第二部はそのゾーンに入っていました。次々と流れる絶品のメロディー。歌っていない歌手も他の歌手やコーラス、オケの演奏に聴き惚れながら次の出番を待つ至福の時間。ホール全体が演奏に集中する素晴らしい演奏でした。そしてクライマックスでは大波のように押し寄せるコーラスとオケが渾然一体になった怒涛の迫力。

そして、それまでステージに向かってラファエルが指揮者の左、ガブリエル、ウリエルが指揮者の右に配置されていたのが、ラファエルとウリエルが入れ替わって、第三部でのアダムとエヴァのデュエットに備えた配置に変わり、終曲で4重唱に参加するアルトの背戸裕子がステージに上がります。圧巻の第二部に続いて第三部でもゾーンは続いていました。入りのレチタティーヴォに続いて聴きどころのアダムとエヴァのデュエットは絶品。表情一つ変えずに朗々と歌う引き締まったアダムの声に表情豊かに可憐に歌うエヴァが寄り添い、2人の息もピッタリ。まさに至福のデュエット。安井さんのソプラノはまるで全盛期のルチア・ポップのような可憐さ。2つ目のデュエットはまさに夢見心地。そしてさらに素晴らしかったのが終曲。あえて軽めに終わる演奏もある中、堅固な大理石の神殿のような威容が姿を現し、これまでの演奏の総まとめ的クライマックスに突入。指揮者の影に控えていたアルトが前に立ち最後の四重唱。最後のアーメンの響きがホールに吸い込まれる前に拍手が降り注ぎました。

お手並み拝見とは失礼な前振りでしたが、この日の天地創造は素晴らしかった。もちろん生演奏の迫力があってのことですが、これまで聴いた数多の天地創造の中でも、心に残る演奏の一つとなりました。演奏の精度やオケの力量がこの演奏を上回るものは山ほどありますが、天地創造というハイドンが書いた曲の美しさ、素晴らしさを素朴に表現し、曲の本質に迫る演奏という意味では名だたる名演と肩を並べる素晴らしさでしょう。特に歌手3人は絶品。客席から降り注ぐ拍手とブラヴォーにステージ上で歌手もオケもコーラスも満足そうに笑顔で応えていたところみると、満足ゆく出来だったことでしょう。

終演後は、一部の奏者がロビーで観客に挨拶したり、プログラムも丁寧な作りで非常に好感の持てるコンサートでした。東京シティフィル、実に侮れない存在でした。今度はこの名演のコンビで、マイナーながら天地創造と同様美しいアリアの宝庫であるハイドンの「四季」か「トビアの帰還」を是非取り上げていただきたいですね。当ブログの総力を結集して集客に協力させていただきます!(大した集客力はありませんが、、、(笑))

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tag : 天地創造 東京オペラシティ

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Daisyさん こんばんわ。

私は、今日、東京都交響楽団の演奏に行ってきました。
Daisyさんのような洒落たコメントは書けませんが、下記ブログにて、

https://blogs.yahoo.co.jp/runchibi_0808/15394355.html


プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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