Haydn Disk of the Month - January 2018

今年の東京の1月は寒かったですね。先週、首都圏でもかなりの降雪があったことは首都圏以外の方もニュースなどでご存知のことでしょう。

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22日月曜の午前中から降り始めた雪は、どんどん勢いを増して夕方の帰宅時にはすでに道路も含めて真っ白。幸い私は通勤の足が止まることはなく、普段よりちょっと時間がかかったくらいで帰宅できましたが、我が家の庭はご覧の有様。すでに20cmくらいは積もっており、久々の大雪と相成りました。新雪が積もった庭はなんとなくいい雰囲気ではありますが、その後周りの雪かきのことを考えると喜んでもいられません。このぐらい積もりますと、あちこちで車の事故があったり、物流に影響が出てコンビニが空になったりと首都圏は雪に弱いですね。首都圏での珍しい大雪になんとなく華やいだ気分にはなりますが、やはり生活面では色々な影響が避けられません。

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実はその雪の降る前日の日曜は、このところ毎年1月に訪れている伊豆下田の爪木崎に水仙を見に行っていたんですね。流石に伊豆半島の南端ですので東京よりだいぶ温暖なはずですが、ドライブの途上も晴天で、天気予報は聞いていましたが、翌日これほどの雪が降るとは想像することはできませんでした。写真は爪木崎の先端にある灯台から伊豆半島の東海岸を眺めたところ。もちろん水仙も満開で岬中に水仙の香りが満ちていました。去年の1月の記事に水仙の写真は載せましたので今年は海の写真ということで、、、



さて、12月は旅行記にかまけてレビュー記事を書きませんでしたので、月のベスト盤を選ぶのは2ヶ月ぶりになります。なんとなく最近はLPの発掘に興味が集中しており、必然的にレビューもLPが多くなっているため、LPが守備範囲外の方には少々敷居が高くなっちゃっているのではないかと危惧しております。しかしながら、もともと我が国ではニッチな存在であるハイドンの知る人ぞ知る名盤を掘り起こして世に問うということをミッションとする運営主旨ゆえ、LPを取り上げることもお含みおきいただき、おおらかなる心境、寛容なる精神で受け取っていただけると幸いです。ということで、今月のベスト盤はもちろんLPです!

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2018/01/09 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の奇跡、時計(ハイドン)

私がようやくオーマンディの素晴らしさに開眼したアルバム。そしてオーマンディという指揮者がハイドンの素晴らしい理解者であることを思い知らされたアルバムです。フィラデルフィア管の名手たちがオーマンディの精緻なコントロールで、奇を衒わない見事なフォルムを彫り出して、ハイドンの傑作交響曲をまるでギリシャ彫刻のような完璧なプロポーションに仕上げ、写実から少し踏み込んだデフォルメを効かせて極めてバランスの良いアーティスティックさを纏う見事な仕事ぶり。特に奇跡の見事さは圧倒的でした。LPらしいリアリティのある録音も最高。1960年代初頭の録音ながら現在聴いてもまったく古さを感じない説得力をもつ演奏です。LP再生環境のある方は是非このアルバムでオーマンディの素晴らしさを体験していただきたいですね。



今月高評価をつけた他のアルバムは下記の通り。

2018/01/30 : ハイドン–声楽曲 : ラインハルト・カムラーによるニコライミサ、小オルガンミサ(ハイドン)
2018/01/24 : ハイドン–交響曲 : エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン響の93番、奇跡(ハイドン)
2018/01/16 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : アルミン四重奏団のOp.20のNo.4(ハイドン)
2018/01/13 : ハイドン–交響曲 : ラースロー・ショモギー/ウィーン放送管の78番、哲学者(ハイドン)
2018/01/07 : ハイドン–交響曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の99番、軍隊(ハイドン)
2018/01/03 : ハイドン–ピアノソナタ : ヴァルター・オルベルツのピアノソナタ旧録音(ハイドン)

記事を読んでいただければ、どれも甲乙つけがたい素晴らしい演奏だとお分かりいただけるかと思います。今月は最近は取り上げる量が減ってしまった交響曲にこだわって聴きましたので、オーマンディのもう一枚の他にも、知る人ぞ知るラースロー・ショモギー、エーリヒ・ラインスドルフなどの素晴らしい録音に出会いました。まだ、手元には未聴盤が色々とありますので、来月も勢いを落とすことなく発掘を続けたいと思います。

そういえば、そろそろ花粉の季節(涙)



2018年1月のデータ(2018年1月31日)
登録曲数:1,361曲(前月比±0曲) 登録演奏数:10,633(前月比+61演奏)

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ラインハルト・カムラーによるニコライミサ、小オルガンミサ(ハイドン)

たまにはCDを(笑)

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TOWER RECORDS / amazon / HMV&BOOKS onlineicon(いずれも別装丁10枚組)

ラインハルト・カムラー(Reinhard Kammler)指揮のアウグスブルク大聖堂聖歌隊(Soliesten und Kammerchor der Augsburger Domsingknaben), ミュンヘン・レジデンツ室内管弦楽団(Residenz-kammer-orchester München)の演奏で、ハイドンのニコライ・ミサ、小オルガン・ミサ、ミサ・ブレヴィスの3曲を収めたCD。収録は1985年、アウグスブルク西方のヴィオラウ(Violau)にある聖ミカエル巡礼教会(Wallfahrtskirche St. Michael)でのセッション録音。レーベルはEMIマークがついたdeutsche harmonia mundi。

このアルバムは最近オークションで仕入れたもの。ラインハルト・カムラーは手元に大オルガンミサを収めたdeutsche harmonia mundiの1978年録音のCDがありますが、これは少年合唱がかなり荒くちょっと楽しめませんでした。ということで、それから7年後に録音されたこちらのアルバムは、大オルガンミサの少し後に作曲された2曲と初期のミサ曲を収めたもので、コレクションを埋める目的で入手しましたが、これがなんと前アルバムとうって変わって素晴らしい演奏でびっくり! 指揮者の7年の熟成かはたまたプロデュサーの手腕かはわかりませんが、こういうこともあるものですね。

いつものようにラインハルト・カムラーについて調べてみました。1954年、ドイツのアウグスブルク生まれの合唱指揮者。地元アウグスブルクのレオポルド・モーツァルト音楽院、ミュンヘン音楽大学で学び、在学時にこのアルバムでコーラスを担当する少年合唱のアウグスブルク大聖堂聖歌隊を設立し、1982年ケルンで開かれたドイツ合唱コンクールで優勝しました。その後アウグスブルク大聖堂のオルガニストを経て、1995年に同音楽監督に就任。以後毎年クリスマスにはバッハのクリスマス・オラトリオ、イースターにはヨハネ受難曲やマタイ受難曲などを演奏するようになり、2003年からはカムラーとアウグスブルク大聖堂聖歌隊による「バッハインロココ(Bach in Rokoko)」という音楽祭を開催し、これは現在まで続いています。

ということでアウグスブルクで長らく活動を続けている合唱指揮者ラインハルト・カムラーによるハイドンのミサ曲ですが、天地創造も有名指揮者の演奏以上に合唱指揮者による渾身の演奏をいくつも聴いてきましたので、ちょっと納得の出来です。

Hob.XXII:6 "Missa Sancti Nicolai" "Nicolaimesse" 「ニコライミサ」 [G] (1772)
作曲年は1772年とハイドンマニアの方ならピンとくる年。そう、シュトルムウントドラング期のクライマックスの年で、告別交響曲や太陽四重奏曲が書かれた年に書かれたミサ曲。曲はこの創作期に漂う仄暗さとは無縁なほのぼのとした明るさを感じさせるもの。キリエの冒頭から深みのあるしなやかな響きが心地よい演奏。教会での録音らしく残響は多めながら鮮明さを失わない見事な録音。ソプラノからバスまでの歌手の配役を含めて少年合唱のようです。透き通るようなソロとコーラスは非常にレベルが高く大オルガンミサの録音は全く異なり安心して身を委ねられます。全体のコントロールは合唱指揮者らしく奇をてらったところがなく非常に誠実なもの。しかもソロとコーラス、オケが見事なバランスで調和しており、キリエからグロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥスと大河の流れのような一貫した音楽で一気に聴かせ、最後のアニュス・デイの静謐な響きに神々しさが宿ります。最後に冒頭のキリエのメロディが流れると暖かい空気に一変。この曲のキーになる美しいメロディで最初と最後が美しく飾られるわけです。いつもながらハイドンの見事な構成力に唸ります。

Hob.XXII:7 "Missa brevis Sancti Joannis de Deo" "Klein Orgelmesse" 「小オルガンミサ」 [B flat] (c.1775)
ニコライミサとは異なる曲想ながら前曲以上に癒し成分に満ちた入りからグッときます。あくまでもコーラスが主体となる入りがこの演奏のポイントでしょう。華やぐキリエから、リズムを刻むグローリアと進み、クレドでしっとりと沈み込む展開の妙。終始一貫したカムラーのコントロールによって、この小ミサ曲のピュアな魅力が際立ちます。コーラスの響き純度の高さは少年合唱ならでは。サンクトゥスはフーガ的な幽玄な広がりを感じさせ、続くベネディクトゥスではオルガンの伴奏に乗ったボーイソプラノの魅力に圧倒されます。そして最後のアニュス・デイで前曲同様、険しさも感じさせる静謐な響きに至り、祈りの音楽たるミサ曲の核心に迫る見事な集中を見せます。透明な響きの彼方へワープしそうです。

Hob.XXII:1 Missa brevis [F] (1757)
最後の曲はぐっと作曲年代が遡ったハイドンの創作初期の音楽。曲のつくりはぐっと単純になりますが、メロディーラインの美しさはハイドンならでは。構成よりもメロディー自体で聴かせる音楽。カムラーのコントロールは前曲までと同様、非常に丹念なコントロール。曲の展開は前2曲とはかなり異なるので驚きに満ちた発見が多々あります。オケも落ち着いてハイドンの初期の名曲を丹念に描き、ソプラノとメゾソプラノ役の少年による掛け合いをゆったりと支えます。この初期の曲も見事に料理して、アルバム全体を通して敬虔な祈りを感じるピュアな演奏でした。

アウグスブルクの地元で一貫して活躍するラインハルト・カムラーと主兵のアウグスブルク大聖堂聖歌隊らによるハイドンの初期のミサ曲集ですが、この3曲については他の演奏を必要としないほどに一貫して誠実な演奏が心に残りました。オケのコントロールも、有名指揮者ならば聴かせどころを作るのでしょうが、これらの曲にはカムラーの誠実な演奏の方が映えるとの確信を持てる素晴らしい説得力に満ちた演奏です。評価はもちろん3曲とも[+++++]とします。

ちなみに上の写真につけたリンク先のアルバムはdeutsche harmonia mundiによるJ. Haydn Edition<完全生産限定盤>ということで、このアルバムを含む10枚組のCDで、内容も素晴らしい演奏ばかり集めたもので、しかも値段もCD1枚分くらいの廉価なものなので、いま手に入れるのはこのアルバムがいいと思います。

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tag : 小オルガンミサ ニコライミサ ミサブレヴィス

オットー・マツェラート/ヘッセン放送響の95番(ハイドン)

このところ古い録音の交響曲を続けて取り上げています。昔はLPをリリースするためにかなりの労力が必要だったからか、それぞれ素晴らしい完成度であることに今更ながらに驚きます。

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オットー・マツェラート(Otto Matzerath)指揮のヘッセン放送交響楽団(Symphonieorchester des Hessischen Rundfunks)の演奏でハイドンの交響曲95番他を収めたLP。収録情報は記載がありませんし、ネットを調べてもこのアルバムの情報に巡り合いませんが、マツェラートの略歴とステレオ収録であることから1957年から61年あたりの録音だと思います。レーベルはCHRISTOPHORUS。

このアルバムも最近オークションで仕入れたもの。指揮者のマツェラートは全く未知の人。オケの方は現在hr交響楽団と呼ばれ、しばらく前まではフランクフルト放送交響楽団と呼ばれていた楽団。インバルによるマーラーの交響曲の録音で日本でも知られていますね。この楽団の首席指揮者は2013年までパーヴォ・ヤルヴィが務めていましたが、そこから遡るとパリセットの名録音があるヒュー・ウルフ、ドミトリー・キタエンコ、エリアフ・インバル、ディーン・ディクソンそして1955年から61年までが今日取り上げるアルバムの指揮者であるオットー・マツェラート。この辺りの経緯はWikipediaのhr交響楽団のページをご参照ください。

オットー・マツェラートは現代の日本ではほとんど知る人がいないのではないでしょうか。調べてみると1914年デュッセルドルフに生まれたドイツの指揮者。地元デュッセルドルフの現ロベルト・シューマン音楽院でヴァイオリンとピアノ、オペラを学び、指揮は独学とのこと。歌劇場で経験を積み1942年、フルトヴェングラーによりコンサート指揮者として見出され、ベルリンフィルなども振っていたそう。戦後もドイツを中心に活躍し、先に触れた通り、1955年から61年までヘッセン放送響の指揮をしていたようです。その後なんと1963年9月から読響の首席指揮者となりましたが、直後の11月、相模原のキャンプ座間の米軍病院で亡くなったそうです。日本とも関係があった人ですが、わずか2ヶ月で急死してしまったということで、記憶に残っている方も少ないのではないかと思います。

さて、そのマツェラートの振るハイドンですが、堂々としたオーソドックスな名演奏として見事なものでした。

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Hob.I:95 Symphony No.95 [c] (1791)
このころの録音に共通する引き締まったオケの響き。オーソドックスさがそのまま演奏の特徴となっているような正統派の演奏。各パートはバランスよく鳴り響き、細密画のように一糸乱れぬ見事なアンサンブルで指揮者の律儀さが伝わって来るよう。各パートのメロディーが実によく聴こえます。1楽章はまるで教材のような完璧なアンサンブル。
続くアンダンテでもメロディーラインのクリアさを保ちながら、しなやかさも加わりしっとりとした情感が乗ってこの曲の陰りがよく表現されています。実に緻密な演奏。
ハイドンの交響曲の楽しみはメヌエット。曲毎に千変万化するメロディーの想像力にいつもながら驚かされます。マツェラートはザクザクとではなく、しっとりとしたメヌエットできました。律儀なフレージングの中にほっこりとするような安らぎを感じるメヌエット。
そしてフィナーレもオーソドックスなアプローチながらくっきりとしたメロディーが印象に残ります。フーガの幽玄さを感じさせながら徐々にオケに力が漲っていきますが、最後まで余裕を失わず、古典の均衡を守ったクライマックスで曲を閉じます。

なんとなくもう一歩踏み込んで欲しい感は残りますが、ハイドンの交響曲の演奏としては、バランスの良くまた各パートの動きもクリアに追えるレベルの高い演奏です。オットー・マツェラートという指揮者の清廉な音楽が浮かび上がってきているのでしょう。それがこの95番という振り方によっては険しさに焦点が当たりすぎる曲の穏当な解釈として貴重な存在とも言えます。評価は[++++]とします。ネットの情報ではこの95番の他にも何曲かハイドンの交響曲の録音があるようですので、気長に探してみたいと思います。

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tag : 交響曲95番 ヒストリカル

エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン響の93番、奇跡(ハイドン)

またまた素晴らしい演奏にめぐり合いました!

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エーリヒ・ラインスドルフ(Erich Leinsdorf)指揮のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲93番、96番「奇跡」の2曲を収めたLP。収録年、収録場所の表記は有りませんが1968年にリリースされたようです。レーベルは米RCA VICTOR RED SEAL。

このLPは最近オークションで手に入れたもの。ラインスドルフはあまり馴染みの指揮者ではありませんが、手元には米MCAからリリースされていたモーツァルトの1番から15番までの初期交響曲の2枚組CDがあり、バランスの良い引き締まった辛口の響きを作る人との印象が残っています。なんとなくモーツァルトよりもハイドンの方が良かろうとの想像が働きます。

一応略歴などをWikipediaからさらっておきましょう。1912年ウィーンで生まれ、モーツァルテウム音楽院で指揮を学び、その後ウィーン大学、ウィーン音楽大学などでチェロとピアノを学んだそう。1934年から1937年までザルツブルク音楽祭でワルター、トスカニーニの助手を務め、その頃から本格的に指揮活動を始めます。1937年、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でワルキューレを振り、副指揮者となると翌1938年には常任指揮者となり、特にワーグナーの指揮で名声を得て1939年にはドイツ系レパートリーの責任者に抜擢されるなどとんとん拍子に出世しました。1942年にはアメリカの市民権を得て帰化し、クリーヴランド管、ニューヨーク州ロチェスターフィル、ニューヨークシティオペラなどの音楽監督を歴任。1962年には今日取り上げるアルバムのオケであるボストン交響楽団の音楽監督に就任しRCAレーベルに多くの録音を残しました。ボストン交響楽団の音楽監督は1969年まで務め、その後ウィリアム・スタインバーグが3年務めた後1972年に小澤征爾が就任することとなります。ボストンを退任後は一時ベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者を務めますが、世界の著名オケへの客演が中心になり、亡くなったのは1993年でした。オケに厳しい指揮者として知られた人とのこと。

Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)
冒頭から図太い低音の響きに支えられたピラミッドバランスなオケの響きに耳を奪われます。キレのいい見事な響き。この曲は赤熱した鉄の塊を打ち出すようなカレル・アンチェルの剛演が耳に残っていますが、それに近い引き締まった響きが険しい規律とバランスを纏って流れてきます。まさに鍛え抜かれたオケが生み出すタイトな響きの魅力に溢れた素晴らしい演奏。しかも小気味よくスタイリッシュときていますので言うことなし。
続くラルゴ・カンタービレでもテンションを緩めることなく一貫してタイトな響きが続きます。テンポはもちろん落ちますがフレーズのエッジをキリリと強調して緊張感を保つ見事なコントロール。モーツァルトでは表情の硬さも感じられたのに対し、ハイドンではラインスドルフの引き締まった音楽が見事にハマり、素晴らしい説得力を帯びています。
これまでの演奏から予想される通り素晴らしかったのが続くメヌエット。彫りの深さと響きの険しさがこの曲の本質をえぐる快演。重くもならず軽くもなくがっちりとした推進力に満ちた揺るぎない音楽。音量を上げて聴くと素晴らしいオケの響きに包まれます。力強い筆さばきの魅力全開です。これぞハイドンのメヌエット!
そして最後は正攻法で仕上げたフィナーレ。全盛期のアメリカのオケの底力を思い知らされます。セルのクリーヴランド、ライナーのシカゴ、オーマンディとフィラデルフィアなどに比べても全く劣らぬ素晴らしい響きをラインスドルフがボストン響から絞り出しました。最後まで手に汗握る迫力を冷静に生み出す見事なコントロールに驚きます。

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Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
LPをひっくり返して続く奇跡。ラインスドルフの見事なコントロールは変わるはずもなく、冒頭から引き締まりまくった響きに耳を奪われるのは言うまでもありません。中庸なテンポでこの曲なミラクルな感じをじっくり描いていくのは先日レビューしたオーマンディ盤と同様。この曲は淡々と険しく攻め込むのがいいようです。オーマンディの方が化粧が上手く表情豊かではありますが、こちらは剛直な良さがあり甲乙つけ難いですね。
続くアンダンテは落ち着き払った入りから、徐々に険しく盛り上がり、起伏の大きさと鮮明な陰影によって実に深い音楽を奏でます。弱音部のリラックス度合いも音楽の深さを増す要因。そしてメヌエットは前曲とは異なり少し力を抜いてきます。この曲ではアンダンテに力点をおいたからでしょう。ザクザクと刻む低音弦に支えられた揺るぎない音楽。中間部のオーボエの明るい響きがこの演奏に華やかさを加えています。
フィナーレはオケの底力の見せ所。軽やかな入りから不気味な迫力が漂い、曲が進むにつれ徐々に力感を増しながらザクザクと低音弦が唸り始めます。気づくと力みとは無縁の余裕たっぷりのクライマックスに到達。やはりラインスドルフは冷静でした。

ジャケットを見ると微笑みを浮かべながら椅子に座るラインスドルフの姿。この演奏の自信のほどをうかがわせる微笑みと受け取るのが正しいでしょう。全盛期のボストン響の鍛え抜かれた響きが堪能できる見事な演奏でした。険しい響きを生み出しながらもニュートラルでスタイリッシュさを感じさせるのがラインスドルフの真骨頂でしょう。LPの録音の良さもありますが、手元のモーツァルトの交響曲集と比べてもハイドンとの相性の方が良いのは明らか。この2曲以外にラインスドルフのハイドンの録音があるかどうかはわかりませんが、他の曲も聴いてみたくなる出来でした。評価は両曲とも[+++++]とします。

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tag : 交響曲93番 奇跡

アルミン四重奏団のOp.20のNo.4(ハイドン)

久々にCDに戻ります。最近仕入れたアルバムですが、クァルテットの名前も知らない、知る人ぞ知るアルバム。こういうアルバムを聞くのはワクワクしますね(笑)

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TOWER RECORDS / ローチケHMVicon

アルミン四重奏団(Armin Quartet)による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲Op.13の2曲を収めたアルバム。レーベルはバイエルン放送響などのライブのリリースで知られるaudite。収録は1994年10月25日から28日かけて、auditeレーベルの創業者であるフリードリヒ・マウアーマン(Friedrich Mauermann)の名を冠したマウアーマンスタジオ(Tonstudio Mauermann)でのセッション録音。

このアルバムは最近偶然手に入れたもの。好きなOp.20が入っているということで入手しましたが、CDプレイヤーにかけてみると、なかなか充実した響きが流れ出し、素晴らしい演奏に耳を奪われました。

auditeと言えば歴史的な録音の復刻で有名なレーベル。私はクーベリックがバイエルン放送響を振ったマーラーのライブ盤が印象に残っていて、1、2、5、9、大地の歌と結構な枚数が手元にあります。今回ちょっと調べたところauditeレーベルの創始者であるフリードリヒ・マウアーマンの兄弟であるエーリッヒ・マウアーマンがその当時の先代のバイエルン放送響のマネージャーだったということで、クーベリックのマーラーの録音やリリースに繋がったのだと思われます。クーベリックのマーラーの録音がauditeレーベルの主力のアルバムだったということです。

一方アルミン四重奏団はあまり知られた団体ではありません。この録音時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:オットー・アルミン(Otto Armin)
第2ヴァイオリン:永富美和子(Miwako Nagatomi)
ヴィオラ:イングリト・フィリッピ(Ingrid Philippi)
チェロ:アンスガー・シュナイダー(Ansgar Schneider)

第1ヴァイオリンのオットー・アルミンは1943年カナダ生まれで1977年にドイツに移住するまではカナダなどを中心に活動していた人。彼の略歴を見ると1950年代からアルミン弦楽四重奏団というクァルテットを結成して活動していたようですが、カナダ国内での演奏やCBC放送への出演が多く、のちに米国インディアナ州のインディアナ大学のレジデント・クァルテットとなった経緯などを含めるとこのアルバムを録音した頃まで継続して活動していたかどうかはわかりません。オットー・アルミンは著名なヴァイオリンのコンクールに入賞したのちにヴィクトリア響、クリーヴランド管などのヴァイオリン奏者として活躍し、CBCモントリオール管ではコンサートマスターを務めました。教職ではケベック音楽院、マギル大学、カナダのナショナル・ユース・オーケストラなどを歴任。その後ドイツに渡り、ハンブルクフィル、シュツットガルト放送響のコンサートマスターを務めています。このアルバムのクァルテットのメンバーは皆シュツットガルト放送響のメンバーということで、50年代に活動したアルミン弦楽四重奏団とはアルミンが第1ヴァイオリンということだけが共通の模様。ちなみに第2ヴァイオリンの永富美和子さんは桐朋音大を出て室内楽をジュリアード四重奏団に学び、ジュネーヴでヘンリク・シェリングのマスタークラスを学び1973年からシュツットガルト放送響のアシスタント・コンサートマスターを務めているそう。

ということでレビューに入ります。

Hob.III:34 String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
程よい残響を伴った鮮明な録音でしっかりと実体感のあるクァルテットがスピーカーの前に出現します。演奏は現代楽器によるオーソドックスなものですが、4人の息がピタリと合って精度は抜群。全員のボウイングが揃って奏でるハーモニーが絶妙な雰囲気を醸し出します。聴き進むとオットー・アルミンの第1ヴァイオリンの伸びやかなボウイングの魅力が徐々に際立ってきます。特段個性的なものではありませんが、ハイドンのこの曲を素直に料理することが最も作品の真髄に近づけるとの確信を持った演奏のように聴こえます。
続く2楽章に入るとヴァイオリンが奏でる短調のメロディーを次々とヴィオラ、チェロが受け継ぎじっくりと、しかし淡々と発展させていく妙味を味わえます。ヴィオラもチェロもかなり雄弁で聴きごたえ十分。再びヴァイオリンに戻ると短調の中にも艶やかさにハッとさせられる見事な展開。やはりハイドンの構成の見事さが印象に残る、オーソドックスなのに深い演奏。弱音部の精妙さと強奏部の堂々とした響の対比も見事。
メヌエットはメロディーラインに小節を効かせながらもチェロの軽やかな音階でさっぱりとまとめます。そしてフィナーレでは速いパッセージでも4人のアンサンブルの息の合ったところを見せつけますが、終盤に近づくにつれてオットー・アルミンのヴァイオリンの鮮やかなキレ味が牙を剥き始めます。録音がいいのでヴァイオリンの響きも実に心地よく感じます。4楽章を通して穏やかな起承転結がついて、ハイドンのこの時期のクァルテットの仄暗い雰囲気をくっきりと描き切りました。

やはり未知の奏者の演奏を聴くのはスリリングですね。先入観なく虚心坦懐に聴いた演奏は、このOp.20のNo.4の素朴な良さをくっきりと浮かび上がらせる名演奏でした。しっかりと地に足がついて弦楽器の響きも実体感十分。そして第1ヴァイオリンを軸にしながらもバランスの良い息のあったアンサンブルでまとめた手堅さが印象に残りました。ハイドンの演奏のツボを押さえた名手の集まりということでしょう。評価は[+++++]とします。

このアルバムの他に数枚しか録音が見つからないということで、現在も活動しているかどうかはわかりませんが、このアルバムに収録されたハイドンは皆さんに聴いていただくべき価値は有りです!

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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