カラヤン/ベルリンフィルの「軍隊」

前記事でスヴェトラーノフによるベルリンフィルの雄々しい響きを聴いて、これを久しぶりに聴いてみたくなりました。

Karajan.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンのパリセットとザロモンセットを収めたアルバム。今日はこの中から交響曲100番「軍隊」を取りあげます。軍隊の収録は1982年1月、ベルリンのフィルハーモニーでのセッション録音。レーベルは名門Deutsche Grammophone。

スヴェトラーノフとのライヴが1989年3月でしたので、その約7年前の録音ということになります。筋骨隆々のベルリンフィルをスヴェトラーノフが振ると、やはりもの凄いパワーを秘めた煮えたぎるマグマのような迫力を帯びていきますが、やはりカラヤンが振ると、レガートを効かせたカラヤンの音楽になります。カラヤンのハイドンは世評は高いものの、特にこのDGの晩年のベルリンフィルとの録音については、ちょっと人工的ですらあるカラヤン一流の磨き込まれた音楽が、ハイドンの交響曲の演奏として相応しいかどうかと言われると、個人的にはちょっと冷静な立場になるのが正直なところでした。その辺は過去の記事にも書いてあります。

2012/06/18 : ハイドン–交響曲 : カラヤン/ベルリンフィルの86番
2011/02/10 : ハイドン–交響曲 : カラヤン/ベルリンフィルのロンドン旧録
2011/01/18 : ハイドン–交響曲 : カラヤン/ウィーフィルのロンドン
2010/12/16 : ハイドン–交響曲 : カラヤン/ウィーフィルの太鼓連打
2010/02/10 : ハイドン–交響曲 : カラヤンのハイドン再考

ただし、いろいろな演奏を聴きつつ、聴く耳も心も変化していきます。スヴェトラーノフが描いた軍隊を、カラヤンは同じオケでどのように描いたのかという興味も湧いてきたので、久々にカラヤンの軍隊を聴いてみたくなった次第。何か発見があるかもしれませんね。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
テンポの遅さはスヴェトラーノフと同様ですが、こちらはカラヤン。序奏から美しく磨き込まれたビロードのような手触りの演奏。流麗な演奏とはこのこと。すぐにダイナミックレンジの幅一杯にクレッシェンドして、ベルリンフィルがフルスロットルで威力を見せつけます。主題に入ると、スタイリッシュにメロディーを刻んでいきますが、流石ベルリンフィルだけあって合奏精度は見事なもの。ロンドンではカラヤンらしさが過ぎて、ちょっと鼻につくところもありましたが、軍隊では不思議とそう感じません。やはりベルリンフィルの威力はただものではありませんね。強奏部分の力感と、カラヤンのダイナミックな音量変化に余裕たっぷりでついてくるところは流石です。特に低音弦の唸るような迫力はベルリンフィルならでは。力でねじ伏せる感じです。
2楽章のアレグレットはレガートを効かせたカラヤン流の演出。今聴くと意外とメロディーラインの演出は単調というか、意識は完全に音量のコントロールに行っているようです。打楽器群の爆発はスヴェトラーノフよりも迫力がありますが、曲として聴くと、スヴェトラーノフの方が迫力があるように聴こえるのが不思議なところ。カラヤンの演奏は完全にコントロールされたもので、スヴェトラーノフのようにスリリングな印象がないからでしょうか。オケは気持ち良く響き、演奏も楽天的ですらあるように安定したもの。もちろん大爆発。
メヌエットに入ってもカラヤンはフレージングはあまり凝らず、磨き込まれた力感を重視しているよう。堂々とした立派なメヌエットですが、音楽の面白さはメロディーラインの表情やリズムの変化などいろいろな要素で成り立っているのに、堂々とした迫力に偏ってしまっているようにも聴こえます。
フィナーレはベルリンフィルのテクニックとパワーをカラヤン流にまとめてスタイリッシュな迫力を演出。前半はすこしセーブ気味にすすめて、終盤の爆発に備えているのでしょうか。カラヤンは極めて冷静にオケをドライブしていき、オケもそれに応えますが、終盤に至り、凝縮されたパワーが炸裂します。カラヤンの好みか、この曲の迫力を担うグランカッサがほとんど聴こえません。弦楽器のレガートを効かせた分厚い音色の迫力で押し通した感じです。

カラヤンの軍隊をあらためて聴き直すと、これまで抱いていた先入観よりはカラヤン流の演出がくどくかんじることはなく、意外と流れのよい演奏に聴こえました。やはりダイナミクスのコントロールは流石カラヤンとベルリンフィルというところでしょう。それでもやはりカラヤンのハイドンという面が強いのは正直なところで、ハイドンの書いた音楽の演奏としては、かなり個性的なものであるのは間違いありません。おそらくベートーヴェンのほうがカラヤンのこういった演奏スタイルでの違和感は少ないと思いますし、リヒャルト・シュトラウスなどでは、カラヤンの演奏スタイルがよりマッチしたものとなるのでしょう。これまでいろいろな演奏者によって、ハイドンの交響曲の様々な豊かさを知る身としては、これもハイドンの交響曲の一断面なのだと理解しています。評価は[++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 軍隊 ベルリンフィル

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ブルックナーマーラーサントリーホールヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉LP交響曲97番告別交響曲90番交響曲18番アレルヤ交響曲99番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ラメンタチオーネモーツァルトヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:32ベートーヴェン驚愕哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲交響曲80番交響曲81番交響曲19番交響曲全集古楽器交響曲21番マリア・テレジアピアノソナタXVI:20クラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり無人島騎士オルランドBlu-rayチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲10番交響曲12番交響曲9番交響曲11番太鼓連打ロンドン交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:4天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:7ドニぜッティライヒャオーボエ協奏曲ロッシーニピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ストラヴィンスキーミューザ川崎シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26タリスモンテヴェルディアレグリバードパレストリーナすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:39美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノ三重奏曲日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードカノンドイツ国歌モテットオフェトリウムスタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番変わらぬまこと交響曲107番交響曲108番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
109位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
9位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ