【新着】オリヴァー・シュニーダー/イギリス室内管のピアノ協奏曲集

いや、今週は仕事が忙しかったです。4日に分けてようやく書いた記事。
最近HMV ONLINEから届いたアルバム。

Schnyder.jpg
HMV ONLINE / amazon / TOWER RECORDS

オリヴァー・シュニーダー(Oliver Schnyder)のピアノ、アンドリュー・ワトキンソン(Andrew Watkinson)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St Martin in the Fields)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲3曲(Hob.XVIII:3、XVIII:4、XVIII:11)を収めたアルバム。収録は2011年12月15日、16日、ロンドンのヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。レーベルは今やSONY MUSICグループとなったRCA RED SEAL。

ピアノのオリヴァー・シュニーダーは1973年、スイス、チューリッヒの北西の街、ブルック生まれの若手ピアニスト。チューリッヒ芸術大学でオメロ・フランセシュに、またマンハッタン音楽院でルース・ラレードに、ボルチモアでレオン・フライシャーにピアノを学びました。アメリカ、ワシントンD.C.のジョン・F・ケネディー・センターでのデビューを皮切りに世界中で活躍するピアニストです。

Oliver Schnyder Piano | Offical Site of Pianist Oliver Schnyder

私ははじめて聴く人。HMV ONLINEでは他に数枚のアルバムがあるのみで、このアルバムが看板アーティストとしての本格的なアルバムのようです。ここでハイドンを持ってくるあたりに、いわくがありそうですね。

指揮のアンドリュー・ワトキンソンはイギリス室内管弦楽団、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、ロンドン・シンフォニエッタなどロンドンに拠点をもつほとんどの室内オーケストラを振っている指揮者。このアルバムのオケであるアカデミー室内管弦楽団の音楽監督だった時期もありました。また、彼自身が設立したシティ・オブ・ロンドン・シンフォニアの音楽監督として15年以上にわたって演奏を続けているとのこと。実力派の一人でしょう。ワトキンソンもはじめて聴く人。

ということで、はじめて聴く2人の組み合わせによる協奏曲、どう響くでしょうか。

Hob.XVIII:3 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
最新のものらしくキレの良い録音。オケは現代楽器による弾むような響き。音符を切り気味にして爽快感を表現。シュニーダーのピアノはタッチの軽さ、打鍵のキレの良さに神経が行き届いたもの。落ち着いていながらもリズム感のよさはかなりのもの。小編成オケとキレのいいピアノのアンサンブルで表現されたハイドンのピアノ協奏曲。シュニーダーなりの古典の表現でしょう。ワトキンソンの指揮は低音弦の音階に独特の雰囲気のあるこの曲を上手く表現しています。オーソドックスながら今風のキレの良い響きでまとめる手腕はかなりの実力とみました。シュニーダーも後半になるにつれて恍惚感のようなものがにじみ出てきます。驚くのはカデンツァ。ハイドンの協奏曲のカデンツァとは思えない不思議な響き。まるでチックコリアのよう。はっきり言って違和感がある程変わったカデンツァですが、面白い事は面白いもの。
2楽章はラルゴ・カンタービレ。ここはシュニーダーのテンポ感の良さが最良の形で発揮されます。オケのピチカートとピアノの掛け合いは孤高の響宴。これは見事。
フィナーレはもちろんテンポを上げますが、古典の均衡は崩れず、むしろ速いテンポの爽快感の上に古典の造形美を感じさせる、非常に美しい演奏。基本的に音楽に華があり、ちょっとしたフレーズにもきっちりとメリハリがついて見事な構成感。ピアノもオケも素晴らしいテクニックと音楽性を持ち合わせていることがわかりました。1曲目からグロッキーです。

Hob.XVIII:4 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
この曲でもリズムが活き活きと弾んで入り、前曲同様、古典の均衡を感じさせながらディテールはキレキレ。シュニーダーの意図がわかってきました。軽いタッチ、しっかりしたタッチと変幻自在、鮮度抜群のピアノ。やはりカデンツァではかなり踏み込んだ表現をして個性をアピール。それに合わせて、ワトキンソンのコントロールするオケも引き締まった響きでサポート。前曲よりも楽章間の緩急の対比が鮮明。躍動する1楽章、なだらかな丘を散策しながらきらめきを感じる2楽章。力感極まるフィナーレと続きます。ピアノのキレの極致を感じるほどの見事なタッチ。フィニッシュも素晴らしい勢い。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
最後は名曲XVIII:11です。数多の演奏のイメージの交錯する曲ですが、先人の演奏の垢をすべて洗い流したような純粋な響き。オケの鮮度は抜群、ピアノのキレも素晴らしく、このアルバムの最後に相応しい演奏。速めのテンポでグイグイ攻めていきます。ピアノは左手の力感と右手のきらめき感が抜群のリズム感で結びついたもの。クッキリと浮かび上がるメロディーの面白さがうまく表現できています。カデンツァは意表をついたもので、もはやシュニーダーのトレードマークですね。
2楽章は、聴き慣れたこの曲から静けさを引き出し、ピアノ表情をよりクッキリ表しています。オケの表情は素朴でニュアンス豊かというより、響きの純粋さをベースとしたもの。その上でピアノは緩む事なくキリッとした引き締まった響きで規律あるアダージョ。
フィナーレは前曲よりも軽さを意識してメロディーが転がるような流麗さ。ピアノはまさにコロコロ転がるようなタッチです。敢えてすこしメリハリを抑えて流れの良さを強調しているよう。最後はすこし盛り上げてフィニッシュ。

はじめて聴くオリヴァー・シュニーダーのピアノでしたが、かなりの実力者と聴きました。演奏スタイルは、まさにハイドンにピタリと合ったもので、タッチの鮮やかさ、軽やかさはかなりのもの。決してコンセプチュアルなアプローチではありませんが、邪心もなく純粋に音楽を奏でようといういともしっかり伝わります。これからが楽しみなピアニスト。カデンツァで個性を印象づけることも怠らないあたりも、なかなかです。指揮のアンドリュー・ワトキンソンのコントロールもタイトで見事。最近のハイドンのピアノ協奏曲の中ではオススメのアルバムと言えるでしょう。評価は[+++++]とします。

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tag : ピアノ協奏曲XVIII:3 ピアノ協奏曲XVIII:4 ピアノ協奏曲XVIII:11

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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