【新着】ザンデルリンク/スウェーデン放送交響楽団の39番ライヴ

昨日HMV ONLINEから届いたばかりの新着アルバム。

Sanderling39.jpg
HMV ONLINEicon / TOWER RECORDS

クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のスウェーデン放送交響楽団の演奏で、シューベルトの交響曲9番「グレイト」、ハイドンの交響曲39番の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1992年10月16日、ストックホルムのベルワルトホールでのライヴ。レーベルは最近いいライヴをリリースしているWEITBRICK。

クルト・ザンデルリンクにはハイドンのパリセットの名盤があり、愛聴盤の1枚です。当ブログではザンデルリンクのハイドンはベルリンフィルとの「熊」のライヴを取りあげたことがあるのみ。

2010/11/04 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルの熊ライヴ

前記事で触れなかったので、Wikipediaなどの情報をもとにザンデルリンクの略歴を紹介しておきましょう。クルト・ザンデルリンク1912年、東プロイセンのアリス(現在のポーランドの北西部でベラルーシやリトアニア国境に近い街オジシュ)に生まれ、10歳でケーニヒスベルク(現在のロシア領カリーニングラード、こちらリトアニアとポーランドの間のロシアの飛び地のようなところ)のギムナジウムで音楽を学び始めたました。1931年にベルリン市立歌劇場のコレペティートルとして働き始めましたが、母親がユダヤ人であったためドイツ国籍を剥奪され、1935年にソビエト連邦に亡命、モスクワ放送交響楽団でアシスタントとして腕を磨きました。
1937年にモスクワで「後宮からの誘拐」で指揮者としてデビューし、1939年にはハリコフ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、1941年にはレニングラート・フィルハーモニー交響楽団の第一指揮者に就任し、エフゲニー・ムラヴィンスキーの下で研鑚を積みました。その後1960年に東ドイツに帰国しベルリン交響楽団の芸術監督、首席指揮者に就任、1964年から1967年まではシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者も兼務するなど、東欧圏の代表的な指揮者と言う立場になりました。
1965年にザルツブルク音楽祭にデビューしたことで西側にもその名を知られるようになり、1972年には健康の衰えはじめたオットー・クレンペラーを補佐するためフィルハーモニア管弦楽団の首席客演指揮者に就任、後に名誉指揮者の称号も得る事になります。
日本にもたびたび訪れ、1973年のシュターツカペレ・ドレスデンの来日公演に帯同、読売日本交響楽団にもたびたび客演しこちらも名誉指揮者となっています。
1977年にベルリン響のポストを退いてからはフリーの立場で世界各地のオケに客演しましたが、2002年に高齢を理由に指揮活動から引退、5月19日にベルリン響や内田光子との引退演奏会が最後の演奏となりました。そして昨年2011年9月18日、ベルリンで老衰により98歳で亡くなりました。98歳とは大往生でしょう。

ザンデルリンクの生まれたポーランドのオシジュを調べていたら、近くのオシジュ湖の綺麗な写真がありましたので紹介しておきましょう。なんと素晴らしい自然。

Panoramio:Lake Orzysz

私はザンデルリンクの演奏で記憶に残っているのはシベリウスの6番、7番を収めたLP。リリシズムを感じるような研ぎすまされた室内学的な響き。黒地に雪に包まれた赤い実の写るジャケットも印象的なものでした。
肝心のザンデルリンクのハイドンはまさに中庸の美学を地でいくもの。生気と感興、推進力が高次にバランスした演奏。パリセットも素晴らしい仕上がりでしたが、新たにリリースされた39番というシュトルム・ウント・ドラング期の成熟を予感させる交響曲のライブに期待も集まります。

Hob.I:39 / Symphony No.39 [g] (before 1770)
堅実な響きから入ります。この時期特有の憂いを秘めた濃い情感を含んだメロディーの曲。短調の曲なんですが、基底には不思議と明るさも宿ります。おそらくリズムの几帳面な刻みと、弦楽器の正確なボウイングから編み出されるクッキリ感がそう思わせているのでしょう。小気味好いリズム感の良さが気品を帯びるほど。まさにハイドンのツボを抑えたコントロール。録音はちょっと鮮明さに欠けますが、鑑賞には問題ないレベル。オーケストラのスケール感はコンパクト。
アンダンテもテンポ感よく進み、メロディーラインを適度に変化をつけて重ねながら、自然に音を紡ぎ出していくようです。ハープシコードが雅さを加えます。オケは腕利きというほどではありませんが、アンサンブルは良くそろっています。ザンデルリンクの統制が行き渡っている感じ。まさに手作りの音楽の良さが味わえる音楽。ハイドンの書いた機知に富んだ旋律の本質を捉えたザンデルリンクの見事なコントロール。音楽が溢れてきます。
ざらっとした音色の弦楽器にるメヌエット。ここでもメロディーラインの演出が見事。楽譜に潜む情感を非常に見事に描いていきます。
そしてフィナーレは強弱の変化、対比を非常に見事に表した演奏。テンポは思ったほど速くなく落ち着いた範囲。ただその中で演奏されるメロディーは、フレーズごとに鮮明に強弱の対比がつけられハイドンらしい端正さを保ちながら、表情豊かに描かれます。非常に落ち着いたコントロールのもとオケがザンデルリンクの棒にピタリと従って、箱庭の美学のような緊密な音楽。速いパッセージのキレもそこそこあり、見事なアンサンブル。最後は拍手に迎えられます。

クルト・ザンデルリンク指揮のスウェーデン放送響の演奏によるハイドンのシュトルム・ウント・ドラング期直前の傑作交響曲39番。オケは決して一流ではなく、音色も垢抜けている訳ではありませんが、演奏は一流です。指揮者の重要性をあらためて感じる演奏。流石にハイドンを得意としているザンデルリンクだけあって、このオケからハイドンの交響曲の真髄にふれる見事な演奏を引き出しています。この演奏の特徴は変化に富んだフレーズの演出と端正な構築感。ハイドンらしい端正さを基調としながらも、フレーズごとの巧みな変化をつけて、まさに箱庭の美学。オケの精度の分減点するという評価もあるかもしれませんが、減点しません! このような演奏こそハイドンの真髄を突いた演奏と言えるでしょう。ということで評価は[+++++]とします。

気づいてみれば今日は月末ですね。恒例の今月の一枚を選び始めましょうか、、、

※7月1日追記
コメントに記載されたmaro_chroniconさんのご意見をもとに、39番がシュトルム・ウント・ドラング期のものかについて記事を修正させていただきました。maro_chroniconさん、いつもありがとうございます!

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ジャンル : 音楽

tag : 交響曲39番 ライヴ録音

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シュトルム・ウント・ドラング期

ザンデルリンクは好きな指揮者です。39番はタワレコで試聴しました。「良いけど、オーケストラが物足りないかなあ」というのが、その時の感想で、買うかどうか、まだ迷ってます。
ところで、Daisy さんの考え方を教えてください。39番はいわゆる「疾風怒濤期の交響曲」なのか、についてです。
私は39番はこの時期の作品だと長らく思ってきました。ですが、大宮真琴も中野博詞も「副楽長時代」に分類しています。反面、たとえばピノックの「疾風怒濤期の交響曲集」に、この曲が入ってるのはとてもふさわしい、というのも実感です。もともと用語として問題があるらしい「疾風怒濤期」なんで、「39番問題を気にするのはやめよう」と決めたものの、やっぱり気になります。
Daisy さんがこの曲を「シュトルム・ウント・ドラング期」に含めたのは、どんな観点からなんでしょうか。(長いコメントになって恐縮ですが、「議論したい」というほどの執心は無くて、「御意見をちょっとうかがいたい」という気持ちです)

No title

おはようございます。
7月は雨模様のスタートとなりました。
今年も半分が経過。あまりの早さに、私自身ついていけない感じです。

ザンデルリンク…懐かしい名前です。
昨年亡くなられてたこと、全く知らず。往年の演奏家の旅立ちに、あらためて月日の流れを思います。
彼のハイドン。それも、あのト短調の名曲とくれば食指が動きますね…5つ星の評価に直ぐにでも聴きたくなりました。

Re: シュトルム・ウント・ドラング期

maro_chroniconさん、こんにちは。
ザンデルリンクの39番は確かにオケが物足りないです(笑)。私もこの記事を書く際に何度か聴きましたがこの演奏で光るのはやはりザンデルリンクの手堅いコントロールでしょう。オケは今一でも指揮者のイメージする音楽にしっかり合わせた演奏であり、音楽としての完成度は高いと思います。
さてさて、39番はシュトルム・ウント・ドラング期の音楽とみなしたのは、単純に響きの純度と作曲年代からです。この手の情報で詳しいものは中野博詞さんの「ハイドン交響曲」ですが、時代区分としては呼び方は違いますがシュトルム・ウント・ドラング期以前の区分と捉えているようです。
ハイドンの初期の交響曲については作曲年代が明確化している曲は少ない事と、詳しい作曲の経緯が残っているものが少ないようですので、この辺は研究者でもなければ、はっきりとした意見は言えないと思います。
シュトルム・ウント・ドラング期を厳密なものとみなすか、この時代前後のハイドンの創作期の一つの大きなうねりとみなすかで解釈もかわると思いますが、私はなんとなく後者のイメージでこの曲に使いました。
前者の視点で言うと副楽長時代のものというのが正確な表現だったんだと思います。ただ、39番は前者の視点で言うシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲に劣らない情感をもち、短調の憂いも素晴らしいことから、そのような表現を使ってしまったという事でしょう。
ブログ本文にもちょっと注記しておきたいと思います。
ちなみに、スコットランド歌曲集をお薦めしたという責任から、今日は朝から所有盤リストのスコットランド歌曲集の未記入部分の追記作業などしております。しばらくのうちに完成させたいと思いますのでよろしくお願いします。

Re: No title

有田さん、こんにちは。
このアルバムはブログ本文やmaro_chroniconさんのコメントにもあるようにオーケストラは万全の出来ではありませんが、その音楽はハイドンの真髄を突いたものです。
ザンデルリンクには素晴らしいパリセットの録音がありますので、未聴であればそちらもオススメです。何れにせよ、ザンデルリンクはハイドンの音楽の要所をよくわかって、その音楽を活き活きと奏でることをできる数少ない巨匠の一人だったのだと思います。

Re: シュトルム・ウント・ドラング期

くわしい返信をいただき、ありがとうございます。39番の制作時期と作風について、(僭越ながら)私と同じ感覚でいらしたことがわかって、うれしいです。
39番は私の好きなハイドン交響曲のベスト10に入ります。ブログ記事を読み返すうちに、やっぱり欲しくなってきました。そのうち出かけます。

Re: Re: シュトルム・ウント・ドラング期

maro_chroniconさん、おはようございます。
39番、短調のはじまりといい曲想といいハイドンの初期の交響曲では傑作の一つですね。膨大なハイドンの交響曲には駄作と呼べるものはなく、それぞれ特徴がある素晴らしい曲ばかりですが、その中でも39番は濃い情感をもっていますね。こちらは他の演奏でも聴き直してみたくなりました。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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