ウィーン・モーリス・ラヴェル室内管による「ハイドンのセレナード」など

今日は思いっきりマイナー盤。先日オークションで手に入れたアルバム。

MauriceRaveel.jpg

ジャン・フィリップ・ローション(Jean Philippe Rouchon)指揮のウィーン・モーリス・ラヴェル室内管弦楽団の演奏で、ラモーの六声のコンセール第2番・第6番とハイドンの作曲とされてきた弦楽四重奏曲Op.3のNo.5、ホフシュテッター作曲の通称「ハイドンのセレナード」、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.2のNo.5の4曲を収めたアルバム。収録は1988年10月、ウィーンのドミニカ会館のトーマス・ホールでのセッション録音。レーベルはウィーンのDIVERTIMENTO。

弦楽合奏による所謂「ハイドンのセレナード」と弦楽四重奏曲Op.2のNo.5というハイドンのごく初期の弦楽四重奏曲を収めたアルバムですが、ウィーン・モーリス・ラヴェル室内管弦楽団という初めて聞くオケの演奏。なんとなくただならない感じがするのは私だけでしょうか。ジャケットにも不可思議な雰囲気が漂っています。キュビズムの影響のある風景画を配した妙に淡い色合いのやはりちょっと気になるデザイン。もちろんこうしたアルバムは迷う事なく入手します。

演奏者の情報がライナーノーツに簡単に触れられていましたので紹介しておきましょう。

オケのウィーン・モーリス・ラヴェル室内管弦楽団はこの演奏に先立つこと3年、1985年にフランス人の演奏者を集めてフランスの音楽を国外に知らしめるために設立されたオーケストラ。活動の場はウィーンのフランス文化省が企画したイベントなどで、スコットランドのアバディーン音楽祭やモロッコなどにも出向いているそうです。
指揮者のジャン・フィリップ・ローションはパリのエコール・ノルマルを卒業した、このオケの創立以来指揮を担当している人とのこと。

演奏者についてはほぼ無名と言っていいでしょう。その演奏者によるラモーとハイドン。要はフランスものとオーストリアものを組み合わせたという企画でしょう。演奏者のオリジンを考えると合点のいく選曲です。さて、肝心の演奏はどうでしょうか。

String Quartet Op.3 No.5 [F] (Doubtful 疑作 Composed by Roman Hoffstetter)
有名なホフシュテッター作曲の「ハイドンのセレナード」。分厚い低音弦の心地よい響きから入ります。弦楽四重奏曲とは異なり、弦に厚みがあり、響きも重厚。意外と言っては失礼ですが、堅実かつ華やかさもあわせもったなかなかの演奏。初期の弦楽四重奏曲を弦楽合奏が演奏したものとしてはエミール・クライン盤の素晴らしい演奏を取りあげましたが、この演奏、それに勝るとも劣らない演奏。どちらかというとクライン盤の方が少々のどかで明るい印象。こちらはそれに比べると、オケの響きがキリッとしてドイツ的というかオーストリア的な感じ。ただストイックな印象は皆無で、比べてみたらというわずかな差。要はなかなかいい演奏だということです。
有名なセレナードは実にオーソドックス。良く聴くとやはり名曲ですね。ゆったり響くピチカートにのって、柔らかな弦の旋律が流れます。さりげない演奏ですが実にバランスがよく、完成度は非常に高いです。なにも欠けたものはありません。
続くメヌエットも同様。必要十分と言っては申し訳ありませんが、まさにそうした印象。さらっと演奏しているようですが、デュナーミクもクッキリついて実に豊かな陰影がついています。ゆったりとしていながら推進力もあり、なにより音楽が活き活きとしています。
フィナーレはハイドンの作といってもおかしくないような曲想の面白い展開が聴き所ですが、やはりハイドン作とは音楽の深みで差があるような気がします。いずれにせよ、これはなかなかのアルバムですね。

Hob.II:22(III:11) / String Quartet Op.2 No.5 [D] (c.1760-62)
続くOp.2のNo.5。こちらはハイドン自身の作品です。5楽章構成でプレスト・メヌエット・ラルゴ・メヌエット・フィナーレという構成。6声のディヴェルティメントHob.II.22の編曲ということです。おそらくハイドンが20代の頃の作品で、後年の成熟した筆致はないものの、すでにメロディーの美しさはかなりのもの。この演奏を聴いているとそのような若書きの曲を実に上手くまとめて演奏しています。最初のプレストから、テンポはプレストながら雰囲気はゆったりとした音楽。適度に生気とクッキリ感もあり、実に無理のない演奏です。弦楽器が美しく聴こえるポイントを実に上手くコントロールして、絶妙の安定感。このリラックスしきった雰囲気はなんでしょう。これぞハイドンという実に暖かい音楽。
第一のメヌエットは暖かさを引き継いで、美しいメロディが途中で陰りをみせる陰陽の繊細な変化とゆったりしながらもくっきりとした旋律の浮かび上がらせ方の上手さがポイントでしょう。
そしてラルゴのメロディーはヴァイオリンが透き通るような美しさ。高音域の美しさはソロヴァイオリンのクッキリした感じとは異なり、シルキーなほどの滑らかな響き。この曲を弦楽四重奏ではなく弦楽合奏で演奏した意図が分かった気がします。この美しさは弦楽合奏ならではですね。指揮者のジャン・フィリップ・ローション、かなりの腕前とみました。
第二のメヌエットは第一のメヌエットと曲想は良く似ているものの変化をつけて、構成の面白さを際立たせます。
フィナーレも比較的ゆったりした音楽。しっかり溜めをつくりながら堅実な締め方。アーティスティックなまでに盛り上げる演奏もあるなか、曲自体はディヴェルティメントであり、まさに演奏して楽しむための弾き方。身の丈にあった演奏ということでしょう。

まったく知らなかった指揮者とオケによるハイドンの初期の弦楽四重奏曲と有名な「ハイドンのセレナード」の演奏ですが、予想外にすばらしい演奏でした。演奏者が自身を癒すような演奏と言ったら良いでしょうか。途中でも触れましたが、以前取りあげたエミール・クラインの演奏と非常に近い印象です。弦楽四重奏曲はタイトなせめぎ合いやソロ弦楽器の研ぎすまされた響きの魅力が聴き所ですが、このアルバムで取りあげられている曲自体がもつ美しいメロディーを実に磨き込まれたシルキーな響きをあぶり出し、曲の持つ魅力を別の角度からあぶり出した酔眼と言っていいでしょう。やはりただならぬ雰囲気をジャケットから感じたのは勘が冴えていたということでしょう。もちろん評価は両曲とも[+++++]とします。ハイドンの音楽の美しさを素直に楽しめるよいアルバムです。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.2 ハイドンのセレナード

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

古楽器ラメンタチオーネアレルヤ交響曲3番交響曲79番チェロ協奏曲1番オックスフォード驚愕交響曲88番交響曲19番交響曲58番交響曲27番アンダンテと変奏曲XVII:6ショスタコーヴィチベートーヴェン紀尾井ホールラヴェルストラヴィンスキードビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎LP協奏交響曲オーボエ協奏曲日の出ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:38サントリーホールスタバト・マーテルピアノソナタXVI:39ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:37ブルックナーマーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉ヒストリカル交響曲90番告別交響曲97番交響曲99番交響曲18番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番モーツァルト交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52ライヴ録音SACD武満徹チェロ協奏曲交響曲80番交響曲全集交響曲81番交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり騎士オルランド無人島Blu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲12番交響曲11番交響曲10番ロンドン太鼓連打交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:7ロッシーニドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4バードタリスアレグリパレストリーナモンテヴェルディすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオオフェトリウムモテットドイツ国歌カノン弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲108番交響曲107番交響曲62番変わらぬまことジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
111位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ