シャルル・デュトワ/N響の王妃、嘆き、スコットランド(横浜みなとみらいホール)

旅行記の途中ですが、12月16日はチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団2017横浜定期演奏会

このコンサート、シャルル・デュトワがハイドンを振るということでチケットを取ったのですが、お目当てはハイドンばかりではありません。2曲目置かれた細川俊夫の「嘆き」もちょっと気になる存在。というのもこの「嘆き」、2013年のザルツブルク音楽祭で、この日の組み合わせであるデュトワとN響、そしてアンナ・プロハスカで初演されており、その模様はNHKの番組で観ています。すなわち今日は初演コンビでの演奏ということです。また、今年の7月にはノットと東響、藤村実穂子の組み合わせで藤村のためにメゾ・ソプラノ用に用意された改訂版も実演で聞いてその素晴らしさを味わっています。

2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)

また、アンナ・プロハスカはDGから歌曲集をリリースしており、その中にハイドンの英語によるカンツォネッタ「人魚の歌」が含まれていたので、こちらも一度記事にしています。

2013/09/24 : ハイドン–声楽曲 : アンナ・プロハスカの歌曲集(ハイドン)

もちろん、デュトワのハイドンも一度取り上げています。デュトワの唯一のハイドンの録音であるパリセットは定番の一つですね。

2012/12/17 : ハイドン–交響曲 : デュトワ/モントリオール・シンフォニエッタの87番

ということで、私にとってこの日のプログラムは非常に興味深いプログラムな訳ですね。

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この日は晴天。いつものように早めにみなとみらいに到着。ホールに入ると全面ガラスのホワイエからの眺めは気持ちの良いもの。

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開演まで時間があるので、いつものようにワインを頼んで、景色をツマミにのんびりさせていただきました。

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この日の席は2階席の真正面。いつもは右側を選ぶのですが、たまには正面でということで取った席。ちなみにこの日の席の埋まり具合は4割弱ぐらいだったでしょうか。2階席の左右後方は誰も居ない感じ。ちなみに数日前にサントリーホールで2夜連続同じプログラムで演奏されたということで、首都圏で3日目ということでこの入りだったんでしょう。また、翌日は福島の磐城で同じプログラムゆえ計4日の興行ということになりますので、N響としても第九並みに力の入った演目という扱いでしょうが、メインがメンデルスゾーンということで第九ほどの集客力はなかったというオチでしょう。

定刻になってオケの奏者がステージ上に現れ始めると拍手で迎えるのはこのホールの習わしでしょう。メンバーが揃ってチューニングが終わるとデュトワが颯爽と登場。1曲目の王妃は手元のアルバム同様、スタイリッシュな演奏でした。全体の設計がしっかりるのでテンポやアゴーギクには揺るぎない安定感があり、逆にスリリングな感じは皆無。そしてオケの奏者もデュトワの指示に従って正確にトレースしていく感じ。パート間の音量のバランス、デュナーミクの変化、アクセントなどまるでセッション録音を聴いているような安定感。古典の構築美をデュトワ流にさらりと表現したという感じの演奏でした。プログラム構成上も完全にハイドンは前座。もう少し攻めてくるかと思いきや、オケのアイドリングのような演奏でした。

観客の拍手もそこそこに切り上げ、ステージ上は次の細川俊夫の「嘆き」に向けて歌手の歌うスペースを用意して、奏者も増えます。そしてプロハスカとデュトワが登場し、場内はハイドンの時以上に盛り上がります。

この「嘆き」は東日本大震災で子供を失った母親のために書かれた哀悼歌。曲については先のノットのマーラーの記事に触れてあります。7月に聴いたジョナサン・ノットの演奏が静寂から響きのクラスターがめくるめくように湧き上がる鋭利な印象を感じさせたのに対して、デュトワの演奏は、大河の流れにキラメキが漂うよな演奏。ユッサユッサと大きなモーションでオケに的確な指示を与えて、その度にオケの響きが湧き上がってくるため、ハイドンどうよう盤石の安定感。ノットのシャープな表現に対して、デュトワは余裕すら感じるコントロールでこの曲を完全に掌握している感じ。時折り鳴らされる鈴やりんの音が祈りの感情を想起させます。ソプラノのプロハスカは鳥肌が立つような高音の伸びと透明感が見事。藤村実穂子が語りでも豊かなニュアンスを聴かせたのに対し、やはり高音の抜けるような伸びやかさが見事。哀悼歌という心情をうつくしさに昇華した印象。もちろん、最後の音が静寂に包まれると万雷の拍手が降り注ぎます。プロハスカの絶唱に観客から惜しみない拍手が注がれました。

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休憩を挟んで後半はメンデルスゾーンの「スコットランド」。私にとってこの日のコンサートのお目当ては前半で、後半は完全にオマケという感じでした。ハイドンもバッハもマーラーもブルックナーも武満も細川もブーレーズも好きなんですが、メンデルスゾーンは完全に守備範囲外。手元にはアバド/ロンドン響の1968年のスコットランドとイタリアにこれもアバド/ロンドン響の80年代の交響曲全集くらいしかありません。スコットランドを聴くのも実に久しぶり。結論から言うとデュトワのメンデルスゾーンのスコットランド、素晴らしい演奏で、目からウロコが落ちた感じ。N響のデュトワに対する絶大な信頼が感じられる素晴らしい演奏でした。絵画的と言われるこの曲ですが、冒頭からデリケートな情景描写の巧さと、明るいメロディーの伸びやかさ、揺るぎない全体設計、一糸乱れぬオケの安定感、そしてハイドンの時以上の完璧な音量バランスで、まさに完璧な演奏。冒頭のハイドンの時にはちょっと安定感と完成度重視で踏み込み不足を感じたんですが、流石にコンサートの目玉にしただけあって最後のファンファーレの部分の堂々とした響きで場内を圧倒。もちろん素晴らしい演奏に惜しみない拍手が送られました。

いやいや、N響にデュトワありとの存在感を見せつけた感じ。やはりオーケストラコントロールにかけては素晴らしい才能を持った人だと再認識しました。嫁さんも、「流石に上手いわね〜」とにっこり。この素晴らしい演奏にしてはお客さんの入りが残念でした。後で聞きましたが、この日はJRが午後動いていませんでしたのでその影響もあるかもしれませんね。

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終演後のホワイエからの景色は陽が少し傾いて雲が目立つようになっていました。

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この日は叔母に母親の留守番を頼んで出かけてきましたので、家路を急ぎました。
デュトワとN響、次のコンサートも要チェックです。

(付記)
この日のプログラムでは、ハイドンの85番のタイトルが「女王」となっていましたが、原題の"La Reine" の直訳は女王でしょうが、この曲にこのニックネームがついた経緯はルイ16世の王妃であったマリー・アントワネットが愛好したという由来を考慮すれば「王妃」が正しいでしょう。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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