クレモナ四重奏団の弦楽四重奏曲Op.54、Op.77

今日は弦楽四重奏曲。

Cremona.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

クレモナ四重奏団(Quartetto di Cremona)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.54のNo.2とバルトークの弦楽四重奏曲No.4、そしてハイドンの弦楽四重奏曲Op.77 No.1の3曲を収めたアルバム。収録は2009年12月8日~10日、ドイツのバーデンバーデンのハンス・ロズバウド・スタジオでのセッション録音。レーベルはGENUINというドイツ、ライプツィヒのレーベル。

クレモナ四重奏団はジャケットの写真を見る限りイタリア人のちょい悪オヤジ4人組のような集団。これだけでは紹介にならないのでいつものようにちょっと調べてました。この四重奏団のホームページがありましたのでリンクを張っておきまよう。

Quartetto di Cremona(英文)

このクァルテットは2000年、クァルテットの名前にもなったイタリアのミラノ東方の街、クレモナにあるシュタウファー・アカデミーでメンバーが学んでいる時に設立された。その後2002年に現在のメンバーとなり、フィレンツェ近郊の街フィエーゾレにある音楽学校でイタリア四重奏団のピエロ・ファルーリや、アルバン・ベルク四重奏団のハット・バイエルレのマスタークラスに参加。彼らから音楽の分析力と聴衆との自発的なコミュニュケーションについて学び、ほどなくヨーロッパでも指折りの弦楽四重奏団として活躍するに至ったとのこと。

弦楽四重奏曲Op.54 No.2(Hob.III:57)1788年作曲
ちょっと刺激成分も含んでいるようなリアリティの高い録音。ヴァイオリンは最高音の素晴らしい伸びが印象的。テンポを比較的自在に自在に動かし、また休符も長めにとったじっくりした演奏。デュナーミクの変化の幅も大きくしっかりとした演出。どのパートもイタリアのクァルテットらしくクッキリとして伸びのいいフレージングが特徴でしょうか。ダイナミックさもありますが、冷静にアンサンブルを刻んでいく落ち着きもあっていいですね。
2楽章のアダージョはかなり大胆にテンポを動かして自在にメロディーを弾き進めていきますが、伴奏の方は現代音楽のような精妙なというか静謐な響きをつくって非常に面白い表現。伴奏だけ聴くとアルヴォ・ペルトの曲のよう。
3楽章のメヌエットは全奏者の息を合わせてメロディーを刻んでいきますが、適度にばらついた感じもあって好ましいもの。そろいすぎて息苦しさを感じさせるようなストイックな演奏よりも好みです。良く聴くとチェロの音程がすこしふらつく感じががありますが、マイナスを感じるほどではありません。この楽章は大胆さとダイナミックさが聴き所。
そして独特の表情をもつフィナーレ。非常に落ち着いた弾きぶりで、しっかりとフレーズを刻んでいきます。フィナーレのこの冷静な展開はなかなかのもの。これまでの曲の展開を踏まえた上で、あえてじっくりとした表現をしているという感じ。演奏の組み立てをきちんとした意図のもと構成しているようですね。後半は快速ピッチにテンポを上げ、キレの良いアンサンブルを聴かせます。そして最後はハイドンのフィナーレの新境地のようなさっと引くような独特の終わり方が新鮮です。ハイドンの意図の解決策を万全に表現した終わり方。テクニックも音響も良いんですが、この曲の演奏設計というか構成の巧さが光る演奏です。

静寂を切り裂くように始まるバルトークの弦楽四重奏曲の険しい響き。ハイドンに挟まれたバルトーク、それも前衛的は表現の限りを尽くした4番を持ってくるあたり、アルバムの構成もなかなか知的な感じがして好きです。4楽章のピチカートの響きに惹き付けられますね。

弦楽四重奏曲Op.77 No.1(Hob.III:81)1799年作曲
こちらはバルトークで過度に高められた緊張を癒すように、速めのテンポで楽天的に入ります。古典期の弦楽四重奏曲の晴朗な魅力を誇示するような吹っ切れた明るさと推進力。演奏だけを聴くとハイドン晩年の筆による曲というよりは若い時の曲のように深さなどよりも明るさにスポットライトを当てたような演奏。インテンポでぐいぐい進めていきます。1曲目の落ち着いた表現とは打って変わって浮き足立った感じすらさせる抜群の推進力。単調にならないのは一音一音のアクセントと生気に溢れる各奏者のエネルギー。1楽章は最後まで速めのテンポで押しとおします。
2楽章は一転して深い呼吸。名旋律ですが、キリッとした端正さを失うことなく、叙情的にに過ぎることもなく、クレモナ四重奏団の特徴であろう落ち着いた間の取り方と流麗な音響の組み合わせによる非常に知的な表現。ここにいたってはじめて気づきましたがチェロの音色が他の楽器にくらべてかなり柔らかいこと。もうすこしキリッとした表現の方がこのアンサンブルには合うのかもと思いましたが、聴き進むうちにヴァイオリンの音色を引き立てるような意図があるのかもと思い始めました。何れにせよこのアダージョは見事。
3楽章のメヌエットは1楽章同様、かなり速めの演奏。どぎつくなるぎりぎり寸前のかなり鮮明なメロディーの表現でコントラストつけます。かなり踏み込んだ表現でしょう。
フィナーレは3楽章の勢いをそのまま引きずって、冒頭からエネルギー溢れる演奏。テンポはかなり速めでぐいぐい弾き進めていきます。途中の音階は目にも止まらぬ早さ。かなりのスピードとエネルギーでフィナーレをあっという間に閉じます。ヴァイオリンはフィナーレを通して超絶テクニックで音階を弾き進め、まるでカデンツァの聴かせどころがずっと続いているような感じ。ちょっとやり過ぎと感じてしまうような危うさもはらんでしまっています。

はじめて聴くクレモナ四重奏団のハイドン。1曲目の弦楽四重奏曲Op.54のNo.2は落ち着いた素晴らしい演奏。こちらは迷いなく[+++++]。問題は最後におかれた弦楽四重奏曲Op.77のNo.1ですが、前半2楽章は非常に良いものの、後半2楽章はちょっとやり過ぎというか、ハイドンの演奏に求められる均整と古典的均衡からはだいぶそれて、テクニックのショーピース的演奏になってしまっています。こちらは[++++]としました。

今回のアルバムもライヴで聴いたら迫力ある演奏として良い演奏だと思いますが、アルバムとして、そしてハイドンの最晩年の曲の演奏と言う作品の背景を考えると、ちょっと踏み込み過ぎに聴こえてしまったのが正直なところ。比較的若いクァルテットゆえ、これから熟成を加えていくのを期待しましょう。
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.54 弦楽四重奏曲Op.77

コメントの投稿

非公開コメント

No title

遅コメ失礼します。なかなか野心的なカップリングですね!特に作品54が第2番というのが渋い。終楽章がアダージョ-プレスト-アダージョという人を食ったような構成もハイドンならではです。作品54はアレグリSQ(ウエストミンスター)かジュリアードSQ(EPIC)がマイベストでしょうか。偶然ですが、ハイドンの全曲演奏会を継続中の「古典四重奏団」は、今秋バルトークの全曲演奏を2回に分けて行います。今まで1番と2番を聴いて大感激しているので今度も皆勤するつもりです。

Re: No title

だまてらさん、こんばんは。
アレグリ四重奏団もジュリアード四重奏団も未聴です。弦楽四重奏曲はまだまだコレクションが薄いんですね。おすすめ盤情報ありがとうございます。古典四重奏団、バルトークまでやるんですね。バルトークも一度生で聴いてみたいです。響きが刺さってくるんでしょうね。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ベートーヴェン紀尾井ホールショスタコーヴィチストラヴィンスキードビュッシーラヴェルピアノ三重奏曲ミューザ川崎オーボエ協奏曲LP協奏交響曲日の出ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:38サントリーホールスタバト・マーテルピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:39マーラーブルックナーヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉告別交響曲90番交響曲97番交響曲99番交響曲18番奇跡アレルヤひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番ラメンタチオーネ交響曲86番モーツァルトヴァイオリン協奏曲驚愕哲学者ニコライミサミサブレヴィス小オルガンミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹ライヴ録音SACDチェロ協奏曲交響曲19番交響曲81番古楽器交響曲80番交響曲全集交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり無人島騎士オルランドBlu-rayチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲9番交響曲11番交響曲10番交響曲12番太鼓連打ロンドン交響曲15番交響曲2番交響曲4番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:3天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:35ドニぜッティライヒャロッシーニピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:31パレストリーナタリスモンテヴェルディアレグリバードすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季交響曲70番迂闊者ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76ピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードオフェトリウムドイツ国歌カノンモテット弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisカートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲107番変わらぬまこと交響曲108番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
138位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
14位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ