マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊

交響曲のメジャー盤ということで気になるアルバム。

Jansons104.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の演奏で、ハイドンの交響曲104番「ロンドン」、協奏交響曲、交響曲100番「軍隊」の3曲を収めたアルバム。収録はロンドンが2007年9月28日、ミュンヘンのヘラクレスザールでのライヴ、他2曲が2003年10月30日、同じくミュンヘンのガスタイクでのライヴです。レーベルはSONY CLASSICAL。

マリス・ヤンソンスはクラシック好きの方にはおなじみの存在でしょう。特に2006年、2012年にはウィーンフィルのニューイヤーコンサートを指揮したことで超一流の仲間入りといったところでしょう。ハイドンの録音も少ないながら何枚かあり、以前にハルモニーミサの素晴らしいライブを取りあげました。

2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

ヤンソンスの略歴は上の記事をご参照ください。ヤンソンスが今日取り上げるアルバムの演奏を担当するバイエルン放送響の首席指揮者に就任したのが2003年ということで、このアルバムの協奏交響曲と軍隊の演奏は就任直後の演奏ということになりますね。聴き所は2003年収録の2曲と2007年収録のロンドンとの演奏の違いや、伝統あるヘラクレスザールとサントリーホール風の新しいガスタイクの響きの違いなどでしょうか。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
良く響くホールに広がる分厚い響き。オケの響きは極上にブレンドされ完全に一体化したもの。フレーズは丁寧に丁寧にデュナーミクがコントロールされたヤンソンスならではのもの。主題に入ると推進力が尋常ならざる迫力に。録音は響きの溶け合いとマッシヴな迫力を重視したもの。鮮明な感じではありませんが、コンサートの実演で聴いているのに近いもの。残響もほどほどに取り入れられ、会場ノイズもほとんど聴こえない理想的なもの。不思議とハイドン的、ドイツ的というような印象はなく、ヤンソンス流のしなやかな響きのイメージが強い演奏。オケのコントロールと迫力は素晴しいですね。
2楽章のアンダンテはオケの演奏と残響が追いかけ合うような不思議なニュアンスの演奏。自然ながらヤンソンス流にフレーズに濃い表情がつけられて、あっさりと弾むような独特の表情。中間部の図太い盛り上がりでは一気にオケを煽り、フルオーケストラの分厚い音色の迫力を見せつけます。ダイナミックレンジの広さをかなり意識したコントロールです。
メヌエットも非常に独特の表情。音符から想像されるリズムと表情とは異なり、独特のデュナーミクとテンポの揺らし方で一貫してヤンソンス風のメヌエット。オケの力感はかなりのもので重さや溜めはほとんどなく、軽快な図太さと言えば良いでしょうか。
そして聴き所のフィナーレ。冒頭のフレーズの浮かび上がらせ方は流石に上手い。これまでの演奏からわかるとおり、迫力の表現は素晴しいですね。オケも流石バイエルン放送響ということで、一糸乱れずヤンソンスの棒に追随します。ベルリンフィルとはことなり、各パートが個性的に響く事ははく、オケとしての一体感は見事。要所で力を抜くと同時に火照りをリセットするあたりも手慣れた所作。最後はフルオーケストラのパワーを見せつけるように緩急織り交ぜながら盛り上げていく見事なコントロール。ライヴとしては非常に良くコントロールされた演奏でした。

Hob.I:105 / Sinfonia Concertante 協奏交響曲 [B] (No.105) (1792)
ソロは下記の通り。

オーボエ:ステファン・シリ(Stefan Schilli)
ファゴット:エーバーハルト・マーシャル(Eberhard Marschall)
ヴァイオリン:ラドスラフ・シュルツ(Radoslaw Szulc)
チェロ:ウェン=シン・ヤン(Wen-Sinn Yang)

全員バイエルン放送響の奏者だと思いますが、チェロのウェン=シン・ヤンは以前チェロ協奏曲の泰然とした見事な演奏を取りあげました。

2012/10/11 : ハイドン–協奏曲 : ウェン=シン・ヤンのチェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲

協奏交響曲は簡単に。録音は少し鮮明度が上がり、前曲のマッシヴな響きの魅力から、解像感も加わり、残響はすこし控えめになり、ライヴというよりはスタジオ録音のような響き。かなりオンマイクな感じです。オケのコントロールの一体感は前曲ロンドンの方がいい感じですので、やはりヤンソンスが首席指揮者になって5年目だけあるということでしょう。ソロはやはりベルリンフィルと双璧をなすバイエルン放送響だけあって腕は確かなところ。基本的にヤンソンスのコントロールはロンドン同様オケのパワーを要所で聴かせながらしなやかにフレーズを磨き上げるもの。ただし、協奏曲の伴奏というよりはオーケストラ主体にソロが加わっているようで、オケのフルパワーでソロがかき消されるような場面もあります。ソロと真っ向勝負というよりは、ヤンソンスの覇気が勝っている感じ。やはり重量級の演奏でした。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
最後は期待の軍隊。この曲でこそヤンソンスのパワーが炸裂するのでしょうか。録音はソロにスポットが当たらない分、響き重視にすこしシフト。序奏から主題の入りまでの推移は意外と速めのテンポで流麗なもの。1楽章はこの曲のスタイリッシュな側面に光を当てています。ただ曲がすすむにつれてアクセルを徐々に踏み込んでいるのがわかります。分厚い低音弦セクションとティンパニが弩迫力で迫ります。ロンドンで見せた濃い表情とは異なり、意外とオーソドックスな表情がかえって好印象です。
さて、聴き所の2楽章ですが、やはりヤンソンス、地響きのようなグランカッサをはじめとして打楽器群の迫力をつたえるために、要所でテンポを落としながら、巧みなコントロールでこの曲の魅力を演出。こうゆうところの演出の巧みさは流石です。
メヌエットもロンドンより自然です。良くコントロールされたオーケストラのマッシヴな響きが痛快。ところどころレガートを織り交ぜて変化をつけるあたりもバランス良い範囲。
フィナーレはこれまでの流麗さから、鋭さを増し、オケの吹き上がりとキレが異常に冴えてきます。ヤンソンスは終盤のクライマックスに向けてオケを自在に煽りながら硬軟織り交ぜ巧みに盛り上げていきます。やはりヤンソンスはホールを揺るがすオケの迫力をベースに音楽を作っているよう。最後の打楽器炸裂の部分は本当にホールが揺れんばかりの迫力でフィニッシュしました。各曲とも拍手も録られています。

マリス・ヤンソンス指揮のバイエルン放送響によるハイドンの名曲のライヴを収めたアルバム。このアルバムの評価は難しいですね。ヤンソンス流の演奏を好む方には1曲目のロンドンは高評価だと思います。私はどちらかというとロンドンはヤンソンス独特の表情付けが気になってしまい、むしろ軍隊の方がオーソドックスにハイドンの良さが感じられる演奏と聴きました。ヤンソンスが首席指揮者になった年とその5年後のライヴということで、ヤンソンスのハイドンの交響曲の演奏に対する姿勢も変化していることがわかります。評価はロンドンと協奏交響曲が[++++]、軍隊は[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ロンドン 軍隊 ライヴ録音 協奏交響曲

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

剃刀ひばり古楽器弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:268人のへぼ仕立屋に違いない東京オペラシティバードタリスパレストリーナモンテヴェルディアレグリ天地創造すみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ライヴ録音マーラーストラヴィンスキー弦楽四重奏曲Op.9アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:6交響曲97番ヒストリカル告別交響曲1番美人奏者ピアノソナタXVI:39四季迂闊者交響曲70番交響曲12番東京芸術劇場太鼓連打ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:3アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4SACDバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンディヴェルティメントヴェルナーモーツァルトベートーヴェンシューベルトLPピアノソナタXVI:38ラメンタチオーネ哲学者交響曲80番交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番協奏交響曲ヴァイオリン協奏曲DVDピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:20サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76皇帝ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出チェロ協奏曲ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33軍隊リヒャルト・シュトラウス騎士弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲4番無人島交響曲42番ベルリンフィル交響曲19番ホルン信号弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲87番交響曲86番フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番オーボエ協奏曲リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10奇跡交響曲18番交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ピアノソナタXVI:8ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲108番交響曲107番変わらぬまこと交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲2番交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
151位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
12位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ