【番外】市川海老蔵十役早替り宙乗り相勤め申し候

先週新橋演舞場で八月花形歌舞伎の昼の部を見たのでですが、同行した友人の希望で、何と今週は夜の部にも行くことになり暑い中新橋演舞場に。

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歌舞伎美人:八月花形歌舞伎

ポスターは先週の記事と同じです(笑)。先週の記事はこちら。

2012/08/11 : お出かけ・お散歩・展覧会 : 【番外】新橋演舞場で八月花形歌舞伎

夜の部も昼の部と同様四世鶴屋南北作の「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)」伊達の十役という、通し狂言。4時30分から夜9時まで正味ほぼ4時間の大作です。「市川海老蔵十役早替り宙乗り相勤め申し候」とのコメントのとおり、海老蔵が1人で10役をこなして、都合40回の早変わりを演じるというもの。昼の部でもずいぶんな出所があったのを考えると昼11時から夜9時までほぼ出ずっぱりという恐ろしいまでの演技量。これを20日間続けるのですから、まずは並大抵の仕事ではありません。実はこの舞台なんとなく見た覚えが。昔猿之助の舞台で見たような気がします。今回の演出も猿之助あらため猿翁が担当しています。

プログラムの解説を読むと、この伊達の十役は鶴屋南北の作とされていますが、原作の台本は1815年の江戸河原崎座で大ヒットした後に失われてしまい、昭和54年に猿之助が164年ぶりに復活した際に、少ない資料から創作に近い形で再構成したものとのことで、この舞台が猿翁好みの派手な演出によってつくられていることからもわかります。

あらすじはあまりにも複雑で書ききれないのですが、有名な仙台萩の話を骨格にお家騒動を軸とした展開。ですが、やはり幽霊あり、鼠の妖術使いあり、だんまり(台詞なしの舞台)あり、花魁行列あり、切り合いあり、人情あり、最後は鼠の怪物ありと舞台の面白さを詰め込んだもの。先週の桜姫東文章もそうでしたが、こちらのほうがキッチュな感じが増して、まさに劇場版トリックのような造り。

席は1階ほぼ中程の花道のすぐ脇。花道を行き来する役者の息づかいが直接感じられる良い席でした。

幕が上がると最初に海老蔵の口上があり、善悪別に十役の写真を前にそれぞれの役所を説明するところからはじまり、4時間に渡る舞台をテンポ良く進めます。おそらく猿翁による良く練られた演出のおかげで、飽きさせる事なくあっという間の4時間でした。かすかな記憶に残る猿之助の舞台が、早変わりのテクニックと奇抜さのキレで見せていたのに対し、海老蔵の筋の通った演技と役柄の演じ分けで見せる舞台。10役は巧みに声色を使い分けて、役所の違いを際立たせていました。強いて揚げれば、最も威厳のある細川勝元役の台詞が、声色のテクニックを使いすぎてちょっと威厳が薄くなってしまうように感じたところ。やはり図太く朗々とした演技のほうが細川勝元の威厳が良く出たように思います。逆になまくら坊主の土手の道哲役や妖術使い仁木弾正役は海老蔵のはまり役。花魁や政岡などの女形も首の太さは気になったものの(笑)、意外と上手くこなしていました。今回の舞台は海老蔵による本作の一昨年の正月につづく2度目の公演とのことで、演技もギクシャクしたところがなく、海老蔵の公演では久々にぐっときました。

舞台を通して良かったのは、やはり圧倒的な演技量の海老蔵。いろいろな騒動でちょっと印象を悪くしていましたが、この舞台は海老蔵のこの舞台にかける迫力のようなものがつたわり、それが舞台の大きな魅力になっていました。あとは市川右近の悪役女形の八汐。これだけむごたらしい女形の役はそう出来るものではありません。そして片岡市蔵の忠義の人、渡辺外記左衛門と片岡亀蔵の悪役大江鬼貫など脇役の迫真の演技が舞台を引き締めていました。やはり脇の締まり具合が舞台の出来に大きな影響がありますね。

昔の猿之助の舞台の面白さとはまた違った面白さを感じられたいい舞台でした。やはり生でこれだけの舞台をこなす姿は人の心に残ります。まさに顔を真っ赤にして熱演した海老蔵、見直しました。先週観た午前の部では、ちょっと筋書きが下世話過ぎたのか、演技が筋書きを生かしきれなかったのか、今ひとつハマりませんでしたが、こちらは、海老蔵のキャラクターといい意味で面白おかしい筋書きが良くマッチ、そして早変わりに宙乗りと舞台のスペクタクル(外連)を生かした構成が、娯楽としての歌舞伎の面白さを踏まえていて良くまとまっていました。

夜の部は途中でいつもの辨松のお弁当をいただき、あずきモナカなどを戴いたので、終演後どっかで飲んで帰るという流れにはならず、おとなしくまっすぐ帰りました。

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tag : 歌舞伎 新橋演舞場

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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